映画『ギルバート・グレイプ』の概要:家族を養うために自分の人生をあきらめていた青年ギルバート。しかし自由に生きるベッキーという女性と出会い、彼の心の中で葛藤が始まる。主演のジョニー・デップに加えて、知的障害を持つ弟を演じたレオナルド・ディカプリオの繊細な演技が素晴らしい。
映画『ギルバート・グレイプ』の作品情報
上映時間:117分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ラッセ・ハルストレム
キャスト:ジョニー・デップ、ジュリエット・ルイス、メアリー・スティーンバージェン、レオナルド・ディカプリオ etc
映画『ギルバート・グレイプ』の登場人物(キャスト)
- ギルバート・グレイプ(ジョニー・デップ)
- アイオワ州の寂れた田舎町で暮らす青年。父は自殺し、その後家を出た兄の代わりに町の小さな食料品店で働きながら一家の生活を支えている。家族思いの優しい青年。
- アーニー・グレイプ(レオナルド・ディカプリオ)
- もうすぐ18歳になるギルバートの弟。知的障害があり、体は大人でも心は幼児のように純粋。自分を守ってくれる兄のギルバートを心から信頼している。
- ボニー・グレイプ(ダーレン・ケイツ)
- ギルバートの母。長男、長女のエイミー、次男のギルバート、三男のアーニー、次女のエレンという5人の子供を持つ。昔はこの地方一の美人だったが、夫が自殺してから過食症となり、200キロ以上の肥満体になってしまった。
- ベッキー(ジュリエット・ルイス)
- 祖母とトレーラーで各地を旅している。自由を愛する個性的な女性で、固定観念にとらわれない自分の目を持っている。
- ベティ・カーヴァー(メアリー・スティーンバージェン)
- 町の保険屋の妻。ギルバートと不倫関係にある。
映画『ギルバート・グレイプ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ギルバート・グレイプ』のあらすじ【起】
ギルバートはもうすぐ18歳の誕生日を迎える弟のアーニーと、1年に1度やってくるトレーラー軍団を待っていた。アーニーには重度の知的障害があり、片時も目が離せない。ギルバートは職場の食料品店にもアーニーを連れて行き、風呂に入れて寝かしつけまでする。小学校の食堂で働いていた姉のエイミーは失業中、高校生の妹のエレンは反抗期。そして母は父が自殺してから7年間も家から出ずに食べ続け、とんでもない肥満体になっていた。ギルバートはそんな家族の面倒を見ている。
保険屋の妻のベティは、若いギルバートを誘惑して2年前から不倫関係を続けている。この田舎町から出たことのないギルバートには、年増のベティさえも魅力的だった。
アーニーは高いところが大好きで、油断するとすぐに高所にあるタンクのはしごを登ってしまう。その度に警察が出動する騒ぎとなり、ギルバートはいつも頭を下げていた。それでもギルバートはアーニーを叱るようなことはしない。その様子をトレーラーのエンジンが故障してこの町に足止めを食らっているベッキーが見ていた。
映画『ギルバート・グレイプ』のあらすじ【承】
ギルバートは口には出さないが毎日憂鬱だった。家ではアーニーの誕生日パーティーをどうするかという話題ばかりで、友人は修理屋のタッカーと葬儀屋のボビーだけ。タッカーは新しくできるバーガー・ショップに就職するつもりで、ギルバートのことも誘う。しかしギルバートはアーニーのことを理解してくれる職場でしか働けない。
ある日、ギルバートは母がいつもいる場所の床が抜けそうになっているのを発見する。太りすぎて2階に行くのも困難になっていた母は、夜もここのソファーで眠っていた。自分の巨体を気にしている母には内緒で、ギルバートはタッカーに床下の修理を頼む。
またタンクのはしごを登ろうとしたアーニーをエレンが殴っているのを見て、ギルバートはエレンをきつく叱る。ギルバートはかわいそうな弟を絶対に守ろうと心に決めていた。
食料品店で買い物をしたベッキーに配達を頼まれ、ギルバートは初めてベッキーとゆっくり話をする。広い世界を見てきたベッキーとの会話は楽しく、あっという間に時間が過ぎる。ギルバートは一旦家に帰り、アーニーを風呂に入れて自分で着替えるよう教える。そしてまたベッキーのもとへ戻り、夜更けまで話し込む。翌朝、ギルバートは裸のまま風呂で震えているアーニーを発見する。ギルバートは心から反省するが、アーニーは風呂を恐れるようになってしまう。
映画『ギルバート・グレイプ』のあらすじ【転】
ベッキーと知り合ってから、ギルバートはベティへの興味を失う。保険屋の夫にこの関係がバレてしまうことも心配で、ギルバートは彼女を避けるようになる。プライドを傷つけられたベティは、ギルバートを選んだのはこの町から出ていかないからだと言い放つ。
ギルバートはアーニーを連れてベッキーを訪ね、彼女と川辺で話し込む。そのすきにアーニーは姿を消し、タンクの上まで登っていた。はしご車で救出されたアーニーは警察に身柄を拘束され、留置場に入れられてしまう。ギリバートの母は可愛い息子を助けるために立ち上がり、警察署へ向かう。母の剣幕に押されて警察はアーニーを釈放してくれるが、町の人々は家から出てきた巨体の母を嘲笑する。
心臓発作で夫を亡くしたベティは、町の人から保険金目当ての殺人ではないかと疑われていた。ベティは子供を連れて町を去っていく。
ギルバートとベッキーは恋に落ちていた。しかしトレーラーのエンジンが直り、ベッキーは明日出発することになる。明日はアーニーの誕生日だった。様々なことでイライラしていたギルバートは、どうしても風呂に入ろうとしないアーニーを思わず殴ってしまう。ギルバートの我慢も限界だった。
映画『ギルバート・グレイプ』の結末・ラスト(ネタバレ)
ギルバートは家を出るつもりで町境まで車を走らせる。アーニーはベッキーのところへ逃げていた。ベッキーは川を怖がるアーニーをうまく誘導し、川遊びをさせてアーニーの体をきれいにしてやる。そしてエイミーとエレンがアーニーを迎えに来る。ギルバートは物陰に隠れてその様子を見ていた。
ギルバートは自分がアーニーを殴ってしまったことにショックを受けて泣いていた。ベッキーは優しくギルバートを抱きしめる。そしてギルバートは自殺した父のことや母のことを話し、その夜ベッキーと一緒に眠る。
ギルバートは家へ帰る。庭では賑やかな誕生日パーティーが始まっていた。アーニーはいつものように木に登ってギルバートが探してくれるのを待つ。それはアーニーの優しさだった。
ギルバートは母にベッキーを紹介する。母はベッキーの内面の美しさを見抜き、ベッキーに会えたことを喜んでくれる。そしてベッキーは旅立っていく。
その夜、母は何かを決意したように2階の寝室へ向かう。ベッドに横になった母は、そのまま眠るように息を引き取る。警察はどうやって母の遺体を運ぶか思案していた。ギルバートは母が笑い者にされることが我慢できず、家財道具を運び出して家ごと母を荼毘にふす。
それから1年後。エイミーの就職も決まり、エレンも転校していた。自由になったギルバートとアーニーは、帰ってきたベッキーのトレーラーに乗り込み、初めての旅へと出発する。
映画『ギルバート・グレイプ』の感想・評価・レビュー
若き日のジョニーデップと障害児役のレオナルド・ディカプリオが見所なこの作品。
家族への愛情と様々なしがらみにとらわれ、小さな町から出て行けないということは、現代社会でも往々にしてありますね。ギルバートが最後に町を離れ、見知らぬ世界への旅にでるシーンは心が温かくなります。
旅立ちの象徴である、亡くなった母親ごと家に火を放つシーンは誰にとっても鮮明に残る映像でしょう。
家族の繋がりと旅立ちの明るさの両方を美しく表現した作品ではないでしょうか。(女性 20代)
超肥満の母、重度知的障害の弟、どうしたって自分を犠牲にするしかない、現実から逃げることのできない主人公を見ていると胸がとても痛い。
自由について深く考えさせられる映画です。
肥満や貧困、田舎町の閉塞感、同時にアメリカの本当の姿も見て取れる作品です。
知的障害を持つ青年を演じたレオナルド・ディカプリオ、主演のジョニー・デップがかすむほどの怪演が印象的です。
アーニーのセリフ「アーニーはどこだ」がいつまでも耳に残っています。(女性 40代)
もっと知られてもいい良作です。
ジョニー・デップ演じるギルバートの葛藤、苦悩が計り知れないくらい大きく、観ていてただただ苦しかったのを覚えています。重度の知的障害を持つ弟、アーニーを演じるのはレオナルド・ディカプリオ。今作での彼の演技は光っていました。
過食症の母もとても優しく、それをわかっているからこそ家族を守るギルバートは正真正銘の大黒柱です。
トレーラーを待つ、兄弟のシーンが印象的で、何度も観返している作品です。(女性 20代)
若き日のジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオが出演するヒューマンドラマ。
夫を亡くしたショックで激太りしてしまった母親・ボニー、知能障害を抱える弟のアーニーを抱え、ギルバートは自分をずっと押し殺してきた。しかし、全国を旅して回るベッキー親子と出会ったのを期に、ギルドートのくすぶっていたものが少しずつ噴き出してくる。
そうした絶妙なストーリーもさることながら、ディカプリオの演技は圧巻。本当に障害を持っているのではないかと錯覚させるほど、もはや群を抜いている。
「最高の映画」としてこのタイトルを挙げる人も多い名作である。(男性 40代)
何気なく見ていたテレビで、この映画を見つけた。最初は何気なく観ていたのが、段々と心が釘付けになり、最後はとても良い気分になったのをよく覚えている。
グレイプ家の日常を中心に知的障害の弟アーニーと太りすぎて動けない母、そして妹2人と暮らす長男ギルバートの心の葛藤やベッキーと出会って変化していく様子が繊細に描かれている。
ギルバートの葛藤が、想いが、絡まった糸のようだったのに、最後はすっかり解けて軽くなった彼は美しかった。(女性 20代)
本作は、主人公ギルバート・グレイプを苛立たせる家族や、生まれ育った土地との葛藤を描いたヒューマンドラマ作品。
ジョニー・デップの弟思いな青年の役どころも素敵だが、幼さの残るレオナルド・ディカプリオの当時まだデビュー間もないのに、演技とは思えない程の自然な演技に驚きを隠せなかった。
当たり前のように家族を愛することが出来る素晴らしさに感動した。
心温まったり切なさで胸が締め付けられたり、人との関わりの大切さをじんわりと感じる作品。(女性 20代)
様々な切なさが丁寧に描かれていて、気づいたら釘付けになって観ていた作品。父親の自殺、ショックで過食症に陥った母、知的障害の弟と、世話をする他の兄弟。イライラが頂点に達し声を荒げてしまうこともあるが、それでも大切な家族だと献身的に支える兄弟達が眩しく見えます。母親を守るための決意、燃える家を眺める兄弟の姿が印象的で、作品と分かっていても幸せを願ってしまった。ベッキーとの青春も美しい。エンジンが直りかけた瞬間に、別れを察してお互い抱きしめ合うシーンが忘れられないです。(男性 20代)
精神を病んだ母と知的障害があって目が離せない弟を家族に持ち、自分はそこの長男で父の代わりに全員を支えていかなければならないというギルバート・グレイプが気の毒だと思ったが、自分の本当にやりたいことは何なのかと葛藤する姿は自分にも共感を与えてくれる部分もあった。
ギルバートが一時いなくなったことで家族にも変化があり、それぞれの成長に繋がっていったようにこの作品は個人の甘えというものに厳しい目を向けているようにも捉えられる。一個人として、母の死というきっかけではあったが自分の道を切り開いていった主人公が素晴らしい。(女性 20代)
レオナルド・ディカプリオは当時18歳くらいですが、知的障害を持つ子供の演技がやけに巧いです。さらにジョニー・デップと共演という、二人の不思議な調和が堪りません。手のかかる弟と超肥満の母親を支えるギルバートの苦悩、しんどさがひしひしと伝わります。時折、押しつぶされそうな心持ちがしました。責任感が強く自己犠牲的なギルバートと、自由かつ聡明なベッキーの対比が非常に良いです。君はどんな生き方を選択するんだ、と提案してくれている気がしました。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
子供の頃から特に束縛されることなく、自分の好きなようにマイペースに生きてきた私は、ギルバートの家族への愛の深さに涙が出るほど感動しました。
異常なまでに太った母親に障害のある弟、そして他の兄弟たち。彼らの面倒を見るギルバートを見ていると、好きなことを好きなだけ出来ることのありがたさや、幸せさを強く感じました。
ギルバートにもアーニーにも心から幸せになって欲しい、自由に生きて欲しいと願います。
レオナルド・ディカプリオの演技はとにかく素晴らしかったです。
レオナルド・ディカプリオの演技が素晴らしく、ディカプリオの才能を再確認した作品でした。家族の問題全てを抱え込んでいるギルバートが不憫で心苦しいはずなのに、とても清々しく、爽やかな印象の作品でした。家族は、かけがいの無い唯一の存在ですが、それ故、家族に縛られてしまったギルバート。しかし、どんなに不恰好な家族でも強い絆で結ばれていて、家族の存在の大きさを感じさせられた静かに感動できる作品です。知る人や知る隠れた名作、もっと多くの人に知って欲しいです。
レオナルド・ディカプリオという俳優の才能を心底感じた作品。『タイタニック』で文字通り一世を風靡した彼が、今もなおハリウッドの最前線に居続ける理由がこれを観れば分かる。“天才子役”などという簡単な言葉にはしたくないが、この作品の彼の演技は間違いなく一見の価値がある。と、ここまで彼の事を褒めておいてなんだが、共演のジョニー・デップの繊細な演技もめちゃくちゃ良いのだ。どこにでも居そうな田舎の青年の、ありふれた人生への絶望や葛藤を、驚くほど自然に演じている。
ハリウッド二大スターの若かりし頃の夢の共演、文句なしの名作である。
まだ若きレオナルド・ディカプリオの演技力が郡を抜いて素晴らしい。知的障害を持つ少年という難しい役柄を見事に演じきっている。
主人公のギルバートは、田舎町で暮らす窮屈さや家族の問題を抱えているが、そこから逃げられない現実に苦しんでいて、その心情を思うと辛さが伝わってくる。それに反して、ベッキーは自分らしく自由な生き方をしていて、ギルバートの理想を表しているかのような存在に思えた。
家を燃やすシーンは衝撃を受けたが、それによってギルバートを縛っていたものから解放され、ようやく自分らしい道を進めるような前向きなラストが良かった。
本作品は意見がわかれるところ。
この映画を名作ととるか、駄作ととるか。
全ての映画はそうであるが、観る人の感覚に委ねられる。
ギルバート・グレイプは背負うものが重すぎる若者であり、家族によって縛られて外にも出られない。
本当は町に出て色んな物を見て生きてみたいはずなのに、それか許されないのだ。
弟は障害があって何をするかわからない、母親は引きこもる過食症。
姉と妹はいるものの長男である自分がしっかりしないといけないという青春期の葛藤を描いている。
物語はシリアスで淡白であるが、そこがまたこの映画の見所である。
何も変えちゃいけない足かせのある若者の重い人生をそこに観ることが出きるのだ。
フィクションではあるが、映像にカラフルなシーンを意識的に省くことによってノンフィクションのような心構えを作ってくれる、そんな映画である。
知的障害があるアーニーを演じるのがディカプリオである。
若干15歳の彼はこの難役を演じきった。
目を離すとどこでも行ってしまい、鉄塔に登るなど周囲を振り回す。
それなのに純粋で優しく家族思いなのだ。
この天使と悪魔とをちらつかせるグレーな存在を見事に表現できている。
彼の存在が無ければ名作にはなり得なかったかもしれない。
近年、映画のメッセージ性が弱くなってきている物が多くなったと感じる。
映画の予算が大きくなればなるほどその残念さは募るばかりである。
しかし本作品の冒頭から最後まで、一貫して描いている家族の絆の強さは凄いものがある。
テーマとしてはありがちではあるが、非常に重みのある濃厚な仕上がりなのだ。
この重厚な雰囲気に浸ってみて欲しい。
知る人ぞ知る名作映画がこれである。
ジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオがお互い難役を演じているシリアスなヒューマン映画。
知的障害を持つ弟を可愛がるのと同時にいらつきもする、当人でないとわからない心の葛藤を上手に描いている。
いくら血が繋がっているからといって一筋縄でいかないのもまた事実。
どんな状態であっても問題の無い家族なんていないのである。
本作品は家族の絆の深さを重厚に表現し、それをネガティブではなくポジティブに変えているラストに好感が持てる。
自分の人生なんてこんなもんなのだと落ち込むばかりのラストでは無いのだ。
静かなのに強いそんな作品。
観ると何らか思うところがある人が多いだろう。
是非観て欲しい1本である。