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映画『蛇のひと』あらすじネタバレ結末と感想

映画『蛇のひと』の概要:『蛇のひと』は、永作博美主演のヒューマン・サスペンス映画。課長の失踪により彼の捜索を任された主人公は、課長の痕跡を追っていく中で思いもよらない恐ろしい人間性を知っていく。

映画『蛇のひと』 作品情報

蛇のひと

  • 製作年:2010年
  • 上映時間:101分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
  • 監督:森淳一
  • キャスト:永作博美、西島秀俊、板尾創路、劇団ひとり etc

映画『蛇のひと』 評価

  • 点数:90点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

[miho21]

映画『蛇のひと』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)

映画『蛇のひと』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

映画『蛇のひと』 あらすじ【起・承】

今西由紀夫は誰もが認める優秀な会社員だ。人当たりが良く、会社のエースとして慕われている。ところが、部長の自殺と同時に今西の行方が分からなくなる。

今西の部下である三辺は、副社長から今西に1億円横領の疑いがあることを聞かされる。今西の捜索を命じられた三辺は、謎の多い今西の周辺を探り始める。

「いい人」と思われていた今西。しかし、三辺は調べを進める中で今西はそんなにいい人ではないのではないかと感じ始める。
今西の隣人の男は、漫画家を目指して会社を辞めたという。彼は今西が熱心に応援して背中を押してくれたことを感謝していたが、6年も芽が出ない。三辺は今西が漫画に興味がないことを知っていた。
また、今西を好きだったが相手にされず彼の友人と結婚したはいいがDVで離婚した女、今西の勧めでマンションを購入したがローン返済のために夫婦仲が冷え切った友人、今西が修羅場をおさめて妻・愛人と三人で暮らし始めた先輩。
彼らと会って話をする中で今西の居場所はわからなかったが、彼のせいで周辺の人々が少し不幸になっていると気づく。

三辺と一緒に今西の行方を追う後輩の田中は、今西は良かれと思って首をつっこんでしまったのだと言うが、三辺はそうは感じなかった。むしろ、今西は頭が良く計算高い人物であると思う。

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映画『蛇のひと』 結末・ラスト(ネタバレ)

ある日、自殺した部長の妻が1億円を持って会社にやってくる。このことで、嫉妬した部長が今西に横領の罪を押し付けたことが分かる。外部に依頼して金の流れを調べていた今西は部長のやったことに気付き、話をしに自宅まで行ったのだという。自分に嫉妬する部長の様子を見て、今西は自分が横領の罪をかぶって逃げると言ったそうだ。
今西への疑いは晴れたわけだが、三辺には部長の自殺も今西の計算であったとしか思えない。

三辺は今西の実家がある大阪へ行く。今西の父は義太夫の師範だった。しかし今は家族全員と死に別れ、今西は天涯孤独だと聞いていた。

実家は売家で誰もいなかったが、今西の過去を知る幼馴染の男から話を聞くことができた。
今西は妾の子で、父親の内弟子の中ではずば抜けた才能を持っていたが、そのことで本妻の息子である兄や兄弟子らにいびられていたらしい。そして今西は、兄を騙して兄が立つはずだった初舞台に自分が立ち、見事な語りを披露した。この弟の才能に絶望した兄は両親や内弟子を次々と殺し、最後は自分も死んだという。
幼馴染の男はその現場に居合わせ、今西の本性を知る。今西にとって、兄がこんな行動に出ることは計算の内だったのだという。

この話を聞いて、三辺は恐ろしくなる。
今西は周囲の人間を不幸にしている、ならば今度は自分ではないか。三辺は、地方にいる恋人の元に向かう。

やはりそこに今西はいた。今西は、なぜ40近くなって恋人と結婚しないのかと聞く。三辺は答えられない。そんな姿を見て、今西は三辺を計算高く腹の中で何を考えているかわからない人間と断じる。今西がそれを言うかと頭に来るが、冷静に考えれば自分も似たような人間であると気づく。

今西捜索という役目を終えた三辺は、日常の生活へと戻っていった。
ある日、田中と食事をしていた三辺はあの漫画家志望の男がデビューしたのを知る。田中は「今西さんが唯一幸せにした人」と言うが、三辺は「関係ない。この人が努力したからだ」と言った。

映画『蛇のひと』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『蛇のひと』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

解き明かされる「今西」という男の本性

何をやらせても優秀で、口が達者で人に好かれる天性の人たらし。それが周囲の人間が思う今西由紀夫という男の評価だった。
しかし、三辺が彼の痕跡を追っていく中でその完璧な人柄が少しずつ崩れていく。
関西弁で明るくて、それだけでも何となく腹の底が計り知れない人間であると分かるが、三辺が知った本性は思っていたのよりもずっと恐ろしいものだった。

映画の冒頭で、夜会社で残業する三辺が口笛を吹いているのだが、今西は「夜口笛を吹くと蛇が出る」という。蛇(ジャ)=邪ということで、よくない事を呼び込む、という意味。今西は同じことを幼少期に兄弟子から云われている。今西が邪を引き寄せたのか、それとも今西自身が邪な存在だったのか。自分が人を不幸にしてしまうのは、果たして今西自身の意図するものだったのだろうか?それは最後までわからない。

口笛を吹く三辺は果たして?

冒頭と同様、映画のラストシーンも三辺が口笛を吹いている。
今西と再会し、「お前も俺と同じ病気だ」と言われた三辺は、確かに自分も腹の内を表に出さない人間だと自覚し、「あの時蛇が出ると言ったのは自分の中に蛇(邪)が生まれることだったのか」と解釈する。
三辺は否定していたが、恋人といつまでも結婚しないのは、今西が言うように「それほど好きではないけど年を考えると一人でいたくない」からなのだろう。
日常に戻った三辺がその後どういう決断をしたのかはわからないが、口笛を吹いているところを見ると結局結婚することはなかったのではないかと感じた。

映画『蛇のひと』 まとめ

今西という男、知れば知るほどその人間性が恐ろしい。それを解き明かしていく展開も巧妙で、素晴らしいとしか言いようがない。
今西を演じた西島秀俊も、三辺を演じた永作博美も、大げさで分かりやすい演技ではなく、繊細な演技で狂気をみせるのが上手いなあと感じた。最後まで本当の腹の内は明かされることなく、表情もしぐさも穏やか。実際「狂気」ではなかったのかもしれないが、笑顔の裏にそれがあるのかも、と思わせてしまうというのがすごい。

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