映画『フロスト×ニクソン』の概要:ウォーターゲート事件により歴代初となる任期途中での辞職に追い込まれたリチャード・ニクソン元大統領に単独インタビューしたイギリス人司会者デービッド・フロストの挑戦をドキュメンタリータッチで描く。2008年公開のアメリカ映画。
映画『フロスト×ニクソン』 作品情報
- 製作年:2008年
- 上映時間:122分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、伝記
- 監督:ロン・ハワード
- キャスト:フランク・ランジェラ、マイケル・シーン、ケヴィン・ベーコン、レベッカ・ホール etc
映画『フロスト×ニクソン』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『フロスト×ニクソン』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『フロスト×ニクソン』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『フロスト×ニクソン』 あらすじ【起・承】
1972年6月17日。ワシントンD.C.にあるウォーターゲート・ビル内の民主党全国委員会本部に侵入し、盗聴をしていた容疑で5人の男が逮捕される。このうちの1人が第37代アメリカ大統領リチャード・ニクソン(フランク・ランジェラ)の関係者だと判明し、これが大問題となる。いわゆるウォーターゲート事件の発生である。
結局この事件は多くの疑惑を残したままニクソン大統領が任期途中で辞任するという形で強引に収束する。1974年8月8日にテレビ中継されたニクソン大統領の辞任表明演説は4億人もの人が見守った。しかし世論は大統領から謝罪がないことに納得していなかった。
イギリス人のデービッド・フロスト(マイケル・シーン)は、ロンドンやオーストラリアで人気の司会者だった。彼はさらにアメリカで成功するため、注目度の高いニクソンのインタビュー番組を自ら企画する。
事件について沈黙を守っていたニクソンは、ハリウッドのエージェントを通してフロストの話を聞く。60万ドルのギャラを払うというフロストの条件は魅力的で、ニクソンは彼のインタビューを受けることにする。
フロストは長い付き合いのジョン・バードにプロデューサーを頼み、アメリカのテレビ局に番組を売り込む。しかし大手テレビ局の協力は得られず、スポンサー企業も集まらない。ジョンは編集局長をボブ・ゼルニックに、調査員をニクソンの権力乱用や不正への著作があるジム・レストンに依頼し、番組の準備を進める。
一方ニクソン側も側近のジャック・ブレナン(ケヴィン・ベーコン)を中心に戦略を練る。番組をうまく利用すれば、ニクソンの早期政治復帰が可能になると考えていた。
映画『フロスト×ニクソン』 結末・ラスト(ネタバレ)
1977年3月23日。自主制作の形でインタビューの収録が開始される。インタビューは1回2時間、4回に分けて収録される契約になっており、各回の内容も決まっていた。しかし制作費の200万ドルは未だに回収の目処が立っておらず、高値で番組を買ってもらうにはニクソンから謝罪の言葉を引き出すことが必須条件だった。
フロストは契約を無視していきなりウォーターゲート事件の話をニクソンにぶつけてみる。しかし百戦錬磨の政治家であるニクソンは話を自分のペースに持ち込み、フロストに付け入る隙を与えない。2時間のインタビューはニクソンの圧勝で終わる。
2回目と3回目のインタビューでもニクソンは貫禄を見せつける。インタビューもうまくいかず、資金も集まらず、さらに自分の看板番組まで打ち切られ、フロストは絶望的な状況へ追い込まれる。
4回目の収録が迫っていた夜、フロストはニクソンから電話をもらう。ニクソンの話を聞いてフロストの闘争心に火がつく。フロストは膨大な書類を調べ直し、不正を裏付ける新たな証拠を見つける。
インタビュー最終日。フロストは新証拠を突きつけニクソンを追い込む。ブレナンはインタビューの中止を主張するが、ニクソンは覚悟を決める。ニクソンは自らの過ちにより国民を失望させたことを認める。アップになった彼の顔には自己嫌悪と敗北感がにじみでていた。これを見てフロスト側は勝利を確信する。
番組はニュース番組史上最高視聴率を獲得し、フロストは世界中で賞賛される。成功を収めたフロストとは逆に、ニクソンは政治復帰の機会を完全に失う。不思議なことにニクソンはあの夜自分がフロストへ電話をしたことも、何を話したのかも覚えていなかった。
映画『フロスト×ニクソン』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『フロスト×ニクソン』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
フランク・ランジェラの演じたニクソン元大統領の貫禄
ウォーターゲート事件の真相やニクソン元大統領の評価については専門外なのでコメントは控えるが、フランク・ランジェラの演じたニクソン元大統領の大物感は素晴らしかった。
本作を見るとニクソンは心理戦のうまい超一流の政治家なのだと感じてしまう。ニクソンが外交能力に長けていたというのも納得だ。フランク・ランジェラの演じるニクソン元大統領にはマフィアのボスのような貫禄があり、腹黒そうな雰囲気も大物政治家らしい。フランク・ランジュラはアメリカ大統領にまでなった男の強さとカリスマ性を見事な演技で再現していた。
なぜニクソンはフロストに電話したのか
3回のインタビューを終えてニクソン陣営は勝利を確信していた。自腹を切ってまで番組制作を進めてきたフロストは敗北感に打ちのめされていたのだが、ニクソンからの電話によって蘇る。フロストは急にやる気を出し、大逆転勝利を収めて勝者となる。しかしニクソンは自分が電話をしたことも、話の内容も覚えていないと言うのだ。実話にしてはあまりにできすぎたこの展開はさすがに脚色だと思うのだが、真相はよくわからない。
おそらく、ニクソンはずっと大物政治家の仮面をかぶってきたのだろう。しかし電話のスイッチを入れた瞬間ニクソンの仮面は外れた。政治家でも大統領でもない素顔の自分に戻ったのだ。再び仮面をかぶったニクソンにはその時の記憶がない。つまり彼は無意識的に素顔に戻って懺悔したがっていた。ということなのだと思うが、少々分かりにくい。
映画『フロスト×ニクソン』 まとめ
本作はウォーターゲート事件やニクソン元大統領を批判する内容の映画ではない。むしろニクソンのおかげでジャーナリストとして大成功を収め、セレブ生活を続けたフロストに軽く嫌味を言っているようにも受け取れる。本当に腹黒いのは政治家よりも彼らを利用するマスコミの方ではないかというような。これはあくまで個人的な感想なので、あまり気にしないでいただきたいのだが。
一応星4つにしたが、本音を言えば星3つ半にしたいところ。なぜならマイケル・シーンの演じたフロストの存在感が薄すぎて、終盤の巻き返しに説得力を感じない。とはいえ、トータルとしては面白い作品なので、見て損はない。
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