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映画『ファイブ・イージー・ピーセス』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『ファイブ・イージー・ピーセス』の概要:現実と向き合うことができず、世間体や自分へ苦悩する男をジャック・ニコルソンが熱演するアメリカンニューシネマの金字塔。これまで現実から逃げ続けてきた男が将来を考えていなかった恋人の妊娠、やりたくもない仕事、不仲な父親の体調不良にどう対応していくのかが見どころだ。

映画『ファイブ・イージー・ピーセス』の作品情報

ファイブ・イージー・ピーセス

製作年:1979年
上映時間:98分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ボブ・ラフェルソン
キャスト:ジャック・ニコルソン、カレン・ブラック、スーザン・アンスパッチ、ロイス・スミス etc

映画『ファイブ・イージー・ピーセス』の登場人物(キャスト)

ボビー / ロバート(ジャック・ニコルソン)
何事にも熱意を示せず、ただ諾々と日々を過ごす音楽家一家の次男坊。石油採掘場で日雇いの仕事をしては酒を煽っている。同棲している恋人レイの妊娠をきっかけに、何もかも捨てて逃げてしまおうと自暴自棄になる。
レイ(カレン・ブラック)
ボビーの恋人。情緒不安定なボビーに、妊娠したことを直接話せずにいた。「私ほど愛してくれる女はいないわ」と献身的にボビーへ寄り添うが、ボビー同様感情の起伏が激しいこととおしゃべりが過ぎるのが玉に瑕。
エルトン(ビリー・グリーン・ブッシュ)
石油採掘場で共に働くボビーの同僚。妻ストーニーや子供も交えて家族ぐるみの付き合いをしている。レイから妊娠したことを打ち明けられ、ボビーに責任を取るよう説得する。
ティタ(ロイス・スミス)
ボビーの姉。ピアノ奏者。父と兄、兄の弟子兼恋人とワシントンの離島に暮らしている。ボビーに父の体調不良を伝え、見舞いに来るよう諭す。
キャサリン(スーザン・アイスパッチ)
ボビーの兄カールの弟子であり恋人。趣味は音楽と乗馬。帰省したボビーと関係を持ってしまうが、カールへの愛を再確認しボビーを振る。
カール(ラルフ・ウェイト)
ボビーの兄。バイオリン奏者だが首がむち打ちになってしまい、キャサリンに支えられながら生活している。

映画『ファイブ・イージー・ピーセス』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『ファイブ・イージー・ピーセス』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ファイブ・イージー・ピーセス』のあらすじ【起】

厳格な音楽一家に生まれたボビーは、石油の採掘場で働きながらその日暮らしをしていた。ボビーは仕事を終え帰宅するなり酒を煽る。同棲している恋人レイにピアノを教えるようせがまれるが、その約束は長い間果たされていないようだった。ボビーはレイとの会話を適当に切り上げ、友人であるエルトンとストーニー夫婦を誘いボーリングへ向かう。ボーリング場でボビーは、ボーリングが上手でないレイを貶した。人前で馬鹿にされたショックでレイは機嫌を損ね、車の中に籠城する。なんとか仲直りはしたが、この2人はいつも喧嘩が絶えないらしい。

ボビーは翌日も退屈な仕事へ向かう。ボビーは仕事を終えレイが働くダイナーに顔を出したが、彼女は今日も機嫌が悪いようだ。そんなレイを連れボビーはエルトン夫婦宅へと向かった。エルトンとストーニーの間には幼い子供がおり、レイは子供をあやしている内に大分機嫌が直ったようだ。エルトンが子供を持つ楽しさを伝えると、ボビーは「子供ができたらしまいだ」と嘆く。

翌日、ボビーはエルトンからレイの妊娠を聞かされる。昨夜ボビーの聞いていない所で、レイはエルトンに妊娠したことを伝えていたようだ。ボビーは戸惑いと怒りで我を忘れ、勢いに任せて仕事を辞めてしまった。

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映画『ファイブ・イージー・ピーセス』のあらすじ【承】

ボビーは自分とレイの間に子供ができたという事実から目を背け、仕事を辞めた翌日ピアノ奏者の姉ティタの元を訪れた。ボビーは姉にレイの妊娠は告げず、姉の近況報告だけを聞く。すると、姉や兄、兄の弟子と同居している父親の体調が思わしくないと言う。最近になって倒れてしまい、快復の見込みはないらしい。ボビーは父親の危機からも逃げようとしたが、姉の説得もあって見舞いに行くことにした。

ボビーが姉の元から帰宅すると、レイは床に伏せっていた。ボビーは「元々将来の約束などしていなかっただろう。金なら送るよ」と言い残し1人実家に戻ろうとしたが、最後の情が捨てきれずレイを連れて実家のあるワシントンを目指した。

ワシントンへ向かう道中、ボビーとレイは車両が横転事故を起こしている現場に遭遇する。そこで、車が駄目になったパームとテリーという2人の女性を乗せる。2人はアラスカを目指しているというので、途中まで4人で乗り合った。

パームとテリーを途中まで乗せてワシントンに辿り着いたボビーとレイは、モーテルに宿泊した。そこでボビーは、先に父親の様子を見てくるから、2日間モーテルで待っていてくれとレイに告げる。レイは不満ありげだったが、2日だけならと大人しくモーテルで待機する。

映画『ファイブ・イージー・ピーセス』のあらすじ【転】

ボビーが実家へ帰ると、父親は介護士を付けられ車椅子での生活を送っていた。認知症も激しく進行しているようで、ボビーのことをハッキリと認識できていないようだった。さらに兄のカールもむち打ちになっていて、首にコルセットを捲き弟子であり恋人でもあるキャサリンに支えられながら生活していた。3年ぶりに帰郷して、初めて目にする家族の現状にボビーはショックを隠し切れない。

そんな中、家族のために何もできないボビーはあろうことか兄カールの恋人キャサリンと体を重ねてしまう。ボビーが情緒不安定で暴力的であることを感じ取っていたキャサリンは一夜限りの関係と割り切るが、ボビーの方はレイに嫌気が差していたのでキャサリンに鞍替えしようと企んでいた。

ボビーが実家に着いて2週間後、親戚の集まりがあるためようやくレイも家へ招かれた。レイはやっと1人きりでなくなったこともあり、いつもより饒舌だ。そんなおしゃべりなレイに苛ついたボビーはキャサリンと話し合おうとリビングを後にした。

映画『ファイブ・イージー・ピーセス』の結末・ラスト(ネタバレ)

親戚達が集まった夜、ボビーはキャサリンと話し合う機会が持てなかったため翌日2人きりで話すことに。ボビーはキャサリンへの正直な気持ちを告白した。将来のことを約束したいと言うのだ。キャサリンはその気持ちに応えられないと断るが、ボビーも引かない。ついにはキャサリンから「あなたは変わり者よ。自分に愛も尊敬も持っていない」と呆れられ、結婚したいというボビーの気持ちは玉砕となった。

キャサリンに振られたボビーは、車椅子の父親を連れ敷地内にある湖の畔へとやってきた。ボビーはこれまでの自分勝手な行いを詫びるが、結果的に父と自分は分かり合えないという結論を独り言ちる。父親はそれらの言葉を認識できているのかどうか、頷くこともなくただじっと聞いている。

キャサリンへ想いを告げ、父への謝罪が済んだボビーはレイと共に実家を後にした。帰り道でも2人は喧嘩になってしまう。途中、ガソリンを入れるために立ち寄ったスタンドでボビーは何かを決意する。レイが買い出しに行っている間を見計らって、長距離トラックの運転手をヒッチハイクしたのだ。ボビーはトラックの助手席に乗り込むと、レイと暮らしている街とは反対方向に向かって消えていった。取り残されたレイは1人、ボビーを探してスタンドの敷地内をうろつくのだった。

映画『ファイブ・イージー・ピーセス』の感想・評価・レビュー

ジャック・ニコルソン演じる無責任な男の動向が、彼ならではの表現力で表現されていてリアリティを感じる。こんな男とは出会いたくないと本気で嫌になった。最後まで自分勝手に生きるのは、最早清々しいとさえ思わせるクズ男っぷりだった。

主人公ボビーの勝手気儘さもさることながら、その恋人レイの頭の悪さも甚だ問題だろう。類は友を呼ぶというヤツだろうか。妊娠して捨てられるレイには心から同情するが、彼女に一切の非が無いかと言われると閉口してしまう。「自由の国アメリカ」の自由をどう捉えるかは、観た人の感性に委ねられるだろう。(MIHOシネマ編集部)


アメリカン・ニューシネマの中ではとびっきりに共感でき、リアリズムが強烈な作品だった。最小限のセリフで描かれた人物像が独特で、やり場のない鬱憤と向き合えない主人公ボビーの選択も納得がいく。

何からも逃げたいことはあるし、家族だから愛があるだなんて嘘だと思うこともある。そう言った心のモヤモヤを代弁してくれるのがこの作品の良さで、正にあの時代の作品だと思った。ラストシーンはシュールながら心に残るインパクトがある。(女性 20代)

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