映画『魔界探偵ゴーゴリII 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚』の概要:ロシアの作家ニコライ・ゴーゴリの著書『ディカーニカ近郷夜話』を基に制作されたダークファンタジー。3部作の第2作目。特殊能力を持つ書記官ゴーゴリが、事件の犯人である黒騎士の捜査をする過程で魔女や闇の妖怪ヴィーと対峙し、自らの出生の秘密に迫る。
映画『魔界探偵ゴーゴリII 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚』の作品情報
上映時間:99分
ジャンル:ファンタジー、サスペンス
監督:イゴール・バラノフ
キャスト:アレクサンドル・ペトロフ、ユリヤ・フランツ、オレグ・メンシコフ、アルチョム・トカチェンコ etc
映画『魔界探偵ゴーゴリII 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚』の登場人物(キャスト)
- ニコライ・ゴーゴリ(アレクサンドル・ペトロフ)
- 小説家を目指して自らの本を自費出版しているが、自己評価が低く落ち込みやすい。病的な青白さで全ての悪を支配する闇の力を持ち、人には見えないヴィジョンが見える。秘密警察の捜査書記官をしている。
- オクサーナ(ユリヤ・フランツ)
- 30年前に沼で亡くなっている粉屋の娘。ゴーゴリに好意を持ち、何かと手助けをする。黒髪の妖艶な美女で、鏡を通して世情を見聞きすることができる水の精。リザに嫉妬心を抱いている。
- グロー(オレグ・メンシコフ)
- 秘密警察の有能な捜査官。難解な事件をいくつも解決へと導いた有名な人物で、ゴーゴリの能力に目をつけ、ディカーニカ村の捜査へと連れて行く。洞察力に優れ頭の切れる人物であったが、黒騎士との対決により焼死したと思われている。
- リザ(タイーシャ・ヴィルコヴァ)
- ダニシェヴェスキー伯爵の妻。ゴーゴリと惹かれ合っているものの、既婚者であるが故に控えている。金髪の美しい女性で、ゴーゴリの小説を愛読している。
映画『魔界探偵ゴーゴリII 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『魔界探偵ゴーゴリII 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚』のあらすじ【起】
1829年、サンクトペテルブルク。秘密警察の書記官ニコライ・ゴーゴリには、人には見えないヴィジョンが見える。その能力は全ての悪を支配する闇の力であり、生まれつきのものだった。そんな彼が、有能な捜査官グローに声をかけられ、ポルタバ州のディカーニカ村にて発生している連続殺人事件の捜査へと向かうことに。ところが、事件には黒騎士という謎の存在が関わっており、対決の果てにグローが命を落としてしまう。残されたゴーゴリは、村の警察署長の協力を得て、たった1人で事件の捜査を続けることにしたのだった。
第3章「魔法のかかった土地」
村のやぶ医者、絵の得意な鍛冶職人、ゴーゴリの長年の従者の4人で、グローが残したトランクを開けると、中には彼が独自に収集した捜査資料が入っていた。村では娘がまた1人、行方不明になっている。資料を漁ったゴーゴリは、黒騎士が祝日に若い娘を襲うという法則を見つける。他にも襲われる娘の人数が総勢13人であることが分かった。
そんな時、血塗れの羊飼いが村へと戻り獣がやって来たと騒ぎ立てる。この件に関して、ゴーゴリは警察署長に森での捜索を依頼。すると、森の中で大量の血痕を発見する。血痕は羊のものだったが、警察署長は全てにおいて否定的で、彼との口論中にヴィジョンを見て失神してしまうゴーゴリ。今回の件も黒騎士の仕業であることが分かる。
その日の夜、ゴーゴリはグローのトランクにあった自分の事件ファイルを開き、新たなヴィジョンを見る。彼は水の精オクサーナから情報を得るべく、深夜に沼へ。オクサーナから秋に咲く花について聞いた。
その花は別命、血の花と呼ばれ生神女庇護祭の日の夜、月明かりを浴びて咲く。花の下には黄金が眠ると言われていた。花を摘めるのは罪なき人のみで、金を掘るためには他に罪なき人の血を注ぐ必要があった。
オクサーナはゴーゴリの能力は先天的で、選ばれた者だと言う。こうなった原因は彼の過去、幼少期にあると告げゴーゴリを沼へと突き落とした。
映画『魔界探偵ゴーゴリII 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚』のあらすじ【承】
ゴーゴリには兄弟が6人いたが、病弱な彼を残し他の兄弟は早逝している。沼の底で両親とリザを見た彼は最後に見覚えのない娘の姿を目にし、沼の傍で目覚めた。その足で宿へ戻ると、悪魔の男と呼ばれるごろつきが血の花と黄金について話しているのを見つける。司祭からその男のことについて聞くことにした。
悪魔の男は村人を堕落させるのだと言う。更に男はクマの小川という場所へ向かい姿を消したらしい。その場所には悪魔がいるともっぱらの噂だった。
鍛冶職人から武器を入手したゴーゴリは、クマの小川を目指して走った。隣村を通りかかったゴーゴリはある女性に声をかけられるが、何も言わずに走り去る。女性はヴィジョンで見た人物であったため、この道で間違いないと思われた。
夜空に月が輝く。クマの小川では血の花が開き、青年が悪魔の男に唆されて花を摘む。すると、水底には黄金が輝いた。彼は悪魔の男に娘を殺せと命令される。そこへ、ゴーゴリが辿り着き制止したものの説得は功を成さず。彼は慣れない銃を発砲し、罪なき青年の命を奪ってしまう。その反動で娘も首筋を斬りつけられ、悪魔の男は姿を変え獣と化した。獣は血の花が咲き、2人の命が奪われたと告げ姿を消す。
ゴーゴリはまだ息があった娘を抱いて村へ戻った。やぶ医者を説得して娘の命を助けるべく奮闘。処置が済んだ時点で娘の息は途絶えていたが、娘は息を吹き返しやぶ医者は立ち直るきっかけを得た。
宿へ戻ると心配したリザが待っている。戻ったゴーゴリを目にした彼女は安堵し、彼に愛を告白。相思相愛だということが判明するのだった。
しかし、翌日。森の中で若い娘の遺体が発見される。お馴染みのマークが残されていたことから黒騎士の仕業である。被害者は昨夜、ゴーゴリに話しかけた娘だった。
次の祝祭日は5日後。ゴーゴリは今度こそ、被害が出る前に黒騎士を止めると決意を固めるのだった。
映画『魔界探偵ゴーゴリII 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚』のあらすじ【転】
第4章「ヴィー」
警察署長の協力を得て祝祭日の夜、若い娘を一か所に集め守ることにしたゴーゴリ。署長は特別法の発令を行ったが、村人は不満だらけでゴーゴリを非難した。
自分の出生の謎を探ろうと決意したゴーゴリだったが、従者から話を聞いても相手にしてくれない。しかし、従者は彼の出生時から両親に仕えており、当時の状況を良く記憶していた。
1809年、ソローチンツィにて生まれたゴーゴリは死産だった。両親はこれまでに5人の子供を儲けたが、死産であったり幼少期に至る前に亡くなったりして子宝に恵まれない。そこで、6人目の子供を助けるため、父親は神へ祈りを捧げた。だが、教会からの帰り、鼻を隠した異様な紳士から声をかけられた父親。子供の命を助けたいあまりに紳士の甘言に乗ってしまった。
祝祭日当日の朝、娘たちの家に黒騎士のマークが一斉に記される。目撃者もなく犬の血液で描かれていた。そして、なぜかダニシェヴェスキー伯爵の豪邸にもマークが記されている。署長とゴーゴリは村の近くにある農場の廃墟を娘たちの隠れ場所に選んだ。
一方、村には悪女と名高い女が住んでおり、鍛冶職人の幼い娘が魔術らしき儀式を行っているのを目撃する。黒騎士のマークの描き方に黒魔術の技法が使われていることから、悪女が黒騎士の共犯者ではないかと疑いがかかる。
ゴーゴリは署長に援軍を頼み悪女の家を訪ねたが、家の中ではすでにフードを被った男が女の胸を杭で貫いていた。ゴーゴリは男に触れた直後にヴィジョンを見てしまい失神。気がついた時には誰もいなかった。
ヴィジョンを見た際、無意識に書いた文字はまるで呪文のような言葉が並ぶばかりで、意味が分からない。その上、警察署長はゴーゴリが犯人ではないかと疑っている様子。
悪女の遺体を解剖。杭にはゴーゴリが書き残した言葉が刻まれていた。女が魔女だと知った何者かが、生き返らないよう杭を刺したと思われる。その夜、宿にて書き記した言葉について、思考していたゴーゴリの前にオクサーナが現れる。曰く、杭は悪霊退治に使う武器らしい。恐らく、魔女殺しの犯人は儀式を終えていない。
映画『魔界探偵ゴーゴリII 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚』の結末・ラスト(ネタバレ)
そこで、ゴーゴリは署長と仲間達と共に待ち伏せをして、魔女の遺体を取り戻しに来た犯人を捕縛。このことでようやく、署長はゴーゴリが犯人ではないと信用してくれる。犯人は尋問に口を開かなかったが、ゴーゴリが書き残した言葉について、呪文に使う闇のラテン語だと述べる。マタイによる福音書の一文らしく、自分は神学者であり祈祷師だと言う。そして、捕縛から逃れると隙を突いて、杭を武器にゴーゴリを人質に取って逃走した。
警察署から逃れた祈祷師はゴーゴリに協力を申し出る。この申し出を断れなかったのは、少なからずゴーゴリが闇の能力を持っているからだ。祈祷師とゴーゴリは生き返った魔女の意識を再び奪い、教会へ向かった。途中、鍛冶職人と遭遇し、警察署長が激怒して2人を追っていると知らされる。
魔女は地獄の妖怪ヴィーを召喚することができる。ヴィーは悪霊に力を授けるため、厄介な妖怪だった。教会にやって来た祈祷師は、ヴィーとの対決に向けて準備を進める。結界を作成し、ゴーゴリにも中へ入るよう促した。ところが、ゴーゴリは円へ足を踏み入れた瞬間、自分が産まれる際のヴィジョンを見る。
その頃、署長は娘たちを予定通り、農場の廃墟へと集めていた。しばし、敵の襲来を待つ。
そうして、いよいよ魔女が復活。祈祷師が聖書の音読を始めると、結界が発動し魔女からの攻撃を防いだ。更に魔女は亡霊や悪霊を呼び寄せ始める。
同時刻、農場には黒騎士が現れ、抵抗も空しく娘たちが襲われてしまう。署長が駆け付けた時にはすでに全滅していた。
結界の周囲を無数の悪霊と亡霊が囲む。床の板が外れ結界が無効になった瞬間、祈祷師が魔女に捕まってしまう。ゴーゴリは祈祷師の代わりに、聖書を音読することになった。そこで、魔女はヴィーを召喚。教会の壁が崩壊し、巨大な妖怪が突如として闇から現れる。ゴーゴリはヴィーと対峙することを余儀なくされるも、オクサーナが助言してくれる。ヴィーには巨大な目があり、見つめる者の命を奪う。ゴーゴリは必死に呪文を唱えヴィーを倒すのであった。
ヴィーが崩壊すると同時に魔女も息絶える。意識を失ったゴーゴリは、自らが産まれた時のヴィジョンを見る。息絶えていたはずの赤子に鼻を隠した紳士が指先を据えると、赤子が息を吹き返し、元気な泣き声を発したのだった。
映画『魔界探偵ゴーゴリII 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚』の感想・評価・レビュー
ゴーゴリシリーズ3部作の第2弾。仲間を得たゴーゴリが次々に起こる事件に翻弄されながら、自らの出生の秘密に迫る。今作では水の精オクサーナからの恋情が増し、伯爵夫人リズとの仲も進展。捜査で忙しいはずが、恋も進展させるゴーゴリの意外な器用さが垣間見られる。
前作では自信のなさが前面に押し出されていたが、今作では自分の能力に対し正面から対峙。怯える様子がかなり軽減されオクサーナとも臆さず接している。黒騎士問題も少しずつ進展しヒントも得られるが、まだ核心に迫っておらず、むしろ逆手に取られる結果となっている。そして、ラストシーンでは出生の秘密が明かされ、最終作への演出も揺るぎない。(MIHOシネマ編集部)
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