映画『フリーズ・ミー』の概要:5年前、雪に降りしきる日に3人の男にレイプされた過去を持つちひろ。社会人となり、恋人ができた今でも彼女の心には雪が降り注いでいる。ある日、かつて強姦したうちの1人が彼女の元へ現れたことから全ては狂い始める。
映画『フリーズ・ミー』の作品情報
上映時間:101分
ジャンル:サスペンス
監督:石井隆
キャスト:井上晴美、鶴見辰吾、北村一輝、松岡俊介 etc
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映画『フリーズ・ミー』の登場人物(キャスト)
- 山崎ちひろ(井上晴美)
- 強姦された過去を持ち、心の傷を抱えたままOLとして働く女性。だが、結婚を誓った仲の恋人・野上との生活を通し少しずつ当時の悪夢から解放されつつあった。そんな中、彼女を犯したうちの1人・広河が姿を現したことで彼女はその手を罪に染め始める。
- 広河昇(北村一輝)
- ちひろの幼馴染だが、昔からヤクザと交流を持つような典型的チンピラのようである。かつての強姦仲間達で、ちひろの元へ尋ねるよう提案したのは彼だった。言動から倫理観に至るまで、とにかく粗暴で、非常に性質の悪い男。
- 小島篤(鶴見辰吾)
- ちひろを犯した男の内の1人で、2番目に彼女の元へ訪ねてくる男。一見するとサラリーマン風で、敬語を使い腰の低そうな態度。唯一ちひろに当時のことを謝るが誠意はなく、裏には図々しさや凶暴さが見え隠れする。酒乱なのか、勝手にちひろの家で酒を飲み荒らす等、素行も悪い。
- 馬場実(松岡俊介)
- 最後にちひろの元へとやってくる、強姦犯のうちの1人。いかにもヤクザといった風貌と言動で、女相手にも構わず容赦ない暴力を振るう。笑いながら平然とちひろを殴り飛ばす等、どこか幼稚な怖さが殊更に醜悪さを際立たせている。
- 野上祐介(松岡俊介)
- ちひろの恋人でもあり婚約者。彼女とは職場恋愛で結ばれたようで、互いに幸せな生活を送っていた。ちひろの過去については、当然知らない。
映画『フリーズ・ミー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『フリーズ・ミー』のあらすじ【起】
ある雪の夜、3人の男から強姦されたちひろ。5年の月日が経ち、OLとなった彼女。同じ会社に勤める野上という恋人もできたが、その過去は未だに時々彼女の心に雪を降らす。当時の恐怖からか、アパートの自室の扉や窓を幾重にもロックしているようだ。
夏場に差し掛かっているとある日、ゴミ出しのため玄関へと向かうと、チンピラ風の男が1人立っている。男を見るなりちひろの顔色は一変して戦慄し、また、彼女を見つけた男は馴れ馴れしい様子で名を呼びながらヘラヘラと近づいてくる。慌ててエレベーターへと逃走するちひろを、別の住人が入れ違いざまに開けたオートロックの扉を越え、追いかけてくる男。男の名は広河、ちひろの幼馴染でもあり、同時に彼女をレイプした犯人のうちの1人だった――間一髪の所でエレベーターへと駆け込むちひろだったが、広河は階段で彼女を猛追し無理やり部屋へ入り込む。怯え竦み、必死に逃げ惑う彼女を面白がるよう追い詰め、挙句に勝手に冷蔵庫を開け酒を飲み、「一発ヤった仲でーす」とせせら笑う。警察を呼ぶ、と訴えるちひろにも頓着せず、目の前で突如全裸になったかと思えば断りもなく風呂を使う広河。シャワーを浴びながら「もうすぐ先輩達も来るから」と語るその声に、ちひろの脳裏に強姦された時の生々しい記憶が甦る。隙を見て外へ出ようとしたちひろを乱暴に捕まえ、更にはその時の写真をバラまくと脅迫する。それならそれで全部警察に言いつける、と言い返す彼女に、広河は部屋を出ると近隣の部屋のポストへ次々写真を投函していく。慌てて写真を回収し、もはや抗えないと諦めきったよう、部屋へと引き返すちひろの姿がそこにはあった。
部屋の中では再び広河にレイプされたのか、全裸で倒れ、口元から血を流しているちひろがいる。広河が寝ている隙に印鑑と通帳を持ち出し、会社に無断で欠勤したことを電話で謝罪する。電話に応じたのは恋人の野上で、様子を見に行こうとする彼を必死に止める。もはや寄る辺をなくし、涙に暮れるしかないのだった。
映画『フリーズ・ミー』のあらすじ【承】
広河はしばらくちひろの家に居座る気でおり、横暴な態度を見せ続ける。何とか出勤したちひろだったが、野上にその傷を心配され、はぐらかすしかない。その晩は部屋へと戻らず、野上と身体を重ねながら、ちひろは「何があっても私を好きでいてくれる?」と問う。
翌日、会社へ向かった彼女の元に、何と広河が直接職場へと乗り込んでくる。財布を寄越せと鞄を奪おうとする広河を、必死で取り押さえる警備員と野上達。ちひろは結局、キャッシュカードも奪われ、会社も解雇された。出て行く気配のない広河に絶望するしかないちひろの部屋へと野上が訪れる。説明を求める彼に、広河はあっさりと彼女をレイプしたことをばらす。その事実が受け止めきれなかったのか、愕然とちひろの前から去って行く野上。愛しい存在まで失い、ちひろはサヨナラ、と小さな声で呟く。
風呂に入っている間に飯を作れ、と命令されたちひろはある決意をする。絶望に打ちひしがれた彼女には、もはや「それ」しか選択肢が残されていなかった。ペットボトルに一杯の水を詰め、入浴中の広河の前に立ち塞がるちひろ。それで広河の頭部を殴り、必死の抵抗に遭いながらもとうとう広河を殺害する。ちひろは己の下した制裁に怯えながらも、血の海で満たされた浴槽の水を抜き、証拠を隠滅するため返り血を洗い流す。
買い物帰りに部屋に戻ってきたちひろだったが、突如部屋の前で声をかけられる。再び、奴らのうちの1人が現れたのだ。一見すると丁寧な物腰で、背広に身を包み普通のサラリーマンにしか見えないその男の名は小島。彼もまた勝手に部屋へと上がり込み、広河を探す。彼はもう帰ったと誤魔化すちひろに対し、「あの節は酷いことをしてすみませんでした」と頭を下げる小島。しかし、それよりも小島は広河に貸したままの30万円の方が気がかりな様子。誠意のまるでこもっていない謝罪にしか、ちひろの耳には聞こえなかった。突如、トイレを貸してほしい、と了承も得ず風呂場へ向かう小島だが既に死体は隠してあったため見つからずに済む。だが、この小島も広河を待つと言い中々出て行こうとしない。小島はアル中なのか勝手に酒を飲み荒らしては、酒瓶を投げつけちひろに関係を迫り抱き着く。先にシャワーに入らせて、とその場を凌ぐちひろだったが、小島はその間に勝手に酒を探し冷蔵庫を開く。そしてその中には……血を流した広河の死体が詰め込まれていた。驚愕する小島の背後から、鈍器でその頭部を殴打するちひろ。激しく出血し痙攣を起こしながら倒れる小島。その死体を跨ぎ、ちひろは冷蔵庫の中にいる広河の死体を見て囁く。「へえー、綺麗なんだ。フリーズするのって……」その瞳は、どこか虚ろな狂気を孕んでいた。
映画『フリーズ・ミー』のあらすじ【転】
ちひろはやがて、2体の死体を保存するため冷凍庫を2つ購入する。死体を入れながら、醜いお前らがこんなに綺麗になるなんて、と独り呟くちひろ。ちひろはかつての婚約者、野上の自宅の留守電にメッセージを残す。事実を隠していたことへの謝罪と、それから真相を。5年前の2月、母親は夜勤でおらず、学校が遠いため帰宅した頃には既に夜の8時を回っていた。作り置きの夜食を食べようとした矢先。広河が先輩のヤクザ達とガラスの窓を破り、家の中に忍び込んでいた。ビデオを回しながら面白半分にちひろを次々輪姦していく男達。母には話せなかった、だから母のことは責めないで欲しい。それから、野上と出会って少しずつだが心の傷は癒えていったのだと。野上と出会えて幸せだった、と別れの言葉を残す。
職を失くしたちひろは調理場で新たに働き始めるが、その矢先に訪れたのは3人目の男だった。男は筋金入りのヤクザのようで、部屋に上がるなり2人の行方を探す。男の名は馬場といい、ちひろを見るなり歪んだ眼差しで一段と美人になった、とニヤつく。人違いだと言い警察を呼ぶと訴える彼女に怒号を飛ばし、早速のように彼女に襲い掛かろうとする馬場。「ちひろちゃんが待っていると思って1週間も我慢したんだよ」と、身体に触れる馬場に抵抗するちひろ。その態度に腹を立て暴力を振るい、直後にごめんね、大丈夫?と、倒れるちひろを無理矢理立たせベッドへと押し倒す。懐かしい、懐かしい、と当時の強姦を思い出しながらことに及ぼうとする馬場だったが、その騒音に怒鳴る隣人に怒り狂う。ベランダで怒声を上げ散らす馬場を止めるちひろを、やはり暴行でねじ伏せ、果てに彼女を凌辱した。
翌日、テレビゲームで子供のようにはしゃぐ馬場を尻目にちひろは業者にもう1つ冷凍庫が欲しいと頼む。やはりこの馬場も、広河の帰りを待つからと部屋に居座っていた。先の男らと変わらず、厚かましい馬場は「死ね死ね死ねホラ死ねっ」とゲームに熱中している。そんな彼の背後へと、そっと足を進めるちひろ。彼女にもはや躊躇や迷いなどは無かった。このゲーム難しいので有名なんですよ、とおだてながら近づき、ヘッドホンでやるともっと臨場感が出るからと馬場の耳にヘッドホンを宛がう。馬場の気を逸らしながら、ちひろは風呂場のカーテンを外し、ハンマーを包んで近づく。音に夢中で気付かない馬場の背後に近寄ると、ちひろはカーテンを馬場に被せる。外せ、と怒鳴り散らす馬場に構わずハンマーを振り下ろすちひろ。痛みに悶え暴れる馬場の首をガムテープで絞め殺し、ため息を吐いた彼女の顔にうっすらと浮かぶ微笑。そして最後の1人を、冷凍庫に詰めるのであった……。
映画『フリーズ・ミー』の結末・ラスト(ネタバレ)
ちひろの心に悪夢を与えた男達を全て始末した彼女だったが、電力の使い過ぎによりブレーカーが落ちてしまう。死体が腐る、と慌ててブレーカーを上げに行くがガスも停まり無駄に終わる。冷凍庫の電力だけは確保しておかなければ、と、只でさえ夏場の暑さの中で、クーラーさえ付けられなくなってしまう。
職場の人に、顔色の悪さを心配されながらも帰宅するちひろ。ちひろは冷凍庫を開けながら死体を見つめ「こんなに涼しい所にいられてお前らはいいよなぁ」と独りごち、まるで死体達と会話するかのように言葉を続ける。「あんた達といつまでも一緒にいられる仲でもないしさ。色々調べたんだけどね、やっぱりバラバラにして捨てるのが1番じゃないかって。肉はミンチにして、骨は灰にした人がいるらしいんだけど……その人によればそれが最も見つからない方法だって。でも今すぐ山奥に行けるわけもないでしょ」ちひろの語りは尚も続けられる、「やっぱここから出さないのがいいのかな、だって私の過去も外に出ちゃうことになるじゃない。だから完全に消える方法を思いつくまでここにいよう?じゃあ、今夜はここまで」――おやすみなさい、と一礼し冷凍庫を閉める。
そんな中、ちひろは荷物をまとめている。冷凍庫を放置し、遠くへ逃げるつもりでいるらしい。そんな中で突然、チャイムが鳴り響き来訪者が現れる。元恋人の野上だった。謝りたい、と彼は言い、覗き穴越しに見た野上は花束とプレゼントを抱えている。ちひろは慌ててすぐに部屋を片付けるからもうあと少し待っていてほしい、と返す。何時間でも待つ、と答える野上にちひろは散らかった衣類をしまい、冷凍庫には布を被せ、カーペットの下の血をその冷凍庫で覆い隠す。冷凍庫のコンセントを抜き、風呂へと入り着替えを済ませ、幸せを噛みしめながらその扉を開く。野上はちひろの部屋へ上がると、留守電の内容を聞き改めて謝罪の言葉を漏らす。てっきり広河と浮気しているのだと勘違いしていたせいで心の整理がつかなかった野上は、彼女を誤解していたのだと再び互いに激しく求め合う。その間ずっと「助けて」と呟き続けるちひろ。雷鳴の音を聞き開きっ放しの窓を閉めようとする野上だったが閉めると臭いか、と言いちひろの顔は硬直する。野上曰く、部屋に入った時からその臭いに気付いていたらしい。自分の臭いではないかと慌ててちひろがシャワーに向かっている間に、カーペットの血痕と共に冷凍庫を見つけ中身を見てしまう野上――その背後では、「助けて」と囁く全裸のちひろが、今にも花瓶を振りかざそうとしているのだった……。
罪を知られたくないあまりか、愛する人までもをその手にかけてしまったちひろ。豪雨の降り注ぐベランダで1人佇む彼女の後ろ姿と横顔。再び映し出されたベランダにちひろの姿はもう無い。只、雨の音と揺れるカーテンだけが、そこにあるだけであった。
映画『フリーズ・ミー』の感想・評価・レビュー
流石、タランティーノが惚れ込む石井隆監督といった所か、演出にも脚本にも隙が無い。所謂、レイプリベンジもので官能とバイオレンスが倒錯する石井節全開だ。何より役者達の演技の凄さ。主役の井上晴美含め男達の醜悪さも気分が悪くなるくらい上手く、それを引き出せる監督の手腕にも唸らされる。生々しい強姦場面も体当たりで挑む井上晴美の何たる凄さか。復讐として凍らされていく男達と同時に、彼女の心もまた凍りついていく皮肉。タイトルの意味が重く圧し掛かる。(MIHOシネマ編集部)
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