映画『美しき諍い女』の概要:妻をモデルに“美しき諍い女”を描こうとした有名な画家、フレンホーフェルは、完成間近で絵を描くことを止めてしまった。10年後、彼の前に現れたマリアンヌをモデルに、再び“美しき諍い女”の完成を目指す。
映画『美しき諍い女』の作品情報
上映時間:237分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ジャック・リヴェット
キャスト:ミシェル・ピッコリ、ジェーン・バーキン、エマニュエル・ベアール、マリアンヌ・ドニクール etc
映画『美しき諍い女』の登場人物(キャスト)
- マリアンヌ(エマニュエル・ベアール)
- 作家志望の若い女。画家である恋人のニコラにくっ付いて、フレンホーフェル邸を訪れた。
- エドゥアール・フレンホーフェル(ミシェル・ピッコリ)
- 使用人を雇い豪邸に暮らす有名な画家。バルタザールから、マリアンヌをモデルに未完成の絵を完成させてはどうかと持ち掛けられる。
- リズ(ジェーン・バーキン)
- エドゥアールの妻。10年前自分をモデルに描かれた絵が未完成のままで、夫との関係がギクシャクしている。
- ニコラ・ヴァルテル(ダヴィッド・バースタイン)
- 若い画家。マリアンヌの恋人。マリアンヌがフレンホーフェルのモデルになることを快諾したが、次第に2人の関係性へ不安を抱く。
- バルタザール・ポルビュス(ジル・アルボナ)
- 化学者であり、絵画の収集家。フレンホーフェルの新作を買い付けようと、マリアンヌをモデルに推薦した。
映画『美しき諍い女』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『美しき諍い女』のあらすじ【起】
7月上旬の月曜日、若い画家のニコラは、カフェテラスでデッサンを描いていた。彼の恋人のマリアンヌは、絵画収集家であるバルタザールの紹介でフレンホーフェル邸を訪問することに言い知れぬ不安を感じていた。
バルタザールに伴われ、ニコラとマリアンヌは豪華な石造りのフレンホーフェル邸を訪れた。ニコラは、憧れのエドゥアール・フレンホーフェルに会えることを楽しみにしていたが、出迎えたのは娘のマガリであった。
家主を待つ間、妻のリズが彼らを案内してくれた。リズとバルタザールが雑談をしていると、約束の時間を忘れていたエドゥアールがようやく姿を現した。マリアンヌは、ニコラへ「変なことが起きそう」と不安な気持ちを囁いた。
エドゥアールによってアトリエへ案内されたバルタザール、ニコラ、マリアンヌは、乱雑に置かれた過去の作品達を眺めて回った。ニコラはエドゥアールへ、まだ完成していない“美しき諍い女”という作品は本当にあるのかと、噂の真相を訊ねた。エドゥアールは、17世紀に実在した娼婦の物語に感銘を受け、10年前に製作へ取り掛かったと話したが、実物を見せることはしなかった。
映画『美しき諍い女』のあらすじ【承】
夕食を囲んでいる最中、バルタザールは発作で倒れてしまった。意識を取り戻した彼は眼鏡をアトリエに忘れたことに気付き、エドゥアールとニコラに付き添われアトリエへ向かった。残されたマリアンヌは、リズと身の上話をする。マリアンヌは彼女へ、ニコラとの仲が良好でないことを打ち明けると、「私が変わったの。最後には傷つけあってしまう」と溢した。
回復したバルタザールは、エドゥアールへ“美しき諍い女”の続きを描いてはどうかと提案した。エドゥアールは、リズをモデルに件の作品を描いたことで離婚寸前まで喧嘩した記憶を回顧したが、バルタザールがマリアンヌをモデルにしてはどうかと助言したため、僅かに希望を見出した。2日後にマリアンヌとパリへ発つ予定だったニコラは、憧れのエドゥアールの新作に期待を寄せ、彼女の断り無しに快諾した。
ニコラは、アパートへの帰路でマリアンヌにモデルの件を話した。道中から寝支度をするまで彼の話に納得のいかなかったマリアンヌは、ニコラに背を向けて眠った。
翌朝、ニコラが起きるよりも先に身支度を整えたマリアンヌは、彼に声を掛けずフレンホーフェル邸の戸を叩いた。
映画『美しき諍い女』のあらすじ【転】
モデルを引き受けたマリアンヌは、エドゥアールとアトリエに籠った。最初は思うようにデッサンが進まないエドゥアールだったが、ヌードデッサンに切り替えることで次第にイマジネーションが湧いていった。
ニコラは、今更になってマリアンヌをフレンホーフェル邸へ行かせたことを後悔していた。彼はリズに不安な気持ちを打ち明けアトリエへ向かおうとしたが、エドゥアールの意欲を邪魔したくない彼女はニコラを止めた。
マリアンヌは、次第にヌードへの躊躇が無くなっていった。エドゥアールに要求される困難なポーズにひたすら耐えながらも、デッサンに付き合った。エドゥアールも徐々に情熱を取り戻し、語調を荒げながら「君の内面を全て引き出してあの額に飾ってやる」と息巻いた。
マリアンヌは、同じ題材なのに何故リズでなく自分をモデルにするのかとエドゥアールに問い質した。彼は「闘って欲しかった」とだけ答えた。リズでもなく、ましてやマリアンヌ自身のことも直視せず人の本性だけを描こうとするエドゥアールに中てられたマリアンヌは、彼と同じように覚悟を決めてデッサンに挑んだ。
リズは、10年前の“美しき諍い女”で挫折して以降初めて活き活きとする夫を見て、マリンヌに嫉妬した。ニコラもまた、リズに「本物のマリアンヌに会って早く帰りたい」と弱音を吐いた。
映画『美しき諍い女』の結末・ラスト(ネタバレ)
リズは、マリアンヌに「気を付けて。彼が顔を描きたがったら断るのよ」と忠告したが、彼女は聞く耳を持たなかった。
マリアンヌは、エドゥアールに向けて構図や場所を自分で決めると言い放つと「私を見て」と訴えた。エドゥアールは狼狽したが、ニコラとの関係が崩壊したと語るマリアンヌの顔をデッサンし始めた。彼女に真のインスピレーションを受けたエドゥアールは、リズを描いたキャンパスへマリアンヌの肢体を描き、新しい“美しき諍い女”の完成に迫った。
アトリエを覗き見たリズは、自分の顔の上にマリアンヌの臀部が描かれていることに大きなショックを受け、エドゥアールを問い質した。しかし、エドゥアールは「ああするしか先に進めないんだ」とだけ答え、夫婦の気持ちが通じ合うことはなかった。
エドゥアールは、ついに“美しき諍い女”を完成させた。マリアンヌは出来上がった絵を見ると絶句し、無言のままアトリエを去った。アパートに戻ったマリアンヌは「非情で冷淡なものを見た」と取り乱した。マリアンヌが去った後、エドゥアールは“美しき諍い女”を壁に埋めると、バルタザールへ収めるための代替品を一晩で描き上げた。
バルタザールは、待ち焦がれた“美しき諍い女”を即席の絵とも知らず満足げに買い取った。ニコラはエドゥアールに「今でも絵画に真実を求めてます?」と詰め寄り、そこにマリアンヌが描かれていないことを見抜いた。
エドゥアールに尊敬と失望を抱いたニコラは、マリアンヌに早くパリへ出発しようと声を掛けた。しかし、彼女はニコラの誘いを断ると身を翻した。
映画『美しき諍い女』の感想・評価・レビュー
行間を読むような静寂が続き、派手な演出に慣れてしまった私にとっては少し退屈な映画だった。しかし、無音の中にマリアンヌの心境の変化やエドゥアールの恐ろしい執着心が見えた時、作品の神髄に迫ったように感じた。
完成した“美しき諍い女”は、作中ついに観客の目に曝されることは無かった。マリアンヌの目の奥にある力強さと冷淡さを、エドゥアールはどのような形で表現したのだろうか。想像力を掻き立てられる映画であった。(MIHOシネマ編集部)
画家とその妻、画家のモデルになる女とその彼氏。2組のカップルのなんとも複雑で人間味のある様々な感情がものすごく濃く描かれた237分でした。
とにかく長い。しかし芸術とはこうやって時間をかけ、色々なものを犠牲にし生まれていくのかと感じてしまうほど美しい世界でした。絵のモデルを演じるエマニュエル・ベアールがものすごく綺麗で、こんなに綺麗な女性が旦那が描く絵のヌードモデルだったらそりゃ妻は嫉妬するなと。そしてこのモデルの彼氏もこんな綺麗な彼女のヌードを老画家に描かれるなんて嫉妬に狂うはずだと。
現実離れした世界に「映画」で見れてよかったなあと感じる作品でした。(女性 30代)
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