映画『大人の見る絵本 生まれてはみたけれど』の概要:新興住宅街に引っ越してきた岩崎家。父親は、厳しく息子達を教育していた。しかし、父親が会社で道化役を演じていることを知った息子達は、父親に幻滅してしまう。小津安二郎のサイレント期の傑作。
映画『大人の見る絵本 生まれてはみたけれど』の作品情報
上映時間:91分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:小津安二郎
キャスト:斎藤達雄、吉川満子、菅原秀雄、突貫小僧 etc
映画『大人の見る絵本 生まれてはみたけれど』の登場人物(キャスト)
- 吉井良一(菅原秀雄)
- 吉井家の長男。父を尊敬しているが、父が会社で道化役を演じていることを知って幻滅する。弟を助けるために、悪童に立ち向かおうとする勇気のある少年。
- 吉井啓二(突貫小僧)
- 吉井家の次男。長男にいつもひっついている。良一同様父を尊敬しているが、父の立場を知って幻滅する。泣き虫。
- 父(斎藤達雄)
- 吉井家の父親。息子たちには威厳を持って接する。しかし、会社では道化役を演じている。それを知った息子たちに幻滅されてしまう。
- 岩崎太郎(加藤清一)
- 吉井の父親が働く会社の社長である岩崎の息子。良一たちと同じ学校に通っている。子分肌で、悪童の亀吉と行動を共にしている。やられた亀吉に幻滅し、良一たちに鞍替えする。
- 亀吉(飯島善太郎)
- 悪童。良一たちと同じ学校に通っている。太郎達を子分に持ち、良一達をいじめる。しかし、啓二と仲の良い酒屋の少年にやられてしまう。親分肌で、体格が良い。
映画『大人の見る絵本 生まれてはみたけれど』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『大人の見る絵本 生まれてはみたけれど』のあらすじ【起】
東京の郊外に、新興住宅街として開発され始めた町があった。そこへ、吉井一家が引っ越してくる。荷物と子供達を載せたトラックは、泥道にハマって動けなくなってしまう。どうにか動き出した車。父は上司の岩崎のところへ向かい、息子達を先に家へと向かわせる。
長男の良一と次男の啓二が、新しい家に到着する。一方の父は、岩崎の家にご機嫌を伺うための挨拶へ行く。表札を書いてもらう約束を取りつけ、息子の太郎にまで気を配る。
空き地で一人で遊んでいた啓二。そこに、太郎を含めた仲間達を連れて、亀吉という悪童がやってくる。啓二が遊んでいた知恵の輪を奪った亀吉。啓二は泣いて家に帰ってしまう。
良一が啓二の仇を取るため、空き地へと向かう。向かい合う亀吉と良一。取っ組み合いが始まったが、そこに父が通りかかったために喧嘩は中断。啓二と良一は、父と一緒に家へ帰る。亀吉は、学校でひどい目に遭わせてやると叫ぶ。父は、近所の子供達とは仲良くしなさいと言う。
映画『大人の見る絵本 生まれてはみたけれど』のあらすじ【承】
翌朝、啓二と良一は新しい学校へ登校する。お弁当を持って、父と一緒に途中まで歩いていく二人。校門までついた二人だったが、そこには亀吉と子分達がいた。とても入る気にはなれず、二人はそのまま空き地へと向かう。
持っていたお弁当を全て食べしまう二人。習字の授業があったことを思い出し、二人は空き地で習字を始める。真実味を持たせるため、通りかかった酒屋の少年に甲という字を書いてもらうが、少年は申という字を書いて去って行ってしまう。
何事もなかったように家に帰る二人。すると、亀吉の子分達が学校に来なかったことを揶揄しにやってくる。再び喧嘩になり、啓一は持っていた下駄で殴りつけて相手を泣かせる。
亀吉を連れて戻ってきた子分達。そこへ、教師と父が帰ってくる。父はそこで、良一達が学校へ行かなかったことを知る。
家に着いた父は、早速息子達を叱りつける。啓一達は事情を説明するのだが、父は学校へ行きなさいの一点張りで、息子達の言うことを全然聞かない。
映画『大人の見る絵本 生まれてはみたけれど』のあらすじ【転】
翌日、嫌々ながら学校へと向かう啓一と良一。学校に着き、再び逃げ出そうとした二人だったが、父が現れてそれを止める。
酒屋の少年と遭遇した啓一。啓一は少年に、今日は祝い事があるからビールを買うだろうと助言する。少年が吉井家に行くと、思惑通りビールの注文が入る。仲良くなった二人。啓一は少年に、亀吉をやっつけて欲しいと頼む。
亀吉が啓一を見つけ、殴りかかる。そこへ、少年がやってきて亀吉を追い払う。それを見ていた太郎は、親分を良一と啓一に鞍替えする。
亀吉についていた子分達を、自分の子分のように扱う良一と啓一。彼らは、自分達の父親自慢を始める。各々が、自分の父親が一番偉いのだと言い合う。
ある日、岩崎家で活動写真の上映会が開かれる。太郎に誘われて、良一と啓一も岩崎家を訪れる。そこには、彼らの父も来ていた。
動物などが映し出される。その後、徐々に社員達のプライベートな映像が流され始める。良一達の父も映し出されるが、彼は会社で道化役を演じて笑いをとっている。そんな父の様子に、良一と啓一は苛立ちを隠せないでいた。
映画『大人の見る絵本 生まれてはみたけれど』の結末・ラスト(ネタバレ)
落ち込みながら岩崎家をあとにする良一と啓一。自分の父親が偉くないことに憤りをおぼえていた。
家に帰っても不貞腐れている良一達。そこへ父親が帰ってくる。良一は、いつも偉くなれというくせに自分は全然偉くないじゃないかと文句を言う。太郎の父親は重役だからだと説明するも、じゃあ重役になればいいじゃないかと言い返す良一。
散々暴れまわった良一達。彼らはストライキを決行する決意をする。父も少なからずショックを受けており、酒でも飲まないとやりきれないと言い出す。すると妻が、子供達にはもう少し優しく言ってあげるべきだと父をなだめる。眠った子供達に、こんなヤクザな会社員にはなるなよと語りかける。
翌朝、良一と啓一は朝ごはんを拒否する。しかし、母親の優しさに加えて空腹にも耐えきれず、母の作ったおにぎりを食べ始める。そこへ父親がきて、子供達に語りかける。
良一達は、父と一緒に登校する。途中、岩崎を発見する彼ら。父は、どこか気まずいような様子を見せる。子供達は、挨拶してきなよと父親に言う。父は岩崎の方へと歩いて行き、良一達は太郎と一緒に学校へと向かう。
映画『大人の見る絵本 生まれてはみたけれど』の感想・評価・レビュー
本作は、威厳のある父とそんな父に叱られてばかりの兄弟を描いた小津安二郎監督サイレント期の代表作にもなったコメディーヒューマンドラマ作品。
子どもたちの演技が自然で、ほのぼのとした雰囲気や悪ガキな表情がとても可愛らしかった。
自然な姿を引き出す小津監督の子役演出には感心してしまう。
サイレントだけれど、子どもたちの成長過程やその独特な生体が伝わってきて、細部まで見応えを感じた。
コメディーとしても海外作品に劣らないユーモアのある作品。(女性 20代)
父親って子供からすると強くて、偉くて、かっこ良くて特別な存在ですよね。家庭によって違うのかも知れませんが、私の父親は昔から無口で家の事は何もしない「仕事人間」という感じでした。しかし、父の会社での姿は見た事がありません。こんな仕事をしているのだろうと言うイメージだけです。この作品は、家では威厳のある父親が会社では全く別の姿である事を知った子供たちのお話です。
「大人」になると色々あるんだよ、と言ってしまえばそれまでですが「子供」にとってその「大人」の世界は簡単に理解出来るものでは無いし、父親と子供どちらの気持ちも分かるので物凄く歯痒かったです。(女性 30代)
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