映画『世界で一番いとしい君へ』の概要:16歳の少年は身体が80歳という不治の病である。両親は17歳という年齢で少年を産み育てて来た。10代で子供を育てる苦労と、両親の深い愛情に同じ愛で応える息子の、悲しくも幸せなヒューマンドラマ。健康がいかに幸せであるかを、痛感させられる。
映画『世界で一番いとしい君へ』の作品情報
上映時間:117分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:イ・ジェヨン
キャスト:カン・ドンウォン、ソン・ヘギョ、チョ・ソンモク、ペク・イルソプ etc
映画『世界で一番いとしい君へ』の登場人物(キャスト)
- デス(カン・ドンウォン)
- テコンドーが得意な33歳。アルムの父親。17歳で家出して家族を養う為に、ずっと働き詰めている。明るくひょうきんで前向きだが、頭が悪い。優しくて深い愛情を持っている。タクシー運転手。喧嘩早い。
- ミラ(リン・ヘギョ)
- 毒舌で少々、気が強いが秀才。歌手になるのが夢だった。17歳でデスの子供を出産。アルムの母親。深い愛情と広い心で家族を支える。工場勤務。
- アルム(チョ・ソンモク)
- 早老症を患った16歳の少年。身体は80歳。文才に長け、賢い。両親を深く愛しており、思いやりのある子。学校へ通ったことが無い。
- チャン・ドクス(ペク・イルソプ)
- アルムの家の隣人。初老の男性で認知症を患う父親の介護をしている。アルムの友達。
- 主治医ソンテ(イ・ソンミン)
- アルムの主治医。厳しいことを言う中、たまに真顔で冗談を言ったりする。
- デスの父(キム・ガプス)
- 17歳で家出した息子を心配しており、密かに多額の寄付をしていた。孫のことよりも、真っ先に息子を心配していたが、愛情表現が不器用である為に長年、デスとは距離を置いていた。
映画『世界で一番いとしい君へ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『世界で一番いとしい君へ』のあらすじ【起】
17歳のデスは高校でテコンドーをやっていたが、ひょんなことで教頭を回し蹴りしてしまい、加えて妊娠の件により父親と大喧嘩。そのまま家出した。
同じく17歳のミラは、両親と兄5人の8人家族。兄達はデスを追いかけまわし、両親はミラに激怒。ミラは兄達の影響で毒舌姫と渾名されていた。
落ちこぼれのデスと秀才のミラは、ある夏に運命的な出会いを経て体を重ねた。その後、ミラが妊娠。当然、周囲の大人達は激怒した。
2人の間に産まれた子供はアルムと名付けられたが、早老症を患っていた。
早老症とは老化の速度が10倍以上速く、発症率は3千万人に1人という非常に稀な病気だった。現代の医術では老化の遅延はできるが、老化を止めることはできない。心臓麻痺の危険と老人性の疾患、網膜静脈閉塞症で視力も危うい。親子は週1回、病院へ通う為に引っ越した。
アルムは16歳。しかし、実際の身体的年齢は80歳を超えている。デスはタクシー運転手、ミラは工場で働き支えていたが、息子の治療費には到底間に合わなかった。
そこで3人はテレビの番組に出演。これにより、治療費の寄付を募ることにした。
番組は感動的な構成で制作されており、番組至上トップ3の視聴率を誇った。そのお陰か、巷では親子の姿に気付く人が増え、応援する人々もいれば、思いやりのない言葉を投げつける人々もいた。
そんなある日、アルムの脳内で、細い血管が破裂していたことが分かった。それは小さなものだった為、脳卒中には至らなかったが、下手をすれば命を落としかねない。加えて心臓の血管も弱っており、主治医から入院を勧められる。
映画『世界で一番いとしい君へ』のあらすじ【承】
入院したある夜、アルムは気になっていた少女からのメールに返信した。その子も病気で、アルムの気持ちが少し分かると言う。それからは彼女とメールのやりとりが続いた。
前回の続きを撮影したいと打診が来た為、アルムは了承する。十分な額の寄付金が集まっていたが、デスは息子が退院したらバリアフリーの家に引っ越そうと考えており、その為の資金を稼ごうと、増々仕事に精を出す日々。
そうして、撮影が開始。そこへ、隣人のドクスが見舞いにやって来る。学校へ通えないアルムは、この隣人と過ごすことが多かった。ドクスは初老の男性で、認知症を患った父親を介護している。アルムとは老人仲間と冗談を言い合う仲で友人だった。
アルムは少女とのメールを続けた。少女は作家になるのが夢だと語る。アルムも作家になるのが夢で、今は両親のことを書いていた。デスはテコンドーの国家選手、ミラは歌手になるのが夢だったが、2人はそれらを全て捨ててアルムを育てて来たのだった。
ある朝、主治医の回診でアルムはiPadを取り上げられてしまう。パソコン、テレビ、本など全てが目に悪影響を及ぼすと言うのだ。確かに、アルムの視力はどんどん落ちていた。そこで、彼は少女に画像を送ってもらうことにする。送られて来たのは左手の画像だったが、若く美しい手だった。アルムは健康体の自分と少女がデートする妄想をする。
映画『世界で一番いとしい君へ』のあらすじ【転】
自分が生きたいと思う瞬間を綴って、メールを送ったアルムだったがそれ以降、少女からの返信が途絶えた。
そうしている内にも、投薬は強いものになっていく。死が近づいているのだ。アルムは主治医から自分の命の期限を聞いた。医師は神妙な表情で短ければ1カ月、長くても2カ月だと答えた。
アルムはドクスと春になったら、温泉へ一緒に行く約束をする。おおいに笑いそして、苦痛に耐えた。
そんな時、アルムとメールのやりとりをしている少女の素性が明らかになる。彼女は病気でも何でもなく、早老症の少年と難病の少女のシナリオを作る為に、アルムへと近付いたというのである。
ミラは激怒するも、法律で裁ける問題でもない。アルムはそれを陰から立ち聞きしてしまい、落ち込んだ。彼は絶望して感情を顕わに、苦痛を両親に訴えた。もうじき死んでしまうかもしれない、愛する息子。両親はひっそりと涙を流す。
アルムは少女へ別れを告げる最後のメールを送った。
その夜、デスに頼み込んで、こっそりと外出。野原を走って泣いた。全てが嬉しいと語るアルムだったが、きっとそれだけではない。デスは息子を抱き締めるしか出来なかった。
その後、2人で夜空を眺める。アルムは友達のような、そうかと言えば子供のような父親であるデスが、自分の父で良かったと思う。しかし、その星ですら見えなくなる。心配する父親の顔。これが、アルムが見た最後の姿だった。
アルムの容体が急変。極度のストレスが眼圧に影響を及ぼし、視力が失われたらしい。
デスは怒りに任せて少女の家を訪ねた。シナリオ家は片足の不自由な男だった。彼は泣きながら謝る。どうやら悪い人間ではないようだった。
その後、思い立って自分の実家を訪ねてみたデス。家には年老いた父親が1人で暮らしていた。室内を見回し、大金を寄付してくれた匿名の人物が、自分の父親だったことに気付く。デスは泣きながら父親に謝った。父親はずっと、家出した息子のことを心配していたのだった。
映画『世界で一番いとしい君へ』の結末・ラスト(ネタバレ)
アルムは本当に賢く聡明な子供だった。もう歩くことも叶わない少年へ、ドクスが見舞いに訪れる。彼は最後の思い出にと、病院の庭でこっそりと焼酎を味見させた。ドクスは認知症の父親と地方の施設へ行くらしい。友人はアルムとの別れを惜しんで去った。
世間はクリスマス。デスは毎月アルムの為に貯めていた金をプレゼントするも、アルムはそれよりも除夜の鐘を聞きたいと願う。そして、あるファイルを印刷して来て欲しいとデスに頼んだ。
早速、ファイルの印刷を頼みに来たデス。アルムのPadにシナリオ家からのメールを見つける。そこで彼は、息子に少女からメールが来ていたと告げ、即興で作った励ましの内容を聞かせる。アルムは返信を父に頼んだ。彼は小さい頃の自分の話をデスにする。17歳で子供を産んで育てた両親を、深く思いやる息子にデスは涙が止まらなかった。
デスは主治医にアルムの退院を願い出る。最後は家族3人で過ごしたかった。主治医は反対したが、彼の必死な説得を聞き退院を許可した。
息も絶え絶えの息子を連れ、除夜の鐘の音を聞きに向かう。道路は渋滞していたが、アルムはミラにお腹の子の頭を、兄の自分が撫でたと言って欲しいと言う。ミラは新たな命を宿していたのだ。アルムは流れ星に願い事をしていた。次に生まれる兄弟は必ず健康にして欲しいと。
そして、両親へ自分が書いた小説を渡した。新年の贈り物として。
車の中で小説を読み聞かせるミラ。小説はデスとミラの出会いから書かれていた。アルムは自作の小説を聞きながら、静かに息を引き取る。少年は除夜の鐘を聞けなかったが、両親の深い愛情を受けそして、それを小説として返していったのだった。
それは春の出来事。デスとミラはアルムの手を引いて、仲睦まじく帰って行く。とても幸せそうな家族の後姿だった。
映画『世界で一番いとしい君へ』の感想・評価・レビュー
人気作家キム・エランの小説『どきどき僕の人生』を映画化した作品。
10代で親になった両親が難病を抱える息子を懸命に支え、息子もまた両親に愛情を返すという悲しくも心温まる内容。
作中には両親と息子の愛情が溢れ涙なくしては観られない。10代後半で子持ちとなり産み育てるという選択をした両親の決断もさることながら、苦しい日々の生活の中でも愛情を失わず支え合う姿は理想的。ともすれば、荒んで破綻しかねない状況でも父親のひょうきんな性格が一家の要でもあるのだろうとも思う。非常に前向きで感動的な作品。(女性 40代)
早老症のことは知っていたが、親の視点から改めてこの病気のことを見ると、ただ見守ることしかできないことに歯がゆい思いを抱えた。辛く悲しい気持ちだけでなく、親の深い愛情や家族の絆を感じることができる物語だった。
17歳という若さで子供が妊娠したら、親だったら誰だって怒ってしまうと思う。でも、デスもミラも誰よりも素晴らしい親で、深い愛情でアルムを育ててきたことが伝わってきた。やっぱり結末は悲しくて泣いてしまったが、デス達の未来が明るいと感じられたのが良かったと思う。(女性 30代)
どんな姿でも、どんなに難しい病気を持っていてもやっぱり自分の子供は愛おしくて仕方ないのだと感じさせられる作品でした。この作品で「早老病」のことを知りましたが、もし自分の子供が同じ病気になったら私は親として何をしてあげられるだろう、子供のことをしっかり守ってあげられるのだろうかと正解のない疑問が沢山浮かんできました。
デスとミラは本当に素晴らしくて、よく出来た親だと思います。自分たちも若くてやりたいことは沢山あったと思いますが、自分の人生を全てアルムのために捧げている姿は涙無しでは見られません。親としては当たり前の行動なのかもしれませんが、その大変さと家族の強い絆を教えてもらった気がします。(女性 30代)
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