この記事では、映画『女王陛下のお気に入り』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。
映画『女王陛下のお気に入り』の作品情報
出典:Amazonプライムビデオ
製作年 | 2018年 |
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上映時間 | 120分 |
ジャンル | 歴史劇 コメディ |
監督 | ヨルゴス・ランティモス |
キャスト | オリヴィア・コールマン エマ・ストーン レイチェル・ワイズ ニコラス・ホルト |
製作国 | アイルランド アメリカ イギリス |
映画『女王陛下のお気に入り』の登場人物(キャスト)
- アン女王(オリヴィア・コールマン)
- 子供を亡くした暗い過去を引きずっており、情緒が不安定。国を統治するための政治力や決断力に欠け、全てをサラに任せきっている。
- アビゲイル・ヒル(エマ・ストーン)
- サラの従姉妹。元々は貴族だったが賭け好きの父親のせいで没落してしまう。宮廷で召し使いとして働き始めるが、貴族として返り咲くためのサバイバルに異様な執念を燃やす。
- レディ・サラ(レイチェル・ワイズ)
- アン女王とは幼なじみで、女王に対して何でもはっきりものを言う。女王に代わって政治を取り仕切っているだけでなく、実は女王とは恋愛関係にもある。
- ロバート・ハーリー(ニコラス・ホルト)
- 野党議員で、フランスとの戦争継続に反対しており和平交渉を求める。アビゲイルと手を組み、双方の思うままにアン女王を操ろうとする。
映画『女王陛下のお気に入り』のネタバレ・あらすじ(起承転結)
映画『女王陛下のお気に入り』のあらすじ【起】
18世紀初期、イングランドはフランスと戦火を交えていた。イングランドを統治するアン女王は可愛がっているウサギに挨拶するようにサラに命ずるが、サラは気味悪がって拒否する。宮廷で政治論議が交わされ。ハーリーは和平交渉を進めるよう唱えるが、サラは反対してフランスを徹底的な敗北に追い込むべきだと主張する。
アビゲイルが馬車に揺られて宮廷にやって来る。アビゲイルはサラに頼んで召し使いとしての働き口を得る。ある夜、アビゲイルはアン女王の部屋に呼び出される。部屋ではアン女王が痛風で苦しんでいた。サラが懸命に介抱しており、アビゲイルもその手伝いをする。翌朝、アビゲイルは森で薬草を摘んできて、こっそりとアン女王の足に塗る。アン女王の足の痛みが和らいだため、サラはアビゲイルに感謝して個室を与えて侍女にする。
ハーリーは和平を訴えるためにアン女王に会おうとするが、サラが代理として現れる。サラはアン女王が戦争継続を決意して戦費を賄うために地税を倍にする方針だと説明する。一方、アビゲイルはアン女王に自分が薬草を摘んできたことをアピールする。
映画『女王陛下のお気に入り』のあらすじ【承】
王宮で舞踏会が開かれ、アン女王が車いすで現れる。ハーリーは税に関する不満をアン女王に口にする。サラはお気に入りの音楽に合わせて若い男とダンスを楽しむ。それを見ていたアン女王は次第に不機嫌になり、自室に戻ると言い出す。そしてハーリーに増税は止めると告げる。サラは車いすを押しながらアン女王に謝る。そして2人でサラの部屋に向かう。サラの部屋で本を物色していたアビゲイルはサラとアン女王が入ってきたので身を隠す。サラとアン女王は情熱的にキスを交わし愛し合う。その様子を目撃してしまったアビゲイルはこっそりと部屋を抜け出す。自室に戻ろうとしたアビゲイルをハーリーが呼び止め、アビゲイルにサラが何を目論んでいるかスパイになるように迫る。
退屈を持て余していたアン女王の元に、アビゲイルがサラの代理として現れる。アビゲイルがウサギに反応したのを見てアン女王は喜び、2人でウサギを檻から出して遊ばせる。アン女王は17人の子供を失い、代わりに17匹のウサギを可愛がっていることを打ち明ける。アビゲイルはアン女王と踊って遊び、元気付けようとする。アン女王は次第にアビゲイルを呼びにやるようになる。アビゲイルはハーリーにアン女王が議会で増税を発表すると教える。
映画『女王陛下のお気に入り』のあらすじ【転】
女王が議会で演説しようとする前に、ハーリーは増税をやめた女王の決断を讃える。どうして良いか分からなくなったアン女王は気絶した振りをして議会演説を中止する。アビゲイルはアン女王の部屋に入って、裸でベッドに眠る。そこにアン女王が戻って来てアビゲイルを追い出す。その夜、アビゲイルは足のマッサージをするためにアン女王に呼び出され、2人は関係を持つ。サラは2人がベッドに横になっているのを目撃してショックを受ける。
サラはアビゲイルを召し使いに戻そうとするが、アビゲイルはアン女王に泣きついて寝室付き女官になる。焦ったサラはアン女王と一緒に泥風呂に入って冗談や昔話を言ってアン女王の心を取り戻そうとする。アン女王をサラに奪われそうに感じたアビゲイルはサラの紅茶に毒を盛る。森に乗馬に出かけたサラは途中で気を失って落馬してしまい、行方不明になる。
アビゲイルはハーリーにお互いの利益のために協力を呼びかける。ハーリーは女王に直接戦争終結を進言する機会を得て、知人の大佐がアビゲイルと結婚したがっていると申し出る。女王は自らが立ち会いアビゲイルに結婚式を挙げさせる。しかしアビゲイルはサラがどこに消えたか気が気ではない。
映画『女王陛下のお気に入り』の結末・ラスト(ネタバレ)
サラは娼婦に救われ一命を取り留めていた。アビゲイルが王宮で音楽を聴いているとサラが戻って来る。サラはアン女王の元に行き、アビゲイルを追い出すように求める。従わなければ女王がサラ宛てに書いた恋文を新聞に暴露すると脅す。怒ったアン女王はサラを王宮から追い出すように命じる。
アンは議会でハーリーに政権を握らせ、フランスとの和平を模索すると発表する。サラが出て行った部屋はアビゲイルが使うことになる。アビゲイルは王宮で狂乱に耽るようになる。サラは最後の望みを託してアン女王に謝罪の手紙を書くが、アビゲイルが女王の手に渡る前に燃やしてしまう。さらに、アビゲイルはサラが横領をしていたとアン女王に吹聴する。それを信じたアン女王はサラをイングランドから追放するように命じる。兵士達が屋敷に近づいているのを見たサラは自らの運命を覚悟したようにイングランドの外で暮らしたいと夫に申し出る。
ベッドで横になっていたアン女王は、アビゲイルがウサギを足で潰そうとしているところを目撃する。アビゲイルの正体に気付いたアン女王はベッドから立ち上がると、アビゲイルに足をマッサージするように命じる。そしてアビゲイルの頭に寄りかかってマッサージを続けさせる。
映画『女王陛下のお気に入り』の考察・解説(ネタバレ)
映画『女王陛下のお気に入り』で、うさぎを踏むシーンの意味とは?
『女王陛下のお気に入り』でうさぎを踏むシーンは、物語の中でも象徴的な意味を持つ重要な場面です。女王アンにとって、うさぎたちは特別な存在であり、彼女が亡くした17人もの子供たちを象徴しています。アンは子供を失った悲しみを、うさぎたちに愛情を注ぐことで紛らわせようとしていたのです。
映画の終盤、アビゲイルがうさぎを踏みつけるシーンは、彼女が完全に冷酷で打算的な人物になり下がったことを如実に示しています。女王にとって非常に大切なうさぎを踏みにじることで、アビゲイルは女王の感情や苦悩を無視し、自分の地位を守るためなら何でもする覚悟を見せつけたのです。この行為は、アビゲイルが女王への真の忠誠心や愛情を持ち合わせていないことを露呈し、彼女の本性が明らかになる決定的な瞬間となりました。
うさぎを踏むシーンは、アビゲイルが権力を手に入れるために他者の感情を踏みにじることを厭わない冷酷さを強調し、感情的で喪失感を抱える女王アンとの対比を際立たせています。アビゲイルは女王の弱みを利用し、自身の欲望を追求する非情な一面を持つキャラクターとして描かれているのです。
映画『女王陛下のお気に入り』における嘔吐シーンの意味とは?
『女王陛下のお気に入り』に登場する嘔吐シーンは、登場人物たちが抱える精神的な葛藤や宮廷内の権力闘争による緊張感を象徴的に表現しています。この映画では、宮廷内で繰り広げられる激しい権力争いが描かれており、登場人物たちは常にプレッシャーや不安、裏切りの脅威にさらされています。嘔吐シーンは、彼らがそのストレスに圧倒され、追い詰められている状況を如実に示しているのです。
例えば、アビゲイルが宴会で大量の酒を飲み、後に嘔吐するシーンがあります。これは、彼女が短期間で自分の立場を確立しようと必死になっている様子を表しています。アビゲイルは生き残るためなら手段を選ばず、酒の力を借りて自信を保とうとしますが、実際には状況に適応しきれておらず、内心では不安や恐怖に苛まれていることが伺えます。
また、嘔吐シーンは宮廷内での虚飾や表面的な振る舞いを象徴するものとしても解釈できます。登場人物たちは表向きは優雅で洗練された態度を取っていますが、内面では自分の本当の感情や欲望を抑え込んでおり、そのギャップやプレッシャーが嘔吐という形で表出しているのです。このシーンを通して、映画は宮廷の華やかさの裏に潜む人間の弱さや醜さを浮き彫りにしています。
映画『女王陛下のお気に入り』は、オレンジをぶつけるシーンが印象に残る?
『女王陛下のお気に入り』でオレンジをぶつけ合うシーンは、非常に印象的な場面の一つです。このシーンでは、貴族たちがまるで遊びのようにオレンジを投げ合うという、異様で滑稽な光景が繰り広げられます。これにより、宮廷内の裕福な人々の退廃的なライフスタイルが強調され、彼らが現実の厳しさや社会問題から完全に乖離した存在であることが浮き彫りになります。
オレンジを投げ合う行為そのものは無意味で、単なる戯れに過ぎません。しかし、この場面は登場人物たちが実際には非常に無力で、自己中心的な行動に耽っていることを示唆しています。また、権力を持つ者たちが本来の責務を放棄し、無益な遊びに興じている姿は、彼らの堕落と無関心を象徴しているのです。
このシーンは視覚的にも独特で、映画全体の風刺的なトーンを際立たせています。格式ある歴史劇の設定とは対照的に、オレンジを投げ合うという行為は滑稽で奇妙な対比を生み出し、観客に強烈なインパクトを与えます。このシーンは、映画のユーモアと風刺のエッセンスを凝縮した象徴的な瞬間として、観客の記憶に残る場面となっています。
映画『女王陛下のお気に入り』におけるサラの役割とは?
『女王陛下のお気に入り』において、サラは物語の中心的な人物の一人であり、女王アンに多大な影響力を持つ重要なキャラクターです。サラは女王の親友であると同時に、彼女の側近として政治的な意思決定にも深く関与しており、事実上、女王を支配下に置いていると言っても過言ではありません。サラの聡明さと自信に満ちた性格が、彼女を強力な存在として際立たせているのです。
しかし、サラの役割は単なる親友や政治顧問にとどまりません。物語が進展するにつれ、彼女の地位がアビゲイルによって脅かされていく様子が描かれます。アビゲイルはサラに代わって女王の寵愛を得ようと画策するため、二人の間で激しい権力闘争が繰り広げられるのです。この権力闘争を通じて、サラの複雑な感情が浮き彫りになります。彼女が女王に対して抱く愛情や忠誠心、そして失いたくない地位への執着が明らかになるのです。
最終的に、サラはアビゲイルとの権力闘争に敗れ、宮廷を追放されることになります。しかし、その過程で彼女の真の忠誠心と誇り高さが描かれます。サラは権力を維持するために嘘や裏切りに手を染めることを拒否し、最後まで自分の信念を貫き通す姿勢を見せるのです。彼女のこうした生き方が、物語の中で非常に印象的な存在として描かれています。
映画『女王陛下のお気に入り』は史実を基にしている?
『女王陛下のお気に入り』は、18世紀初頭のイギリス宮廷を舞台にした作品ですが、物語は史実を基にしながらも、かなりのフィクションや脚色が加えられています。主要登場人物である女王アン、サラ・チャーチル、アビゲイル・ヒルは実在の人物ですが、映画の中で描かれる出来事やキャラクター同士の関係性は、ドラマチックに誇張され、ストーリーを盛り上げるために再構成されている部分が多いのです。
歴史的な事実としても、サラ・チャーチルは女王アンの親友であり、宮廷内で強い影響力を持っていました。しかし、彼女とアビゲイルの対立がどのように展開したのか、またその背景にどの程度の策謀や裏切りがあったのかについては、映画で描かれているほど明確ではありません。映画は、この歴史上の対立を題材にしながらも、権力闘争と人間関係の複雑さを強調するためのフィクションとなっているのです。
さらに、映画は当時の宮廷生活や貴族社会を風刺的に描いており、そのために歴史的事実が意図的に誇張されることで、物語の緊張感やユーモアが生み出されています。したがって、この映画を史実に忠実な作品として捉えるよりも、当時の時代背景を基にしたフィクション作品として楽しむのが適切でしょう。
映画『女王陛下のお気に入り』は、ダンスのシーンが印象に残る?
『女王陛下のお気に入り』のダンスシーンは非常に印象的で、観客の記憶に強く残る場面の一つです。このシーンでは、サラと貴族たちが踊るのですが、その振り付けは伝統的な宮廷ダンスとはかけ離れた、現代的で奇妙な動きが取り入れられています。この異色のダンスシーンは、映画全体の風刺的なトーンと見事に調和しており、観客に違和感と驚きを与えるのです。
このダンスシーンが特に印象深いのは、宮廷内の堕落と退廃的な雰囲気を象徴しているからです。貴族たちは一見楽しそうに踊っていますが、その踊りはどこか空虚で無意味に感じられ、宮廷での表面的な生活を反映しています。彼らの滑稽な動きは、権力者たちの無意味な行動や、彼らが享受する特権がいかに価値のないものであるかを暗示しているのです。
このシーンは、映画の風変わりなスタイルとユーモアを象徴する場面として、多くの観客の心に残るものとなっており、作品全体の風刺的なメッセージを強調する役割を果たしています。
映画『女王陛下のお気に入り』の登場人物には、モデルになった人物がいる?
『女王陛下のお気に入り』に登場する主要人物には、歴史上の実在の人物がモデルとなっています。女王アンは実在のイギリス女王で、1702年から1714年まで在位しました。映画に描かれる女王アンの体調不良や感情的な不安定さは、史実に基づいた彼女の健康問題を反映しているのです。
また、サラ・チャーチルも実在の人物であり、アン女王の親友にして政治的な助言者でした。彼女は非常に影響力のある存在で、宮廷内で強い地位を築いていましたが、後にアビゲイル・ヒルとの権力闘争に敗れ、宮廷を去ることになります。アビゲイルもまた実在の人物で、映画で描かれているように、彼女はアン女王の信頼を得てサラに取って代わる存在となったのです。
このように、映画の登場人物は実在のモデルを持っていますが、彼らの行動や関係性は大幅に脚色されており、歴史的事実とは異なる部分が多く含まれています。映画は史実を基にしつつも、フィクションの要素を織り交ぜることで、登場人物たちの感情と権力闘争をよりドラマチックに描き出しているのです。
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