映画『ヘルボーイ(2004)』の概要:ブルーム教授はトランダム大修道院の跡地を調べるため、アメリカの兵士と行動を共にしていた。その修道院に辿り着くと、ナチス軍の姿があった。ナチス軍は怪僧ラスプーチンを使い、冥界の扉を開けようとしていた。
映画『ヘルボーイ』の作品情報
上映時間:132分
ジャンル:SF、アクション、アドベンチャー
監督:ギレルモ・デル・トロ
キャスト:ロン・パールマン、ジョン・ハート、セルマ・ブレア、ルパート・エヴァンス etc
映画『ヘルボーイ』の登場人物(キャスト)
- ヘルボーイ(ロン・パールマン)
- 真名アヌン・ウン・ラーマ。冥界で生まれた魔物。全身赤色の皮膚で、頭には折れた角の跡がある。ブルーム教授のことを本当の父のように慕う。リズのことが好き。粗野で乱暴なところもあるが、心の優しい魔物。
- トレヴァー・ブルッテンホルム教授(ジョン・ハート)
- 通称ブルーム教授。若い頃は超常現象研究家だった。その後、「FBI・超常現象調査局」の局長となる。ヘルボーイの育ての父親。癌に侵されており、余命が後僅かしかない。
- エリザベス・シャーマン(セルマ・ブレア)
- 通称リズ。念動発火の力を持つ。幼い頃に苛められていたとき、力が制御できず爆発事故を起こしてしまう。それから、「FBI・超常現象調査局」で育てられる。大人になってからは、自らの意思でベラミ精神病院軽症患者病棟に入院していた。
- ジョン・T・マイヤーズ(ルパート・エヴァンス)
- 新人FBI捜査官。ブルーム教授が自分の死期を悟り、ヘルボーイを託すために自ら選任する。真面目で正義感が強い。
- グリゴリ・E・ラスプーチン(カレル・ローデン)
- ロマノフ朝時代の怪僧。不思議な妖術を使い、魔物を蘇らせたり、人の夢を操ったりすることができる。冥界の扉を開こうと画策する。
- エイブ・サピエン(ダグ・ジョーンズ)
- 半魚人。前頭葉が特別で、物体の過去や未来を見ることができる。「FBI・超常現象調査局」の一員。戦闘は不得意で、考えることも苦手。ルービックキューブも30年で2面しか揃えられなかった。
- カール・ルプレヒト・クロエネン(ラディスラフ・ベラン)
- ドイツ貴族達が創ったオカルト結社「トゥーレ協会」の会長。ナチス一の殺し屋。常に覆面を被っている。中身はラスプーチンが動かしている「人形」。瞼は切り取られ、皮膚も傷跡が無数にあり、血が乾いて粉しか残っていない状態。
- イルザ(ビディ・ホドソン)
- ラスプーチンのことを敬愛しており、優秀な部下でもある。ラスプーチンの右腕。
映画『ヘルボーイ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ヘルボーイ』のあらすじ【起】
1944年ブルーム教授は極秘任務に参加し、スコットランド沖に向かった。敗戦色濃いナチスは科学技術と妖術を使い、戦況逆転を狙っていた。超常現象研究家だったブルーム教授は、28歳の若さで米大統領の顧問に就いていた。だが、10月9日の夜、思わぬ出来事が起こる。
ブルーム教授はトランダム大修道院の跡地を調べるため、アメリカ軍の兵士達と行動を共にしていた。その修道院は現世と冥界の境界に建てられていた。だが、修道院に辿り着くと、そこはナチス軍に占拠されていた。ナチス一の殺し屋で「トゥーレ協会」会長でもある、カール・ルプレヒト・クロエネンの姿もあった。
ナチス軍は冥界の扉を開き、七つの龍心であるオグドル・ヤハドを呼び出そうとしていた。ナチス軍に協力しているグリゴリ・E・ラスプーチンが右手に機械を装着し呪文を唱えると、冥界へと繋がる穴が開いた。アメリカの兵士はナチス軍の思惑を阻止するため、果敢にも挑んでいった。ブルーム教授も怪我を負いながら、混乱に乗じて冥界の扉を開けている装置に爆弾を投げ入れた。カールは爆弾を取ろうとするが手が届かず、爆発に巻き込まれて吹っ飛ばされる。冥界の扉は制御が効かなくなり、グリゴリは引き寄せられるように、冥界の扉を抜けて消えた。扉は消滅するが、長く開いていたため「何か」がこちら側に来ている可能性が高かった。ブルーム教授は周辺をくまなく探すよう兵士に頼んだ。
ブルーム教授は地獄の存在を信じていない兵士に、ラスプーチンのことを話した。ラスプーチンはロマノフ朝時代の怪僧で、招かれた晩餐の席で、毒を盛られても撃たれても殴られても死なず、最後は去勢されて溺れ死んだ人物だった。そのラスプーチンの姿を、今日兵士達は目撃したのだ。兵士がブルーム教授の話に怯えていると、何かの気配を感じた。周辺を探すと、全身赤色で右手が巨大な石で出来ている猿のような生き物がいた。ブルーム教授は撃とうとした兵士を制止し、その生き物に食べ物を与えた。生き物の警戒心が無くなったところで、毛布で包んで保護した。その生き物は魔物の赤ちゃんだった。ブルーム教授はその赤ちゃんの父親になり、「ヘルボーイ」と名付けた。
映画『ヘルボーイ』のあらすじ【承】
現代。ラスプーチンに仕えていたイルザとカルムが聖なる場所に生贄を捧げ、ラスプーチンを蘇らせていた。一方、アカデミーを卒業したばかりのジョン・T・マイヤーズは、「FBI・超常現象調査局」に配属される。そこは世間には知られていない、秘密の局だった。部屋には大きな水槽があり、銀色の皮膚を持つ半魚人が泳いでいた。戸惑うジョンに、局長のブルーム教授がその半魚人のことを教えた。半魚人は孤児院の秘密の部屋で発見され、エイブ・セピアンと言う名を授けられ保護されていた。エイブの前頭葉は特別で、ジョンが何も言っていないのに過去を言い当てることができた。「超常現象調査局」では“特別”なことが“普通”のことであった。ジョンの役目は、夜に現れる怪奇なモノと戦うことだった。
1937年ヒトラーはトゥーレ協会に入った。そこは、ドイツ貴族達が創ったオカルト結社だった。1943年ルーズベルト大統領はヒトラーと対抗するため、「超常現象調査局」を設立した。クレイ捜査官は部屋に隔離されているヘルボーイの世話をジョンに教えた。ジョンはヘルボーイが実在していることに驚きを隠せなかった。ヘルボーイは人間だと60歳だが、年を取るのが遅く20代を超えたばかりだった。
ジョン・ヘルボーイ・エイブ・クレイは、マッケン資料館に現れた魔物を退治しに向かった。何者かが魔除けの像を破壊し、中に封印されていた魔物を蘇らせていた。人間の手には負えないため、エイブが居場所を特定し、ヘルボーイが聖水に魔除けの材料を混ぜたお手製の弾丸で撃つことになった。蘇った魔物は、死の天使サマエルだった。ヘルボーイはサマエルを倒すが、サマエルは“蘇る”ことができた。ヘルボーイは油断しており、サマエルに外に放り出されてしまう。すると、ヘルボーイの本当の父と名乗る人物(ラスプーチン)が現れる。ヘルボーイは撃とうとするが、いつの間にかラスプーチンは消えていた。
ヘルボーイがサマエルに襲われていると、ジョンが助けに現れる。ヘルボーイは助けはいらないと突っぱねるが、腕を負傷していたため、弾丸を銃に込めてもらうことにした。サマエルが街中に逃走してしまったため、ヘルボーイは後を追いかけた。ジョンも追いかけるが、車に撥ねられそうになってしまう。ヘルボーイは車を殴り、ジョンを助けた。そして、サマエルを追いかけ、線路の電気を使ってサマエルを燃やした。
ヘルボーイは脱走し、ベラミ精神病院軽症患者病棟に入院しているエリザベス・シャーマンに会いに行った。一方、エイブは残っていた遺留品から見えた映像を、ブルーム教授に見せていた。それにより、イムザ・カール・ラスプーチンがサマエルを蘇らせたことが分かった。
映画『ヘルボーイ』のあらすじ【転】
ジョンはヘルボーイが会っていたエリザベス・シャーマン(通称リズ)について調べ、幼い頃爆破事故に巻き込まれていたことを知る。実は、リズは「念動発火」という力を持っており、苛められて力が制御できず爆破事故を引き起こしてしまったのだ。ラスプーチンは眠るリズに近寄ると、その日のことを夢に見させ、力を使わせた。ベラミ精神病院は燃え落ちた。
ジョンはヘルボーイと仲良くなろうと頑張っていたが、相変わらず辛辣な態度しか取ってくれなかった。ジョンは辞めることを決意するが、ブルーム教授に引き止められる。ブルーム教授は自分の余命が後僅かであることを打ち明け、自分の死後、人間の心を見失わないようにヘルボーイを支えて欲しいと頼んだ。
サマエルが卵を産んでいる可能性があったため、地下鉄にある貯水槽を捜索することになった。エイブは貯水槽の中に入り、卵を回収していった。だが、卵から孵っていたサマエルに襲われる。その頃、水槽の外にいたヘルボーイは、目の前に現れたカールを追っていた。そこで、カールのアジトを発見するが、同じように卵から孵っていたサマエルに襲われる。ヘルボーイは何とかサマエルを倒した。クレイがカールに襲われてしまい、エイブも瀕死の重傷を負う。クレイは救急車で運ばれるが、朝まで持つか分からない状態だった。
ブルーム教授はクレイの傍にあったカールの遺体を持ち帰り調査した。体は傷の跡が多数残っており、血液は十数年前に乾ききって粉しか残っていない状態だった。ブルーム教授はこの状態のカールを動かせる、ラスプーチンの力に恐怖を抱く。一方、ジョンは超常現象調査局に戻って来たリズと、コーヒーショップに出掛けていた。ヘルボーイはそれが気に入らず、こっそり2人を尾行した。
カールは死んでおらず、目を覚ました。ブルーム教授の前にラスプーチンとカールが現れる。ラスプーチンは未来の映像をブルーム教授見せ、ヘルボーイが冥界の扉を開きこの世の終末をもたらすことを伝えた。ブルーム教授は逃げることなく、カールに殺され亡くなった。戻って来たヘルボーイは、父であるブルーム教授の遺体を抱き締め悲しんだ。
映画『ヘルボーイ』の結末・ラスト(ネタバレ)
ヘルボーイ達はブルーム教授が残した手がかりを元に、ラスプーチンの墓があるモスクワへと向かった。だが、墓の中に入った途端、ヘルボーイ・FBI特捜本部長のトムとジョン・リズは分断されてしまう。ヘルボーイはトムを守りながら奥に進んでいった。そして、トムとヘルボーイは協力して戦い、カールを串刺しにして始末した。
リズ達はサマエルの巣窟に出てしまう。リズはヘルボーイに助けを求めた。ヘルボーイは床に穴を開けて助けに向かった。しかし、数が多く、歯が立たなかった。リズはジョンに自分を殴らせ、力を解放してサマエルを燃やし尽くした。
ジョン達はラスプーチンとイルザに捕まってしまう。ヘルボーイの石で出来た右手は、冥界への鍵となっていた。ラスプーチンはイルザの魂を冥界に送り、ヘルボーイに冥界を開けさせることにした。ヘルボーイの手枷は真名を言わなければ外れないようになっていた。ヘルボーイはリズを助けるために、真名を呟いてしまい、悪の力を手に入れてしまう。そして、冥界の扉の鍵を開けていった。ジョンは手枷を外すと、ブルーム教授の形見の十字架をヘルボーイに投げつけ、本来の自分を取り戻させた。ヘルボーイはラスプーチンを始末するが、そのせいでラスプーチンの体内に宿っていた魔物が蘇ってしまう。
ヘルボーイはリズのことをジョンに任せ、魔物と戦った。魔物を倒した後、リズのところへ戻った。リズはヘルボーイの腕の中で息を吹き返した。2人は抱き合い、キスをした。すると、リズの炎が2人を優しく包んだ。
映画『ヘルボーイ』の感想・評価・レビュー
この作品を支えているのは監督を務めたギレルモ・デル・トロでしょう。
過去にアメコミ原作映画である『ブレイド2』を手がけているが、そこにはデル・トロ監督のこだわりが詰まっていました。
そして、本作でもデル・トロ監督のこだわりが炸裂しています。
まずは主人公のヘルボーイを個性派俳優のロン・パールマンの起用が大きいだろう。
当時、54歳になるロン・パールマンに製作会社は起用に難色を示したが、そこはデル・トロ監督の強い気持ちに勝りました。
ヘルボーイは見た目は怖いが、その中身は純粋な少年のようなキャラクターで、ロン・パールマンはコミックから飛び出したかのような瓜二つな姿と演技である。
アクションは比較的少なめであるが、ヘルボーイの世界観とデル・トロ監督のこだわりが融合した独特な雰囲気は一見の価値がある作品だ。(男性 30代)
非常に大柄な見た目とは裏腹に、純粋で親思い、少し少年のような考えを持つヘルボーイの誕生を描いた作品。ダークヒーローとして、アメコミでもゴーストライダーと並んで人気が高く、ヘルボーイ役のロン・パールマンが非常に良い演技を見せている。本作の敵には、実在した怪僧ラスプーチンを起用しており、ヘルボーイならではの独特な世界観が楽しめる。映画版も高い人気ゆえ、続編には、ヘルボーイ ゴールデン・アーミー、そしてリブート版のヘルボーイが発表されている。(男性 30代)
みんなの感想・レビュー
「スーパーマン」をはじめとした数あるアメコミ原作の実写映画の中でも、人間の養子として育った人間臭い悪魔ヘルボーイが、まるでプロレスか何かのように暴れる姿が爽快感を与えてくれる作品。
監督のギレルモ・デル・トロが原作のファンで、2002年の映画「ブレイド2」を手掛けた際には、美術監督に「ヘルボーイ」の原作者マイク・ミニョーラを招待したという熱の入れよう。
ギレルモ・デル・トロ監督作品の常連で、どの作品でも被り物と特殊メイクに奇妙な動きが印象的なダグ・ジョーンズも、エイブ役で出演している。
ほとんど素顔がわからなくなっている主演のロン・パールマンは、ヘルボーイになるために4時間がかりのメイクを施している。
本作がカルト的人気を得て、続編「ヘルボーイ ゴールデン・アーミー」も制作された。
①外見も中身も濃いキャラクター、ヘルボーイ
60年前にナチスに雇われていたラスプーチンによって、世界を滅ぼすために召喚されたものの、善人のブルーム教授に拾われて大切に育てられた悪魔ヘルボーイの姿がユニーク。
テレビとキャンディーが大好物、キレイとは言い難い部屋には山積みのテレビとたくさんの猫。
大きな右手と切りそろえている頭の2本の角に、日本人としては嬉しくなってしまう、ちょんまげヘアスタイル。
局の世話係と、植毛したことについて笑いあうなど変に親しみやすいキャラクター。
そして大好きなリズに対して告白できずにいるという、繊細な一面も持ち合わせている。
自分専用のサマリタン銃と聖水などが入った特殊な弾丸を持って魔物と戦おうとするのだが、射撃が下手なために、硬く大きな右手と腕力で暴れまわる結果になるのがまた面白い。
魔物に対して文句を言い続けたり、サマエルに向かって「カエル野郎」と言うシーンには笑ってしまう。
②デル・トロ監督らしいマニアックな世界観とストーリー
新人FBI捜査官が奇妙な部署に配属されてトラブルに巻き込まれていく、というのはありがちなストーリー。
しかし、独特の世界感のラヴクラフトの小説クトゥルー神話や、ナチスのオカルト政策といった都市伝説要素まで加えている、なんでもありの設定は独特の魅力がある。
実在した歴史上の人物ラスプーチンが、第三帝国のオカルトアドバイザーとして、史実を超えて登場してくるのも面白い。
しかしブルーム教授が亡くなって落ち込んでいたはずのヘルボーイが、モスクワに到着したときには既に立ち直っているのは、いくら何でも早すぎだろう。
死人を動かしたり会話できる能力があるのを、なぜ誰も知らないのかというツッコミどころもある。
異界との扉を開けずに済んだが、扉を開こうとして角が伸びたヘルボーイが悪魔らしい姿で、それ以前のふざけた雰囲気との差には驚かされる。