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映画『虐殺器官』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『虐殺器官』の概要:2009年に夭折したSF小説作家、伊藤計劃の作品をアニメ化していく『Project-Itoh』の第1作。世界各所で起こる虐殺の黒幕とされるジョン・ポールというアメリカ人言語学者を、特殊部隊のクラヴィス・シェパード大尉が追う。

映画『虐殺器官』の作品情報

虐殺器官

製作年:2017年
上映時間:115分
ジャンル:SF、アクション、アニメ
監督:村瀬修功
キャスト:中村悠一、三上哲、梶裕貴、石川界人 etc

映画『虐殺器官』の登場人物(キャスト)

クラヴィス・シェパード(中村悠一)
アメリカ情報軍大尉。特殊任務の中でジョン・ポールの影を追い、交錯して行く。最終的には、ジョン・ポールの「虐殺文法」をアメリカの公聴会で使用する。
ウィリアムズ(三上哲)
アメリカ情報軍の一員。クラヴィスの相棒。クラヴィスとは私生活でも交流があり、ピザとビールを片手に、一緒にアメフトをテレビ観戦する間柄。
ルツィア・シュクロウポヴァ(小林沙苗)
プラハでチェコ語の教師をしている女性。ジョン・ポールの愛人だった。プラハに潜入したクラヴィスが最初にコンタクトをとった人物。
ジョン・ポール(櫻井孝宏)
世界各所で起こる虐殺の裏にいるとされている人物。「虐殺文法」を用いて、平和な国をあっという間に、内戦虐殺の世界にすることができる。サラエボの核爆弾テロで妻子を亡くしている。

映画『虐殺器官』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『虐殺器官』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『虐殺器官』のあらすじ【起】

公聴会、質問に対してクラヴィスは何か答えようとしている。

時は遡って2015年、サラエボ。観光客で賑わうこの街で、小型核爆弾を使ったテロが起こる。

その5年後、2020年グルジア、クラヴィスたち特殊部隊は内戦と虐殺が続くこの国に潜入していた。偽のidを利用し、内戦の首謀者のいる本部へと潜入する。クラヴィスが、ベートベンの「月光」が聞こえてくる部屋に侵入するとそこには、ただ一人、暫定政府の大臣がいた。大臣を羽交い締めにし、ここで会うはずだったアメリカ人のことを訊ねるが、大臣は答えない。大臣は、そんなことよりも、なぜこの国がこんな内戦状態に陥ってしまったのか、自分でも解らないという。その時、特殊部隊のアレックスが突如発砲し、その大臣を射殺してしまう。クラヴィスは、感情に異常を検知したアレックスをその場で射殺、死体痕跡を残さぬ処理をして撤退するのだった。

アメリカに戻ったクラヴィスは、いつものようにビールとピザを片手に、ウィリアムズとテレビでアメフトを観ている。観戦中、携帯が鳴り、二人はペンタゴンに呼び出される。先のグルジアでの作戦中の失態の責任はないことが言い渡され、新たな任務につくことになる。新たな任務は、あの日グルジアで現れるはずだったジョン・ポールを追跡することだった。政府は、ジョン・ポールが現れた国では、必ず内戦が起こり、虐殺が起こることを察知しているのだった。

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映画『虐殺器官』のあらすじ【承】

クラヴィスとウィリアムズはプラハに潜入する。そこで、ジョン・ポールの愛人とされるルツィアと接触する。ビジネスマンを装い、彼女にチェコ語を教えてもらう生徒として、彼女と話すようになる。しかし、ルツィアの周辺では、ジョン・ポールの痕跡は発見できいのだった。

ルツィアはMITで言語学を学んでいるときに、ジョン・ポールと出会った。ジョン・ポールは彼女と共に、言語が人間の行動にいかに影響を与えるかを研究していたのだった。

ある日、クラヴィスはルツィアに誘われ、カフカの墓を案内される。さらにクラブに誘われる。そこは認証決済を行わず前時代的な紙幣通貨が利用されるクラブだった。クラヴィスはそこで、ルーシャスを紹介される。ルーシャスは、自由は無制限なものではなく、ある種の自由を捨てて別の自由を買う、自由というのも一種の通貨だという話をクラヴィスにする。

店を出たルツィアは、クラヴィスにジョン・ポールとの過去を話す。そんな二人を、ルーシャスらの「計数されざる者」が襲い、クラヴィスは拘束されてしまう。捕らえられたクラヴィスは、ジョン・ポールと対面し、人間には虐殺を司る器官が存在し、器官を活性化させる「虐殺文法」が存在することを聞く。自分の正体がばれ、ルーシャスたちに殺されそうになるクラヴィスだったが、ウィリアムズら特殊部隊に救出され、アメリカに戻るのだった。

映画『虐殺器官』のあらすじ【転】

ジョン・ポールが、インド・パキスタン国境付近の武装集団にいるらしい、という情報が入り、クラヴィスたちは武装集団の拠点に空から降下をする。拠点のビルに潜入したクラヴィスたちは、そこを守る麻薬で神経を麻痺させられた少年兵たちを次々と殺しながら、目標に近づく。クラヴィスたちは、脳内に入れられたナノマシンのおかげで、少年少女を殺すことに動揺しなくなっているのだった。

そして再び、ジョン・ポールと出会い、彼を拘束し、撤収をするクラヴィス。捕らえられたジョン・ポールは、「虐殺文法」とナノマシンによって感情をマスキングされたクラヴィスたちは似ていると言う。

撤収用のヘリコプターに、ジョン・ポールを乗せ現場を飛び立つが、国籍不明の戦闘ヘリが追撃をしてくる。撤収用のヘリは堕とされ、ジョン・ポールは強奪される。部隊の大打撃を被ったが、クラヴィスは何とか生き残る。敵の死体を解析すると、彼らのIDは既に死んだとされている軍人や、内戦で行方不明になった人たちのものだった。そして彼らも又、痛みや感情をマスキングされていたのだった。

映画『虐殺器官』の結末・ラスト(ネタバレ)

ルツィアとジョン・ポールを探しに、再びクラヴィスは、ヴィクトリア湖畔に潜入する。演説の草案を書いているジョン・ポールと対峙するクラヴィス。そこでジョン・ポールは、
愛するものを守るために「虐殺文法」を使っていると話す。テロで妻子を失った彼は、二度とテロが起こらぬよう、内戦や虐殺を誘発していたのだった。世界を平和な場所と、際限なく虐殺を繰り返す場所に別けてしまえば、殺し合いを続ける彼らは平和な場所にテロを仕掛けることもなくなると考えているのだった。

話す二人に前に、ルツィアが現れる。二人の話を聞いたルツィアは、ジョン・ポールを逮捕して、世界にその事実を伝えて欲しいとクラヴィスに言う。ジョン・ポールも諦め、持っていた銃をクラヴィスに渡す。しかし、その瞬間、ウィリアムズの銃弾がルツィアの頭を貫く。今の世界のバランスの上で生きているウィリアムズにとっては、クラヴィスたちの話は承諾できるものではなかった。

ウィリアムズと対立したクラヴィスは、彼を倒し、ジョン・ポールを連れて脱出をする。ジョン・ポールは、クラヴィスにルツィアの最後の願いを託す。それを聞いたクラヴィスはジョン・ポールを撃ち、彼の「虐殺文法」を持って帰国する。

そして、クラヴィスは冒頭の公聴会に出席する。クラヴィスは、罪を背負い自分を罰することを選んだ。それが、愛しいものを失うことになると解っているが、自分が他者に対して無感覚になってしまう前に、やらなければならないと判断し、アメリカで虐殺器官を発動させる。

映画『虐殺器官』の感想・評価・レビュー

なかなかグロいシーンが多いため、好みが分かれる作品だと思った。情報管理社会となった近未来が物語の舞台になっており、興味深い内容だと思った。なぜ内戦が起こる場所にジョン・ポールがいるのか、彼は何をしようとしているのか、考えながらストーリーを追えたのでとてもおもしろかった。ただ、物語のラストは後味が良かったとは言い難く、何とも言えない気持ちになった。テロを起こさないために内戦を誘発することは、本末転倒のような気がした。(女性 30代)


原作は若くして病死してしまった作家、伊藤計劃の同名デビュー作。彼の長編作品はさほど多くなく、多くの人々を魅了する作品を書く作家でもあったため、早逝が偲ばれる。今作は長編3作品をアニメ化する「Project Itoh」の一環として劇場版化された。
近未来を舞台にした戦争ものであるが、原作を読むにあたりよくぞアニメ化できたと感嘆している。内容としては非常におぞましいシーンが多く、これらをどのように映像化するのかと期待もあった。原作にほぼ忠実に描かれていたため、安心もしたが、映像化したことでより心に迫る作品となっている。内容としては、人を虐殺へと向かわせる文章「虐殺文法」がキーになっており、文法を編み出したジョン・ポールの謎に迫る。非常に奥が深く考えさせられる作品。(女性 40代)


正直かなり難しくて、私の理解力では何度か見る必要がありました。戦争や殺戮を無くすために、虐殺を起こすと言うやり方。それが正しいかどうかは別として、世界を「平和」な場所と「虐殺」の起こる場所に分けるというジョン・ポールのやり方は、なるほどなと納得してしまう部分がありました。
作品を通してかなり過激な描写が多いので、アニメ作品ではありますが見ていてとても疲れます。ストーリー自体は物凄くよく出来ていて面白いので、何度か鑑賞してもっと深く理解したいと思わせてくれる作品でした。(女性 30代)


原作未読で鑑賞しました。監視に支配された社会が舞台で、ディストピア好きにはたまらない雰囲気でしょう。ザ・SFというようなメカには、デザインも秀逸で興奮しました。ストーリー自体は分かりますが、セリフが長く言語学といった専門的な話もあり、やや難解な点もあります。個人的にリアリティを突き詰めていて非常に好きです。主人公の心理描写も理解するのも大変です。映画で大まかになぞって、本でじっくり考えるのもありだと思います。(男性 20代)


原作の小説を読み衝撃を受けたので、こちらもと思って鑑賞してみた。尺が限られているのでどうしても展開は早くなってしまうが、2時間という枠の中によくまとめてある、という感想。

味わい深い作品は敵役にも信念や理念があって、果たしてそちらが正義なのか考えさせるものだ。ジョン・ポールという男は、まさにそれを体現している。自分たちだって世界の別の場所で混乱が起こっているのにある意味、見て見ぬふりをして日常を過ごしているのだ。誰が彼を責められようか。

ジョンの声を担当された櫻井孝宏さんが、怪しげで知的なキャラを良く演じていた。(男性 30代)

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