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映画『漂流ポスト』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

東日本大震災で大きな影響を受けた、岩手県陸前高田市に実際に存在する『漂流ポスト』を描いた物語。そのポストに投函されるのは、いずれも受取人が既にいない、特別な手紙。

映画『漂流ポスト』の作品情報

漂流ポスト

タイトル
漂流ポスト
原題
なし
製作年
2018年
日本公開日
2021年3月5日(金)
上映時間
30分
ジャンル
ヒューマンドラマ
監督
清水健斗
脚本
清水健斗
製作
不明
製作総指揮
不明
キャスト
雪中梨世
神岡実希
中尾百合音
藤公太
小田弘ニ
植村恵
永倉大輔
製作国
日本
配給
アルミード

映画『漂流ポスト』の作品概要

東日本大震災から、早くも10年の月日が経過した。その年月の中で、津波や地震などで壊された建物は新たに建てられ、人々は日々の営みを再開した。果たして、復興は完全に終わったのだろうか。そもそも、復興とは一体なんなのだろう。辞書で引いてみると、復興という言葉は『一度衰える、若しくは壊れたものが、再び整った状態になる』と表現されている。確かに、街並みなどはかつての穏やかさを取り戻したかもしれない。しかし、震災で壊れたものは、物理的な物ばかりではない。人の心も、大きく傷ついたのだ。震災を経験した多くの人は、今も深い悲しみを抱えながら生きている。これは、人々の『心の復興』を描いた物語。

映画『漂流ポスト』の予告動画

映画『漂流ポスト』の登場人物(キャスト)

池淵園美(雪中梨世)
東日本大震災を経験した女性。震災を生き延び、今を生きている。
香月恭子(神岡実希)
東日本大震災で命を落とした、園美の親友。彼女と書いたタイムカプセルが見つかったことで、物語は動き出す。

映画『漂流ポスト』のあらすじ(ネタバレなし)

池淵園美は、あの未曾有の大震災、東日本大震災の被災者。そして、その震災で、彼女は親友の香月恭子を失った。あの震災から数年が経ち、今では普通に生活を営んでいる園美だったが、心のどこかで、恭子のことを忘れられずにいた。そんな頃、学生時代に恭子と共に埋めたタイムカプセルが見つかった。そのタイムカプセルに入れられていたのは、将来の互いに向けた手紙だった。生き残ってしまった自分と、あの日命を落とした親友。タイムカプセルは、あの頃の幸せな思い出と共に罪悪感を園美に与えた。そんな頃、園美は『漂流ポスト』の噂を耳にする。それは、亡くなった人に手紙を送ることができる不思議なポストだった。

映画『漂流ポスト』の感想・評価

震災の爪痕

2011年3月11日、その日は突如としてやってきた。そう、東日本大震災である。2万2千人以上の死者を出したあの恐るべき震災から、今年でなんと10年の月日が経過する。復興は進み、今では街はかつての光景を取り戻しつつある。しかし、人々の心に深く刻まれた傷跡は、未だに完全には癒えてはいないのだ。震災で大切な誰かを亡くした人は多い。今でもその人達を探している、その人達を思って涙を流している人がいるのだ。被災地で生活していない人達にとっては、遠い昔のように思えるかもしれないが、被災者は今でもあの時間を生きていることがあるのだ。今一度あの地獄の日々があったことを思い出し、あの日亡くなった誰かのことを思おう。

実在するポスト

作中に登場する、映画のタイトルにもなっている『漂流ポスト』。実は、岩手県陸前高田市に実際に存在する物なのだ。山奥にひっそりと聳え立つこのポストの存在意義は、一体どこにあるのだろう。故人に想いを伝える、ということは勿論だが、残された人達の強い悲しみを受け止める役割も担っているのではないだろうか。漂流ポストの管理人を務める赤川勇治が、実際にこの映画の制作に携わっている。誰よりもこの漂流ポストを知る人物が語る真実。非常にリアリティ溢れる内容に仕上がっている。これまで、沢山の手紙がこのポストに投函されてきた。そのいずれもが、既にこの世にいない人へと向けたもの。果たして、彼らが手紙に託した願いとは。

監督が実際に感じた『風化』

良くも悪くも、人間とは忘れる生き物だ。だからこそ、前を向いて改めて生きていけるという利点もある。しかし、忘れてはいけないものも必ず存在するのだ。本作のメガホンを取った清水健斗は、長期に亘り復興ボランティアに携わってきた人物。そして、清水は『風化』に対する恐怖から、この作品の制作を決断したという。震災から今年で10年が経過する。当時は連日のように報道されていた震災についてのニュースも、一切見ることは無くなった。果たして、被災地が、被災した人々が今どのような状況下にあるのか、正しく把握している人はどれほどいるだろうか。しかし、今でも救いの手を必要としている人々、元の生活に戻れていない人は確かにいる。10年の節目に、自分にできることはないか、改めて考え直してみよう。

映画『漂流ポスト』の公開前に見ておきたい映画

映画『漂流ポスト』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。映画『漂流ポスト』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

Fukushima 50

東日本大震災は、まさに地獄絵図だった。街は次々と壊され、多くの命が奪われた。何がこの震災を、世界でも稀に見るレベルにしたのか。地震だけでなく、津波の脅威もあった。そして、何より原子力発電所での事故が影響している。炉心の水素爆発に伴い放射線物質が飛散したかもしれない、というニュースが人々を震撼させた。そんな中、まさに戦地と呼ぶべき発電所に残った50人の作業員達がいた。その後、人数は増えていったものの、彼らは『Fukushima50』として、世界中から注目されることになる。東日本大震災を描く時、主人公になるのは、被災し誰かを失った人など一般人が多い。今作は、東日本大震災をまた違った角度から切り取った作品である。

詳細 Fukushima 50

おくりびと

亡くなった人を想うという行為は、とても尊いことである。亡くなった人に何かできないかと考えを巡らせることにも、故人を思い浮かべることという行為自体にも、全てに意義はある。もしかすると、それは残された側の自己満足なのかもしれない。しかし、それをすることで誰かの気持ちが救われるならば、やはりそれは尊いことなのだ。そういった作品の名作といえば本作。アカデミー賞外国語映画賞、日本アカデミー賞最優秀作品賞などに輝き、日本のみならず世界からも認められた名作である。就職先を探していた小林大悟は、『旅のお手伝い』と書かれた求人広告を見つける。旅行代理店だと思い申し込んだ大悟だったが、それはなんと、納棺師の仕事だったのだ。

詳細 おくりびと

硫黄島からの手紙

手紙とは、誰かに向けて書くことが殆どだ。しかし、その手紙が決して相手に『届く』ことがないこともある。最新作でキーとなってくる手紙は、既にこの世を去った人へ向けたもの。一方、本作に登場する手紙は、この世を去る人が残される側に送った、『届くことのない』手紙だ。小笠原諸島に浮かぶ硫黄島。ある時、この島から数百通にも及ぶ大量の手紙が発見された。それは、61年前の戦争で、硫黄島で命を散らした多くの男達が家族へと書き残した物だった。しかし、当然戦地の真っ只中、手紙を送れるはずもない。この手紙が決して相手には届かないものと知りながら、男達は手紙を残したのだ。彼らが手紙に込めた想いとは一体。

詳細 硫黄島からの手紙

映画『漂流ポスト』の評判・口コミ・レビュー

映画『漂流ポスト』のまとめ

この世を既に去ってしまった、大切な人への手紙を投函する『漂流ポスト』。このポストに投函するのは、東日本大震災で亡くなった人間の縁者だけではない。震災や病気、事故など、様々な理由で大切な人を亡くした誰かが、このポストに想いを託そうとわざわざ足を運ぶという。それだけ、遺された側が救いを求めているということが分かる。個人への気持ちを文字に起こすことで、そして、それを一度手紙という形で外に出すことで、長く深い苦しみの中にいる人々の想いも少しは救われるのかもしれない。きっと、このポストはそういった人々にとっての、『心の蘇生』という役割を担っているのである。

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