映画『イップ・マン 完結』の概要:『イップ・マン』シリーズ第4弾の完結編。詠春拳の宗師であるイップ・マンは香港にて妻亡き後、男手一つで息子を育てていたが、息子が学校を退学処分にされてしまう。イップ・マンは喉頭がんにて余命宣告されていたが、サンフランシスコへ向かうことに…。
映画『イップ・マン 完結』の作品情報
上映時間:105分
ジャンル:アクション
監督:ウィルソン・イップ
キャスト:ドニー・イェン、チャン・クォックワン、ウー・ユエ、スコット・アドキンス etc
映画『イップ・マン 完結』の登場人物(キャスト)
- イップ・マン(ドニー・イェン)
- 詠春拳の宗師で達人。どちらかと言うと寡黙な性質で、穏やかで控えめな性格。ヘビースモーカーで煙草が欠かせない。妻に先立たれ一人息子を男手一つで育てているが、息子とは上手くコミュニケーションが取れずにいる。中国武術を広めたいと考えている。
- ブルース・リー(チャン・クォックワン)
- イップの弟子。サンフランシスコ在住でイップからの後押しを受け、詠春拳を人種関係なく広めている。多数の弟子を持っているが、少々傲慢な態度が玉に瑕。イップを信奉している。
- ワン・ゾンホア(ウー・ユエ)
- サンフランシスコの中華街、中華総会の総長。太極拳の師匠。移民の3代目で白人主義者の人種差別から中華街を守ろうと頑なになっている。娘に太極拳を取得するよう強要しており、頑固なまでに話を聞こうとしないが、イップとの出会いにより考えを改める。
- バートン・ゲッデズ(スコット・アドキンス)
- 海兵隊2等軍曹で空手の有段者。白人主義者で傲慢。空手と白人が一番だと思っている。中国武術を馬鹿にしており、ハートマンの活動を妨害するなどして中華総会へ乗り込む。
- ハートマン・ウー(ヴァネス・ウー)
- ブルースの弟子で海兵隊軍曹。詠春拳の素晴らしさを知り、海軍でも応用できると考え中国武術を広めようとしている。バートンの妨害に遭い苦悩する。中華人で移民。
映画『イップ・マン 完結』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『イップ・マン 完結』のあらすじ【起】
1964年、サンフランシスコにて国際空手道大会が開催。かつての弟子であるブルース・リーの雄姿を見るため、中国武術・詠春拳の宗師イップ・マンは会場へ向かった。
一カ月前、香港。イップは自らが悪性の喉頭がんに侵されていることを知る。医師からは治療を勧められ喫煙もやめるよう告げられた。そんな時、道場にブルースの弟子を名乗る移民局の黒人青年が訪れる。サンフランシスコに渡ったブルースが一か月後に行われる国際空手道大会に師匠を招待したいと言う。だが、イップはそれを丁重に断った。
妻に先立たれ男手一つで息子を育てているイップだったが、息子は学校で何度も喧嘩沙汰を起こし、退学を言い渡されてしまう。母親を亡くして以来、息子とは上手く会話ができていないイップ。そこで、彼は海外へ渡り息子の入学先を探すことにした。
ところが、息子は海外へ行かずに父のように武術の師を目指すと言う。イップは息子のことを知り合いの刑事に頼み、単身アメリカのサンフランシスコへ。到着後は中華総会へ向かい挨拶。ゴールドラッシュ以来、サンフランシスコには多くの華人が移民や留学生として渡り、地区が形成されていた。
総会の総長、ワン・ゾンホアは太極拳の師匠であったが、総会では西洋人に武術を伝授することを禁じていた。ところが、イップの弟子であるブルースは詠春拳を広めるため、西洋人へも教えていると言う。ブルースの傲慢な態度も問題視されており、総会とは対立状態にあった。ワンは総会の掟に従うなら紹介状を書くと言う。イップはブルースの思想を理解していたため、中国武術を広めるのは良いことだと真っ向から立ち向かう。当然、ワンとの交渉は決裂してしまうのだった。
保守的な中華総会と対立してしまったイップは、紹介状を得ることができず息子の入学先を見つけるのも困難となってしまう。そこでかつての知り合いである記者の伝手を頼り、紹介状を書いてもらおうとしたが、中華人は信用ができないと拒絶されてしまうのだった。
そうして、一カ月が経過。イップは大会へと赴いたのである。ブルースは詠春拳を披露し、会場は拍手喝采で幕を閉じた。
映画『イップ・マン 完結』のあらすじ【承】
紹介状のことはブルースが何とかしてくれるとのことだったので、頼むことにしたイップ。次にブルースの弟子であるハートマン・ウーを紹介される。ハートマンは海兵隊員で中国武術を軍にも普及させようとしているらしい。そこへ、軍の空手部と遭遇。ブルースはいつものことだと笑い、全員を外へ連れ出し一勝負することに。イップはダイナーの中でその様子を見守る。勝負はブルースの圧倒的勝利で終わった。
ブルースの弟子から紹介状を書いてもらい早速、名門私立校へ。校長と面談したが、中華総会の推薦状も必要だと言われてしまう。身元を保証するためらしい。それか、1万ドルの寄付をして理事に加われば、推薦状が無くても息子の入学を認めると言うのだった。
この名門私立校にはワンの娘も通っていたが、米国人からは迫害されていた。彼女はチアリーディング部に所属していたが、リーダー格の娘からやっかまれ彼女の味方をする男子生徒達から暴行され、無残にも髪の毛を切られてしまう。その様子を見かけたイップは、彼女を助けるために乱入。
男子生徒達を退けたイップは、少女と共に帰路に就く。少女はワンが父親であることを明かし、イップの息子が入学したら面倒を見てくれると言う。彼女からワンが中華総会を創立した経緯を聞いた。
ワンの娘と共にワンの元を訪れたイップ。ワンは米国人から中華人が迫害されており、中華街を守るために頑なである。イップは米国人と和解する道を示唆したが、ワンは聞き入れず紹介状を書いて欲しかったら自分と勝負しろと言うのだった。
仕方ないのでイップはワンと勝負することに。屋敷内にて激しい攻防を繰り広げたものの、その途中で地震が発生。勝負はお預けとなり、中秋節の晩へと延期されることになった。イップは中国武術を通して米国人と和解するべきだと諦めずに進言し、紹介状のために訪れたのではなく、娘が心配だったから付き添っただけだと告げて去った。
帰り道、息子のことを思い返したイップは、香港への定期連絡を入れたが、相変わらず息子とは話せなかった。
ハートマンが所属する海兵隊、訓練基地。ハートマンは詠春拳の訓練を行うため、木人樁を運び込む。軍では白人による黒人への差別も目立っていたが、中華系のハートマンも例に漏れずその対象となっていた。上官のバートン・ゲッデズは彼に中国武術を披露しろと空手の教官と戦わせたが、ハートマンは負けてしまう。そのせいで、木人樁はバートンによって燃やされてしまうのだった。
映画『イップ・マン 完結』のあらすじ【転】
翌日、イップの元にワンの娘が紹介状を持って訪れる。どうやら父親のサインを偽造したものらしい。彼女は父によって太極拳を取得するよう強要されており、ワンに不満を抱いていた。そこで、イップは彼女の本当の望みは何かを聞き出し、中秋節でチアリーディングを披露してはどうかと提案するのだった。
その頃、ワンの娘に危害を加えたリーダーの娘は、ワンの娘に危害を加えられたと移民局の職員である父に訴え、中華街に捜査の手が入るよう仕向ける。
同じ頃、ハートマンは上官に詠春拳の素晴らしさを訴え、興味を持ってもらえた。呼び出されたバートンはハートマンの所業に苛立ちを隠せない。そこで、彼は空手の教官にハートマンの目論見を妨害するよう命令した。
中秋節。中華街では賑やかな祭りが開催。ハートマンはその様子を映像として録画し、資料集めを行う。ワンの娘はチアリーディングを披露する準備を整えていた。ワンはイップの控え目な態度と提案に考えを改め、中華総会の事務所にて紹介状を作成。そこへ、移民局がやって来る。不法滞在者への尋問のため、連行すると言うのだ。ワンは大人しく従うことにした。
その頃、武術披露会場に軍の空手部が乱入。中国武術を酷く愚弄し挑発した。このことで憤った各派閥の師匠たちが次々と挑戦したが、敗北。教官が相手を殺そうとしたため、イップが前に出て相手をすることに。そうして教官を懲らしめ勝負に勝利した。
そこへ、ワンが移民局に連行されたと知らせが入る。イップはワンの娘と共に急いで移民局へ。ワンは一方的な尋問に答えなかったので、移民局は中華総会の全員を捕らえると決定。
一方、中華総会では空手家との騒動の発端について、ブルースがやったことではないかと決めてかかっていた。そこへ、バートンがやって来て師匠達を酷く痛めつける。イップに撃退された腹いせだった。バートンもまた空手の有段者で、腕前には自信があった。
移民局からイップが戻ると酷い有様である。西洋人にやられたと話を聞いたが、ひとまずは移民局から逃れるため、全員に身を隠すよう促した。移民局が中華総会へ到着した頃、中にはもう誰もいない。
バートンは中華総会で一騒動した後、移民局へ。カンフーの代表者としてワンに落とし前をつけさせるため、勝負を挑むつもりだ。ワンの娘は移民局の職員がリーダー格の娘の父親だと気付き、悪いのは自分なのでどうか許して欲しいと頭を下げる。しかし、その姿を目にした父が酷く憤慨。外国人に頭を下げる必要はないと断言する。イップとの出会いにより考えを改めたワンは、娘に胸を張るよう言葉をかけバートンとの対決へ向かうのだった。
映画『イップ・マン 完結』の結末・ラスト(ネタバレ)
一方、イップは避難場所としてブルースの道場へ師匠達を連れて行った。
同じ頃、ワンはバートンに連れられて軍の訓練基地へ。ハートマンが駆け付け対決する必要はないと言ったが、ワンは確固たる表情で対決を受けると言う。
画して、バートンとワンの対決が開始。イップと対等に戦えるワンも達人の域に達していた人物であったが、日頃から軍人として体を鍛えているバートンとでは技術では勝っていても力の差があり過ぎる。ワンは善戦したものの勝負には負けてしまうのだった。
ブルースの道場に避難した師匠達は口々に白人から迫害されてきた不満を述べる。対して、これまで対立していたブルースには態度を軟化させた。ハートマンの一報によりワンが勝負に負けたことを知ったイップ。彼は頭を悩ませながらも定期連絡を入れた。やはり息子は電話に出ないが、知り合いの刑事に自分ががんであることを告白。すると、刑事はイップのことを思い息子を説得してくれた。ショックを受けた息子は涙ながらに父と和解。イップは武術を習いたいなら自分が教えるからと息子に言葉をかけ、用事を済ませたら帰ると告げた。
その足でイップは待機していたハートマンに基地へ連れて行ってもらう。白人主義者のバートンは白人以外の人種を見下している。行き過ぎたその思想は明らかに人種差別と言えるものだった。ハートマンがそれを指摘し、イップがバートンと対峙。激しい攻防の末、倒されてしまうイップ。バートンはそんな彼を口汚く罵った。立ち上がったイップは再びバートンと対峙し右腕を折り、喉を突いた。本来ならやるべきことではなかったが、バートンの行いは武術家として見過ごせないものだった。このことで、軍の兵士達はイップの毅然とした態度と立ち向かう勇気に心を打たれ拍手を送った。
後日、ワンはイップへと紹介状を手渡す。イップは海外で見る月も故郷で見る月も変わらないと笑うのだった。
沢山のお土産を持って香港へ帰郷。息子が笑顔で出迎えてくれた。イップは息子に詠春拳を教え始めたが、息子を達人の域まで教えることはできないと悟り、見本として自分の姿を映像に録画するよう息子に促すのだった。
1972年12月2日、一代宗師イップは、喉頭がんにより79歳でこの世を去った。米軍は70年代に中国武術を取り入れ始め、海兵隊では2001年に中国武術を必修科目とした。
映画『イップ・マン 完結』の感想・評価・レビュー
『イップ・マン』シリーズの完結編。今作の序盤でイップ・マンは喉頭がんで余命が短いことを申告される。彼はヘビースモーカーでもあったため、頷ける結果とも言える。しかも、息子とも上手くコミュニケーションが取れていない。それでも表情があまり変わらないので、周囲は彼が悩んでいることに気付かない。息子と腹を割って話したいのに、話せない不器用な感じが、さすがドニー・イェンの演技力だと思った。そして、今回でも対決シーンが満載。個人的には太極拳の師匠との対決シーンが好き。電話で息子と和解する場面には涙が滲んだ。これで完結だと思うと、少し寂しいように思う。(MIHOシネマ編集部)
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