この記事では、映画『グッドナイト・マミー(2014)』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。
映画『グッドナイト・マミー(2014)』の作品情報
出典:Amazonプライムビデオ
製作年 | 2014年 |
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上映時間 | 99分 |
ジャンル | サスペンス ホラー |
監督 | ヴェロニカ・フランツ |
キャスト | ズザンネ・ヴースト エリアス・シュヴァルツ ルーカス・シュヴァルツ ハンス・エッシャー |
製作国 | オーストリア |
映画『グッドナイト・マミー(2014)』の登場人物(キャスト)
- ママ(ズザンネ・ヴースト)
- 事故で負傷し、顔を包帯で覆っている。手術前よりも荒く暴力的な性格になり、息子たちを困惑させる。
- エリアス(エリアス・シュヴァルツ)
- ルーカスと共に母の帰りを待ちわびていたが、母の変貌を不審に思う。
- ルーカス(ルーカス・シュヴァルツ)
- エリアスと共に母の帰りを待ちわびていたが、帰ってきた母から無視され悲しむ。
映画『グッドナイト・マミー(2014)』のネタバレ・あらすじ(起承転結)
映画『グッドナイト・マミー(2014)』のあらすじ【起】
とうもろこし畑で鬼ごっこをしたり、沼地の弾む地面の感触を楽しんだり、ルーカスとエリアスの兄弟は母親が病院から戻って来るのを待ちながら、自然の中で遊んでいた。車のクラクションの音を聞いた二人は急いで家に戻った。物音のする部屋に駆け付けると、母親が窓のブラインドを弄っていた。振り向いた母の顔を見て、二人は驚く。母は顔全部を覆うほどの包帯を巻いていた。母は、泥だらけの二人を見て、風呂に入ってくるように命じる。
病院から戻ってきた母にはある異変があった。何故か彼女はルーカスばかりを無視する。食事のときはルーカスの分だけ用意しないし、遊ぶ時も母はルーカスがいないかのように振る舞う。自分の食事を分けながら、エリアスは何か悪いことをしたのなら早い内に謝るようルーカスに言うが、ルーカスには母が自分を無視する理由に見当がつかなかった。
二人は明らかに母親の様子が変だと話し合った。手術が悪かったんじゃないか。寝る間際、二人は、母が病院に行く前に残した子守唄の録音テープを再生させた。
映画『グッドナイト・マミー(2014)』のあらすじ【承】
真夜中、物音に気付いたエリアスは、洗面所に向かった。すると、そこには包帯を外した母がいて、爛れた肌に軟膏を塗っていた。ガラス越しにエリアスは母と眼が合った。エリアスは慌てて部屋に戻って身を潜めた。
家の呼び鈴が鳴った。どう対応すればいいか困った二人は母親を呼びに部屋に行く。しかし、母親はベッドで眠っていて目を覚まさなかった。来訪者は宅配業者だった。誰が注文したのかも解らない大量の冷凍ピザを置くと、宅配業者は帰っていった。
まだ容体が安定していないという母は天気の良い日もブラインドを閉めたまま部屋から出てこない。エリアスとルーカスは二人だけで森の中で遊んでいた。すると、二人は猫を見つけたので、家で飼うことにした。部屋に猫を隠すと二人の異変を察した母親が部屋に入ってきた。母親は部屋中を捜索するが、二人は猫を隠し通した。
自分たちを脅すように振る舞う母親に、二人は仕返しをすることにした。捕まえた虫を眠る母親の上に放した。母親は目を覚まさず、虫は母親の口の中に這っていった。
映画『グッドナイト・マミー(2014)』のあらすじ【転】
明くる日、ルーカスとエリアスは部屋の壁にかけられた写真の一部が外されていることに気付いた。それはどれも手術前の母親が映っている写真だった。二人はインターネットで母親の名前を検索した。テレビのアナウンサーをしていた母の写真はネット上に沢山載っていた。検索結果から二人は自宅が競売にかけられていることを知る。
ある日、家に連れてきた猫が殺されているのを見つけた二人。母の仕業だと思い、水槽に猫の死体を入れてリビングに置き、暗に母親を非難した。すると母親は激高し、二人が捕まえていた虫を猫の水槽に沈めた。怒ったエリアスは、お前なんか母親じゃないと怒鳴る。すると、母親はエリアスを部屋に連れ込み、あなたが母親だと唱えるよう命じ、それからルーカスとは二度と話さないよう命じた。エリアスが頷かないでいると母親は二人を部屋に閉じ込めた。
二人は髪形を揃え、同じ服を着ることでどちらがエリアスでどちらがルーカスか、母親が区別できないようにした。それから、家を出る準備を始めた。
映画『グッドナイト・マミー(2014)』の結末・ラスト(ネタバレ)
母親の隙を突いて逃げ出した二人は町の教会に助けを求めに行った。一緒に警察へ行って母親のことを証言してほしい。二人は神父の車に乗ったが、連れて来られたのは警察署ではなく、母親が待つ自宅だった。何かあったのか。神父は母親にそう尋ねた。事故で別れが。そこまで言って、母親は口を詰まらせた。
明くる日、母親が眼を覚ますと四肢を拘束されていた。仮面をつけた息子が見下ろしている。解けと息子に命じるが、子供たちは母を返せと、一枚の写真を突きつける。その写真には母と母に良く似た女性が映っていた。息子たちは捕えた母親と写真の母親を見比べて、母親じゃない証拠を探すが外見は母親そのものだった。
ルーカスとエリアスは捕えた母親から本物の母親の居場所を聞き出すため、拷問にかける。虫眼鏡を使って陽の光で肌を焼くが、母親は泣き叫ぶばかりで息子の質問に答えない。口を接着剤で封じたり、歯磨き糸で口の中を痛め付けるが、母親の口から息子が求める答えは出てこない。エリアスは遂に、家に火を付けようとする。母はもう一度「振り」をするから母親だと信じて欲しいと訴える。ルーカスがいる振りをする。彼がまだ生きている振りをすると。エリアスが見ている兄弟は、彼の幻覚だった。エリアスは事故でルーカスが亡くなったことを受け入れられず、幻の彼と遊んでいたのだ。エリアスは最期に母に尋ねた。ルーカスは今、何をしている?しかし、母親にはルーカスの姿は見えない。答えられなかった母親を見捨て、エリアスは家に火を付けた。
真夜中のとうもろこし畑を歩くエリアスとルーカス。畑を抜けて草原に出ると、母親の幻が二人の前に現れた。
映画『グッドナイト・マミー(2014)』の考察・解説(ネタバレ)
映画『グッドナイト・マミー(2014)』のゴキブリの意味は?
映画『グッドナイト・マミー』に登場するゴキブリは、物語全体に漂う不安感や不気味さを象徴する存在として描かれています。一般的に、ゴキブリは不潔さや不快感、そして何かがうまくいっていないことを示唆するシンボルとして用いられることが多いですが、この映画でも同様の役割を果たしています。
特に印象的なのは、ゴキブリがエリアスの体を這うシーンです。このシーンは観客に強烈な不快感を与え、物語の緊張感を高めることに成功しています。また、このシーンは、母親が以前とは違う存在になってしまったことや、エリアスが抱える不安や恐怖心を象徴的に表現しているとも解釈できます。エリアスにとって、母親はもはや愛情深い存在ではなくなっており、ゴキブリの出現はその変化を視覚的に強調しているのです。
さらに、ゴキブリは現実と幻想の境界線が曖昧になるというこの映画のテーマとも深く関連しています。観客は、このゴキブリが実際に存在するのか、それともエリアスの心の中で生み出された幻覚なのかを疑問に感じずにはいられません。つまり、ゴキブリは現実と虚構の曖昧さ、そして登場人物たちの精神的な不安定さを表現する重要なシンボルとして機能しているのです。
映画『グッドナイト・マミー(2014)』とリメイク版との違い
2014年に公開されたオリジナル版の『グッドナイト・マミー』と、2022年に制作されたリメイク版には、いくつかの顕著な違いが見られます。オリジナル版は、オーストリアで製作されたホラー映画で、不気味な雰囲気や最小限のセリフ、謎めいた展開が特徴的です。一方、リメイク版はアメリカで制作され、ホラー要素を保ちつつも、より明快な説明やキャラクターの感情描写に重点が置かれています。
オリジナル版では、観客に多くの謎を投げかける手法が用いられています。母親の正体やルーカスの存在については、あえて明確な説明を避け、観客自身が推理することを促しています。これに対し、リメイク版ではより視覚的かつ感情的な描写が重視され、特に母親とエリアスの関係性については、オリジナル版よりも明確に描かれています。
また、オリジナル版の冷えた印象を与える暗めの映像は、作品全体の不気味さを際立たせる効果がありますが、リメイク版の映像はやや明るめで、登場人物の内面的な葛藤に焦点を当てたシーンが多く見受けられます。この点から、リメイク版は観客により親しみやすい作品となっていると言えますが、その一方で、オリジナル版が持つ独特の謎めいた雰囲気が薄れてしまったという指摘もあります。
映画『グッドナイト・マミー(2014)』の母親の正体は?
映画『グッドナイト・マミー(2014)』において、母親の正体は物語の中心的な謎となっています。物語が進行するにつれ、エリアスとルーカスの兄弟は、母親が「本当の母親」ではないのではないかという疑念を抱き始めます。母親の顔は手術後の包帯に覆われ、彼女の行動も以前と比べて冷淡になっているため、兄弟は不安と恐怖に苛まれるのです。
しかし、物語の終盤になって、母親の真の姿が明らかになります。実のところ、彼女は包帯の下で外見が変わっているだけで、その変化や行動の違いは、手術後の回復期に一時的に見られるものでした。つまり、彼女は紛れもない本物の母親であり、エリアスとルーカスが抱いた疑念は、エリアスの精神的な混乱に起因するものだったのです。
映画のラストシーンで明かされる衝撃の真実は、ルーカスがすでに亡くなっているという事実であり、エリアスがその現実を受け入れられずにいたために、彼の妄想が現実と幻想の境界を曖昧にしてしまっていたのです。母親が変わってしまったように見えたのは、エリアスが愛する兄を失った悲しみと混乱から、母親に対する不信感を募らせた結果であり、実際の母親の行動とは無関係だったのです。
映画『グッドナイト・マミー(2014)』のルーカスは死んでいたの?理由をわかりやすく解説
映画『グッドナイト・マミー』では、双子の兄弟エリアスとルーカスが物語の中心となっていますが、物語が進むにつれて、ルーカスがすでに亡くなっていたことが明らかになります。ルーカスは最初から最後までエリアスと一緒に行動しているように見えますが、実は彼の存在はエリアスの心の中だけに存在していたのです。
ルーカスが死んでいた理由は、過去に起きた事故にあります。しかし、エリアスはその事実を受け入れることができず、愛する兄がまだ自分の側にいると信じ込んでいました。これは、ルーカスを失ったショックと悲しみから、エリアスが現実を否定し、ルーカスの幻覚を見続けていたためです。
母親がエリアスに厳しく接するのは、彼にルーカスの死を受け入れさせるためでした。しかし、エリアスはその現実から目を背け、母親が変わってしまったと感じてしまうのです。ルーカスの存在は、エリアスの心の中で、兄を失う恐怖と悲しみが具現化したものであり、彼が抱える深い心の傷を象徴しているのです。
ルーカスの死という事実は、エリアスにとって受け入れがたい現実であり、彼の心を大きく蝕んでいます。しかし、その真実に向き合うことは、エリアスが前に進むための第一歩なのです。この映画は、愛する人を失った悲しみと、それを乗り越えていく過程を、ミステリアスな物語を通して描いた作品と言えるでしょう。
映画『グッドナイト・マミー(2014)』のルーカスの死因は?
映画『グッドナイト・マミー』では、ルーカスの死因について明確な説明はありませんが、物語の中にはいくつかの示唆が散りばめられています。ルーカスは事故で亡くなったとされており、その事故にエリアスが何らかの形で関与していた可能性が示唆されているのです。
映画の中では、湖でのシーンや、ルーカスがエリアスと母親から責められるシーンが描かれており、これらの場面が事故と関連していると推測できます。この事故がエリアスにとって大きなトラウマとなり、彼は兄がまだ生きているかのように振る舞い続けることになります。エリアスは兄の死という現実を受け入れられず、ルーカスの幻影を見続け、兄がまだ生きているという幻想にしがみついているのです。
ルーカスの死をきっかけに、エリアスの家族は崩壊の危機に瀕します。母親も悲しみと絶望の中で息子との関係を修復しようと努力しますが、エリアスの心は兄の死を受け入れることができず、物語は悲劇的な結末へと向かっていきます。ルーカスの死因は、エリアス個人だけでなく、家族全体に大きな影を落とし、物語の核心となる心の傷となっているのです。
この映画では、ルーカスの死因について明確な答えは用意されていません。しかし、その死が家族にもたらした悲劇と、エリアスの心の中で引き起こした混乱は、物語全体を貫く重要なテーマとなっています。ルーカスの死は、表面的には事故として描かれていますが、その背後には家族の抱える問題が潜んでおり、観客はその謎を解き明かすことで、物語の真の意味を理解することができるのです。
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みんなの感想・レビュー
ルーカスとエリアスが本物の母の居場所を聞き出そうとするシーンは、昆虫好きの子供のイタズラから徐々に過激になっていき、気が付かない間に常軌を逸してしまっているという見せ方がうまい。
ベッドに母を縛る過程やボンドで口をふさぐなどのシーンを全て映すのではなく、残酷描写からは遠いイメージの子供部屋の映像と合わせることで、薄気味悪さと怖さを倍増させている。
見えないからこその恐怖も加わり、想像してしまって気持ち悪くなる部分は多い。
手作りのお面をかぶって母の前に出てくるルーカスとエリアスの姿は、お面の色合いも相まって印象的。
エリアスの夢の中で、母の対内から昆虫が出てくるなど、残酷描写が苦手だったり虫嫌いの場合は気を付けたい。
ルーカスとエリアスが母と手をつなぎ消えていくラストシーンは幻想的で、後味の悪さを少なくさせている。
メインの出演者がルーカスとエリアスの少年2人、そして母の3人で構成されていて、ほとんど家の中だけの撮影という低予算のサイコホラー映画。
母がなぜ整形手術をして父親がいないのか、ルーカスの事故が何だったのかすら描かないために、見ている側も手探り状態で始める作品。
しかしそれらを描かなかったことで、ルーカスが幻だとわかりにくくなっている。
寄付を募りに来た2人組に早く気付いてと焦るお決まりのシーンや、包帯で顔を覆った不気味な母におびえる2人の少年、いつの間にか立場が逆転していくというストーリーの見せ方がうまい。
主人公の幻覚や二重人格というオチは多いので、またこのパターンかと思わせる部分は多い。
エリアスが泥だらけなのに対してルーカスが汚れていないこと、ルーカスの言葉はエリアスが言い直さないと他人に話が通じない、といった部分でルーカスの存在が幻だとわかってしまう。
しかしルーカスとエリアスが双子の兄弟であり、髪型までそっくりににする設定が、どっちが幻覚でどっちが実物だかわかりにくくして見ている側を惑わせる。
また、最初は包帯ぐるぐる巻きの顔で得体のしれない不気味な母と、本物の母親かどうかを疑い怯える2人の少年という構図がいつの間にか入れ替わっているストーリーと、入れ替わったことに違和感を抱かせない演出は上手い。
ルーカスが死んだ事故のシーンを見せないからこそ、疑う余地がない“ルーカスの存在”、中盤まで母の顔が包帯ぐるぐる巻きだからこそ“母は偽物”というエリアスの思い込みに、見ている側も巻き込まれる作品。