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映画『福耳』あらすじとネタバレ感想

映画『福耳』の概要:「福耳」は、2003年の日本映画。監督は本作が映画監督デビューの瀧川治水。テレンス・ヤング。主演は「GO」、「ピンポン」、「木更津キャッツアイシリーズ」などの脚本を務めた、脚本家、俳優、作詞・作曲、映画監督などのマルチタレントとして活躍する宮藤官九郎。共演は田中邦衛、高野志穂、司葉子、坂上二郎、宝田明、谷啓、多々良純、六平直政など。

映画『福耳』 作品情報

福耳

  • 製作年:2003年
  • 上映時間:92分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
  • 監督:瀧川治水
  • キャスト:宮藤官九郎、田中邦衛、高野志穂、司葉子 etc

映画『福耳』 評価

  • 点数:85点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★★★☆

[miho21]

映画『福耳』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『福耳』のあらすじを紹介します。

29才フリーター青年の里中高志(宮藤官九郎)は、就職の面接を受け、浅草の高齢者向けマンション「東京パティオ」にあるカフェで勤めることになる。高志は以前に入院した病院の看護士だった、信長珪(高野志穂)に一目惚れしてしまい、そのマンションにヘルパーとして勤める彼女を偶然を装って追いかけていた、バイト初日に、高志は入口で奇妙な老人に話しかけられるが、その老人・藤原富士郎(田中邦衛)は既に亡くなっているという。不審に思った彼が鏡を覗くと、自分の姿の代わりに富士郎が現れた。富士郎は、生前好きだった神崎千鳥(司葉子)への想いを断ち切れず、高志の体を使って想いを遂げようと企んでいた。独身を通してきた元女優の千鳥は、東京パティオのマドンナ的存在であり、富士郎は、彼女を狙う元活動弁士の緑川(坂上二郎)や、元うなぎ屋の小林(谷啓)のことが心配で、死んでも死にきれないと言う。他にも小林の妻・敦子(弓恵子)、元高級官僚でありながらオカマバーのマスターをしている井上五郎(宝田明)、五郎の追っかけをしている良子(横山通乃)、海軍出身で軍服マニアの藤掛(多々良純)、長老格で頑として喋らない99才の茜(千石規子)など、パティオは個性的な高齢者たちばかりが揃っていた。憑依された高志は、なんとか富士郎の霊を追い払おうとするが上手くいかない。だが、富士郎に珪への片想いを見破られた高志は知識と経験が豊富な富士郎に助けられ、とうとう自分の体に同居することを許すことにした。そんな高志を気に入らないのは、緑川と小林。高志は千鳥にダンスを申し込み、何やらデートもしているようであり、次第に千鳥もその気になってきている始末。そんな気配に全然気が付かない高志に、富士郎は株取引のイロハを教える。彼はかつて金融関係の仕事をしてきたやり手だったのだ。高志と珪との関係も上手く行き始め、高志は富士郎へのお礼に、ついに千鳥をホテルへと誘う。一方、富士郎は、高志にベンチャー事業を起こさないかと持ちかけが高志は一旦断る。先のことを予想して、やる前からあきらめてしまう高志に「生きるということは見えないものを信じる勇気が必要」と富士郎は諭す。

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映画『福耳』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『福耳』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

「成仏」というのはどういった心境なのだろうかと考える作品

主人公の高志(宮藤官九郎)に憑依する霊が田中邦衛なのだが、随分と博学で東欧の詩を主人公の恋する相手へのアプローチに使ったり、株取引を教えたり、社交ダンスが上手だったりと、幽霊らしからぬ人格の持ち主である。死ぬまでにいろんなものを削ぎ落として行かないと未練が残ってしまうと言う典型なのだろうか。突然死だから仕方はないのだろうが、こういった未練を残して死んで行く人はさぞかし多いのだろうと実感した。まぁコメディなのでその辺の描写は特筆するようなところもないのだが、幽霊譚というのは幽霊が出る背景というものに重きが置かれるところもあり、あの世へ行く準備もままならず、生きている人間に人の道を説いたり、横恋慕したりという設定はコメディらしくて微笑ましいが、「ありがとう」と誰にも言えずに死んだという理由には感動させられる部分がある。できるならばあの世へ行くまでの短い期間という切迫感みたいなものが描かれていたら、もっと面白い展開になったかもしれないという風に思った。全体的に平べったい展開なので、少々盛り上がるポイントが欲しかったところであるが、最後に感動的な話で落としてくれるので展開としてのバランスは取れている。

ベテラン俳優が醸し出すゆったりとした空気感

宮藤官九郎という人物は監督や脚本もこなすマルチタレントであるが、なかなか演技も上手い。役者のタイプで言えばユースケ・サンタマリアみたいなイメージがあるが、バタクサイところはなく意外と落ち着いてベテラン役者陣と互角に渡り合っている。何と言っても田中邦衛の演技がこの映画に大きな影響を及ぼしており、共演のベテラン役者もコメディアン出身が多く、若い出演者がリラックスしているのはそういったところにも影響されているのだろうか。ベテランの味というものが存分に味わえる点に於いてはゆったりと観ることのできる佳作である。

映画『福耳』 まとめ

田中邦衛の半主役的な存在感が拝める貴重な作品である。「北の国から」で見せた寡黙な五郎さんではないが、どんな役を演じても彼独特の味わいがあって、ラストシーンの語りなどはなかなか感動的なシーンもあり、日本映画的な素朴な展開がいい雰囲気を出している。在りし日の谷啓さんと坂上二郎さんが恋のライバル役で出演しているのも感慨深い。年を取るのに惨めに抗うという話でなく、いい感じで歳を重ねてゆく豊かな人間像の部分が描かれ好感が持てる。夫婦や家族で観るのにはオススメ作品である。

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