この記事では、映画『羊たちの沈黙』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。
映画『羊たちの沈黙』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 1991年 |
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上映時間 | 118分 |
ジャンル | サスペンス ミステリー ホラー |
監督 | ジョナサン・デミ |
キャスト | ジョディ・フォスター アンソニー・ホプキンス スコット・グレン テッド・レヴィン |
製作国 | アメリカ |
映画『羊たちの沈黙』の登場人物(キャスト)
- クラリス・スターリング(ジョディ・フォスター)
- 優秀な成績を収め、上層部からの信頼も厚いFBIアカデミーの生徒。レクター博士との交渉を任される。
- ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)
- 現在では精神病院に収監されている天才精神科医。かつて9人の患者を実際に食べたという犯罪者。
- バッファロー・ビル(テッド・レヴィン)
- 若い女性ばかりを狙い連続殺人を繰り返す殺人犯。この事件の解決の為に、クラリスはハンニバルのもとへ赴くこととなる。
映画『羊たちの沈黙』のネタバレ・あらすじ(起承転結)
映画『羊たちの沈黙』のあらすじ【起】
世間では、とある凶悪な連続殺人事件の話で持ちきりでした。その一連の犯行の犯人はバッファロー・ビルと呼ばれ、若い女性のみを狙いその皮を剥ぎ、最終的に川に流すという酷く残虐的な犯行を繰り返しています。警察は総力を挙げ犯人追跡につとめますが、一向に犯人の目星がつかず捜査は難航していました。
悩んだ末に警察は、とある人物に捜査協力を求めに向かいます。その人物は州立精神病院に収監されていました。上司であるジャックに命じられその病院に向かう事となったのは、未だ訓練生でありながらも優秀な成績で信頼の高い、クラリスというFBI候補生です。クラリスはその病院で、全身と口を拘束された老人に出会います。その男こそが警察が助力を求めた人物、天才精神科医のハンニバル・レクター博士でした。
レクター博士はかつて自身の患者を9人も殺害しそして食べた、という事でこの独房に隔離されていました。クラリスに興味を持ったレクター博士は、クラリスが自分の過去を一つ明らかにする度に、事件に対して一つ助言を与えるという約束を交わします。
映画『羊たちの沈黙』のあらすじ【承】
レクター博士がまず求めたクラリスの過去は、クラリスのトラウマについてでした。クラリスは自身の出来事をレクター博士に話します。満足な様子を見せた博士は、バッファロー・ビルの心理を読み解り始めました。そして博士は、「バッファロー・ビルはかつての自分の患者を思わせる」と意味深なコメントを残すのでした。よく意味を汲み取れないクラリスでしたが、一つの質問に対しては一つの助言、とレクター博士はそれ以上口を開きません。
一方その頃、バッファロー・ビルが新たな人質をとっていました。そしてその誘拐された若い女性は上院議員の娘でした。警察は、早急に事件を解決し何としてでも娘を助けるように、と圧力をかけてきます。レクター博士との交渉は、クラリスに専任されました。
クラリスは何度も繰り返し病院へ向かい、レクター博士の助言を仰ぎます。一方、そんなクラリスの姿を見た病院の院長らチルトン博士がレクター博士の存在価値に気がつきます。彼はレクター博士をどうにか利用して、出世の足掛かりとしようと考えるのでした。
映画『羊たちの沈黙』のあらすじ【転】
チルトン博士は上院議員とのコネクションを作る為に、レクター博士に「上院議員に会い事件に関する情報を言えば、病院での待遇を良くする」と取引を持ちかけました。承諾したレクター博士は、上院議員と会う為に移送されることになりました。しかしその移送の際に生まれた一寸の隙を見逃さず、レクター博士は病院の職員たちを襲います。そして職員たちを殺し、殺した職員の皮を被ったレクター博士は、その場から脱獄することに成功するのでした。
一方クラリスも、今迄レクター博士から受けてきた助言、そして自身で調査した内容を整理した結果、1人の人物に容疑を向けていました。上司であるジャックに報告をしたクラリスでしたが、ジャックも犯人と思しい人物を突き止めたと言います。2人は同時に犯人の家に突入する事としましたが、ジャックが突入した言家は空き家で、犯人の家ではありませんでした。犯人を突き止めたのはクラリスの方だったのです。結果クラリスは、バッファロー・ビルの家に単身で乗り込む結果となりました。
映画『羊たちの沈黙』の結末・ラスト(ネタバレ)
クラリスは慎重に家の中を進んでいきますが、屋内にいたバッファロー・ビルはその気配に気がついていました。彼は一度家の奥に逃げると、クラリスを迎え撃つ為に赤外線スコープを手に取ります。一方クラリスは、家にある古井戸の地下に監禁されたキャサリンを発見します。犯人逮捕の後必ず助ける、とキャサリンに約束したクラリスはそのままバッファロー・ビルを求め暗闇の中を進みます。
そして、バッファロー・ビルの潜伏している部屋に辿り着きました。真っ暗闇の中、クラリスからはバッファロー・ビルの姿が見えていません。赤外線スコープを装着しクラリスの姿がはっきり見えているバッファロー・ビルは、彼女を殺すべく銃を装填しました。しかし、その小さな音に気がついたクラリスは、その音の方を向けて連続して発砲し、バッファロー・ビルを倒したのでした。
そして時は流れ、クラリスのFBIアカデミーの卒業式の日がやってきました。優秀な成績と実績でアカデミーを卒業したクラリスのもとに、一本の電話が入ります。それは脱獄し行方不明となっていたレクター博士からのもので、クラリスの卒業を祝福すると同時に、チルトン博士を殺害する、という犯罪予告の電話でした。
映画『羊たちの沈黙』の考察・解説(ネタバレ)
映画『羊たちの沈黙』はなぜ名作と言われているのか?
『羊たちの沈黙』が名作と評されるのは、その巧みなストーリーテリング、キャラクターの深み、そして心理的緊張感にあると言えるでしょう。この作品は、FBI訓練生のクラリス・スターリングが、知的でありながら極めて危険なカニバリスト、ハンニバル・レクター博士の協力を得て、残虐な連続殺人犯を追うという独特のプロットを持っています。クラリスとレクターの心理戦が、観客を物語に引き込み、大きな緊張感を生み出すのです。
レクターというキャラクターは、洗練された知性と恐ろしい暴力性を併せ持つ魅力的な存在として描かれています。アンソニー・ホプキンスの演技は、レクターの冷静な話し方と無表情の中に潜む恐怖を見事に表現し、多くの観客に強烈なインパクトを与えました。
また、この映画はホラー、サスペンス、心理ドラマという複数のジャンルを巧みに融合させています。単なる残虐シーンの連続ではなく、人間の心の奥底にある闇や本質を探求する心理的なスリルを提供しているのです。
さらに、『羊たちの沈黙』は1991年のアカデミー賞で主要5部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞)を制した数少ない作品の一つであり、その功績は映画史に残る快挙と言えるでしょう。緻密に構築されたストーリー、魅力的なキャラクター、そして俳優陣の名演が高く評価され、名作としての地位を不動のものにしているのです。
映画『羊たちの沈黙』の「服を大事に」が意味するものとは?
『羊たちの沈黙』に登場する「服を大事に」というセリフは、連続殺人犯バッファロー・ビルの異常な行動を象徴する重要なキーワードとなっています。バッファロー・ビルは女性を誘拐し、その皮膚を剥ぎ取って自分の体に纏おうとする異常な欲望を持っているのです。彼にとって服とは単なる衣類ではなく、自分のアイデンティティを変える手段なのです。
バッファロー・ビルは女性になりたいという強い願望を抱いていますが、その欲求を極端な形で実現しようとします。女性の皮膚を使って「新しい自分」を作り出そうとするのです。これは彼が自分のアイデンティティに迷いを感じ、外見を変えることでその問題を解決しようとしていることの表れだと言えます。つまり、「服を大事にする」という言葉は、彼にとって女性らしさや新しい自己を象徴する皮膚のことを指しているのです。
また、このセリフはバッファロー・ビルの狂気と異常性を浮き彫りにしています。通常、服を大切にするという言葉は何ら特別な意味を持ちません。しかし彼にとっては、服が歪んだ欲望を満たすための道具となっているのです。このように日常的な言葉が異常な意味合いを帯びることで、彼の危険性が際立つのです。
「服を大事に」というセリフは、バッファロー・ビルの病的な心理状態と、彼が作り出そうとする「新しい自分」を象徴する重要なフレーズなのです。
映画『羊たちの沈黙』のわからない部分とはどこか?
『羊たちの沈黙』の中で、わかりにくいと感じられる部分はいくつかあります。まず、ハンニバル・レクターとクラリス・スターリングの関係性の深まり方が、やや複雑に描かれています。レクターはクラリスに強い関心を示しながらも、彼女に協力する明確な理由が示されていないため、彼の動機が曖昧に感じられることがあるのです。
また、バッファロー・ビルの異常な行動の背景や理由も、完全には説明されていません。彼が なぜ女性を誘拐し、その皮膚を剥いで自分の体に着ようとしているのか、その詳細な動機は映画の中で明確には語られません。彼の行動の一部は示唆されているものの、観客にとっては彼の狂気の根源を完全に理解することが難しいかもしれません。
さらに、レクターが最後に脱獄する際の詳細な計画や、その後の行動については、わかりにくい点があります。彼がどのようにして脱獄を成し遂げ、姿をくらましたのか、映画ではその過程が詳しく描写されていないのです。観客はその部分を想像するしかありません。
これらの要素は、映画のミステリアスな雰囲気を高めるために意図的に曖昧にされている面もありますが、一部の観客にとっては理解の障壁となる可能性があります。しかし同時に、こうした謎めいた部分が、作品に深みと複雑さを与え、観客の想像力を刺激しているとも言えるでしょう。
映画『羊たちの沈黙』のオルゴールの写真は何を意味していたのか?
『羊たちの沈黙』に登場するオルゴールの写真は、物語の重要な伏線として機能しており、クラリスがバッファロー・ビルの正体に迫る手がかりの一つとなっています。このオルゴールの中には、バッファロー・ビルが所有していた写真が隠されており、その写真には彼の内面や過去に関する重大なヒントが含まれているのです。
一見すると、このオルゴールは美しく無害な装飾品のように見えます。しかしその中に隠された写真は、バッファロー・ビルの歪んだ欲望と狂気を暗示しているのです。写真には、彼が女性の皮膚を使って自分の「衣装」を作ろうとしている姿や、その異常な行動の一端が写し出されています。この写真を見たクラリスは、バッファロー・ビルが単なる連続殺人犯ではなく、もっと深刻な心の問題を抱えていることに気づくのです。
また、オルゴールという美しい物の中に、醜悪な真実が隠されているという対比は、バッファロー・ビルの外見と内面のギャップを象徴しています。彼は美しさを追求する一方で、その手段が極めて残虐で異常なものなのです。
このオルゴールの写真は、バッファロー・ビルの歪んだ欲望を視覚化するとともに、クラリスが彼の心理を解き明かす上で重要な手がかりとなります。そしてそれは、最終的に彼を追い詰める決定的な証拠にもなるのです。つまり、一見すると些細な小道具のように見えるこの写真が、実は物語の鍵を握る重要なアイテムだったのです。
映画『羊たちの沈黙』は実話を基にした作品?
『羊たちの沈黙』は、完全な実話に基づいた作品ではありませんが、作中のキャラクターや事件のいくつかの要素は、実在の連続殺人犯から着想を得ていると言われています。原作者のトマス・ハリスは、実際の犯罪者の心理や行動パターンを参考にしてキャラクターを創造したことで知られているのです。
例えば、映画に登場するバッファロー・ビルのキャラクターは、実在の連続殺人犯エド・ゲインがモデルの一人と考えられています。ゲインは女性を殺害し、その死体から皮膚を剥ぎ取って自分の衣服を作ろうとしたことで有名です。また、バッファロー・ビルの行動には、テッド・バンディやゲイリー・ハイドニックなど、他の実在の殺人犯の特徴も組み込まれていると言われています。
一方、ハンニバル・レクターのキャラクターについては、特定の実在の人物がモデルになっているわけではありませんが、いくつかの犯罪者や精神科医の特徴から影響を受けていると考えられています。レクターは知的で洗練された人物として描かれる一方で、その狂気と残虐性が観客を引きつけるのです。
このように、『羊たちの沈黙』のキャラクターや事件には、実在の犯罪者からインスピレーションを得た部分があるものの、物語全体はフィクションです。しかし、そのリアルな描写と複雑な心理描写が、作品に説得力を与え、観客を物語世界に引き込む大きな要因となっているのです。
映画『羊たちの沈黙』と他シリーズ作品の見る順番や時系列は?
『羊たちの沈黙』は、ハンニバル・レクターを中心とした一連の作品群の一部であり、関連する他の映画作品もいくつか存在します。これらの作品は公開された順番と、物語の時系列が異なっているため、鑑賞する順番によって、物語の理解度や楽しみ方が変わってくることがあります。
物語の時系列で見ると、まず『レッド・ドラゴン』(2002年)が、ハンニバル・レクターの物語の最初に位置します。この作品では、FBI捜査官のウィル・グレアムがレクターと出会い、彼を逮捕するまでの経緯が描かれます。
次に『羊たちの沈黙』(1991年)が続きます。FBI訓練生のクラリス・スターリングが、レクターの助言を得ながら連続殺人犯を追う物語です。
その後、『ハンニバル』(2001年)が続きます。『羊たちの沈黙』から10年後を舞台に、脱獄したレクターとクラリスの再会が描かれます。
したがって、物語の時系列に沿って観る場合は、以下の順番がおすすめです。
1. 『レッド・ドラゴン』(2002年)
2. 『羊たちの沈黙』(1991年)
3. 『ハンニバル』(2001年)
さらに、レクターの若き日を描いた前日譚『ハンニバル・ライジング』(2007年)もありますが、これは彼が凶悪な殺人鬼になるまでの過程を描いた作品で、時系列的には最も古い時代が舞台となっています。
ただし、これらの作品はそれぞれ独立した物語としても楽しめるため、必ずしもこの順番で観る必要はありません。『羊たちの沈黙』は、シリーズの中でも特に高く評価されている作品ですので、まずはこの映画から鑑賞するのも一つの方法でしょう。
映画『羊たちの沈黙』はどこで見れる?フルで無料視聴する方法は?
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みんなの感想・レビュー
残虐なシーンはそれほどないですが、最初から最後までピンと張り詰めた1本のサスペンスの糸があります。
クラリスの危うく脆い心情描写をしながらも、殺人鬼バッファロー・ビルに迫っていく様子が描かれています。レクター博士はぱっと見た感じは普通の紳士ですが、演じているアンソニー・ホプキンスの目がすごいです。瞬きを極力抑えているせいか、狂気の演技を最初は目でしていて、もちろん話し出すとセリフの端々に出ています。
上品で知性溢れるホラーサスペンスという印象の作品です。
面白いサイコホラーは数あれど、ハンニバル・レクターを超えるキャラクターはなかなかいないのではないだろうか。底知れぬ異常性を感じさせつつも、どこかカリスマ的な魅力さえ漂わせるアンソニー・ホプキンスの怪演は本当に素晴らしい。
ジョディ・フォスター演じるクラリスも、若く美しいだけでなく、どこか傷付き影のある女性を見事に演じている。
この二人の駆け引きめいたやりとりが終始スリリングで面白く、物語の大きな魅力となっている。
観終わった後にその意味について考えてしまうタイトルもまた秀逸である。
連続殺人犯であるバッファロー・ビルの気持ち悪さをはるかに上回る、レクター博士の残虐さ、恐ろしさに目が釘付けになる。
レスター博士は殺人鬼ではあるが、元天才精神科医だけあって立ち振る舞いが上品で、鋭い眼差しで何でも見透かしてしまうような人物である。クラリスのことを気に入り、捜査にも協力するが、交換条件をつけて脱出してしまう。安易に彼を利用しようとすると、逆にやり込められてしまうような知能の持ち主なのである。
続編を観たい!と思わずにはいられない。
「本質を見ろ!」と言う言葉は、事件に関してだけでなく、この映画自身に関してのレクター博士から観客へのメッセージなのかと考える。
謎の多いレクター博士のキャラクターは、アンソニー・ホプキンスと言う俳優によって、静かなる殺人鬼を魅せられた。彼が脱走を図るシーンは残虐なのに芸術といってもいいと思えるくらい美しいと思ってしまう。
ガラス越しの会話だけだったクラリスと博士の関係。彼らの真の触れ合いはほんの一瞬のカットなのに、それがまさに官能的。ラストの電話は観客が尾を引くような終わり方になっているのも唸りたくなるほど。結局、どうなるんだ!と想像をかき立てられる作品です。
羊が出てこない羊たちの沈黙という映画。
人の口に骸骨の模様のある蛾が止まっているパッケージなどでもおなじみの、この作品。
バッファロー・ビル事件の被害者の口に詰め込まれていた蛾の繭をイメージしたものなのだが、タイトル「羊たちの沈黙」には結びつかない。
両親を失ったクラリスが預けられた牧場で、殺されてしまった子羊の鳴き声が彼女のトラウマとなり、レクターに話したことからその題名になっていているのだ。
しかも原作が推理小説なので、凝っているのは仕方のない事だが、どうして羊たちの沈黙という題名なのかと思われがち。
クラリスが過去を回想するシーンは現実のシーンに重なっていて幻想的だが、肝心の羊はやはり出てこない。
ラストシーンでクラリスが受けたレクターからの電話で、羊の鳴き声は聞こえなくなったか、と問われるシーンがあり、そこを含めて羊という台詞が出てくるのは2回なので、タイトルがややこしいとツッコミを入れたくなる。
また、個人的な話は上司から止められているにもかかわらず、ペラペラと話してしまうクラリスには、少し不安になる。
グロテスクな描写が少なくミステリーが強めの見やすい映画。
ハンニバル・レクターのシリーズは、猟奇的でグロテスクな表現が多い。
だが、この作品では極力映さないようにしていたり、白黒写真でごまかしている場面が多い。
グロテスクな描写が苦手でも、比較的見やすいだろう。
だが、映像が無くても台詞では猟奇的な発言は多い。
レクターが脱獄するシーンだけは特種メイクにとても凝ったようで、紳士的に振舞っていた彼が「食人」をするシーンは気持ちが悪い。
紳士なハンニバル・レクター博士と、殺人鬼ハンニバル・レクターを表現するのには、十分過ぎる演技力と演出だ。
しかしそれが一種の面白さでもあり、ミステリー好きにはたまらない映画だろう。
トマス・ハリスのハンニバル・レクターシリーズで、リメイク作品を除いて4作品ある映画の中で時系列では3番目にあたる作品。
また、アンソニー・ポプキンスが演じたハンニバル・レクターの最初の作品でもある。
当時のアカデミー賞をいくつも獲得したことでも知られる名作で、何度見ても引き込まれる面白さ。
猟奇的な事件という題材があり、近年では残酷描写に頼ってしまうであろうストーリーだが、グロテスクな描写を抑えたことでミステリーに集中できる。
また、意味ありげなラストシーンが後を引くので、続編も見たいという気にさせる。
映画は見たことが無くても、タイトルやポスターだけなら耳にしたり目にした事はあるのではないだろうか。
羊たちの沈黙のポスターを推理ドラマなどで目にする事もあり、知名度の大きさは底知れない。