映画『フリーダム・ライターズ』の概要:新米教師のエリンは、問題児を抱える高校に就職する。エリンが担当するのは、犯罪に手を染めた生徒が集うクラスだった。エリンの真っすぐな姿勢は、生徒たちの心の強張りを解いていく。実話に基づいたスクールグラフィティ。
映画『フリーダム・ライターズ』の作品情報
上映時間:123分
ジャンル:ヒューマンドラマ、青春
監督:リチャード・ラグラヴェネーズ
キャスト:ヒラリー・スワンク、パトリック・デンプシー、スコット・グレン、イメルダ・スタウントン etc
映画『フリーダム・ライターズ』の登場人物(キャスト)
- エリン・グルーウェル(ヒラリー・スワンク)
- 新米女性教師。問題児が集う1年生クラスの国語を担当。お嬢様育ちで、正義感が強く意欲に溢れている。生徒たちの扱いに手を焼くが、彼らと共に成長していく。
- スティーヴ・グルーウェル(スコット・グレン)
- エリンの父で実業家。若い頃は社会運動に積極的に参加し、エリンの問題意識を育てた。エリンが偏差値の低い高校に就職したことを懸念しており、働きぶりをあまり評価しない。
- スコット・ケイシー(パトリック・デンプシー)
- エリンの夫。建築家を目指しているが、ビジネスマンとして働く。エリンの教職に寛容的で理解を示していたが、教育に夢中になる妻と徐々に心の距離が空く。
- マーガレット・キャンベル(イメルダ・スタウントン)
- ウィルソン高校の国語科主任。エリンにとっては直属の上司だが、従来型の教師で規律を重んじる。自由なエリンが型破りに見え、度々意見が衝突する。
- アンドレ・ブライアント(マリオ)
- 1年のアフリカ系男子生徒。冷静でどこか冷めている。クラスでは一匹狼で、口が悪いために他の生徒とぶつかりやすい。
- エバ・ベニテズ(エイプリル・リー・エルナンデス)
- メキシコ系の女子生徒。父親がギャングとの関わりで逮捕され、自身もやくざの男たちとつるんでいる。意志が強く、最初はエリンに反抗的。
- ベン・サミュエルズ(ハンター・パリッシュ)
- 203クラスで唯一の白人の男子生徒。異人種を苦手とし、一人で行動している。授業には真面目に出席するが、理解の速度が他人よりゆっくりである。
- シンディ・ンゴール(ジャクリーン・ンガーン)
- アジア系の女子生徒。エバとは不仲で、お互いに何かと意識し合う。
- ティト(ガブリエル・チャバリア)
- ユダヤ系の男子生徒。ウォールアートが趣味で、学校の壁に落書きをする。捻くれているが根は素直。
- マーカス(ジェイソン・フィン)
- アフリカ系男子生徒。少年の頃に少年院に送られ、母親とは離れて暮らす。誠実で親思いであり、エリンとの交流で特に変化し勉学に意欲を見せる。
映画『フリーダム・ライターズ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『フリーダム・ライターズ』のあらすじ【起】
1994年、アメリカ・ロスのロングビーチ。この町は日夜ギャング間の抗争が絶えず、10代の子どもでさえその一員であった。同地域のウィルソン高校に、新人教師エリンが赴任する。エリンが担当する1年クラスには、少数派民族の子どもたちが在籍していた。エリンは初授業に意気込むが、HRが始まった途端に生徒間で喧嘩が勃発する。さらに生徒たちはエリンの話を聞かず、雑談を始めてしまう始末だった。
エリンの担当クラス「203」教室には、毎年触法少年や生活上何らかの問題を抱えた生徒が集められた。半年も経てば全員が不登校になるという現状に、エリンはすっかり薔薇色の未来を打ち砕かれる。休憩時間には、生徒たちは人種別のグループを形成して、敵対するグループと度々揉めていた。
エリンは夫スコットと共に、父スティーヴと会食する。仕事の悩みを打ち明けると、スティーヴは年収単体を気にして、教師など辞めろと言い出した。父の的外れな意見は脇に置き、エリンは203の生徒たちと根気強く向き合うことにする。203は人種グループごとに席が分かれていたが、エリンは強制的に席替えを実行した。しかし、生徒たちの反応は否定的で、クラスの出席数は徐々に減っていく。
映画『フリーダム・ライターズ』のあらすじ【承】
夜間のコンビニ。生徒たちがたむろしていたが、エバのギャング仲間がコンビニに銃を発砲する。ギャングは特定の男子生徒を狙っていたが、その弾は店にいたシンディの友人に当たり、彼は命を落とした。ギャングの標的である男子生徒が殺害容疑をかけられ、逮捕される。エバは実質的に目撃者となったが、発砲者は彼氏であるために沈黙を通した。
授業では、ティトがジャマルに差別的な絵を回して侮辱した。事態に気付いたエリンは、ホロコーストを企てたヒトラーの話をする。ホロコーストのことを知らない生徒らを見て、エリンは教授内容を見直すことにする。そんなエリンの決意に、保守的なキャンベルは、203の子どもが知的になるはずがないと非協力的だった。
エリンはユニークな授業を通して、生徒たちの複雑な背景を知った。そして、生徒全員に日記帳を渡して、何でもいいから毎日書き留めるよう言う。保護者会の日には203の親子は誰も来なかったが、日記帳は生徒の半数が提出していた。それらには、虐待や犯罪の裏に隠された、子どもの心の叫びが記されていた。
エリンは心が突き動かされ、生徒たちに本を買ってやりたいと思う。しかし、エリンに批判的な学校側は資金提供には消極的だった。エリンは、副業することで生徒たちへの教材資金を稼ぎだす。家庭では、エリンの仕事に寛容的だったスコットも、徐々にエリンのすることに疑問を呈するようになった。
映画『フリーダム・ライターズ』のあらすじ【転】
春学期になり、エリンは203では初めての課外授業を行う。スティーヴの協力を得て、生徒たちはホロコースト博物館を見学した。生徒たちは、幼くして命を落とした被害者に心を寄せ、生存者の話を聞くことで自身の世界観を広げる。
生徒たちは誰も落第することなく、無事に進級する。人種間の対立もなくなり、生徒たちはクラスとして団結し始めていた。エリンは「ミスG」と呼ばれ、すっかり生徒たちの人気者だ。生徒たちの中には、203教室を心の居場所とする者まで出た。
生徒たちは課題としてアンネの日記を読む。生徒たちは各々強い影響を受け、マーカスがアンネの関係者ヒースを高校に招きたいと言った。203の生徒たちは、ヒース招待の資金を集めるために募金活動を行う。高校でチャリティフェスを催し、生徒たちは一年前とは違う明るい表情で来客をもてなした。この活動は社会的にも注目され、企業から多額の寄付を受ける。
努力の甲斐あってか、オランダからヒース本人の来米が決定した。マーカスが学校のガイドを担当し、ヒースは生徒たちにアンネの記憶を語る。ヒースの体験談は、生徒たちの心に勇気の灯をともした。
エバは、高校生殺害事件の裁判に証人として立つ。真の犯人は自身の彼氏だ、とエバはシンディも見守る中真実を述べた。エバは勇気を出したが、仲間のギャングに命を狙われる。エバは襲撃を避けるため家族と別居することにし、エリンは彼女に寄り添う。シンディは、エバの勇気を称賛して二人は和解した。
映画『フリーダム・ライターズ』の結末・ラスト(ネタバレ)
スコットは、エリンとの離婚を決意し家を出る。エリンが仕事に没頭し、自分に気が向かないのが耐えられなかった。スコットの心境の変化を知らなかったエリンは、ひどく落胆する。
秋学期になると、エリンは若手のために来年は異動になることをほのめかす。生徒たちは激しく動揺し、エリンの異動には強く反対した。エリンは離婚問題で傷心だったが、スティーヴの励ましもあり教育委員会に立ち向かう。キャンベルたちを相手に、エリンの3年間継続しての203担当をめぐって議論が始まった。
エリンに勝ち目はないようだった。エリンは、最後のプロジェクトとして生徒たちの日記を書籍化することを提案する。題名は『フリーダム・ライダーズ』。教育委員長との対面の日。キャンベルはエリンの揚げ足を取るばかりだ。が、委員長は203の生徒たちの変化を知っており、エリンの203担当の継続を認めた。
その後、203教室からは初の大学進学者も出、エリンは大学で教鞭もとった。さらにエリンは、たくさんの子どもたちに学ぶ機会を与えるため、「フリーダム・ライダーズ」基金を設立する。
映画『フリーダム・ライターズ』の感想・評価・レビュー
差別撤回後の荒れる教室、衝突し合う生徒。一人の新米教師が彼らと向き合う。彼女との出会いで生徒たちが成長する過程が如実に描かれている。自分たちの置かれた環境を客観的に目の当たりにさせ、正しいことを自覚させる。人種間の抗争の虚しさを、かつてのユダヤ人虐殺から学ぶ授業は素晴らしい。教室という狭い空間ではあるものの、人種差別の意識が完全に取り払われた。物語の最初と最後で生徒の目つきが全く異なって見える。“学ぶ”ということは間違いなく自身の財産になるのだろう。(男性 20代)
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