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映画『エレファント・マン』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『エレファント・マン』の概要:実在の人物、ジョゼフ・メリックをモデルとしたヒューマンドラマ。極端に奇形した外見のため、過酷な人生を歩んだ青年の姿を通して、デヴィッド・リンチ監督が人間の善意と悪意を鋭く描き出す。主人公になりきったジョン・ハートの演技が素晴らしく、主人公の悲しみと優しさがひしひしと伝わってくる。

映画『エレファント・マン』の作品情報

エレファント・マン

製作年:1980年
上映時間:124分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:デヴィッド・リンチ
キャスト:ジョン・ハート、アンソニー・ホプキンス、アン・バンクロフト、ジョン・ギールグッド etc

映画『エレファント・マン』の登場人物(キャスト)

ジョン・メリック(ジョン・ハート)
21才のイギリス人男性。頭部が極端に肥大し、身体中が瘤だらけという奇形のため、「エレファント・マン」と名付けられ、サーカスの見世物にされていた。ひどい虐待を受けてきたため言葉を発しなくなっていたが、実は頭脳明晰で心の優しい紳士。
フレデリック・トリーブス(アンソニー・ホプキンス)
ロンドン病院の外科医。外科医としてジョンに興味を持ち、病院で彼を保護する。最初は医師と患者という関係だったが、ジョンの人柄に接し、人間として彼を守りたいと思うようになる。ジョンの悲しい人生に深く同情している。
バイツ(フレディ・ジョーンズ)
ジョンを商売道具にしていたサーカスの興行師。極悪非道な男で、おとなしいジョンを暴力で支配し、金儲けをしていた。ジョンの幸せを憎み、トリーブスからジョンを取り返すチャンスを伺っている。
ケンドール(アン・バンクロフト)
ロンドンの劇場の大女優。ジョンに興味を持ち、病院まで彼を訪ねてくる。単なる好奇心ではなく、ジョンの心の美しさを見抜き、本当の友人として彼と接する。

映画『エレファント・マン』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『エレファント・マン』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『エレファント・マン』のあらすじ【起】

19世紀、イギリスのロンドン。ロンドン病院で外科医をしているフレデリック・トリーブスは、サーカスの見世物小屋に「エレファント・マン」と名付けられた化け物がいるという噂を耳にする。その姿があまりにショッキングなため、ロンドン警察はエレファント・マンの見物を禁止する。

トリーブスは外科医として好奇心をそそられ、興行師のバイツの滞在場所を個人的に訪ねる。バイツは高額な見物料と引き換えに、エレファント・マンを見せてくれる。バイツの口上によると、エレファント・マンの母親が妊娠中に野生の象に襲われ、その影響で世にも醜い奇形の子供が生まれたということだった。トリーブスは、エレファント・マンのあまりに悲しい姿を見て絶句し、思わず涙を流す。

トリーブスはバイツと交渉し、病院でエレファント・マンを詳しく調べる許可をもらう。翌日、全身を頭巾で覆ったエレファント・マンが病院へやってくる。彼はジョン・メリックという名の、21才のイギリス人青年だった。トリーブスは、ジョンにいろいろと質問してみるが、彼はひどく怯えて何も答えてくれない。

診察の結果、ジョンの頭蓋骨は極度に拡張し、右上腕部は全く動かないことがわかる。背骨の歪みと皮膚のたるみもひどく、全身の90パーセントは醜い瘤で覆われていた。さらに彼は慢性気管支炎を患っており、呼吸が苦しそうだった。ただ、生殖器と左腕だけは健常で、不自由ながら歩行は可能だった。トリーブスは学会でジョン本人を見てもらい、彼の病状を報告する。トリーブスは、ジョンの知能が低いことは、むしろ救いだと思っていた。

バイツは、無断でジョンが外出したことに激昂し、彼を虐待する。サーカスの少年から知らせを受けたトリーブスは、病院の屋根裏にある隔離病棟にジョンを保護する。バイツは、商売道具のジョンを連れていくことに不満そうだったが、このままでは死ぬと言われ、仕方なくジョンをトリーブスに託す。

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映画『エレファント・マン』のあらすじ【承】

ロンドン病院の病院長は、ジョンの入院に難色を示す。トリーブスは、病院長や婦長に頭を下げ、しばらく彼を置いてくれるよう頼む。相変わらずジョンは何も喋らなかったが、清潔な環境と十分な栄養を摂ることで、健康を取り戻していく。

ジョンの容体が安定したので、病院長の面接が行われることになる。トリーブスは、ジョンを引き続き保護してもらうには、彼と意思疎通できることが重要だと考えていた。トリーブスが熱心に指導すると、ジョンは彼の言葉に反応し、教えたセリフをおうむ返しするようになる。トリーブスは病院長の同情を引くため、聖書の一節をジョンに教える。

バイツは密かに病院に忍び込み、「ジョンを返せ」とトリーブスに詰め寄る。トリーブスは、「彼はものじゃない」と反発し、病院長もトリーブスに味方してくれる。バイツは、商売道具を奪ったトリーブスのことを恨んでいた。

病院長との面接で、ジョンは教えられたセリフを繰り返す。しかし、病院長が呆れて部屋を出たのを見て、トリーブスが教えていない聖書の言葉を暗唱し始める。実は、ジョンは読み書きのできる正常な知能の持ち主で、サーカスに売られる前は、熱心に聖書を読んでいた。ジョンは「怖かったんです、許してください」と、トリーブスと病院長に詫びる。病院長も、あまりにも過酷なジョンの人生に同情し、彼を保護するために動き始める。

病院長は、新聞にジョンのことを投稿し、多くの人がその記事に胸を打たれる。有名な舞台女優のケンドールも記事を読み、いつかジョンに会ってみたいと思うようになる。一方で、病院の夜警をしている男は、ジョンを使って金儲けをしようと企む。

映画『エレファント・マン』のあらすじ【転】

その存在が公となったジョンは、隔離病棟から快適な個室へ移される。世話をまかされた婦長は、手伝いをする看護師たちに、絶対に彼の部屋には鏡を持ち込まないよう注意する。婦長たちもジョンの穏やかな人柄を知り、好意的に接するようになっていた。

トリーブスはジョンを自宅に招き、妻のアンに紹介する。レディのアンは、ジョンを見て悲鳴を上げたりせず、にこやかに握手する。ジョンは、生まれて初めて女性に優しく接してもらい、感激の涙を流す。そして、母親の写真を見せてくれる。ずっと母親に愛されたいと願ってきたジョンの悲しみを知り、アンは胸が詰まる。ジョンは、純粋で心の美しい人間だった。

ジョンは手先も器用で、病室から見える大聖堂の模型を作り始める。安定した日々を過ごせるようになり、ジョンはトリーブスにずっと聞きたかった質問をする。それは、自分の病気の治療についてだった。トリーブスは、正直に治療法がないことを告白する。巨大な頭部が心肺機能を圧迫するため、横になって寝られないジョンは、普通の人と同じようにベッドに横たわりたいと願っていた。

ジョンの病室を、ケンドールが訪ねてくる。彼女はジョンに自分の写真と『ロミオとジュリエット』の本を贈ってくれる。彼女は「あなたはエレファント・マンなんかじゃない、ロミオよ」と言って、ジョンにキスしてくれる。ジョンは、ケンドールの写真を母親の写真の横に飾る。

ケンドールがジョンを訪ねたというニュースは大きく報道され、社交界でジョンとの面会が流行する。ジョンは面会に快く応じていたが、婦長は「また彼が見世物になっている」と、トリーブスに苦言を呈す。実際、ジョンの一件でトリーブスの名前は売れ、彼のもとには患者が殺到していた。トリーブスは、自分もバイツと同じ悪人なのではないかと思い悩むようになる。ジョンは黙っていたが、夜警の男は夜な夜なジョンの部屋の窓を叩き、金を払った客に彼の姿を見せて稼いでいた。

映画『エレファント・マン』の結末・ラスト(ネタバレ)

病院内でもトリーブスに反感を抱く医師が増え、ジョンの世話を続けるかどうかの評議会が開かれる。反対派の医師は、化け物の世話など論外だと暴言を吐いていたが、その場にヴィクトリア女王から手紙を託された王妃が来たので何も言えなくなる。女王から、ジョンの保護に対するに感謝の意が表明され、ロンドン病院で正式にジョンを受け入れることが決まる。お祝いに化粧箱を贈られたジョンは、「僕の友よ、本当にありがとう」と言って、トリーブスに深く感謝する。

しかし、ジョンの幸せな時間は長くは続かなかった。ある夜、夜警の男が酔っ払いや娼婦を連れてきて、ジョンに乱暴したうえ、鏡で自分の姿を見せる。しかも客の中にはあのバイツが紛れ込んでおり、かわいそうなジョンは連れ去られてしまう。

翌朝、客たちが荒らした部屋を見て、トリーブスは愕然とする。夜警の男を問い詰めてみたが、彼もジョンの行方は知らなかった。その後もジョンは見つからず、トリーブスは途方にくれる。

再びサーカスの見世物にされてしまったジョンは、この環境に順応できず、身も心もボロボロになっていく。とうとう倒れてしまったジョンにバイツは激怒し、彼を動物の檻に閉じ込めてしまう。サーカスの仲間はジョンに同情し、密かに彼を逃がしてくれる。ジョンは、船と列車を乗り継ぎ、自力でロンドンまで帰ってくる。

ジョンは頭巾で顔を隠していたが、少年たちに追いかけられて騒ぎになり、人々に取り囲まれる。追いつめられ、頭巾を奪われたジョンは、大声で「僕は象じゃない、動物でもない、人間なんだ」と叫ぶ。警察から知らせを受けたトリーブスは、すぐにジョンを迎えにいく。

ジョンは安らかな日々を取り戻すが、体は弱りきっていた。トリーブスは、自分の不注意をジョンに詫びる。しかしジョンは、「自分を発見できてよかった、今の自分は幸せだ」と穏やかに語る。

ケンドールの招待で、ジョンは生まれて初めて劇場で観劇する。終演後、ケンドールの大切な友人として紹介されたジョンは、大勢の観客にあたたかな拍手を送られる。ジョンは心から感動し、静かに涙を流す。

その夜、ジョンは完成した大聖堂の模型にサインをし、「これで全部終わった」と言って、ベッドに積み上げられた背もたれ用の枕をどけていく。普通の人のようにベッドに横たわったジョンは、安らかな気持ちで永遠の眠りにつくのだった。

映画『エレファント・マン』の感想・評価・レビュー

かれこれ40年前の映画ですが、タイトルだけは知ってる方も多いかと思います。
奇才デヴィッド・リンチの代表作のひとつです。
ただの同情心だけでは終わらない、深い内容です。
いわゆる見世物小屋に晒されていた奇形の少年ジョンが、完全に閉された心を周囲の人々に接することで徐々に開いていくのですが、その過程がなんとも痛々しくも温かい。ジョンの「僕は人間だ!!」の叫びは刺さるものがあります。
終わり方も含みを持たせたシーンで、鑑賞後に固まりました。
若かりしアンソニー・ホプキンスも最高にハマってます。(女性 20代)


奇形した外見から”エレファント・マン”と呼ばれたジョン・メリックの生涯と、彼を取り巻く人々の話。
知性のある優しい心を持つメリックが、悪意のある周りの人々から弄ばれるところは、やはり見ていて痛烈だった。
辛辣なシーンも多いが、舞台で彼が拍手されるシーンに、彼の周りに優しい人がいてくれて良かったと思った。
最後に彼は自然と息を引き取ったのか定かではないが、本作からは得るものが沢山あった。
心にずっしりと、ストレートに訴えかけてくる作品。(女性 20代)


頭巾を被った謎の男。前情報のない人が見たら、ホラー映画だと勘違いしてしまうだろう。しかし、この映画はそうではない。障害を持って生れてきたジョン・メリックという青年の苦悩と喜びを描いた深い作品なのである。
差別や偏見、誰の中にもある善と悪、というテーマを真正面から受け止め、それをうまく表現されている。視聴者の心に刺さるシーンばかりだが、「もし、これが自分だったら……?」と想像しながら観てほしい。
ジョンを救おうとする医師・トリーヴスを若き頃のアンソニー・ホプキンスが演じているのは一見の価値あり。(男性 40代)


病により体が極度に変形してしまった青年と、彼を診察した医師の実話を元にした作品。

今作では病ではなく、女性が象に襲われたことで出産した生まれつきの奇形となっている。物語の冒頭からいきなり、不気味な音楽に、暴れる象と悲鳴を上げる女性が交互に映し出される強烈なシーンで始まる。その後、医師のフレディックとエレファントマンことジョン・メリックが出会い、意思の疎通ができるとわかるまでは、まるでホラー映画のようにドキドキさせられる。

ジョンの外見を理由に邪険にする一般的な外見を持つ人たちと、醜悪な外見ながらも心優しく、純真な心を持ったジョンが皮肉にも対比のように感じる。平凡な日常が、ジョンにとってはこの上ないほど幸せなこと。そんな姿に心が洗われる。(女性 20代)


実在の人物「ジョン・メリック」をモデルにして作られたこの作品は実話をベースにしています。言葉では簡単に言い表せない様々な感情が入り交じり、複雑な気持ちになりますが結末を知った時には、温かい気持ちになれました。
「奇形」で生まれたため、悲しい人生を送ってきた主人公ジョン。彼を見て可哀想と同情する人間もいれば、面白いと好奇の目で見て見世物にする人間もいる。彼の人生を「悲しい」ものにしたのは周りの人間で、そこから彼を救うように「幸せ」を教えてくれたのも周りの人間でした。
出会う人によって「人生」は大きく変わるのだと思い知らされる作品です。(女性 30代)


静かだが衝撃的なラストシーンは本当に色々なことを考えさせられる。いつから、とか、何で、とか、いろんな言葉が浮かんでは消え、だが決して彼の気持ちを想像だけでわかったように語るような真似だけはしたくないと思った。
初めは医者と患者という関係でしかなかったふたりが、ゆっくりと打ち解け、友人となっていく過程が非常に丁寧に描かれており、何度も心が動かされた。若かりしアンソニー・ホプキンスがめちゃくちゃ格好いい。(女性 30代)


特異な見た目のため見世物にされ、心を閉ざし愚者を演じてきたものの、一人の医者と出会い希望を見出す。美しい女性と接し涙を流すなど、ジョン・エリックの本来持つ純粋な心を知ると胸が痛くなる。彼を面白がる人間の行動は、演技と分かっていても怒りがこみあげてくる。ただ、「エレファント・マン」という作品に興味を抱いた自分自身にも、そういった醜い心があるのかもしれない。非常に複雑な気持ちになった。作品を通して感じた怒りや尊さは胸に刻みたいと思う。(男性 20代)


勝手に恐ろしいストーリーを想像してたけど、実際はハートフルで衝撃の実話だった。デヴィッド・リンチ作品にしてはかなり観やすいのも特徴。アンソニー・ホプキンスの若い頃も見れるから見る価値あり。

「プラトーン」や「アメリ」でも使用されたサミュエル・バーバーの「Adagio for Strings」が大好きなのだが、まさかこの映画でも使われてたとは!あの音楽の効果って本当凄い。色々な感情が伝わってくるというか、言葉で表現しきれないことを表現してるあの最後のシーンが凄く良かった。(女性 20代)

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