映画『ダンケルク(2017)』の概要:『インターステラー』のクリストファー・ノーラン監督作品。史上最大の救出作戦「ダイナモ作戦」をもとに描く戦争映画。ドイツ軍によりフランスの町「ダンケルク」に追い詰められ、そこから撤退するイギリス兵たちの姿を描く。
映画『ダンケルク』の作品情報
上映時間:106分
ジャンル:ヒューマンドラマ、歴史、戦争
監督:クリストファー・ノーラン
キャスト:フィオン・ホワイトヘッド、トム・グリン=カーニー、ジャック・ロウデン、ハリー・スタイルズ etc
映画『ダンケルク』の登場人物(キャスト)
- トミー(フィン・ホワイトヘッド)
- イギリス陸軍の二等兵。ダンケルクの市街地でドイツ軍からの銃撃を受け、命からがら海岸までたどり着く。イギリスに向かう救出船に、何とか乗り込もうとする。
- ギブソン(アナイリン・バーナード)
- トミーと共に、ダンケルクからの脱出を試みる無口な兵士。実はフランス兵で、爆撃で死んだイギリス兵の服を着て、認識票もつけ、イギリス軍に紛れて脱出をしようとしている。
- アレックス(ハリー・スタイルズ)
- イギリス陸軍の高地連隊所属の二等兵。部隊の違うトミーと行動を共にする。ムーンストーン号に救出され、イギリスに帰還を果たす。
- ピーター(トム・グリン=カーニー)
- 民間人。ムーンストーン号の船長であるミスター・ドーソンの息子。父、友人のジョージと共に、ムーンストーン号に乗り込みダンケルクへ向かう。
- ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)
- 民間人。小型船ムーンストーン号の船長。ピーターの父親。独断で出航し、ダンケルクへ向かう。戦闘機に精通しており、エンジン音だけで友軍機か敵機かを見分けることができる。
- ジョージ(バリー・コーガン)
- 民間人。ミスター・ドーソンのムーンストーン号に乗り込み、行動を共にする。ピーターの友人。イギリスのために何かしたいという気概を持っていたが、不幸な事故により命を落とす。
- ファリア(トム・ハーディ)
- イギリス空軍所属の戦闘機スピットファイアのパイロット。最初の戦闘で燃料計が壊れてしまい、残燃料が解らないまま飛び続ける。ドイツ軍の戦闘機メッサーシュミットや爆撃機を撃墜し、イギリス兵らを救う。
- コリンズ(ジャック・ロウデン)
- イギリス空軍所属の戦闘機スピットファイアのパイロット。ファリアと共に編隊を組み、ダンケルクに向かう。しかし途中、ドイツ軍の急襲により飛行不能となり、海面に不時着をする。
- ボルトン海軍中佐(ケネス・ブラナー)
- イギリス海軍の将校。ダンケルクの防波堤で撤退作戦の指揮を執る。最後の救出船が防波堤から出るときに、二等兵をその船に乗せ、自らは友軍フランス兵のためにダンケルクに残る。
映画『ダンケルク』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ダンケルク』のあらすじ【起】
この作品は、三つの時間軸で構成されている。一つは、兵士トミーを巡るダンケルクの防波堤での一週間の話。二つ目は、対岸のイギリスから救出のためダンケルクに向かう民間船ムーンストーン号の一日の話。三つ目は、空からダンケルクに向かう戦闘機スピットファイヤの一時間の話。
ダンケルクの市街地で、兵士トミーはドイツ軍から逃げ、何とか海岸に出る。しかしそこには、救出船を待つ兵士たちの長い列が海へと続いていた。そこへドイツ軍の戦闘機メッサーシュミットが襲いかかる。トミーは、知り合ったばかりの兵士ギブソンと共に、医療兵になりすまして船に乗り込もうとする。だが、二人は乗り込んだ医療船から降ろされてしまう。しかし、その医療船はメッサーシュミットの攻撃を受け沈没してしまうのだった。
ドーヴァー海峡を挟んだ対岸のイギリスの港では、民間船の海軍徴用が始まっていた。小型船ムーンストーン号は、船長のドーンソン、その息子のピーター、ピーターの友人ジョージを乗せ、独断で出航する。そして、沖で一人の兵士を救出する。
空では、イギリス空軍機のスピットファイヤ3機がダンケルクに向かっていた。3機は、ドイツ機と遭遇し戦闘状態に入る。スピットファイヤのパイロットのファリアは、ドイツ機を一機、撃墜する。しかし、隊長機が撃墜され、自機も燃料計が破損するのだった。
映画『ダンケルク』のあらすじ【承】
ムーンストーン号の上空を、スピットファイヤ3機が飛んで行く。メッサーシュミットと交戦する前のファリアたちの機体だった。海から救出された兵士は、船の行き先がダンケルクだということを知り、半狂乱になる。ジョージは、彼に突き飛ばされ、船底に落ち、頭を強く打ってしまう。
スピットファイヤは、ダンケルクまで5分のところでドイツ軍爆撃機と遭遇し、交戦をする。コリンズの乗る機体が被弾し、海面に着水する。最後の一機となったファリアの乗る機体の残燃料も少なくなっていたが、それでもメッサーシュミットを追いかけるファリア。彼は、眼下の海上に何隻もの民間船を見るのだった。そして、遠くにドイツ軍爆撃機を発見する。
トミーとギブソンは、高地連隊と一緒に沖に停泊中の艦艇に収容される。しかし、ドイツ軍の魚雷攻撃を受け、その艦艇は沈没してしまう。何とか脱出をした、トミーと高地連隊のアレックスは、救命ボートまで泳ぎつくが定員オーバーで乗せてもらえず、ロープで繋がれ、再びダンケルクの浜へ戻ることになる。
映画『ダンケルク』のあらすじ【転】
ファリアのスピットファイヤは、残り燃料はわずかだが、ドイツ軍爆撃機を追っていた。再度、メッサーシュミットがファリアの機体に襲撃をかけて来る。ファリアがメッサーシュミットと交戦している間に、爆撃機の攻撃が始まり、イギリス軍の駆逐艦一隻を撃沈されてしまう。
再びダンケルクの浜に流れ着いたトミーとアレックスそしてギブソンは、高地連隊と共に、座礁船の中で満潮を待つ。潮が満ちれば座礁船は浮くはずだった。やがて潮が満ち、座礁船は浮き始めるが、ドイツ兵の銃撃で開いた穴から浸水してくる。浸水のため座礁船が、十分な浮力が得られないと判断したアレックスは、ギブソンに銃を向け、犠牲になれと言う。一言も話さないギブソンをアレックスは、ドイツ兵のスパイと思っていた。怯えるギブソンは「自分はフランス兵だ」と、正体を明らかにする。そんな時、船は海面に浮き、エンジンをかけるが、ドイツ軍からの砲撃を受け、ギブソンと共に船は沈んでします。その様子を防波堤で見ていたボルトン中佐は、沖に民間船が次々とやってくる姿を見つける。兵たちは、歓喜の声を上げるのだった。
ジョージの怪我は深刻だった。ムーンストーン号の上空ではドイツ軍の爆撃機と二機のスピットファイヤが交戦していた。撃墜され着水をしたコリンズはキャノピーを開けて脱出しようとするがうまくいかない。コックピットの中には、次々と海水が入ってくる。その時、沈むスピットファイヤのキャノピーのガラスを割ったのは、ムーンストーン号のピーターだった。コリンズが救出されたとき、船内では、ジョージが絶命していた。
映画『ダンケルク』の結末・ラスト(ネタバレ)
座礁船から脱出したトミーたちは、泳いで駆逐艦へ向かうが、駆逐艦はファリアの追っていた爆撃機に攻撃され、沈没してしまう。その爆撃機を、ファリアのスピットファイヤが撃ち落とす。ファリアの機体は、そこで燃料が切れ滑空を始める。撃ち落とされた爆撃機は海面に墜落し、駆逐艦から溢れ出していた重油に火がつく。その火の海から、ピーターが手を引いて最後に救出したのは、トミーだった。直後、メッサーシュミットがムーンストーン号を強襲するが、ギリギリの所で攻撃をかわす。攻撃をかわされたメッサーシュミットは、防波堤で民間船に乗り込む兵士たちに襲いかかる。しかし、滑空するファリアの機体がそのメッサーシュミットを撃ち落とすのだった。そのまま滑空を続け、浜に軟着陸したファリアは、愛機に火を放ち、ドイツ軍の捕虜となるのだった。
ムーンストーン号はイギリスに帰ってきた。港に着くと兵士たちは食事を与えられ、列車に乗って故郷へ帰って行く。翌朝、トミーは新聞に掲載されたチャーチル首相の宣言を、列車の中で読む。そこには、撤退作戦は勝利であり、兵士たちは英雄だと書かれてあった。そして、新聞にはジョージのことも、英雄の一人として掲載をしているのだった。
映画『ダンケルク』の感想・評価・レビュー
超天才ノーラン様の戦争映画。この監督らしくまた運命と戦う人間の話。ではあるが今回は現実の世界で起こったことをベースにしているためにより説得力がありわかりやすい。生と死が交差する戦場でひたすら逃げ隠れするストーリーで、ここまで戦争映画の主人公が武器を持っていないことも珍しい(ハクソー・リッジは例外)。彼がなぜ助かったかはわからないが、彼がなぜ危険な目に遭ったかはわかるラストは秀逸。何度でも言おうノーランは天才。(男性 30代)
第二次世界大戦中の最大の救出作戦を描いた、ノーラン監督の映画です。
ノーラン監督らしく、迫力のある映像とリアルな戦争のシーンが見どころです。どことなくゲームをプレイしているような没入感があり、見えない敵兵の姿が非常に恐ろしく、スリリングな気分を味わえます。
戦争の映画ですので、凄惨な場面も多く出てきます。また、少し構成が複雑なので、一度見ただけでは理解できないところもあるかもしれませんが、ぜひ見ていただきたい映画です。(女性 30代)
どこに逃げれば良いのか分からない絶望感が、ひしひしと伝わってくる作品だった。実話を元に制作されたということもあり、兵士達が爆撃されるシーンは本当に見ているのが辛かった。戦争というのは人が死ぬのだという悲しい現実を、まざまざと突きつけられた気がする。
空、陸、海の3つの視点で描かれていたので、物語に臨場感が増した。民間人で兵士達の救助に向かったドーソン達の行動は本当に勇敢で、誰でも真似できるものではないと思う。(女性 30代)
時代背景や事情にほとんど触れられない(セリフがとても少ない)ので、突然戦場に投げ出された当時の一人になったような感覚だった。これがいいか悪いかは戦争映画を歴史をとして見たい場合と、当時の人間の物語として見たい場合とで変わってくるだろう。自分としては後者として、楽しく見ることができた。音響効果も凄い。いいスピーカーか、ヘッドホンで堪能したい。
しかし、この映画はエンターテインメント重視ではなく、戦争をずっと悲劇として描いているのでラストも希望がなくやや陰鬱な感じで終わる。悪いわけではないが、気分が高揚する話ではない。(男性 30代)
ノーラン作品と言えば必ずと言っていいほど作品の世界に引き込まれてしまう「没入感」が魅力の一つだと思います。現実にはありえないだろうと思う物事でもその没入感は増すばかりで、それがノーランの才能だと思っていましたが、今作はとても現実的なリアルなテーマを題材にしていることもあり、自分が1人の兵士として戦地に立っているような異様なまでの空気感に巻き込まれてしまいました。
戦争だけでなく、そこにある人間ドラマや生きていることの奇跡など観客の心を掴む演出が次々と出てきて、最後まで飽きずに世界観に浸りながら鑑賞出来ました。(女性 30代)
第二次世界大戦中のエピソードを描いた映画は数多くある。しかしそこは奇才クリストファー・ノーラン監督。ちょっと変わった作品に仕上がっている。なんというか「起承転結」のドラマではないのだ。陸海空と大きく3つの視点の話が交差し、しかも説明的な台詞がほとんどないので、感情が一つのレールに乗せられることなく冷静に観ていられる。色々な所に色々な人がいた、ただそれが描かれる。しかしその意味は小さくない。戦争という大きな言葉の影に隠れた一人一人の存在を意識することが、平和を維持する第一歩だからだ。(男性 40代)
ノーラン監督が描く史実、それも戦争映画というのが、観る前はあまり想像できなかったが、ここまで彼特有の世界観がマッチした素晴らしい作品になるとは失礼ながら予想外だった。とにかく言えることはノーラン作品のファンなら間違いなく観た方が良い。
極限まで実写にこだわったからこそ感じられる戦場のリアル、ブルーグレーの画面から漂う物悲しさ、観客の心情に訴えかける音楽、すべてが物語の世界を確立する欠かせない要素となっている。また、陸海空の時間軸をずらすという一見斬新な手法も、物語により深みと行間を与えており唸らされた。ノーラン作品の中でも一二を争うほど大好きな作品。(女性 30代)
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