この記事では、映画『ガタカ』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ガタカ』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『ガタカ』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 1997年 |
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上映時間 | 106分 |
ジャンル | SF サスペンス ドラマ |
監督 | アンドリュー・ニコル |
キャスト | イーサン・ホーク ユマ・サーマン アラン・アーキン ジュード・ロウ |
製作国 | アメリカ |
映画『ガタカ』の登場人物(キャスト)
- ビンセント / ジェローム(イーサン・ホーク)
- 遺伝子操作を受けずに生まれた青年。心臓に疾患を抱えていて、既に医者から宣告された寿命を超えて生きている。宇宙飛行士になることが目標。
- ユージーン(ジュード・ロウ)
- 本物のジェローム。世界二位の実力を持つ水泳選手だったが、事故により選手生命を絶たれてしまう。ビンセントに自分の遺伝子を提供し、共同生活を営む。
- アントン(ローレン・ディーン)
- ビンセントの弟。兄と違い、遺伝子操作を施され、十年に一人の逸材といわれる。警察官。
- アイリーン(ユマ・サーマン)
- ビンセントの同僚。かつて宇宙飛行士を目指していたが、心臓に疾患が見つかり夢が途絶えてしまう。
映画『ガタカ』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『ガタカ』のあらすじ【起】
そう遠くない未来。土星探査を控えていた宇宙飛行士候補生ジェロームは、上司にその仕事振りを絶賛された。上司が去ったあと、ジェロームは卓上に家から持参した皮脂と毛髪を、日常で溜まった埃のように散布した。
会社が定期的に実施する薬物検査を済ませたジェロームは、廊下の天窓から打ち上げられたロケットを見上げていた。地球を出ることは、彼の夢だった。飛んで行ったロケットを見送り、仕事部屋に戻ろうとすると、ジェロームはトイレが騒々しいことに気付いた。一人の男が殺されていたのだ。
ジェロームは宇宙飛行士に必要な素養を持って生まれてきた。だから、彼が宇宙飛行士として土星に行くことが決まっても、周りの者は誰も不思議に思わない。しかし、とジェロームは内心で独白する。自分は本物のジェロームじゃない。生前の遺伝子操作が当たり前の時代に、彼の母は遺伝子学者より神に子供の全てを託した。そうして生まれた彼は心臓に疾患を抱え、寿命は三十年しかないだろうと医者に宣告された。ビンセントと親に名付けられた彼は、虚弱体質で、もしものときの責任を負いたくない保育園にも、入園を拒まれる始末。ビンセントの両親は、次の子供は遺伝子操作を施して生むことに決めた。そうして生まれたビンセントの弟は、アントンという父の名を継ぐに相応しい子供になった。
映画『ガタカ』のあらすじ【承】
成長したビンセントは、家族に何も告げず、家を出ていく決心をした。放浪の時期が数年続き、トイレ掃除の仕事もやった。彼の属する新下層階級は肌の色ではなく、科学によって決められた。ガタカ社の清掃にきたビンセントは、そこで打ち上げられるロケットを見て、宇宙に思いを馳せる。
ビンセントはガタカ社の入社試験を受けるため、肉体の特訓と勉強に勤しんだ。しかし、彼がどれだけ頑張っても、血液検査が彼のことを劣等者として弾いてしまう。そこでビンセントは、自分の遺伝子を偽装する必要があった。
優れた遺伝子は成功を容易くするが、絶対ではない。どれだけ優秀だろうと運命には逆らえないのだ。エリートが何らかの理由で悲運に見舞われたとき、彼らの遺伝子は高値で取引される。ビンセントは、水泳で世界二位の実力を持つが、交通事故で両脚が麻痺してしまったジェロームという男の遺伝子を買った。そして、ビンセントは、外見、身長、筆跡と、彼に関する全てを真似て、彼に成りきる準備を進めた。ジェロームはミドルネームのユージーンを名乗り、ビンセントがジェロームを名乗る生活が始まった。
映画『ガタカ』のあらすじ【転】
ジェロームは、ビンセントの存在を抹消するため、職場の掃除を欠かせず、家に帰ると皮脂や抜けかかった毛髪を落として焼却しなければならない。そして、ユージーンはビンセントがジェロームであることを証明するために、尿や血液、皮脂のサンプルを保存し続けた。そうした努力のおかげで、ジェロームは昇進を重ね、宇宙飛行士に抜擢された。一度は上司に遺伝子の偽装を見破られそうになったこともあるが、それ以上に彼を窮地に陥れる事態が生じた。その上司が、会社で死体となって見つかったのだ。
ガタカ社に警察の捜査が入った。ジェロームは土星探査が延期されることを恐れて、局長に今後の予定を尋ねる。局長は心配するなとジェロームに言い、予定通りにロケットを打ち上げると誓った。
犯人を挙げるため、ガタカ社は職員の遺伝子の再検査を内密に実施することにした。アイリーンは同僚のジェロームのことを調べることになったが、検査結果に異状はなかった。
土星探査の内定を祝い、ジェロームとユージーンは酒を飲んでいた。泥酔したユージーンはジェロームに事故の原因を打ち明ける。世界一になるべくして生まれた彼は、どう足掻いても二位にしかなれなかった。そのことに絶望して、自殺を図ったのだという。しかし、それでも結局は死に切れなかった。自分を背負ってベッドまで運んだジェロームに対して、ユージーンは言う。「挫けずに頑張ればいつか成功する」そして、ジェロームの胸ぐらを掴んで引き寄せると、こう続けた。「偉いぞ、ビンセント」
映画『ガタカ』の結末・ラスト(ネタバレ)
ガタカ社で捜査員の手によって採取された塵や埃が、警察に届けられる。ほとんどは、社員から排出されたものだったが、その中で、たった一つ、公には数年前に失踪し、消息不明となっていたビンセントのまつ毛が見つかった。最下層者のビンセントがガタカ社に出入りしているのは怪しいと考えた警察は、彼を最重要参考人として捜索を始めた。
捜査官になっていたアントンは、兄を庇おうとした。ビンセントには動機がなく、既に死んでいても不思議ではない年齢だ。しかし、他の捜査員はアントンの話に耳を貸さない。警察の指導で、ビンセントの写真が社内中に掲載されるようになった。
ジェロームは自分の夢が潰えたと絶望する。大丈夫だとユージーンは励ますが、ジェロームは機材や遺伝子サンプルを廃棄して逃亡を図る。そんなジェロームにユージーンは激怒した。最後になって裏切るのか。ジェロームに夢を叶えて欲しいと願うユージーンの説得により、ジェロームは再び会社に戻る。
真犯人が逮捕された。ジェロームの上司を殺したのは、局長だった。局長は、ジェロームに余計な疑いをかけてロケットの打ち上げを遅らせようとする上司が邪魔だったと供述した。
ジェロームが旅立つその日、ユージーンは彼に感謝の言葉を述べた。身体を貸す代わりに夢を見られた。ユージーンはジェロームに一枚の手紙を渡した。
出発のゲートに立つジェロームは困惑した。そこではロケット搭乗者に対する抜き打ちの遺伝子検査が行われていたのだ。打つ手がないジェロームは諦めて検査に応じる。すると、検査官はジェロームの検査結果をワザと見逃した。検査官は、ビンセントとしてガタカ社に受験してきた彼のことを覚えており、実力で宇宙飛行士の座に着いたジェロームのことを影ながら応援していたのだった。
ジェロームが乗り込んだロケットの搭乗口が閉じられる。丁度その頃、自宅の焼却設備の中にユージーンはいた。彼は自分の遺伝子サンプルを一生分残し、ジェロームの名前を完全にビンセントに明け渡すため、自殺を図った。そうとは知らないジェロームを乗せたロケットは、土星に向かって地上を飛び立った。
映画『ガタカ』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
遺伝子による選別社会という近未来を描きながら、「努力」という人間らしさを強く描いた作品でした。特に印象的だったのは、主人公ヴィンセントが劣等遺伝子ながらも、自分の夢を諦めずに宇宙を目指す姿勢。弟との泳ぎの勝負で「戻る力を残さず泳いだ」と言う場面には、胸を打たれました。ジュード・ロウ演じるジェロームの悲哀もまたリアルで、希望と絶望の両面が描かれた傑作です。(20代 男性)
遺伝子で人間の価値が決まるという世界に、強い警鐘を鳴らすようなテーマ性が響きました。女性として子どもを育てる身からすると、出生前に可能性を制限されるこの世界は怖くもあり、リアリティも感じました。主人公ヴィンセントの「可能性は生まれではなく意志で決まる」という生き方は、とても勇気づけられるものでした。倫理と愛を同時に描いた、考えさせられる作品です。(30代 女性)
映画全体の静かなトーンと、内面の強さが際立つ演出が印象的でした。遺伝子によって選ばれた「優秀な」人間が、必ずしも幸せではないという逆説が深い。ジェロームのように全てを持っていても空虚を抱える人物と、何も持たないけど夢を叶えようとするヴィンセント。観終わったあと、しばらく考え込んでしまいました。現代社会にも通じる鋭い批評性があります。(40代 男性)
見た目は一見SFだけど、中身は非常に人間ドラマに満ちていて感動しました。遺伝子操作で「完璧な人間」が生まれてくる世界で、不完全な人間の生き様を描くという逆転の発想が面白かったです。特にイーサン・ホーク演じるヴィンセントの情熱には何度も涙が出ました。音楽や映像も美しく、余韻が残る作品でした。(20代 女性)
定年後、時間ができて見た映画の中でも屈指の名作でした。若い頃は「努力すれば報われる」が当たり前と思っていたが、今の社会を見ているとガタカのような「生まれで決まる社会」に近づいている気がする。ヴィンセントのように理不尽な仕組みに抗い、自らの力で未来を切り開く姿勢に、年齢を超えて学ばされました。(60代 男性)
親として、自分の子どもにどこまで「完璧」を求めるか…と考えさせられました。映画の世界では遺伝子レベルで子どもを選べるけど、それは本当に子どもの幸せなのか?ヴィンセントの両親が「自然な出産」を選んだことが、最終的に彼を強くしたという展開に、深いメッセージを感じました。母親として胸が苦しくなる映画でした。(40代 女性)
高校の授業でこの映画を観て、すごく衝撃を受けました。未来の話だけど、いじめとか差別の構造が、今の社会と変わらないところが怖かった。ヴィンセントの「夢を見る力」に感動して、自分ももっと頑張ろうって思いました。難しいテーマだけど、すごく心に残る映画です。(10代 男性)
この映画を観て「遺伝子=運命じゃない」っていう強いメッセージを感じました。私は科学者として働いていて、実際に遺伝子研究に携わっていますが、この作品はフィクションでありながらも、倫理的な問いかけとして本当に優れていると思います。科学が進んだ先に必要なのは、やはり人間性なんだと改めて感じました。(30代 女性)
生きるとは何か、努力とは何かを問い直させられる作品でした。特にジェロームの存在が良かったですね。彼は遺伝子的には完璧だけど、事故で人生が変わり、自暴自棄になる。一方で、ヴィンセントは不完全な体でも希望を失わない。この対比が非常に印象的で、涙腺を刺激されました。名作です。(50代 男性)
最近子どもを授かり、親になるという目線で観た『ガタカ』は、以前とまったく違う印象でした。遺伝子操作で「完璧な子ども」を求める親の気持ちもわかるけど、それが本当に子どものためかと問われると、答えに詰まってしまいます。ヴィンセントの存在が、「人間の本質は心の強さだ」と示してくれて感動しました。(30代 女性)
映画『ガタカ』を見た人におすすめの映画5選
her/世界でひとつの彼女
この映画を一言で表すと?
「孤独」と「愛」を繊細に描く、近未来の心震えるラブストーリー。
どんな話?
舞台は少し先の未来。主人公セオドアは、人工知能を搭載したOS「サマンサ」と出会い、やがて恋に落ちていきます。人間とAIの関係性を描きながら、テクノロジーと人間の心の繋がりを問いかける感動作です。
ここがおすすめ!
静かで美しい映像と、ホアキン・フェニックスの繊細な演技が光る本作は、「人間らしさ」とは何かを深く考えさせられます。『ガタカ』が描いた未来社会の倫理観に感銘を受けた人には、きっと刺さる1本です。
ブレードランナー2049
この映画を一言で表すと?
AIと人間の境界線を問う、圧巻の映像美と哲学的世界観。
どんな話?
未来のロサンゼルスを舞台に、人造人間「レプリカント」を追うブレードランナーの捜査官Kが、ある秘密に迫っていきます。前作の名作『ブレードランナー』の精神を受け継ぎながら、さらに深い人間性の探求を描いた続編です。
ここがおすすめ!
圧倒的なビジュアルと音楽、そして何より「命とは何か?」という普遍的テーマに迫る脚本は必見。『ガタカ』の遺伝子差別に通じる“選ばれる存在”への問いが、ここでも深く描かれています。
エクス・マキナ
この映画を一言で表すと?
完璧な人工知能は、人間を超えるかもしれない──そんな予感が背筋を冷やす。
どんな話?
天才プログラマーが開発したAIロボット「エヴァ」のテストに招かれた若きエンジニア。人間と区別がつかない美しいAIと交流する中で、次第に真実と恐怖が明らかになっていきます。心理戦と哲学が融合した近未来スリラーです。
ここがおすすめ!
ミニマルな舞台と洗練された脚本で、観る者に深い知的刺激を与えます。倫理、自由意志、存在の意味…『ガタカ』と同じく、人間とは何かを鋭く突きつけてくる一作です。
オブリビオン
この映画を一言で表すと?
記憶をめぐる謎が導く、壮大で切ないSFミステリー。
どんな話?
地球が荒廃した未来。トム・クルーズ演じる技術員ジャックは、任務中に墜落した宇宙船と謎の女性との出会いをきっかけに、自分自身と世界の真実を知っていきます。サスペンスとアクションが絡み合うSF巨編です。
ここがおすすめ!
スタイリッシュな世界観と緻密な設定が魅力。『ガタカ』のように「自分は何者か?」というアイデンティティの探求がテーマで、知的でスリリングな展開に引き込まれること間違いなしです。
月に囚われた男(Moon)
この映画を一言で表すと?
静寂の宇宙で見つめる、自分自身という最大の謎。
どんな話?
月でエネルギー採掘を行う男サムが、帰還を目前にして不思議な体調不良と、奇妙な現象に直面します。やがて明かされる衝撃の真実とは――。少人数キャストながら圧巻の心理ドラマとSF要素が詰まった作品です。
ここがおすすめ!
孤独、記憶、クローン、存在意義…。『ガタカ』と同じく、科学と倫理の狭間で揺れる人間の本質を描いています。静かな感動と深い余韻を残す、知る人ぞ知る名作です。
みんなの感想・レビュー
最後、遺髪を見てジェロームが逝ったことを悟りましたよ。
映画ファンの方はご存知だと思いますが、本作の共演をきっかけにイーサン・ホークとユマ・サーマンが1988年に結婚。しかし、2004年にイーサンの浮気が原因で2人は別れています。美男美女カップルで羨ましい!なんでもイーサンはキスがとても上手いとか。別れてしまいましたが、2人にとって運命的な作品だったんです。
ジュード・ロウにとっても、自身の存在感を大きく示した1作だといえよう。また現在、ジュード・ロウは禿げているが、色気のある俳優として再びブレイク中です。本作の頃はまだ髪も元気だが、2009年製作のガイ・リッチー監督の「シャーロック・ホームズ」シリーズからかなり禿げております。これも遺伝子が原因なのか?
男性フォルモンが過剰に出ているためだとか色々考えられています。それでも日本人ほど薄いことを神経質にならない点に安心します。髪も演技も彼の魅力の一つとして輝いています。
イーサン・ホークが主演ですが、その彼を助ける、もう1人の主人公ジェロームを演じるジュード・ロウに光を当ててみたい。ジェロームは元水泳選手。大会で銀メダルを取るほど優秀な選手だったが、未来を悲観して自殺を図り、助かったものの下半身不随になってしまう。
そんな時、宇宙飛行士を夢みるビンセントと出会う。ビンセントは、遺伝子操作をせずに生まれたため心臓が弱く、長生きできないと言われていた。そんな2人が2人3脚で夢実現を目指すのだ。なぜ、不可能とも思える夢に協力しょうと思ったのだろう?
何かを成し遂げるためには、遺伝子だけではない努力や運、周囲の人の協力が必要だと気づいていたのではないか。だから、ジェロームのリベンジ物語なんです!影分身のように常にビンセントのそばに寄り添い、時にはお酒を飲んでよっぱらう。
ジェロームを演じる、ジュード・ロウは繊細で知的な人物を演じさせたら本当に上手い!綿密に織られた近未来的背景も、科学的なごまかしがない分、シンプルでリアルに響いてきます。特に2人で星を眺めるシーンがいい。
イーサン・ホーク目当てでもいいのでぜひ、ご覧下さい。またマイケル・ナイマンの音楽も素晴らしく心に残ります。ジュード・ロウの魅力は、主人公に影の分身のように寄り添う守護天使的な存在感です。何故か主人公を演じる、イーサン・ホークよりも気になります。遺伝子が優秀なだけで全てが決まるわけではない。
その命の重さを感じてほしい。ジュード・ロウのブルー・アイが台詞以上のものを語りかけてきます。なぜ、宇宙に行きたいのか?と問うた彼の声が耳に残っています。
女優のアンジェリーナ・ジョリーが乳癌になるリスクを回避するために、乳房を摘出する手術を受けたことで遺伝子診断が話題になりました。アンジェリーナは身内に乳癌を発症した人がおり、遺伝子診断により自身の発がん率が高かったため手術を決意したのです!
遺伝子研究の進歩は病気の予防に大きな貢献をしています。良い点もあるが、遺伝子によって人の能力や寿命、可能性が制限・差別させるのではないかという怖さもあります。本作では、そんな近未来を舞台に人の可能性は遺伝子で測れるのか?不適合といわれても夢を実現できるのかがテーマです。
「ガタカ」で描かれた、遺伝子によって決まる世界と現在の遺伝子研究はどこまで進んでいるのでしょうか?まだ「ガタカ」の世界ほどではないが、遺伝子操作によって生まれるデザイン・ベイビーの問題や遺伝子で病気が特定できる未来へと近づいています。本作は、遺伝子をテーマにしたSF映画として傑作です!