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映画『判決、ふたつの希望』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『判決、ふたつの希望』の概要:第90回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたレバノン映画。些細なことから口論となったパレスチナ難民の男とレバノン人の男の諍いがやがて法廷での争いとなり、国家をも巻き込んだ騒動へと発展していく。

映画『判決、ふたつの希望』の作品情報

判決、ふたつの希望

製作年:2017年
上映時間:113分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ジアド・ドゥエイリ
キャスト:アデル・カラム、カメル・エル・バシャ、カミーユ・サラメ、リタ・ハイエク etc

映画『判決、ふたつの希望』の登場人物(キャスト)

トニー・ハンナ(アデル・カラム)
キリスト教徒のレバノン人。レバノンの首都ベイルートで車の修理工場を営んでいる。キリスト教政党の熱烈的支持者であり党員。
ヤーセル・サラーメ(カメル・エル・バシャ)
パレスチナ難民。ベイルートで違法建築の補修を施すため、現場監督として働いている労働者。実は不正就労者。
シリーン・ハンナ(リタ・ハーエク)
トニーの妻。出産を間近に控えている。ベイルートから引っ越して静かな街に暮らしたいと考えている。
マナール・サラーメ(クリスティーン・シュウェイリー)
ヤーセルの妻。ノルウェーへ移民したいという願望を持っている。
ワジュディー・ワハビー(カミール・サラーメ)
トニー側の弁護士。ナディーン・ワハビーの父。裁判では実の娘であるナディーンと激しく対立する。
ナディーン・ワハビー(ディアマンド・アブ・アブード)
ヤーセル側の女性弁護士。ワジュディー・ワハビーの娘。トニー側の弁護士である父への対抗心が強い。

映画『判決、ふたつの希望』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『判決、ふたつの希望』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『判決、ふたつの希望』のあらすじ【起】

舞台はレバノンの首都、ベイルート。右派であるキリスト教政党、レバノン軍団の党大会に参加しているレバノン人のトニー。彼はその右派政党を熱烈に支持している党員のため、反パレスチナ難民を煽る演説に聞き入っていた。

トニーはレバノンで車の修理工場を営みながら、身重の妻と共にアパートに暮らしている。妻は田舎町であるダムールに越したいと言うのだが、トニーは聞く耳を持たない。

ある日、トニーが自宅のベランダで花や植木に水をやると、通りに面しているベランダの排水パイプが壊れており、水が垂れ流し状態になっていた。

すると、たまたまその場に居合わせた違法建築補修工事の現場監督を務めるヤーセルに水がかかってしまう。そこで補修工のヤーセルは壊れたベランダの排水パイプをトニーに無断で直してしまうのだった。

勝手に直された排水パイプを見たトニーは怒りに任せて破壊してしまい、水を四方八方にまき散らす。それを見たヤーセルは激怒し、トニーに向かって侮辱的な罵声を思いがけず浴びせてしまう。

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映画『判決、ふたつの希望』のあらすじ【承】

ヤーセルから屈辱的な罵声を浴びせられたことでトニーは激怒。ヤーセルの勤める会社へと出向き、トニーはその会社の社長に謝罪を要求、謝罪をしなければ告訴も辞さないと強硬な姿勢を見せる。何とか事態を収束させようと社長はトニーに謝罪をするようヤーセルを説得し、ヤーセルもそれに応じる。

が、しかしヤーセルがトニーの元へ謝罪をしに行くと、トニーはパレスチナ人であるヤーセルに対して侮辱の言葉を投げかける。その言葉はパレスチナ人にとっては許しがたいものであり、怒りに我を失ったヤーセルはトニーを殴ってしまう。診断の結果、トニーの肋骨はヤーセルに殴られたがために骨折していることが判明する。

その後、トニーの父や妻のシリーンを含め、周囲から咎められるものの、怒りが頂点に達したトニーはヤーセルを正式に告訴することを決める。

やがて裁判が始まり、ヤーセルはトニーを殴打したことに関しては認めたもののトニーから浴びせられた侮辱の言葉に関しては断固として黙秘を通し、一審は証拠不十分として棄却されてしまうのであった。

映画『判決、ふたつの希望』のあらすじ【転】

裁判が控訴棄却になった後、無理がたたったトニーは仕事場で倒れてしまう。夫を心配して駆け付けた妻のシリーンがトニーを引き起こすと今度はシリーンが突然、産気づいてしまうのであった。

病院に搬送されたシリーンは帝王切開出産をするが、生まれてきた子供は未熟児であったため、彼女の子供は生死の境をさまようことになる。

度重なる不幸に憤りを感じたトニーは再びヤーセルに謝罪を求めるため、弁護士ワジュディー・ワハビーに相談を持ちかける。また、ヤーセル側にも女性弁護士ナディーン・ワハビーが弁護を買って出ると自ら申し出があった。そして、この双方の弁護士は異なるアイデンティティを持つ親子でもあったのだ。

やがて、この二人の裁判は控訴審へと移り、いよいよ初公判が始まった。裁判ではトニーがヤーセルに投げかけた侮辱の言葉が白日のもとに晒され、その言葉をめぐって国内ではレバノン人側とパレスチナ難民の間で対立が深まり、マスコミの報道も過熱、些細なことから始まった二人の裁判は国中から注目を浴びることとなる。

映画『判決、ふたつの希望』の結末・ラスト(ネタバレ)

事態を重く見たヤーセルが勤める会社の社長はヤーセルを解雇。トニーの元へは嫌がらせや脅迫電話が相次ぐ。また、世論を巻き込んだ想定外の事態にレバノン大統領自らが仲裁を買って出るも徒労に終わる。

ある日、駐車場に停めていた車に乗り込み、お互い無言で帰途に就こうとするトニーとヤーセル。しかし、ヤーセルの車のエンジンがかからない。一度は無視してその場を立ち去ろうとするトニー。が、ヤーセルの元に引き返すと彼の車を直してみせるのであった。

裁判が進むにつれ、新たな事実が浮かび上がってくる。トニーがダムール出身であったこと、そして、トニーが6歳の時に起きた“ダムールの虐殺”の生き残りであることが弁護士ワジュディーから告げられる。父と共に途中退席してしまうトニー、彼にとってはあまりにも辛い過去の記憶であった。多数のキリスト教徒が住んでいたダムールは報復という名目でパレスチナ人民兵集団とムスリム武装集団によって襲われ、500人以上にも上る虐殺が行われた。

判決の日が近づいてきたある日、ヤーセルはトニーの元を訪れ、ヤーセルは彼に「すまなかった」と一言告げ、去って行った。

判決の日が訪れ、判決が告げられる。2対1で被告であるヤーセルは無罪。裁判所の階段を下りていく二人は目を合わせ、互いに笑みを浮かべるのであった。

映画『判決、ふたつの希望』の感想・評価・レビュー

この作品で描かれる物語は決して他人事ではない。原題のThe Insultとは直訳すると「侮辱」という意味である。

本作品中の登場人物が他者へ投げかける心無い言葉=侮辱が憎悪の連鎖反応を起こす様は我々もどこかで見たことがある風景なのではないだろうか?これはどこの世界に於いても起こりうる出来事であり、私やあなたにも当てはまるテーマなのだ。

巷に溢れかえる民族間対立や人種差別、ヘイトスピーチやヘイトクライム。この作品はまず一人の人間として他者に対する優しさや思いやりを持つことの大切さを思い起こさせてくれる。

まさに襟を正されるかのような思いであった。(MIHOシネマ編集部)

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