この記事では、映画『ファンタスティック・プラネット』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ファンタスティック・プラネット』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『ファンタスティック・プラネット』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 1973年 |
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上映時間 | 73分 |
ジャンル | アニメ SF ファンタジー |
監督 | ルネ・ラルー |
キャスト | なし |
製作国 | フランス チェコ |
映画『ファンタスティック・プラネット』の登場人物(キャスト)
- テール(少年期:エリック・ボージン / 大人:ジーン・ヴァルモント)
- 主人公。オム族の少年で、赤ん坊の頃ドラーグ人に母を殺される。ティバに拾われ、愛玩具として育てられる。ティバと共に学習し、後にオム族独立の英雄となる。
- ティバ(ジェニファー・ドレイク)
- ドラーグ人の少女。オム族の赤子を拾い、テールと名付け可愛がる。ドラーグ人の不気味な容姿(青い巨体・赤い目・ヒレのような耳)とは裏腹に、素直な性格。
- タージェ知事(ジェラルド・ハーンナンデス)
- ティバの父親で、都市知事。気難しく生真面目な性格。ティバが、テールと学習することをよく思わない。
映画『ファンタスティック・プラネット』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『ファンタスティック・プラネット』のあらすじ【起】
ある銀河の惑星イガム。青い体に赤目の巨人族・ドラーグ人が統治し、人間のようなオム族は下等民族として扱われていた。ある日、オム族の女性は赤子を抱いて、ドラーグ人のチンピラから逃げ惑っていた。チンピラ共は、女性をいたぶり面白がる。女性は、赤子を残して死んでしまう。そこに、ドラーグ人少女が通りかかって赤子を見つける。少女ティバは小さな赤子を気に入り、そのまま家に連れて帰る。赤子は、「テール」と名付けられ、拘束用の首輪をはめられる。そして、ティバのペットとして育つのだった。
イガムでの一週間は、オム人にとっての1年であった。テールはみるみるうちに成長し、あっという間に自我の芽生えた少年になる。ティバとは、悪戯を仕掛けてじゃれ合うほど仲が良かった。ティバは、少年らしくなったテールに愛情をより注ぐ。
ティバは教育を受ける年齢になり、レシーバーという遠隔受信機を用いてドラーグ人の歴史を学ぶ。傍らのテールも共に学び、テールは一生記憶に残るとされる知識を吸収した。
映画『ファンタスティック・プラネット』のあらすじ【承】
テールの知的好奇心は、どんどん膨らむ一方だ。ティバがいない隙に、テールはレシーバーを自らの首輪に接続して知性を磨く。ティバの父タージェは、それをよく思わずときに邪魔をした。
ティバは思春期に差し掛かり、テール(ペット)と遊ばなくなる。一方、テールも成人並に知能を高め、時機を見てドラーグ人の住まいから脱走する。初めての外の世界で、テールは様々な危機に晒される。そんな彼を助けたのは、オム族の娘。彼女に導かれ、テールはオム族の秘密の住処―「廃園の大木」へと足を踏み入れた。オム族は、当初テールを馬鹿にするも、彼の高い知性を目にして評価を改める。テールは、何とかオム族に置いてもらえることになった。
その晩。テールは寝付けず、外に繰り出す。オム人の成人男女が、不気味な建造物をよじ登って謎の光り物を口にしていた。建造物から出てきた女性たちは、次々と裸になり、男達を魅了する。そして、男女はつがいになって契りを交わした。不可思議な光景を、テールは冷めた目で眺めていた。
何人かのオム人たちは、テールが持ってきたレシーバーで自らも知識を吸収しようとしていた。しかし、一派のボスが妨害して、部族間で仲間割れが起きる。テールは、衝突の要因として決闘に駆り出される。最初は攻撃されるばかりだったが、相手を打ち負かす。テールに否定的だった一部族のボスは、テールを認め、晴れてテールはオム族に迎えられる。
映画『ファンタスティック・プラネット』のあらすじ【転】
テールは徐々にオム人らしくなり、オム族たちも一斉にレシーバーでの学習に勤しんだ。テールをオム族に導いた娘は、テールの博識さに惹かれており、二人は恋仲となっていた。
ドラーグ人が、「人間狩り」と称して「人類絶滅大作戦」を計画する。危険を察知したオム族は、大木に立てこもる方策を取る。テールは、様子を知るために一人住処を抜け出す。しかし、気の緩みか、木の穴族という盗賊に捕らわれてしまう。テールは、木の穴族の女族長にドラーグ人がオム人(人類)を壊滅しに来る、と告げる。だが、聞き入れてもらえず、その日は投獄されてしまった。
次の日、「人間狩り」が開始される。人間たちは、毒ガスのようなものを撒かれ、次々と息絶えていく。テールは、女族長に縄を解かれ、共に逃げ出す。ドラーグ人を人類の元へ導くのは、ガスマスクをつけた「人間」(愛玩具)だった。
オム族も命を奪われる中、テールの恋人や族長はまだ生存していた。そこに、オム族たちの隠れ場所を、ドラーグ人が通り過ぎる。オム族に気付いたドラーグ人は、躊躇なくオム族を踏み殺し始める。人々は屈さず、ドラーグ人に立ち向かった。二人のうち、一人のドラーグ人が捕らわれ死亡した。しかし、闘いの中で、オム族のボスが命を落としてしまっていた。
女族長が、人間たちをロケットの墓場に案内する。そこは、ドラーグ人が立ち寄らない場所で、隠れるには最適だった。一方、ドラーグ人会議では、各県の知事たちが人間の知能の高さや順応性、繁殖ぶりに懸念を示した。そして、更なる人間狩りの強化を訴える。タージェだけは、ドラーグ人が人類に惨たらしい仕打ちを犯してきたことを顧みていた。
映画『ファンタスティック・プラネット』の結末・ラスト(ネタバレ)
3つの季節が巡った。人間の感覚で言えば、15年後。人類は、ロケットの墓場に地下都市を建設していた。大勢の人間が、地下都市に流れ込み住み着いた。しかし、彼らの最終目的地は「野性の惑星」だった。レシーバーで磨いた知恵を使って、人々は宇宙船を人間用に改良する。人類の指揮を執っているのは、成人したテールだ。
地上では、ドラーグ人によって放たれた探索機(ドローン)が人類の住処を探していた。地下都市に侵入すると、ドローンは宇宙船を発見する。人々は、建物に身を潜めた。ドローンは、攻撃も仕掛けず地上へ戻った。
テールらの危機を救った女族長は老衰で、宇宙船に同乗することは難しかった。新しい惑星で平和な人類の世界を創るよう言うと、女族長は息を引き取る。その直後、ドローンが地下都市に攻め入り、人間を次々に捕獲する。同タイミングで、宇宙船は、とうとうイガムから飛び立った。
イガムの衛星―月に酷似した星に着地する。宇宙船を降りた人々が目にしたのは、首から上がない巨像だった。人々はそこで、ドラーグ人の秘密を知る。ドラーグ人は一日の大半を瞑想に費やすが、この衛星に意識を飛ばして、異星人と交流する。その異星人と夫婦になることで、生命エネルギーを得、ドラーグ人の種を保存していたのだ。男女の形をした巨像は、宇宙人の意識体を首に載せて、踊り始める。何とも不気味な光景を目撃した後、人間の宇宙船は衛星を離れた。ドラーグ人は、瞑想中の状態が一番の弱点だった。それに気付いた人類は、宇宙船から巨像を次々に破壊する。結果、ドラーグ人は絶滅の危機に追いやられ、人間狩りは収束した。
戦争終結後、ドラーグ人と人類の間で和平交渉が取られる。ドラーグ人は人間の知恵を逆輸入し、自身の生活向上に役立てた。人類は、イガムと衛星の付近に人工の惑星を創る―それはテール(地球)と呼ばれている。
映画『ファンタスティック・プラネット』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
一見すると幻想的なアニメーション映画ですが、その内側には人間社会への鋭い風刺が込められています。ドラッグたちに飼われる人類=オムたちの姿は、植民地支配や動物実験を想起させ、人間が支配される立場になったときの脆さや恐怖が鮮明に描かれていました。ラストの共存という結末には希望を感じました。(30代 男性)
独特なアートスタイルにまず引き込まれました。シュルレアリスティックな映像世界は夢の中にいるようで、怖くも美しい。内容は哲学的で、支配する側とされる側、知性のあり方、そして人間の尊厳について考えさせられました。絵本のような絵柄に騙されず、大人にこそ観てほしい作品です。(20代 女性)
この映画はまさに芸術。ストーリー以上に、ビジュアルと音楽が異世界への没入感を高めてくれます。ドラッグの巨大さと静けさに対して、人間たちの必死さがとても対照的で、それが逆にとてもリアル。オムたちの知識による逆転劇は痛快で、人間の可能性と恐ろしさを同時に感じさせてくれました。(40代 女性)
70年代にこれを作ったという事実がすごい。アニメーションの技術はもちろん、テーマ性が深すぎて驚いた。巨大なドラッグたちの無関心な冷酷さ、オムたちの必死の抵抗、そして最後の“共存”という結末に、現代の社会問題にもつながる普遍的なメッセージを感じました。何度でも見返したい映画です。(30代 男性)
学校で紹介されて観ましたが、思っていた以上に難しい映画でした。でも、支配と自由、文明の進化とは何かを考えるきっかけになりました。特に人間がドラッグに飼われるペットとして描かれているのがショックで、人間の立場が逆転したときの無力さを感じた。ビジュアルが独特で怖さもあるけど、引き込まれます。(10代 女性)
アニメーションとしても、社会風刺としても非常に完成度が高い作品でした。ドラッグたちの精神世界や学習方法も興味深く、彼らが「進化の先」にある存在として描かれている点が皮肉で印象的でした。人間が単なる動物として扱われることで、普段考えない“人間らしさ”について深く考えさせられました。(50代 男性)
子どもの頃に観たときは怖い映画という印象だったけど、大人になって改めて観たらそのメッセージ性に圧倒された。特に「教育」が重要な鍵として描かれているところが印象的。支配される側でも知識を持つことで未来を切り開けるというメッセージは、今の社会にも通じるものがあると思います。(40代 女性)
音楽と映像の融合が素晴らしい作品でした。トリップ感のあるBGMと、コラージュ的なアニメの動きがマッチしていて、観ているだけで異世界を旅している気分に。ストーリーの主軸は階級差別のメタファーとしても機能していて、見た目に反して非常にシリアス。観終わったあとも余韻が続く作品です。(20代 男性)
この作品を観て、人間とは何か、知性とは何かという問いがずっと頭に残っています。ドラッグが高度な精神世界を持っていても、人間への扱いは無機質で残酷。それに対するオムたちの反乱は、単なる暴力ではなく知識による逆転劇。無言の力を描くことで、言葉以上の強さを感じました。(50代 女性)
芸術映画としても、哲学的アニメとしても傑作だと思います。支配・教育・共存というテーマを、独特なビジュアルと静かな語り口で表現しているのが印象的でした。短い上映時間ながら、語りたくなる要素が多すぎる。最終的にオムとドラッグが共に生きる道を選ぶラストには、希望と課題の両方を感じました。(30代 女性)
映画『ファンタスティック・プラネット』を見た人におすすめの映画5選
2001年宇宙の旅
この映画を一言で表すと?
人類の起源と進化を壮大に描いた、映像詩の金字塔。
どんな話?
神秘的な黒いモノリスが人類の進化に関わっているという謎を軸に、宇宙探査に出た人類とAIとの対峙、そして宇宙的存在への接触を描く壮大なサイエンスフィクション。言葉少なに、視覚で物語る傑作。
ここがおすすめ!
映像と音楽によって語られる抽象的で哲学的な世界観は、『ファンタスティック・プラネット』と共鳴します。観る者の解釈を許す自由さと、時代を超えた美しさを持つ究極のSF映画です。
アニマトリックス
この映画を一言で表すと?
世界中の映像作家が描く、マトリックスの深層世界。
どんな話?
『マトリックス』の世界を拡張する短編アニメーション集。機械との戦争の起源、人間とAIの関係性、仮想現実の限界など、哲学的かつスタイリッシュに語られるオムニバス形式の野心作。
ここがおすすめ!
多様なアニメーションスタイルとテーマが融合した濃密な世界観。人間と機械、現実と幻想といった『ファンタスティック・プラネット』に通じる問題意識が散りばめられています。視覚的にも刺激的です。
パプリカ
この映画を一言で表すと?
夢と現実が溶け合う、想像力の迷宮へようこそ。
どんな話?
他人の夢に入り込める装置をめぐって、現実と夢が混濁する世界で起こる不可解な事件。主人公・千葉敦子が“パプリカ”として夢の中を駆け巡り、真実に迫るサイコロジカル・アニメーション。
ここがおすすめ!
異世界的なビジュアルと、潜在意識を描くテーマは『ファンタスティック・プラネット』の持つ幻想性と共通。色彩や構成の斬新さに圧倒され、何度観ても新たな発見がある深層アニメです。
メトロポリス(2001年)
この映画を一言で表すと?
未来都市に息づく人間とロボットの切ないドラマ。
どんな話?
階級社会が極端に分断された未来都市メトロポリスを舞台に、人間とロボット、支配と反抗、愛と破壊を描いた壮大なドラマ。アトムの生みの親・手塚治虫の原作をリメイクした傑作アニメ。
ここがおすすめ!
手描きの温かさとCGの融合で描かれるビジュアルは、幻想的かつレトロフューチャー。哲学的テーマと社会風刺が共鳴し、『ファンタスティック・プラネット』のように“観る者に問いかける”作品です。
イエロー・サブマリン
この映画を一言で表すと?
サイケでカラフルなビートルズの音楽的映像体験。
どんな話?
愛と音楽が支配された海底の国“ペパーランド”を救うため、ビートルズが音楽の力で立ち向かう冒険を描く。ポップアート全開のシュールなアニメーションで、音楽と視覚の融合を体験できる。
ここがおすすめ!
アートとしても映画としても評価の高い、音楽×アニメの前衛的挑戦作。『ファンタスティック・プラネット』のシュールなアート性に惹かれた人なら、確実にこの作品にも魅了されるはずです。
みんなの感想・レビュー
私も、最近になってNHKBSで見ましたが、さすが凄い映画でしたーすっかりはまって、原作の原文が全文読めるサイトを見つけ、それを全てWordに移して自動翻訳したのを読んでいます。思いの外、映画、原作をジブリ張りに変更しているのが分りました。ですが、映画・原作共に感動する所はティバがテールを、大事している姿です。
ドラーグ族にしても、オム族にしても小さい時は、お互い見えない絆を感じ、離れたくない思いを持っているんですねーそういう思いを生涯大事に持ち続けることが、相互理解につながると思います・・・ねぇ、ティバのお父さん。