この記事では、映画『ふたつの名前を持つ少年』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ふたつの名前を持つ少年』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『ふたつの名前を持つ少年』の作品情報
上映時間:108分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ペペ・ダンカート
キャスト:アンジェイ・トカチ、カミル・トカチ、エリザベス・デューダ、イタイ・ティラン etc
映画『ふたつの名前を持つ少年』の登場人物(キャスト)
- スルリック / ユレク(アンジェイ・トカチ)
- ユダヤ人の少年。ポーランド人に扮してドイツ軍の強制収容から逃れようとする。
映画『ふたつの名前を持つ少年』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『ふたつの名前を持つ少年』のあらすじ【起】
雪が降り積もる森の中、木の陰に横たわるスルリック。彼はここまでの道のりを思い返した。雪原を歩いて見つけた小屋。そこでは男が薪割りをしていた。スルリックは男の側に置かれた上着を見つけ、男の隙を付いて盗もうとする。しかし、男に見つかり仕返しに木の棒で殴られてしまう。更に苦しめられる道具はないかと男が小屋の中を探している内に、スルリックは上着を持ち出して逃げ出した。
スルリックは氷の張った冷たい川を渡った。側を通りがかった軍用車から身を潜める。父の言葉を思い出していた。生きろ。身分を偽っても自分がユダヤであることを忘れるな。その言葉を胸に、スルリックは歩き続けた。しかし、体力が底を尽きた。スルリックは木の陰に横たわる。自分を見下ろす女の姿が見えたのを最後に、彼は気を失った。眠りに付いた彼の頭の中に、かつての記憶が蘇る。
ゲットーから逃げ出したばかりのスルリックは、森の中で暮らす子供たちのコミュニティと遭遇した。仲間に迎え入れられた彼は、ドイツ人の家から食料を盗んで暮らしていた。ある日、ドイツの軍人が子供たちに襲いかかってきた。スルリックは無事だったものの、子供たちは散り散りになってはぐれてしまった。
映画『ふたつの名前を持つ少年』のあらすじ【承】
目を覚ますと、スルリックは自分を見下ろしていた女の家にいた。女はスルリックを看病し、彼がユダヤ人であることを見抜く。逃げるなら、ポーランド人の名前を持っている方がいいと言われたスルリックは、名とドイツ人に見つかったときの偽装した経歴を用意する。その晩、スルリックは眠りにつくと、昔の記憶が夢に出てきた。
ドイツ軍による接収が行われているゲットーにいたスルリック。軍人の目から逃れるため、彼は男が操る馬車の荷車の中に潜り込んだ。事情を察した運転手はゲットーから逃がしてやるから、沈黙していろとスルリックに囁く。進路の先には検問所。銃剣を突き刺していく。一撃がスルリックの脚を掠めるが、彼は痛みを必死に堪えた。検問所を越え、町を出て行く馬車。スルリックは去り際に、護送トラックへと連行される母の姿を見つけた。
スルリックが匿われていた家の側にもドイツ人がやってきた。スルリックは女に逃げろと促される。再び一人の逃避行が始まった。
映画『ふたつの名前を持つ少年』のあらすじ【転】
見つけた家々で用意しておいた嘘の名と経歴を使い、救いを請うスルリック。一件の家庭が彼を家に迎え入れた。四人家族のその一家は、とても親切だった。彼がユダヤ人であると見抜いた父もそのことを無視し、二人の息子たちと分け隔てなく彼に接した。幸せな日々が続いたが、スルリックの不手際でそれも台無しになってしまう。割礼した陰部を近所の子供に見られ、ドイツ軍に通報されてしまったのだ。仕方なく一家と分かれて逃避行を再開したスルリック。しかし、今度は一家との暮らしの中で知り合った犬を引き連れていくことができた。
森の中で休憩をしていると、スルリックに近づく足音を警戒して犬が飛び出していってしまった。銃声が森に響く。撃ったのはパルチザンの兵士だった。ドイツ軍が近くにいると忠告してくれた兵士だが、犬の死を謝ってはくれなかった。犬の死体に寄り添うスルリックを見て、罪悪感に苛まれた一行の内の一人が、少年に自分の金品を分け与える。
一人、森の轍を歩いていると、通りすがりの馬車に乗った夫婦が食料をくれると言うので、ついて行くことにしたスルリック。だが、連れて来られたそこはドイツの収容所だった。報酬と引き換えに売られてしまったスルリックは、拷問による誰かの悲鳴から耳を塞ぎながら、牢獄で幸せだった頃のことを思い出した。
映画『ふたつの名前を持つ少年』の結末・ラスト(ネタバレ)
スルリックは司令室に連行され、そこで司令官に試された。司令官はスルリックの賢さに驚き、気を許す。隙をついて逃げ出すスルリック。逃げおおせた彼を勇敢な子だと賞賛して、追撃隊を率いていた士官は引き上げた。逃げた先に農園を見つけたスルリックは住み込みで働こうと家主の夫人に頼もうとした。だが、そこには自分を試したドイツの司令官がいた。スルリックの賢さに感動していた司令官は彼が屋敷に雇われるのを、見て見ぬ振りしてくれた。
仕事の最中、事故で右手を歯車に挟まれてしまったスルリック。夫人の運転で町の病院に行くが、ユダヤ人だと発覚したところ、医者が診察を拒んだ。憐れに思った看護婦が精一杯の看病を続けていると、そこに院長が現れた。スルリックの様子を見て、治療を拒んだ部下に激怒した医院長は自らが執刀し、彼の命を救った。
命こそ救われたものの、処置が遅れたせいで腕を失ったスルリックは悲しみにくれていた。だが、屋敷の人の見舞いと、彼同様に身体の一部を失った人たちとの交流で希望を取り戻す。
地域を統括する司令官が代わったことで、庇われていたスルリックにも危険が及ぶ。執刀を拒んだ医者の密告によりスルリックは逃げざるを得なくなってしまった。病院お屋敷の人たちの手助けを受け逃げ出す。
逃げた先々で人々の救いを受けながら居場所を転々とするスルリックは、鉄鋼職人の家で世話になり、そこで終戦を迎える。家族と幸せに暮らしていたスルリックだが、ユダヤ人の孤児を保護する団体の職員がやって来て、彼を連れ去る。初めは反発したスルリックだが、ユダヤ人のためにと説得され、渋々従う。
スルリックは両親の生存を確かめるため、実家に連れてこられた。しかし、彼は両親が死んでしまっていることを既に知っていた。母は収容所に連行され、自分が逃げられたのは父の犠牲のおかげだったのだ。荒れ果てた家を見て、かつての幸せが二度と取り戻せないと実感したスルリックは泣きじゃくる。
別れ道の前で職員はスルリックに最後の選択を迫った。鉄鋼職人の家族の下に戻るか、孤児院か。スルリックは孤児院を選び、新たな人生を始めた。
映画『ふたつの名前を持つ少年』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
スティーブン・スピルバーグ原作の母親の愛を求める少年ロボット作品。2時間半の長編映画ではあるが長さを感じさせない程、見ごたえのある作品だった。この話はロボットが主人公で描かれているが、人間の私たちでも日常の中にありうる「愛される、愛すること」について描かれている。何度も複雑な出来事が多く胸が締め付けられるシーンがあった。それでも最後は最高のハッピーエンドである。
感情の中で愛というものは本当に難しく複雑なものであると再認識された。愛の一方通行はアンバランスで執着と形を変えてしまうかもしれない。正解がない中で私たちはどう愛を飼いならすべきなのだろうか。(女性 20代)
本作は、絶望的な運命に立ち向かうたった一人のユダヤ人の少年スルリックの三年間を描いた小説原作のヒューマンドラマ作品。
命の旅の道中でスルリックが出会う人々がみな優しい人ばかりで救われた。
そして、何も悪くない戦争孤児の過酷な運命には観ていられない程とても胸が痛んだ。
ここまで強く生きようと前を向く彼は本当に素晴らしい。彼の笑顔や眼差しは戦争や人種差別の悲惨さなど実に様々なものを内包していた。(女性 20代)
ユレクという名を捨て、「ポーランド人」として偽りの名前でナチスの支配を生き延びる少年の物語は、本当に胸を締め付けられました。わずか8歳の少年が、飢えや恐怖の中で一人、森をさまよう姿には涙が止まりませんでした。信じた大人に裏切られたり、奇跡的に優しさに触れたり、彼の人生が過酷でありながらも人間の希望を感じさせてくれます。(30代 女性)
実話を基にした作品と知り、鑑賞後しばらく言葉が出ませんでした。逃亡生活を続ける中で、ユレクが「自分の名前」を失っていく様子は、アイデンティティすら奪われたユダヤ人の苦しみそのものだったと思います。戦争の残酷さと、人間の生きる力がぶつかり合う描写が多く、終盤で再会する父との瞬間は、本当に感動的でした。(40代 男性)
戦争映画は多く観てきましたが、これは特に心に残る作品です。主人公がただ「生きる」ことだけを目的にして走り続ける姿が、観る者の胸に突き刺さります。特に、腕を失うという展開にはショックを受けましたが、絶望せず生き続ける姿勢には敬服しかありません。ラストで笑顔を見せる彼に救われた気がしました。(20代 男性)
ユレクの目線を通して描かれる戦争の現実は、大人が見るよりも残酷でした。子供であるからこそ感じる恐怖、裏切り、人間の二面性がリアルに描かれていて、何度も涙が込み上げました。助けてくれる人もいれば、危害を加える人もいる。その中で信じる力を捨てなかった彼の姿勢が、希望そのものでした。(50代 女性)
ストーリーの軸が「逃げ続ける」ことなので、最初は地味に感じましたが、だんだんと彼の経験が壮絶すぎて目が離せませんでした。命の危機を何度もくぐり抜けながら、感情を殺して生き延びていく過程があまりにも痛々しい。ユレクに出会った人々それぞれの行動が、この時代の人間性を表していて興味深かったです。(30代 男性)
映画としての演出は控えめで、まるでドキュメンタリーを見ているような生々しさがありました。主人公が本当の自分を隠しながら生き延びる姿には、自由とは何か、尊厳とは何かを問いかけられるような気がしました。戦争の犠牲になった子どもたちに改めて思いを馳せるきっかけとなる作品でした。(60代 女性)
この映画は、「強さとは何か?」を問いかける作品だったと思います。子どもらしい無邪気さをどんどん削られながらも、それでも前を向くユレクの姿に、何度も胸が熱くなりました。特に印象に残ったのは、パンを与えてくれた老婆との出会い。小さな優しさが、彼の人生を繋いでいったのだと思います。(20代 女性)
シンプルな構成ながらも、語られる内容は非常に重たかったです。何もできない年齢の少年が、一人でサバイバルを強いられる理不尽な現実。それでも心を閉ざさず、前に進み続ける姿は涙なしには見られませんでした。戦争映画の中でも、とりわけ「人間の強さ」にフォーカスした感動作だと思います。(40代 男性)
映画『ふたつの名前を持つ少年』を見た人におすすめの映画5選
サウルの息子
この映画を一言で表すと?
地獄のような収容所で“人間らしさ”を取り戻そうとする男の執念。
どんな話?
アウシュビッツ収容所で働くユダヤ人サウルが、自分の息子と思われる遺体を見つけ、彼を正しく埋葬しようと決意する。死と隣り合わせの環境下で“ひとりの人間としての尊厳”を取り戻す姿を描いた衝撃作。
ここがおすすめ!
カメラは常に主人公の背後に密着し、観客はまるで彼と同じ空気を吸っているかのような没入感を得ます。『ふたつの名前を持つ少年』と同じく、極限状態の中でも人間らしさを守ろうとする強さに心打たれる一作です。
戦場のピアニスト
この映画を一言で表すと?
音楽と沈黙が語る、ひとりのユダヤ人の生存記録。
どんな話?
第二次世界大戦中、ワルシャワで生活していたピアニストが、ナチスによるユダヤ人迫害の中で隠れながら生き延びる。戦争が日常をどれだけ無慈悲に破壊するか、静かな映像と音楽で描き切った名作。
ここがおすすめ!
感情を抑えた表現の中に強烈な悲しみと希望が宿る、ロマン・ポランスキー監督渾身の一作。主人公の孤独な生存劇は、ユレクの逃亡生活と重なり、同じく“奪われた日常”の重さを感じさせます。
ミルクの値段
この映画を一言で表すと?
ユダヤ人少年とポーランド人少女の奇跡の交流が、戦争の闇に一筋の光を灯す。
どんな話?
ユダヤ人の少年が、食料を買うために命がけでゲットーの壁を越え、牛乳を手に入れようとする日々。ある日、彼はポーランド人の少女と出会い、危険な交流を続けることに。無垢な友情が、戦争の現実を照らす。
ここがおすすめ!
子どもたちの視点から描かれる戦時下のユダヤ人迫害が、感情に訴えかけます。『ふたつの名前を持つ少年』のように、残酷な現実の中でも人間らしい交流が希望を感じさせる、心に残るヒューマンドラマです。
黒い雨
この映画を一言で表すと?
被爆者の苦悩と静かな抵抗を描いた、日本発の人間ドラマ。
どんな話?
広島に原爆が投下された直後の混乱と、その後の被爆者の生活を静かに描く。病と差別にさらされながらも、生きることに向き合い続ける人々の姿が、重く切ない余韻を残す。
ここがおすすめ!
戦争の“その後”を静かに描くことで、記憶と痛みを風化させない作品。『ふたつの名前を持つ少年』と同じく、戦争の被害を受けた“名もなき個人”の生き様が描かれており、心に深く刻まれる内容です。
リトル・ランボーズ
この映画を一言で表すと?
無邪気な友情と夢が、宗教と戦争の狭間で輝く感動作。
どんな話?
厳格なキリスト教家庭に育つ少年と、やんちゃな転校生が出会い、映画作りに夢中になる。背景には1980年代のイギリスと宗教的な対立があり、子どもたちの純粋な夢が小さな奇跡を起こす。
ここがおすすめ!
直接的な戦争映画ではないものの、子どもたちの目線から描かれる“抑圧”や“自由への憧れ”が『ふたつの名前を持つ少年』と重なる部分があります。軽やかさと感動が同居する秀逸な青春映画です。
みんなの感想・レビュー