映画『ハンニバル(2001)』の概要:映画史に名を残す名作、『羊たちの沈黙』の続編にあたる今作。長い逃亡生活を続けていた、怪演アンソニー・ホプキンス演じるハンニバル・レクターが再び世間にその姿をあらわす。
映画『ハンニバル』の作品情報
上映時間:131分
ジャンル:サスペンス
監督:リドリー・スコット
キャスト:アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア、ゲイリー・オールドマン、ジャンカルロ・ジャンニーニ etc
映画『ハンニバル』の登場人物(キャスト)
- ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)
- 著名な精神科医でありながら、多くの人間を『食った』ため、警察に逮捕されていた。脱獄していたが、再び世間に姿をあらわす。
- クラリス・スターリング(ジュリアン・ムーア)
- 前作で、レクターの協力を仰ぎ共に凶悪事件を解決した。なぜかレクターに気に入られており、今回も事件に巻き込まれる。
- メイソン・ヴァージャー(ゲイリー・オールドマン)
- 以前レクターに殺されかけた人物。レクターに強い恨みを抱いており、彼を殺すことを誓っている。
- レオナルド・パッツィ(ジャンカルロ・ジャンニーニ)
- 偶然レクターと知り合った刑事。レクターが賞金首であることを知り、彼を捕らえようとする。
映画『ハンニバル』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ハンニバル』のあらすじ【起】
世間を騒がせたバッファロー・ビルを捕らえるために、クラリスが助けを求めた囚人ハンニバル・レクター。彼は天才的な精神科医でありながら、多くの人を食べて殺した凶悪な殺人犯である。事件は無事に解決したものの、ハンニバルはその混乱に乗じて牢屋から脱走した。
それから10年の月日が経ったある日、ハンニバルに強い恨みを持つメイスンという男が動きはじめていた。彼はハンニバルから生き残った唯一のターゲットだったが、しかし、彼に負わされた傷は未だ癒えていなかった。
一方、バッファロー・ビルの事件の際にはまだ若手だったクラリスも、今ではすっかりベテランのFBI捜査官となっていた。しかし、そんなクラリスは今、上司のミスを押しつけられ窮地に陥っていた。そんなクラリスに、メイソンはレクターをFBIが指名する、十大凶悪犯の中に加えろと命じてきたのだった。
そして、別件で動いていたクラリスをレクター捜査に戻そうと考えたのだ。しかし、肝心のレクターはあのバッファロー・ビルの事件以降、誰にも見つかることなく姿をくらましていた。
映画『ハンニバル』のあらすじ【承】
その肝心のレクターは、イタリアのフィレンツェで悠々自適な生活を送っていた。フェルという偽名を使ったレクターは、司書として勤務していた。そんなレクターの元を、パッツィという警官が訪れる。レクターの前任者が行方を眩ましているため、何か手がかりがあれば知りたいというのだ。
一方、その頃クラリスは一件の手紙を受け取っていた。それはレクターからのもので、そろそろ殺人を再開するというメッセージがこめられていた。クラリスは、その手紙から漂った香りをもとに、レクターが現在日本かヨーロッパのいずれかにいることを突き止めるのだった。2つの国の香水店の監視カメラの映像を取り寄せたクラリスは、その一つにレクターの姿を見つけるのだった。
一方、パッツィはレクターが懸賞金のかかった犯罪者であることを知る。その懸賞金をかけていたのは、他でもないメイソンだった。証拠にレクターの指紋を求められたパッツィは、スリ師を雇いレクターと接触させる。スリ師はレクターによって殺されるが、パッツィは見事指紋を手に入れることに成功するのだった。
映画『ハンニバル』のあらすじ【転】
そして、レクターの居場所を知ったメイソンが動き出す。一方、ここまで事が順調に進んだパッツィは驕っていた。自分の行動をレクターが全く気づいていないと思っていたのだ。しかし、レクターは気づいていた。そして、レクターはパッツィの腹部を切り裂くと、彼を殺してしまうのだった。
一方、メイソンはクラリスを利用してさらにレクターを追い詰めようとしていた。彼はクラリスを免職処分に追いやったのだ。落ち込むクラリスだったが、そんな彼女にレクターは接触を図る。クラリスは不屈の心でレクターを追うが、そんな二人を追っている者がいた。他でもない、メイソンである。
メイソンは部下達を使いレクターを拉致すると、彼を十字に磔にしたのだ。レクターは人を食うため、その顔にはマスクがつけられている。メイソンは、レクターへの恨みを晴らすため非道な方法を考えていた。メイソンは何匹もの凶暴な豚を用意した。生きたまま、豚にレクターを食わせようと考えたのである。
映画『ハンニバル』の結末・ラスト(ネタバレ)
しかし、そこにクラリスが突入してくる。クラリスはメイソンの部下を何人か倒すものの、肩に銃弾をくらいそのまま気絶してしまった。しかし、部下が血を流したことで、獰猛な豚達は血の匂いをする男達に群がった。レクターはメイソンの部下を仲間につけると、メイソンを豚の群れの中に突き落とさせる。そして、レクターは気絶したクラリスを連れてその場を優雅に後にするのだった。
気がついたクラリスは、レクターの隠れ家にいた。隙を見てレクターを攻撃しようとするクラリスだったが、中々それは叶わない。しかし、レクターが一瞬だけ見せた隙を見逃さなかったクラリスは、彼に手錠をはめることに成功するのだった。レクターは刃物を振りかぶると、なんと自分の手を切り落とした。手を犠牲に、手錠から逃れたのである。そして、レクターはクラリスをそのままにその場を後にし、再び行方知れずとなった。
その後、レクターは飛行機に乗っていた。美食家であるレクターは、自分で持参した料理を食べていた。そして、それは殺した人間の肉や脳みそだったのである。
映画『ハンニバル』の感想・評価・レビュー
クラリスとレクターが再会することは、二人が出会ったその時から定められていたのではないかと感じるくらい、運命的な出来事に思える。
二人の間に存在する感情は、友情なのか恋愛感情なのかは分からない。かといって、親と子の間で芽生えるような感情を抱いているわけでもない。彼らの関係性は友人でも恋人でもなく、立場的にはFBI捜査官と指名手配犯ではあるが、お互いをどうこうしようとしたとしても、最終的には断念している。
レクターは自分のことを、クラリスの旧友だと言った時もある。しかし、レクターがクラリスを捕らえた時の振る舞いは穏やかで優しく、愛している女性に対して取る行動のようであった。
一言で表せない主人公達の関係性こそが、この映画の最大の魅力であると感じた。(女性 20代)
とにかくアンソニー・ホプキンスの怪演が光る作品といえるだろう。レクターの残虐だが、どこか惹かれてしまう独特の人間性は、モラル的に否定していてもついつい見入ってしまうのも確かである。レクターを捕まえようと躍起になるメイスンであるが、やはりこういったキャラクターは最終的には一歩及ばず力尽きるといった展開がふさわしいと感じてしまう時点で、既にこの作品におけるレクターの人間性を認めてしまっているからなのかもしれない。(男性 30代)
本作は、『羊たちの沈黙』から10年後の物語だ。
車椅子のメイソンの顔面のエピソードや残虐な殺人シーンや脳みそを食すシーンなど、本作はグロテスクで猟奇的な場面が前作よりも随分多かった。
特に印象深いのは、レクター博士がメリーゴーランドに乗ってクラリスの髪を撫でるシーン。存在を仄めかすところにぞっとした。
お互いに信頼し合っているクラリスとレクター博士の奇妙な関係性にも注目したい。
どうしたものか、気づけばこの紳士的サイコパスのレクター博士の人間性に、どんどん引き付けられていく。(女性 20代)
名作「羊たちの沈黙」の続編。クラリスがジョディ・フォスターからジュリアン・ムーアに変わっているが、今となっては大きな違和感はない。レクターはえげつないことをたくさんするのだが、言葉だけで不利な形勢を逆転させてしまうあたりは魅力を感じてしまう。そしてそんなレクターが垣間見せるクラリスへの庇護の愛が見物。結末は原作とは異なるようだが、クラリス的には救いのあるラストで良かった。噂の食事のシーンはおぞましいが、怖いもの見たさで見ずにはいられない。夢に出ませんように・・・。(男性 40代)
1作目からクラリス役の女優が変更されていますが、雰囲気が似ているせいか違和感なく最後まで鑑賞できます。ただ、今作のクラリスはレクターに呑まれていて、最後を除いて見せ場がなくキャラクターが薄かった気がします。レクター博士は最恐で最強というような映画です。
残虐なシーンも多いのですが、レクター博士の狂気の中に、ある種の美しさや知性が垣間見えるので世界に引き込まれますね。キツネとウサギのセリフはとても印象的です。(女性 30代)
関連作品
次作 レッド・ドラゴン(2002)
前作 羊たちの沈黙
みんなの感想・レビュー
FBI捜査官として行き詰っているクラリスは、マスコミには叩かれ、不名誉なギネス記録も与えられているし、上司からもセクハラを受けている。
実際にありそうな転落コースで、正直なところ同情してしまう。
だが、レクター事件の担当にされると、涼しい顔でレクター事件の被害者の写真を並べてみたり、分析や解説をするなど、人間味が薄いキャラクターになってしまった。
脱獄したレクターは、どこで覚えたのかと突っ込みを入れたくなる豊富な知識を披露し、前の司書が失踪したからありつけた司書代理をしているが、失踪も本当はレクターが・・・と簡単に想像できる展開になっている。
悪徳警官パッツィは、スリ常習犯を脅して瀕死になったら置き去りするなどの極悪非道っぷり。
大富豪メイスンも極悪人で、そもそもレクターを殺害しようとしてやり返されたので、レクターへの執着は常軌を逸している。
登場人物のほとんどがすぐに悪事を働くので、ひとつの映画のストーリーとしては全く機能していない。
しかも舞台がフィレンツェとアメリカと変わるのも、ただ単調で時間だけが長く、途中で飽きてしまう。
前作では極力出さなかったグロテスクなシーンの数々だが、今作は嫌というほど見せてくる。
パッツィ刑事はレクターによってグロテスクな最期を迎える。
クラリスへのセクハラも行っていたポールも、朦朧とする意識で自分の臓器を食べさせられるなど、見ていて気持ち悪くなるものばかりだ。
ミステリーとしての面白さは少なく、猟奇的な部分を強調した映画になっている。
クラリスとレクターの不思議な絆はうまく表現されていて面白いのだが、全体的に特殊メイクや凝った撮影方法にこだわり過ぎていて、前作のように何度も見たいとは思えない。
前作「羊たちの沈黙」でクラリスを演じたジョディ・フォスターに変わり、ジュリアン・ムーアがクラリス役を演じているが、ハンニバル・レクター役は引き続きアンソニー・ホプキンスが演じている。
10年後という設定なので、クラリス役が変わっても違和感なく見ることができるし、FBI捜査官を10年続けた前提があるので、2作同時に見ようとする時は役者が変わっているほうが見やすいだろう。
メイスンはゲイリー・オールドマンが演じているのだが、素顔が出るのは回想シーンの数分のみ、後は数時間かけて施した特殊メイクというのだから、撮影方法にこだわっているのだろう。
しかし、グロテスクなシーンが多すぎるのは、”続編”を期待して見るときにがっかりしてしまう。