映画『グランド・ホテル』の概要:ベルリンの一流ホテルに宿泊する人々の人間模様を描いた群像劇。ずっと同じ建物内で様々な物語が進行していく斬新な脚本が高く評価され、同じ手法の脚本は「グランド・ホテル形式」と呼ばれるようになった。当時のスターを集めた豪華なキャスティングも見もの。
映画『グランド・ホテル』の作品情報
上映時間:113分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:エドマンド・グールディング
キャスト:グレタ・ガルボ、ジョン・バリモア、ジョーン・クロフォード、ウォーレス・ビアリー etc
映画『グランド・ホテル』の登場人物(キャスト)
- ガイゲルン男爵(ジョン・バリモア)
- 高貴な生まれだが、ギャンブルで身を滅ぼし、ホテル専門の泥棒に成り下がった。紳士的で魅力のある人物なので、人からは愛される。
- グルシンスカヤ(グレタ・ガルボ)
- ロシアのバレエ団のプリマドンナ。自分の落ち目を感じて、精神的に不安定になっている。
- フレムヒェン(ジョン・クロフォード)
- 速記者の女性。ルックスがいいので絵のモデルなどもしているが、生活に余裕はない。
- クリンゲライン(ライオネル・バリモア)
- プライジングが経営する繊維工場で経理の仕事をしていたが、余命宣告され、全財産を持ってグランド・ホテルへやってきた。
- プライジング(ウォーレス・ビアリー)
- 繊維会社の社長。義父から引き継いだ会社が倒産の危機に瀕している。傲慢な性格で、人を見下した態度をとる。
映画『グランド・ホテル』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『グランド・ホテル』のあらすじ【起】
ベルリンで最も高級なグランド・ホテルのロビーは、今日も多くの人々で賑わっている。医者から余命宣告を受けたクリンゲラインは、最後に好きなことをしようと、全財産を持ってこのホテルへやってきた。ホテルには、クリンゲラインが大嫌いなプライジング社長も宿泊していた。
プライジングの会社は倒産の危機に瀕しており、他社と合併して生き残りを図ろうとしていた。そのためにはイギリスのマンチェスター社との取引が成立しなければならず、プライジングはマンチェスター社からの連絡を待つ。
有名なバレエ団のプリマドンナをしているグルシンスカヤは、ベルリン公演のため、このホテルに滞在中だ。しかし、最近は自分の落ち目を感じており、リハーサルを休むとごねている。金持ちそうな身なりをしたカイゲルン男爵は、バレエ団の団長に近づき、グルシンスカヤの動向を探っていた。
クリンゲラインは、わがままを言って最高級の部屋を用意してもらう。カイゲルン男爵はクリンゲラインに声をかけられ、気さくに話をする。孤独なクリンゲラインは、話し相手を欲しがっていた。
プライジングは、明日の会議の準備をするため、速記者のフレムヒェンを部屋に呼ぶ。プライジングが風呂から出るのを廊下で待っていたフレムヒェンは、カイゲルン男爵から夕食に誘われる。2人は明日の5時に下のバーで会う約束をする。
映画『グランド・ホテル』のあらすじ【承】
グルシンスカヤは舞台に立つ気力を失っていたが、マネージャーにうまく乗せられ、ようやく劇場へと向かう。彼女がホテルを出た直後、怪しい男がカイゲルン男爵を訪ねてくる。カイゲルン男爵は男の一味に5000マルクの借金をしており、その支払いのためにグルシンスカヤの部屋から真珠を盗むことになっていた。カイゲルン男爵は、今夜それを決行すると約束して、男に汽車の手配を頼む。
プライジングは“マンチェスター社との取引は成立せず”という電報を受け取る。フレムヒェンは、明日また来るように言われ、プライジングの部屋を出る。
ベランダからグルシンスカヤの部屋に侵入したカイゲルン男爵は、宝石箱から真珠を盗む。すぐに退散しようとするが、向こうの部屋のベランダにプライジングがいて帰れない。そうこうしているうちにグルシンスカヤが帰ってきてしまい、カイゲルン男爵はカーテンの陰に隠れる。
今夜の公演も散々で、絶望したグルシンスカヤは、自殺を図ろうとする。カイゲルン男爵は黙っていられず、思わず彼女に声をかけてしまう。間近でグルシンスカヤを見たカイゲルン男爵は、彼女の美しさに参ってしまい、誠心誠意彼女を慰める。最初は不審がっていたグルシンスカヤも、カイゲルン男爵の言葉に慰められ、2人は一夜を共にする。
翌朝、恋に落ちたグルシンスカヤとカイゲルン男爵は、互いの話をする。カイゲルン男爵は、自分が泥棒であることを打ち明け、彼女に真珠を返す。グルシンスカヤはショックを受けるが、“本気で愛している”というカイゲルン男爵の言葉を信じる。
映画『グランド・ホテル』のあらすじ【転】
カイゲルン男爵と出会い、すっかり自信を取り戻したグルシンスカヤは、元気にリハーサルへ向かう。2人は一緒に次の公演場所であるウィーンへ行くことにして、明日の汽車に乗る約束をする。
プライジングの会社の合併会議は難航していた。相手の会社はマンチェスター社との取引がどうなったかを知りたがっていたが、プライジングははっきりとした返事をしない。5時にカイゲルン男爵と約束しているフレムヒェンは、時間が気になって仕方がない。ついに交渉が決裂し、相手が帰ろうとした時、プライジングは“マンチェスター社との取引は成立した”と嘘をつく。相手は態度を急変させて、合併の契約書にサインをするが、プライジングは精神的に追いつめられる。
クリンゲラインは服を新調し、ホテルのバーで贅沢を楽しんでいた。フレムヒェンは、カイゲルン男爵に“クリンゲラインと踊ってやれ”と言われ、クリンゲラインを誘う。しかしプライジングがその邪魔をして、クリンゲラインと口論になる。クリンゲラインは、初めて社長に歯向かい、フレムヒェンと踊る。
マンチェスター社との交渉のため、イギリスへ行こうとしていたプライジングは、フレムヒェンに秘書として同行してくれるよう頼む。自分の体目当てだとわかっていたが、フレムヒェンは高額な報酬を積まれ、その話を受けることにする。
今夜中に5000マルクを用意しなければ殺されてしまうカイゲルン男爵は、金の工面に頭を悩ませる。そして、クリンゲラインを誘い、金持ちを集めてギャンブルをする。クリンゲラインは面白いほど儲けるが、カイゲルン男爵は一文無しになってしまう。興奮したクリンゲラインは、飲みすぎて意識を失う。
映画『グランド・ホテル』の結末・ラスト(ネタバレ)
カイゲルン男爵は、ホテルに長期滞在しているドクターを呼び、クリンゲラインを診察してもらう。部屋の床には大金の詰まったクリンゲラインの財布が落ちており、カイゲルン男爵は、その財布を自分の懐に入れる。意識を取り戻したクリンゲラインは、財布がないことを嘆き悲しむ。良心が痛んだカイゲルン男爵は、さりげなく財布を返してやる。
追いつめられたカイゲルン男爵は、プライジングの部屋へ泥棒に入る。社長に呼び出されていたフレムヒェンも、その部屋を訪れていた。カイゲルン男爵はプライジングに見つかってしまい、激昂したプライジングに殴り殺される。カイゲルン男爵の死体を見たフレムヒェンは、急いでクリンゲラインを呼びに行く。
プライジングは、カイゲルン男爵の方から殴りかかってきたと嘘をつき、クリンゲラインに“フレムヒェンは君の部屋にいたことにしてくれ”と頼む。しかしクリンゲラインはそれを断り、フロントに連絡する。
舞台から戻ったグルシンスカヤは、カイゲルン男爵の部屋の電話を鳴らし続けるが、部屋には男爵のペットの犬しかいなかった。
翌日、カイゲルン男爵の遺体は運び出され、プライジングは逮捕される。事件を知ったグルシンスカヤの付き人は、急いでホテルを出ることにする。グルシンスカヤは、カイゲルン男爵が汽車で待っているものと思い込んだまま、ホテルから去っていく。
カイゲルン男爵を愛していたフレムヒェンは、悲しみに暮れていた。クリンゲラインはフレムヒェンを励まそうと、彼女をパリへ誘う。フレムヒェンは、優しいクリンゲラインに好感を持ち、一緒にパリへと旅立つ。
そしてグランド・ホテルは、何事もなかったように客を見送り、新たな客を迎えるのだった。
映画『グランド・ホテル』の感想・評価・レビュー
分かりやすいストーリーに、感情移入しやすい登場人物たちで違和感なく物語に入り込むことができた。モノクロでも景色が見えるような演出で、その表現力の高さは本当に素晴らしいと思った。当時アカデミー賞の作品賞受賞した作品を、今観ることができて良かったと感動した。
カメラーワークが特に素晴らしく、この作品が80年以上前に作られたと考えると映画界の尊さを改めて感じた。(女性 20代)
ベルリンのグランド・ホテルには様々な人々が訪れては、何事もなかったかのように去っていく。それぞれの人生や、転機に立たされている人間模様が描かれていて、グランド形式の元祖の作品となっている。
ストーリーよりも、そういった人々の人生が交わり、すれ違い、また関わるといった人間の本質が描かれた群像劇だ。
その内容は1932年の作品とは思えない程で、時代に関係なく、現代人でも充分に共感して楽しむことができる。
モノクロの美しさが際立つ映像も素晴らしい。(女性 20代)
映画や舞台の群像劇の形にグランドホテル形式というものがあるがこの作品こそがその由来となる元祖「グランドホテル」。複数の主要な登場人物達それぞれの人生模様が同時に描かれるこのスタイルはその後の多くの作品に影響を残した。今の日本ならば三谷幸喜作品にその影響を見てとれるだろう。
この作品は元祖ではあるが構成はすでに十分洗練されていて群像劇の楽しさを堪能できる。白黒のもたらす雰囲気が非日常性を高め、その当時の様式美への思いを深めてくれる味わい深い作品。(男性 40代)
「グランドホテル形式」という言葉を知ってはいましたが、この作品がその言葉の由来だと初めて知りました。同じ場所で起こる様々な人たちの物語。最近こう言った作品は多いのでこういう技法見たことある!と思う方は多いと思いますが、今作が先駆けだと知って見ると感慨深いものがありました。
分かりやすいストーリーと感情移入しやすいキャラクターたちは見ていて飽きること無く、終始楽しむことができました。今見ても古さは感じず、斬新だなあと思わせてくれる技法は素晴らしいです。(女性 30代)
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