映画『ひそひそ星』の概要:鬼才、園子温監督が構想に25年かけて、自ら設立したプロダクションから発表した、モノクロSF映画。人間が絶滅危惧種になった世界で、宇宙船に乗って人間の荷物を配達するアンドロイドの姿を描いた。
映画『ひそひそ星』の作品情報
上映時間:100分
ジャンル:SF、ヒューマンドラマ
監督:園子温
キャスト:神楽坂恵、遠藤賢司、池田優斗、森康子 etc
映画『ひそひそ星』の登場人物(キャスト)
- 鈴木洋子(神楽坂恵)
- 人間の荷物を運ぶ、宅配便配達員のアンドロイド。大きな声で話すことはない。時々、くしゃみをする。同じ工場で生産された鈴木洋子は他にもいるらしく、会ってみたいと思っている。人間の考えることは理解できずにいるが、配達員としての職務は忠実にこなす。宇宙船の冷蔵庫いっぱいにビールを詰め込んでいて、途中の星で買ったタバコを吸うこともある。宇宙船やテープレコーダーの修理をすることができる。
映画『ひそひそ星』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ひそひそ星』のあらすじ【起】
人間は、何度も大きな災害に見舞われ、何度も大きな失敗を繰り返し続けた。
人工知能を持ったロボットは増え続け、人間の数よりも増えて、宇宙を支配するようになった。
人間は、絶滅危惧種になった。
まるで昭和を思わせるようなレトロな内装の宇宙船で、荷物の配達をしているアンドロイドの鈴木洋子。
宇宙船の人工知能671Mは、少年のような声で話しかけることがあった。
掃除中、古いテープレコーダーを見つける。
聞いてみると、荷物を配達するために宇宙船をレンタルした鈴木洋子が、日記代わりに録音していたものだとわかる。
671Mの話し声も録音されていた。
だが、洋子も671Mも、それを覚えていなかった。
10年と3週間後の録音テープで、水道の蛇口が壊れたという報告をきっかけに、不穏な雰囲気が漂い始める。
671Mが、あるはずのない流星群の存在を伝えたり、軌道修正をするよう求めてくるようになった。
原因は、天井のライトの中に入り込んでしまった虫だった。
671Mがパニックになる可能性があり、虫を追い出すことも出来ない。
洋子は、671Mが気付くまで待つことにした。
映画『ひそひそ星』のあらすじ【承】
機械だから仕方ないと671Mに話しかける洋子は、自分の体の電池を交換した。
洋子は、次に宇宙船をレンタルした人の退屈しのぎになればと思い、録音を始める。
次に到着する惑星には、同じファクトリーで生産された、別の鈴木洋子がいる可能性があった。
予定の惑星に到着した洋子は、荷物を届けに向かう。
数日待って、受取人に荷物を渡した洋子は、次の惑星へと出発する。
別の鈴木洋子には、会うことができなかった。
宇宙船の中で、テープに録音を始める洋子。
距離と時間に対する憧れから、テレポーテーションを使わずに配達を行わせる人間の事を、機械である洋子は理解できなかった。
配達物の中身は、写真のネガや絵の具のパレット、鉛筆や紙コップなどだった。
靴底に空き缶をはさめたまま、荒廃した町を歩き回る初老の男性。
拾った自転車に乗ってウロウロしていると、配達を終えた洋子に遭遇する。
宇宙船に戻って出発しようとする洋子を引き留め、飲みに行こうと誘うが、洋子はそれを受け流した。
男性は、早く戻ってこないと自分は死んでしまう、と洋子に告げた。
映画『ひそひそ星』のあらすじ【転】
次の惑星へと出発した洋子。
天井のライトの中にいた虫は全滅していて、洋子はそれを片付けた。
671Mは、男性の趣味が悪いと洋子に皮肉を言った。
テープレコーダーを壊してしまった洋子。
671Mがそれを笑ったため、手に持っていたビールを、671Mにぶちまけてしまう。
テープレコーダーと671Mを修理すると、671Mは洋子に謝った。
洋子も、自分の体の電池を交換した。
天井のライトの中には、まだ虫が残っていた。
1年後、671Mは咳するようになり、洋子はぼんやりすることが増えていた。
次の惑星に到着し、洋子は荷物を届けに向かう。
豪華な屋敷の中で、受取人は死んだようだった。
屋敷の中にいた老人が代わりに荷物を受け取り、洋子は次の星へと出発する。
星に着いて、浜辺で荷物の受取人を待つが、そこには人が多かった。
店を開いている老婆が受取人だと気付き、荷物を渡した洋子は、パッケージに星の絵が描かれている煙草を買った。
そして、次の星へ向かう宇宙船の中で煙草を吸ってみた。
映画『ひそひそ星』の結末・ラスト(ネタバレ)
次の星では、荷物を届けに行く途中で自転車を見つけた。
自転車の荷台に配達物を括り付け、受取人との待ち合わせ場所まで向かう。
しかし途中で自転車は壊れ、洋子は歩いて移動することになった。
靴のかかとに空き缶が挟まるが、洋子はそれを取ろうとはしなかった。
配達が終わって宇宙船に戻ると、洋子はツナギを洗濯機で洗うようにしていた。
しかし、靴の底にはさまった空き缶は、そのままにしておいた。
次の星でも靴の底にはさまった空き缶の音を鳴らし、配達へと向かう。
受取人の少年は、洋子にカメラをプレゼントした。
次の荷物の受取人の夫婦は、洋子と一緒に歩きたいと言った。
それでも、空き缶はそのままだった。
次の星は、人間だけが住んでいる星だった。
大きな音を出すと人間は死んでしまうため、静かにしなければならなかった。
靴底の空き缶を外した洋子は、静かに受取人を探す。
ひそひそ声で受取人の名前を呼び、荷物の受け渡しが終わる。
配達が終わってから、もらったカメラで宇宙船内の写真を撮った洋子。
そして、ずっと靴底についていた空き缶を、配達用の箱に詰め込んだ。
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