この記事では、映画『インセプション』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。
映画『インセプション』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 2010年 |
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上映時間 | 148分 |
ジャンル | SF サスペンス アクション |
監督 | クリストファー・ノーラン |
キャスト | レオナルド・ディカプリオ 渡辺謙 ジョセフ・ゴードン=レヴィット マリオン・コティヤール |
製作国 | アメリカ |
映画『インセプション』の登場人物(キャスト)
- コブ(レオナルド・ディカプリオ)
- 夢の中に潜り込む有能な産業スパイ。過去にインセプションに失敗し、妻のモルを自殺に追い込んでしまった。彼の中にはいつもモルがいて邪魔をする。最愛の人を死に追いやってしまったことを悩んでいた。
- アーサー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)
- コブのパートナー。有能だが、今回の作戦で大きな失敗をしてしまう。それによって強制的にインセプションを行う事になり、意識へ深く潜って行く。
- サイトー(渡辺謙)
- 今回の依頼人。エネルギー産業の社長で自分の財力を存分に使い、作戦を支える。
- モル(マリオン・コティヤール)
- コブの元妻。虚無に落ちた事によって、現実と夢の境目がわからなくなり死を選ぶ。コブの潜在意識に度々現われ、邪魔をする。
- アリアドネ(エレン・ペイジ)
- 勇敢な女性。大胆な発想で夢の世界を作る。コブの背中を押して、モルの苦しみから開放させようとする。
映画『インセプション』のネタバレ・あらすじ(起承転結)
映画『インセプション』のあらすじ【起】
心の中で秘密を探り出す事を「エクストラクト」と言う。コブ(レオナルド・ディカプリオ)とアーサー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)はサイトー(渡辺謙)を説得しているが、建物が揺れ始めた。サイトーは去り、元妻のモル(マリオン・コティヤール)が現われた。誘惑を振り切り、コブは先に進む。アーサーを人質にとったサイトーとモルが現われた。
ここはアーサーの夢の中だった。どうにかこの窮地を切り抜けるためにアーサーを目覚めさせる。夢が崩れると同時に世界が崩れて行く。作戦は失敗だ。コブを起こす為にバスタブに放り込む。現実でサイトーを確保する。サイトーは笑った。ここは夢の中だろう?
夢を二重に仕掛けたコブが目覚めると、新幹線の中だった。夢がばれていて、作戦失敗。サイトーが目覚める前に姿を消した。
「インセプション」をしろ。先回りしていたサイトーがコブに言った。報酬は子供の待つ我が家に帰れること。意識に深く潜り込んで意識を植え付ける。不可能に近いがコブはそれができると言った。危険を伴うが、このチャンスを手にしたいコブ。
映画『インセプション』のあらすじ【承】
街が粉々に砕けて行く、その破片に当たってアリアドネは目覚めた。コブと夢のトレーニングをする。アリアドネは街を折り畳む。天井に車が走り、壁を歩く。アリアドネは優秀だが、やんちゃが過ぎた。モルが現われアリアドネを刺した。
潜在意識に大きな問題を抱えるコブにアリアドネは部屋を飛び出す。アーサーが「トーテム」について教えた。これが夢か現実かのジャッジになるはずだ。
サイトーはエネルギー事業の半分以上を支配しようとしているフィッシャーの野望を阻止したい。コブは仲間と作戦を開始した。サイトーは作戦の為に航空会社ごと買い取った。
モルの夢を見る。モルはコブの元奥さんで彼女は死んだ。夢に毎回出てくる彼女はコブを苦しめる。彼女はなぜ死んだのだろうか。
モルの夢にアリアドネが潜り込んだ。コブとモルを影から伺っていると、モルがこっちを睨んだ。コブは毎晩モルと夢の中で一緒にいた。死んだ妻を夢の中で生かすコブにアリアドネは逃げ出してしまう。ここにいてはいけない。とあるホテルの一室に迷い込んだ。ここはモルと結婚記念日を過ごした部屋だった。ガラスが割れ、花が散乱している。コブはかなり危険な状態にいる。
映画『インセプション』のあらすじ【転】
フィッシャーの作戦を開始する。飛行機の中、フィッシャーと仲間が夢の中に侵入した。フィッシャーを夢の中で確保したが、大きな列車が街を走っていて、追突した。車も銃撃される。予定外の事態に混乱し、サイトーが撃たれてしまった。鎮静剤を打っているせいでサイトーを目覚めさせたら虚無に落ちてしまう。全員助かるには「インセプション」を完成する以外道はない。
コブはモルと虚無に落ちてしまったことがある。その機関は50年。夢から浮上したモルは夢と現実の境目がわからなくなってしまっていた。夢の中なら何でも自分の思い通りになる。現実の世界はつらすぎる。
結婚記念日の夜。モルは一緒に死のうと言った。モルはもうまともではなくなっていた。目を閉じて窓から飛び降りてしまうモル。そこからコブは少しも前に進めない。
更に下の層にもぐる。1層では車に乗っている。雨の中銃撃を受けている。2層でコブが夢の中だとばらした。その途端2層の重力が歪み始めた。コブはフィッシャーの信頼を得始める。フィッシャーを眠らせ、更に下の層に落ちる。1層で車が横転した、その影響で2層の世界も横転し始める。
3層では雪の世界が広がっていた。目覚めの合図の音楽が流れ始めた。残り時間が少ない。雪山で雪崩が起こる。1層で車が橋から落っこちてしまった。
モルが現われてフィッシャーを射殺した。フィッシャーが虚無に落ちてしまい、作戦は失敗する。しかしアリアドネは諦めなかった。
映画『インセプション』の結末・ラスト(ネタバレ)
4層目にコブとアリアドネが侵入し、海の中目覚める。ここにはモルがいるはずだ。過去と向き合う時がやってきたのだ。ここはモルと虚無に落ちたときに一緒に作った世界。記憶を再現した2人だけの世界を進む。
モルが現われた。モルは言葉攻めでコブを混乱させる。罪悪感がコブをずっと苦しめていた。モルが現実に疑問を持ったのは自分のせいだ。過去にインセプションを行った相手はモルだった。モルに目を覚ましてほしいコブは、夢の中で死ねば戻って来れると意識を植え付けた。目覚めても現実と夢の区別がつかないモルは、夢から目覚める為にビルから飛び降りた。
ずっとここにいてほしい。君じゃだめだとコブはモルを頭の中から追い出す。
全員が目覚める。雪山は爆発し、車が着水した。
サイトーを助ける為に、夢に残ったコブは腕の中でモルを看取った。夢に中ですっかり年老いたサイトーに思い出せと訴える。一緒に戻ろうと。
飛行機の中で目覚めるコブ。それを仲間達が微笑んで迎えた。任務は成功し、コブはモルの呪縛からも解き放たれていた。空港で待っていた老人は見覚えがある。子供達がいる。やっとコブは我が家に帰る事ができた。
映画『インセプション』の考察・解説(ネタバレ)
映画『インセプション』においての「インセプション」の意味とは?
映画『インセプション』で「インセプション」とは、ある人の潜在意識の中に特定の考えやアイデアを埋め込むことを指します。一般的に、他人の夢に入り込んで秘密を盗み出す行為は「エクストラクション(抽出)」と呼ばれますが、「インセプション」はそれよりもはるかに複雑で難しい技術とされています。なぜなら、標的となる人物が自分で考えを生み出したと信じ込むようにしなければならないからです。
主人公のコブは、ある人物の心に「父親から受け継いだ事業を手放す」という考えを植え付ける依頼を受けます。これこそが「インセプション」の実践なのです。夢の中の夢を通して、標的であるロバート・フィッシャーの深層心理に入り込み、彼にその考えを受け入れさせようとします。
現実世界では不可能と思われるインセプションですが、映画の中では夢の世界を巧みに操作し、心理的なトリックを用いることで可能になります。同時に、「他者の心に何かを植え付ける」という行為の影響力の大きさと、その難しさがテーマとして描かれています。つまり、「インセプション」とは単なるスパイ行為ではなく、人の心に新しい考えを生み出させ、将来の行動に影響を与えるという、非常にデリケートで危険性の高い操作を意味しているのです。
映画『インセプション』でロバートがかわいそうと感じるのはなぜ?
映画『インセプション』で、ロバート・フィッシャーに同情を感じる理由は、彼が知らないうちに他人の策略に巻き込まれ、自分の潜在意識を操作されてしまうからです。ロバートは大企業の後継者で、父親の死後、事業の行方を決める重大な局面に立たされています。しかし、彼は父親との関係が冷え切っており、父から愛情を感じられずに育ってきました。
コブ率いるチームは、ロバートの潜在意識に入り込み、「父の会社を解体する」という考えを植え付けようとします。ロバートは自分の意思で決断したつもりでいますが、実際にはすべてコブたちの周到な計画通りに操られているのです。彼は自分の心の奥底にある父親への思いを引き出され、それを利用されてしまいます。
物語の終盤、ロバートは父親が自分を愛していたと信じ込み、事業を解体する決意をします。しかしこれもまた、コブたちの策略の結果なのです。ロバートは自分の心を操られたことに気づかないまま、知らず知らずのうちに他人の意のままに動かされてしまいます。このように、彼が無意識のうちに利用され、心の奥深くまで操作される姿が、観客にロバートへの同情を抱かせるのです。
映画『インセプション』の最後、コマは回り続ける?止まる?どっち?
映画『インセプション』のラストシーンでは、主人公コブが現実世界に戻り、子供たちと再会する様子が描かれます。彼は現実と夢を見分けるための「トーテム」として、小さなコマを使っています。このコマは、夢の中では止まることなく回り続けますが、現実では最終的に倒れてしまうという特性があります。
最後の場面で、コブはコマを回しますが、それが回り続けるのか、倒れるのかは明確には描かれません。コマが回っているように見えたまま、映像はフェードアウトし、エンドクレジットに移ります。
このオープンエンドな結末は、コブが本当に現実に戻ったのか、それとも夢の中にいるのかを観客に委ねています。コマが回り続けるか止まるかは、物語の現実性を確認する重要な要素ですが、その答えは示されないのです。これは、「現実と夢の境界の曖昧さ」というテーマを象徴しています。
監督のクリストファー・ノーランは、この曖昧な結末を意図的に選択し、観客に自由な解釈を促しています。したがって、コマが回り続けるのか止まるのかという問いに対する明確な答えは存在しないのです。
映画『インセプション』のサイトーとは何者なのかを解説!
映画『インセプション』に登場するサイトーは、物語の始まりから重要な役割を担う人物で、日本の大企業を率いる実業家です。彼こそが、主人公コブに「インセプション」の仕事を依頼した張本人なのです。サイトーはコブに、ライバル企業の後継者ロバート・フィッシャーの心に「父の会社を解体する」という考えを植え付けるよう要求します。コブが妻の死が原因でアメリカに帰国できないことを知ったサイトーは、その罪を帳消しにする代わりに、この難題を成功させるよう持ちかけるのです。
物語の中で、サイトーは依頼主でありながらも、自らチームの一員として行動します。彼は任務に対して非常に真摯で責任感が強く、自ら夢の中に入ってコブたちをサポートします。しかし途中で夢の中の銃撃戦で重症を負い、深い層の夢「リムボ」に落ちてしまいます。リムボは夢と現実の区別がつかない無限の空間です。
任務成功後、コブはリムボに取り残されたサイトーを救出し、現実世界に連れ戻します。最後の場面で、サイトーは約束通りコブの前科をなかったことにし、アメリカへの帰国を可能にします。サイトーはコブにとって頼もしい協力者であり、物語全体を通じて欠かせない存在なのです。彼の助けがあってこそ、コブは過去のトラウマを乗り越え、任務を成し遂げることができたのです。
映画『インセプション』でのアーサーとアリアドネのキスシーンはアドリブ?
映画『インセプション』で、アーサーとアリアドネがキスをするシーンは台本に書かれていたもので、アドリブではありません。このシーンでは、夢の中で仲間に監視されていると感じたアリアドネが、注意をそらすために突発的にアーサーにキスをします。アーサーは驚きつつも、周りの人々が目を逸らさなかったことを指摘するのです。
このシーンは、夢の中での緊張感を和らげ、二人の間に一瞬の親密さとユーモアを生み出すことを目的としています。アリアドネは夢の世界に初めて足を踏み入れたばかりで、自分の行動が及ぼす影響を十分に理解していません。彼女の行動は無意識的なものですが、アーサーはそれを冷静に観察し、効果がなかったことを説明するのです。
このキスシーンは、アーサーとアリアドネの関係性に一時的な軽やかさをもたらし、全体的な物語の緊張感を和らげる役割を果たします。二人の関係が深まることはありませんが、アリアドネが夢の中での自分の行動の影響を学ぶ重要な場面となっています。複雑な設定の中で、一息つける瞬間を提供し、登場人物たちに人間味を加えているのです。
映画『インセプション』のどこがつまらない?
映画『インセプション』を「つまらない」と感じる人がいる理由の一つは、ストーリーが極めて複雑で理解が難しい点にあります。物語は夢の中の夢が連続し、複数の層が存在する夢の構造や、夢と現実の境界線が曖昧になる展開が続きます。そのため、観客は常に今が夢なのか現実なのかを見極める必要があり、高い集中力が求められるのです。
加えて、映画は設定やルールの説明が多く、登場人物の会話も複雑です。そのため、観客が話についていけなくなることがあります。夢の中の時間の流れ、現実と夢を見分ける「トーテム」の仕組み、「リムボ」と呼ばれる無限の空間など、多くの概念が導入され、一度の鑑賞では十分に理解できない場合もあるのです。
さらに、登場人物の背景や感情の描写が少ないため、感情移入が難しいと感じる人もいます。例えば、コブが妻のマルに抱く罪悪感や、チームメンバーの関係性などが十分に掘り下げられていないと思う観客もいるでしょう。そのため、登場人物への感情的な結びつきが弱く感じられることがあります。
これらの理由から、一部の観客には「つまらない」と映ることがあります。しかし一方で、複雑なストーリーや緻密な設定こそが魅力だと感じる人も多く、評価は個人によって大きく異なるのです。
映画『インセプション』はどこで見れる?フルで無料視聴する方法は?
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ぜひ、以下の記事もご覧いただき、映画『インセプション』をフル視聴してみてはいかがでしょうか。
みんなの感想・レビュー
夢の中のさらに夢の中の中。考えると考えるほど混乱してくるが、SFとして最高に面白い。
夢の中ということもあって夢の中ならではの、新鮮な映像体験をすることができる。色々設定に難ありな点やツッコミどころはあるものの、最後までまんまと没頭して見てしまった。
良く語られるラストシーンの回るコマは、思わずどうなるか目を見開いて見ていたが、そのまま終わってしまった時は自分がひっくり返りそうになった。これで、まだ夢の中だったとしたら無駄すぎる。
他人の夢に入り込む、夢を自ら設計するというストーリーに、心を揺さぶられます。そして、夢の中の世界があまりに支離滅裂なので、童心に返るような気持ちで存分に楽しむことができました。螺旋階段や街自体が折り畳まれるシーンなど、映像技術が卓越しています。夢の中で見る夢、夢の中の時間、三階層構造など、設定が緻密なのでどこまでも深く物語に引き込まれました。クリストファー・ノーランが思い描く世界観は圧巻で、天才の表現を鑑賞できて大変嬉しいです。
結末の余韻に心がザワザワする。ぜひ最後まで見てそれを味わってほしい。難解なことで知られるクリストファー・ノーラン監督の作品だが、本作は比較的わかりやすいストーリーだと思う。
他人の夢に忍び込み、そしてさらにそこから夢を見て深く潜っていくという構造、インセプションの作り込まれたルールや細かな設定、見る人によってとらえ方の異なるラスト。全ての発想がすごい。レオナルド・ディカプリオ演じる主人公をはじめ魅力的なキャラクターも、観客をストーリーに引き込む要素の一つだろう。
夢の中のアイデアを盗んだり、また夢の中でアイデアを植えつけたりすることのできる人たちが、とある男性に夢の中でアイデアを植えつけようとする…という話ですが、非常に凝った作りの映画です。
ただ、決してわかりにくい訳ではなく、きちんとストーリーもわかりやすくなっています。とはいえ、何度見ても何か発見のあるストーリーで、決して単純なものではありません。
また、映像が非常に迫力があり、特に夢の中で街をどんどん作り変えていくところは、ほかの映画には無いものですので、アクションが好きな方にもおすすめです。
“夢の中を舞台にした映画があったら面白いだろうな~”という発想は出来ても、それをここまでのクオリティと熱量で仕上げられるのはやはりクリストファー・ノーラン監督しかいないと思う。とにかく複雑なルール、設定のオンパレードだが、知れば知るほどその世界に入っていけるような気がしてむしろワクワクさせられる。
主演のレオナルド・ディカプリオをはじめ俳優陣の演技も素晴らしく、夢と現実の狭間に狂いゆく姿さえ惹きつけられるものがあった。
個人的にすべての映画の中でも上位に入るくらいラストシーンがお気に入りだ。
壮大でありながら緻密。理屈っぽいかと思いきや、肝となるのは欲望、願い、あるいは愛。色々な要素が絶妙なバランスで調合されている。
なにより「夢の中に入って自由に動ける」という設定自体が楽しい。さらに夢に階層や階層による時間の長さの違いの設定を加えているのが心憎い。他の映画にはない映像体験と、独特のタイムリミット感はその賜物だろう。
そしてここはまだ夢の中なのか?現実なのか?と、余韻の残るラストシーンが味わい深い。それすら最後まで観てくると、問題なのはそこではないのかも、と思えてしまう。見事な1本。
夢の中で繰り広げられる難解な情報戦に、正直頭がついていけないところが多々ありました(笑)。とはいえ展開のテンポはとてもよく、またキャストの素晴らしい演技力のおかげで感情が置いていかれることもないので、最後までハラハラしながら楽しめました。夢の世界の中だからこそのスケール感やこんなのアリ!?と驚くようなアクションは、この世界観ならではで見応えがあります。何と言ってもレオナルド・ディカプリオと渡辺謙の共演を拝めるなんて、これほど贅沢なことはありません。繰り返し観ることでより深く理解し楽しめる作品だと思います。
レオナルド・ディカプリオ&クリストファー・ノーラン監督が放つ大作。人間の夢の中へ入り込み、機密情報を引き出したり、逆に情報を植え付けたりするという、その発想が素晴らしい。非現実的な映像もテンポよく観られるので、十分すぎるほどワクワクさせられる。
細かい設定が難解なので、理解していないと、アッという間に置いていかれてしまう感はあるが、その緻密に計算されたストーリー展開と内容には脱帽だ。
設定を理解した上で何度でも観たい作品である。
人の夢の中に入り、頭の中に深く入り込んでいく、とても複雑なSFアクション映画だ。
階層が深くなるにつれてミッションの難易度も高くなり死者も出てしまうが、それでも先に進むしかない状況で迫られる選択に、見ているこっちも気が抜けなくなる感覚を覚える。
複雑な意識の仕組みをくぐっていきながら、現実と夢との境がわからなくなってくる。結局どちらの世界なのかわからないまま、いま生きている世界さえ現実なのだろうかと、一種の不安が残るような作品だ。
正直に言うと設定がややこしくて、どういうことなんだろうと疑問に思う場面が多々あった。文章で改めて見ると、なるほどこういうことだったのかと理解を深めることができた。渡辺謙が世界で活躍していることはもちろん知っているが、レオナルド・ディカプリオと共演しているところを見ると、改めて凄い人だなと感じた。
モルが亡くなった原因が、何とも言えない切なさを感じた。こんな状態なら、現実と夢の区別がつかなくなっても無理はないと思う。
夢の中を舞台に繰り広げられる新感覚ミステリーだ。夢の中に入り込み情報を搾取したり、意識を植え付けたたりする主人公のコブとその仲間たちが繰り広げる展開は、夢の中でスピーディーに進むため、しっかり集中しないと状況が把握できないほどだ。
夢の中という設定は面白く綿密に作られているため、とても満足してみることが出来た。しかし、1回で理解することが難しかったので、2,3回観て内容を理解すれば更に楽しめるだろう。さすがの内容としか言いようがない。
夢の中で行動を操り、他人の頭の中のアイデアを盗むという話。夢の中の夢の中の夢など二重、三重構造に現実か夢かわからなくなってしまった。区別がつかなくなると混乱するため、夢の世界は現実の世界の模写をしてはならず、そのためには設計士が必要である。コブもかつては設計士だったが、亡き妻モルが夢の中に出現してしまうようになり、モルは設計をやめてしまう。「設計士は夢を創る仕事」というセリフは、この世界感だけに過ぎない表現のようで個人的にとても好きだ。
ペンローズの階段は、錯覚を利用した無限の階段で、映画の中でそれが出てきたのも感性を揺さぶられた。夢を操れる、夢のような世界観にわくわくさせられる映画だ。
夢を介して深層心理へと潜り込み、意識を植え付けるという発想がまず素晴らしい。さすが、クリストファー・ノーラン監督である。非常にテンポがよく、主人公を含め登場するキャラクターそれぞれの思いや複雑な心理をもきちんと描いている。難解ではあるが、夢と現実の境を分からなくさせるという意味では目論見通りではないかと思う。
監督は今作の構想に20年の歳月を費やしたらしく、『マトリックス』や『13F』など他作品からの影響も受けている。確かに『マトリックス』と少し似ていると感じていたが、影響を受けているのならば頷ける。非常に想像力豊かでアーティステックで、面白い作品だと思う。
夢の中ならなんでもあり。とはいえ、ここまでボリュームとスケール感のある映像を着想して実現できる映画監督はそうはいない。映像を楽しむだけでも十分に元をとれる映画ではあるが、この作品の真価はその世界を十二分に使ったサスペンスだろう。いつの間にかどこからが夢で現実かがあいまいになると同時に、現実であろうがなかろうがどちらでもいいのではないか。というラストに至るまでの構成が緻密で製作者の深い人間洞察をうかがわせる。一粒で二度おいしい傑作と呼べる作品だ。
複雑な設定になっていて説明が長くなっているので、最初はストーリーに入り込めずにいたが、しっかりと説明を聞きながら進むと理解できるようになり、さらに納得させてくれる脚本になっていて、作品の緻密さに感動した。結末まで惑わされ続けたが、観た後は自分の考察や感想をこの作品を見た人に伝えたくなるような、そんな作品になっていた。
夢の内容は映画を作ることが出来るほど濃いが、実際に経過した時間はたった10分という現実にもよくある感覚の設定がよりリアルに感じた。
とてつもなく壮大で複雑なSF映画である。夢の中に入り込んでミッションをこなすという、今までに観たことがない舞台設定であった。
確かにこれは夢なのか、現実なのか、と混乱する場面も多々あったが、夢の世界から帰ってこれるのかという今までにない緊迫感が癖になる作品であり、何度も見直したくなる映画だった。
ラストシーンでこれは夢か現実か、結論が出ない終わり方はインセプションらしい、この映画の世界観に合ったラストだと思う。