映画『GONIN』の概要:バブルが弾け借金を抱えるディスコのオーナー、万代は逆恨みでディスコへ復讐しに来た三屋との出会いを機にヤクザから大金を奪う計画を企てる。集められた5人のメンバーは事務所に強奪へ入り1億円を盗むが、やがて、血で血を洗う闘争が始まってしまう。
映画『GONIN』の作品情報
上映時間:109分
ジャンル:アクション
監督:石井隆
キャスト:本木雅弘、ビートたけし、佐藤浩市、竹中直人 etc
映画『GONIN』の登場人物(キャスト)
- 万代樹彦(佐藤浩市)
- バブルが弾けるまでは、ディスコのオーナーをして名を馳せ寵児として持て囃されていたが今やヤクザの大越組に借金をし、挙句店を奪われそうになっている。誤解から逆恨みされていた三屋が店に訪れたのが出会いとなり、やがて2人は仲間としても相棒としても、やがて、性別を超えた愛情めいた関係になってしまう。
- 三屋純一(本木雅弘)
- 普段はウィッグを被り、口紅を引いて男相手の男娼をしているが飽くまでもふりをしているだけで、やってきた男から暴力で金を奪う美青年。その現場を偶然見てしまった万代のせいで、傷害罪で逮捕されたのだと思い込むが、結局は誤解だと分かり彼の計画に乗る流れに。以来、彼の傍にいることを誓い万代を守るのに奔走する。
- 氷頭要(根津甚八)
- 汚職で首になった元刑事。今はぼったくりバーで用心棒をしている。裏社会にもあれこれツテがあり、銃器の入手等も彼が調達する。妻子とは離婚しており、元の関係に戻りたいために計画に参加を決める。格闘技にも優れ、狂気じみた登場人物の中では比較的まともな人物。
- 萩原昌平(竹中直人)
- キレやすい性格の、リストラされたサラリーマン。バッティングセンターで万代との出会いを機に計画にほぼ無理矢理介入する。武器はバットで暴れ出すと誰かれ構わず振り回す。一応、家族にはマイホームパパな一面を見せてはいるが……。
- ジミー(椎名桔平)
- 元ボクサーで、現在は大越組のチンピラ。パンチドランカーではあるが、身体能力は高く腕前は本物。大越組の売春婦でタイ人のナミィーとは恋仲だが、何よりも彼女の幸せを願っており、ナミィーが組にパスポートを奪われ帰国できないことを悲しんでいる。彼女が組から解放されるよう、計画に乗る。
- 京谷一郎(北野武)
- 金を強奪された後、雇われる凄腕のヒットマン。同性愛者であり、相棒でもあり恋人でもある柴田にはサディスティックな愛を注ぐ。冷徹無比でほぼ最強のキリングマシーン。
- 柴田一馬(木村一八)
- 京谷の相棒で恋人。彼のことは「アニィ」と呼び半ばマゾヒスティックな関係を築く。
- 大越康正 (永瀬敏行)
- 大越組の組長。借金と共に万代のディスコを貰おうと目論んでいる。
映画『GONIN』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『GONIN』のあらすじ【起】
万代は自身が経営していたディスコ、「Birds」で成功していたが、バブルが弾け現在は大越組というヤクザに借金をしている。また、万代は店が繁栄していた頃、路地裏で男娼をしている美青年・三屋が相手の男を殴っている場に居合わせてしまう。こちらに気付いた三屋が、ナイフを持ち襲い掛かってくる――その寸前で目を覚まし、万代はバッティングセンターで憂さを晴らしに行く。そこで、携帯の音がうるさいと隣にいたサラリーマンの中年・萩原に絡まれる。無視して出て行くと、駐車場で逆上した萩原にバットで襲われ殴り返す。
負傷した萩原を送ろうとする万代は、車内で彼の素性を聞く。萩原はリストラされたサラリーマンで、家族にはそれを話せないままに毎晩カプセルホテル暮らしを繰り返しており、仕事で家には帰れない設定になっている。そんな萩原は万代に自分を雇えと履歴書を押し付けて、Birdsにまで勝手に付いてきてしまう。
今では寂れたBirdsには大越組が居座っており、万代は組員らの機嫌を損ね殴られる。そこへ、萩原がバットで参戦し館内は騒ぎとなるが、客の中には万代が悪夢で見る男・三屋がいた。三屋は組員の野本に絡まれるが、ナイフで反撃し怒った野本が拳銃を持ち出すまでに至る。その場を収めたのは大越組の若頭・久松だった。久松は万代に明日、事務所へ来るよう言いつけ撤収していく。三屋がここにいた理由は、かつて、路地裏で会った時に万代が通報したから捕まった。そう思い万代から金を奪いに来たようだが、誤解だったことが分かる。それでも、三屋は万代が成功者だと思い金を要求するが、今の万代は借金苦である。そこで、万代は大越組から共に1億円を奪おうと持ち掛ける。三屋は面白そうに、その計画に乗る。
映画『GONIN』のあらすじ【承】
翌日、事務所へと向かった万代だが、そこで元ボクサーで組のチンピラ・ジミーと出会う。ジミーはパンチドランカーのため、組員らからは疎ましがられるが腕前はまだ健在であり、事務所と行き来できるからと万代は目を付ける。
それから、万代はぼったくりバーの「ピンキー」へ向かい、用心棒の氷頭と合流する。氷頭は汚職で首になった元刑事で、その時から万代とは因縁関係にあったが、万代は氷頭に計画を持ち掛ける。氷頭はその立場上、裏の世界との繋がりも深く、銃器の入手ルートも知っており、また、格闘技の達人であった。万代は、氷頭の離婚した妻への慰謝料を条件に焚き付けその場を去る。次いで万代は事務所で出会ったチンピラ、ジミーを探すため彼の恋人でタイ人のナミィーと接触する。ナミィーは大越組で売春婦として働かされているため、万代はそれを利用しジミーに近づく。ナミィーを解放してあげられる金が手に入るからとジミーは計画に乗り、また先の氷頭もBirdsへと合流する。三屋も加えメンバーが揃った頃、こっそり話を立ち聞きしていたのはいつかのリストラサラリーマン、萩原だった。萩原も加わることとなり、計画がスタートする。
大越組に襲撃を仕掛けるため、万代らはワゴンで待機。事務所に出入りできるジミーが侵入経路の確保をしようとするが追い返され失敗、万代が借金を返しに来たふりをして開けさせることに成功。残りのメンバーは目出し棒と拳銃を装備し突入し、巻き込まれた役を演じながら万代は組長・大越達のいる事務所へと侵入する。銃を突きつけ金の在処を吐かせようとするが、野本が拳銃には屈せず金の場所を言わないため焦れた萩原が発砲。それを皮切りに、若頭の久松が1億円とナミィーのパスポートを出し、受け取ったメンバーは逃亡。万代は飽くまでも被害者のふりをしているため、彼は事務所へ残る。事務所には丁度、五誠会の会長・式根が訪れていた。式根は大越に落とし前をつけさせるため短刀を手渡し去って行く。
一方、逃亡を図った突入メンバーの三屋、氷頭、萩原はBirdsにて落ち合う。萩原がさっさと家族の元へ帰ろうとするが、彼が野本を殺したせいで万代の無事は約束されないだろうと三屋が激怒する。しかし、氷頭は大越組はこの店ごと欲しがっているから殺しはしないだろう、と言う。そこへふらふらとした足取りで戻ってきた万代だったが、彼は命の代わりに指を詰められているのだった。
ジミーはナミィーをタイへ帰せると喜ぶが、乗り込んできた大越組の組員らにすぐ拉致される。ジミーは拷問の末に事実を吐かされ、ナミィーは強姦された上に殺害されてしまう。
映画『GONIN』のあらすじ【転】
三屋はBirdsの従業員として万代の傍にいることになり、その翌日、計画の主犯だった万代の元へとBirdsに乗り込んでくる。リンチに遭う万代を三屋が拳銃で助け出し2人は逃げ出すが、大越組は既に万代の家から萩原の履歴書や、新聞の切り抜きから氷頭と残りのメンバーを探し当てていた。
その頃、式根は乗り込んできた5人の始末のため、殺し屋で同性愛カップルの京谷と柴田を雇うが、大越は自分のメンツが潰れると激怒する。そこへ、全身血まみれでナミィーの服装を着たジミーが復讐に事務所へ現れる。その異様さに圧倒される大越らをよそに、京谷と柴田はジミーをあっさり射殺する。
萩原は盗んだ金を得て家へと帰宅するが、家族の姿が見当たらない。妻と娘、息子を探し家中を歩き回る萩原だったが、彼女らは既に事切れて腐乱死体と化し、蝿が飛び交う。既に萩原自身が、家族を全員殺害していたのだ。風呂場で妻の遺体と戯れる萩原の元へ、京谷が現れ萩原を始末し奪われた金を回収する。柴田は娘の遺体を見ながら、京谷の生い立ちについて触れ怒りを買い殴り飛ばされる。しかし、それを喜ぶかのように嬉々として更に京谷の過去を語り続け、京谷に殴られながら性行為をし始めるのだった。
元妻との復縁を望んでいた氷頭は、レストランにて元妻と娘に会い関係の修復を願う。しかし、京谷らの襲撃に遭い妻子は死亡してしまう。氷頭は命からがら逃亡する。
万代と三屋は仙台へ逃げようとバスの最終便を予約し、バスターミナルへ向かう。三屋は万代と共に居られることに嬉しそうにしていたが、すぐに逃げてきた氷頭と合流する。氷頭は万代に、萩原一家が死亡した記事の載った新聞を見せる。万代は自分のせいだと嘆くが三屋は否定し、氷頭は更に京谷と柴田の存在を報告し去って行く。
万代が出発前に買い物を済ませていると、既に京谷達の手が迫っていた。万代が撃たれ、すかさず万代と三屋は撃ち返し柴田の脚に命中させトイレに逃げ込む。万代は重症だったがすぐにパトカーが来るから大丈夫だと言い、実家の母に金を持ち帰ると言う。3つ数えたら逃げようと言い、最後の1秒で三屋に接吻しながら死亡してしまうのだった。
映画『GONIN』の結末・ラスト(ネタバレ)
氷頭は銃を入手し復讐を誓うが、ニュースで万代の訃報に接し驚愕する。逃げ延びた三屋は万代の後を追おうとするができずに終わり、氷頭と再会する。三屋は氷頭の車の中で、大越組の事務所前で感傷に浸っていた。やがて、氷頭が眠りに落ちている間、大越らが事務所に戻って来る。土砂降りの雨が降る中、三屋は単身飛び出して行き、大越らの子分を撃ち殺す。三屋がピンチに陥った時、氷頭が車で突っ込んできてそれを救う。大越だけは生きており、2人が撃つが大越は立ち上がり笑いながら雨の中で挑発する。防弾チョッキを着ていた大越は辛うじて無事だったのだ。しかし、すぐに氷頭が頭部を撃ち大越も死亡する。三屋と氷頭は京谷らともケリを着けようとするが京谷に先回りされ、氷頭が背後から撃たれ殺害されてしまう。三屋も撃たれるが、弾切れにより辛くも生き延びる。そこへ柴田も現れるが、三屋から京谷を庇い絶命。発狂した京谷はやってきたパトカーに向かい発砲し始め、その隙に三屋は逃亡する。
明くる日、三屋は万代の行く筈だった、彼の実家がある飯田へとバスで向かっていた。座席には万代の遺骨が乗せられており、休憩中に停車している間、三屋は万代の分の飲み物も買い誰もいないバスへと戻って行く。そして、そこへ現れたのは、京谷だった。ほぼ同じタイミングで撃ち合い、相撃ちとなり京谷は「ちょっと休憩」と言いながら座席に腰掛けそのまま死亡する。一方で、三屋も万代の遺骨を抱き締めながら目を開いたままで息を引き取った。その視線は外を眺めたままで、戻ってきた客と運転手らは2人の死体に気付かないままバスは出発するのだった。
映画『GONIN』の感想・評価・レビュー
狂気と血に満ちた最高に渋い映画。俳優陣の豪華さも凄いが、まともな人物がほぼ存在せず、中でも竹中直人演じる荻原の狂いぶりが振り切っている。帰宅直後のシーンは演技と演出が相まって非常に怖い。唯一、常識人と言える氷頭役の根津甚八氏の感情を押し殺したキャラが狂気のバランスを整え均衡が取れているのも良い。改めて名優だったと思う。5人の男達の散り際はどれも凄惨でありながら美しく、北野武の殺戮マシンぶりもその退場も、名悪役として拍手を送りたい。(MIHOシネマ編集部)
なんでこの作品の存在を今まで知らなかったのだろうと後悔した作品。とにかく激しくて、狂っていて面白すぎました。
ビートたけしに佐藤浩市、竹中直人に本木雅弘などとにかく豪華なキャストが揃っているのに、ストーリーは彼らの演技力なんて関係なくなってしまうような血で血を洗う抗争。もちろん彼らの演技あってこそですが、絶対に関わりたくない人たちの世界を覗いた気持ちになれる最高に狂った作品です。(女性 30代)
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