映画『殺されたミンジュ』の概要:殺された少女を巡り、少女殺害の実行犯と思われる容疑者を、次々と襲う謎の集団が辿る運命を描く。韓国の鬼才キム・ギドク監督が、脚本から撮影まで全てを手掛けたR15指定作品。容疑者1のキム・ヨンミンは、作中で他に7役を演じている。
映画『殺されたミンジュ』の作品情報
上映時間:122分
ジャンル:サスペンス、ミステリー
監督:キム・ギドク
キャスト:マ・ドンソク、キム・ヨンミン、イ・イギョン、チョ・ドンイン etc
映画『殺されたミンジュ』の登場人物(キャスト)
- 謎の集団のリーダー(マ・ドンソク)
- 柄の悪い中年の男。元海兵で暴力的だが、深い悲しみを抱いている。恐らくは、殺されたミンジュの父親。
- 容疑者1 オ・ヒョン(キム・ヨンミン)
- 謎の集団の最初のターゲット。集団への復讐に燃え、全容を明らかにする。ミンジュ殺害の実行犯。
- 謎の集団メンバー1(イ・イギョン)
- カフェの店員で気が弱く真面目。リーダーの信念に心酔している節があり、最後までリーダーに付き従う。
映画『殺されたミンジュ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『殺されたミンジュ』のあらすじ【起】
5月9日、夜。女子高生が1人殺された。少女の名前はミンジュ。
1年後。
恋人とデートをして帰ろうとしたオ・ヒョンは突如、数人の男達に襲われ、黒い袋を被せられて拉致された。軍服を着た数人の兵士に囲まれ、リーダーの男に詰め寄られる。
昨年の5月9日にやったことを、紙に全て書けと。
抵抗すると水責めにされ、更に釘付きの棍棒で殴られた。痛みと恐怖に苛まれたオ・ヒョンは、全てを紙に書き殴る。再び、目隠しをされて元の場所に戻されたオ・ヒョン。血塗れで泣きながら、自分の車で夜を明かした。
妻と外食後に1人で夜景を眺めていたチョン・イセは突然、背後から目隠しをされて拉致される。両腕を拘束され、ヤクザ風の集団に囲まれた。
リーダーの男は昨年の5月9日にやったことを、紙に全て書けと言う。陰部を殴られ、気の弱いチョン・イセはすぐに白状。解放された後、良心の呵責に苛まれていた彼は自殺した。
謎の集団はリーダーを含め、全部で7人いる。その中で紅一点の女は、恋人と同棲していた。しかし、同棲相手は彼女を束縛し、暴力を振るう。女は殴られる恐怖に怯えながら、しかし愛を囁かれれば許してしまう。典型的なDVの被害者だった。
3人目はオ・ジハ。警官の集団に捕縛され、死体写真を見せられる。抵抗すると、金槌で左指を何本か折られた。リーダーの残虐性は常軌を逸している。オ・ジハは泣きながら同日の所業を書き記した。彼は早々に解放される。
映画『殺されたミンジュ』のあらすじ【承】
謎の集団はどうやら、寄せ集めのメンバーのようだ。リーダーの暴力を非難する集団の1人である青年は、兄の金でアメリカへ留学して猛勉強したが、国へ帰ってもまともな職に就けなかった。そのせいで、兄から文句ばかり言われ、憂さ晴らしに参加したらしい。だが、リーダーの暴力性に疑問を持ち始める。青年は、やりすぎたら通報するとリーダーを脅した。
オ・ヒョンは謎の集団を追うことにした。先輩であるオ・ジハの家を盗聴し、謎の集団を密かに調べ始める。
奴らの車を尾行して、山奥の廃屋へ。そこでは今正に、チーム長のオ・ジョンテクの拷問が開始されようとしていた。
軍隊の衣服を纏った男達がオ・ジョンテクを囲む。室内を暗闇にして暴行。その様をオ・ヒョンが泣きながら、明かり取りの隙間から見つめる。リーダーはオ・ジョンテクの書いた所業を目にし、同じことを聞く。家族の存在を仄めかされ、オ・ジョンテクは解放された。
集団メンバーの1人である若者は、自動車修理工で働いていた。彼はただ、面白そうだから参加したと言う。へらへらと笑う若者は普段、仕事場の社長にいびられてコケにされていた。
オ・ヒョンは解散した謎の集団メンバーを尾行して、個々の顔写真を集めていく。その後、奴らのアジトへと侵入。全てが茶番であることを知る。そして、先輩オ・ジハの元へ行き、それらを報告。謎の集団への復讐を促した。しかし、オ・ジハは復讐の話には乗らずに立ち去る。オ・ヒョンは次に、チーム長のオ・ジョンテクの元へ向かうも、彼は恐怖に慄き逃げ去った。
映画『殺されたミンジュ』のあらすじ【転】
リーダーはメンバー1が務めるカフェに来ていた。彼は今や、リーダーの右腕的存在であるが、普段は気が弱く真面目な青年だった。彼の場合、まともな職についており、今のところ不満があるようには見えない。原因のない怒りは解決のしようがないため、それが一番怖い。
リーダーは言う。今の世の中は酷く壊れている。だから、理由のない怒りで溢れているのだと。
その夜、謎の集団は実行部隊の責任者、チン・ホソンを捕縛した。別部隊の衣装で尋問する。偉そうな態度で怒鳴りつけるチン・ホソンだったが、電気拷問にかけられて供述書を記入。奴から話を聴くと、自分達がやったことは正当だったとほざく。少女を密かに殺害しておきながら、正しい信念で行ったと。リーダーは激怒し、チン・ホソンを何度も殴った。
集団のメンバー達は、リーダーの残虐性に異議を唱える。メンバーからは、抜けたいという意見が続出。ターゲットは残るところ、あと2人だった。
リーダーに口答えした年長者の男は、友人に騙され金を盗まれた挙句、認知症の母を抱えて浮浪者となっていた。お人好しの男は、理不尽な世の中に憤っていたのだった。
謎の集団は軍の将軍を拉致。国家情報院の扮装で相対し、同じように尋問を始める。毒薬で拷問し、供述書の記入に成功するも、メンバーの女が横やりを入れる。将軍は彼らが国家情報院ではないことを見破り、偽物の銃に気付いて彼らを酷く侮辱した。社会のゴミと罵られたリーダーは、懐から銃を取り出す。そして再び、写真を見せ正否を問うた。将軍は命令に従うのが軍人だと言う。それは、少女の暗殺を肯定したも同然だった。リーダーは引き金を引いた。本物の銃は将軍を殺した。
映画『殺されたミンジュ』の結末・ラスト(ネタバレ)
銃声にメンバー全員が集まった。リーダーのやりように皆が異議を唱えた。
死体は近くの山へ埋め、焚火を囲んだメンバー達の内、女と1人の青年が抜けた。
リーダーは女にナイフを見せ、このままでいいのかを問う。すると、女は殴られても我慢できる。悲惨な生活の中でも、良いこともあると話し去って行った。
リーダーは抜けると言った青年を追いかける。彼へは自分が事を成したら自死する旨を伝えた。
メンバーの1人である中年の男は、病気で入院中の妻の医療費を払うために、多額の借金を抱えていた。アパートへは連日、借金取りがやって来て暴力を振るい返済を迫る。リーダーは彼から詳しい話を聴いた。男の妻はもう危ないらしい。リーダーは彼へ助力を乞うた。
リーダーはメンバーとの待ち合わせ場所で待つ。集まったのはリーダーの他に4人だったが、修理工の若者が抜けると挨拶をして去った。リーダーは車のドアを開けて、他のメンバーに最終判断を任せた。しかし、彼らは最後まで付き合うつもりらしく、車から下りなかった。
最後は全てを計画したボスである、ピョン・オグだ。ゴルフの練習場で、清掃員に扮装し奴を捕縛した。拷問器具に捕らえたピョン・オグは傲慢に言葉を放つ。リーダーは黙したまま、まず死体の写真を見せ、次に少女と自分の映った写真を見せた。殺された少女は恐らく、リーダーの娘だったのだろう。ピョン・オグの顔色が変わった。
なぜ殺したのかと聴くも、奴は自分ではないと言い逃れする。
リーダーの危うい拷問を止めるメンバー達。仲間割れが始まる。結局のところ、リーダー以外の他のメンバーは、現状に不満を訴えるだけで、本気で抜け出そうとは思っていないのだった。男達は哀れだった。
メンバー1は他の2人のメンバーが、ピョン・オグへ寝返ろうとしている場面を見る。彼は2人を殴り倒しリーダーを救出するも、全て終わったと告げられ泣きながらその場を去る。リーダーはピョン・オグに生きて子供を楽に生きさせろと言い、立ち去った。
リーダーが去った後、全てを覗き見ていたオ・ヒョンが姿を現す。彼は少女殺害の実行犯だったが、ピョン・オグは彼を脳無しと罵った。男は酷い目に遭っても、傲慢な態度を改めることなく、全てを部下のせいにする。彼の計画で何人もの人々が、人生を狂わされたというのに。オ・ヒョンは不条理を嘆きながらピョン・オグを殺した。
その後、軍服に着替えガスマスクを装着。ヘルメットを被り、釘付きの棍棒を持って颯爽と歩いて行く。
映画『殺されたミンジュ』の感想・評価・レビュー
奇才キム・ギドク監督によるサスペンスフルな群像劇。不条理を強いる世の中へのシニカルな社会風刺をテーマに、少女殺人事件を巡って捕らえられた男達と武装した謎の集団が繰り広げるスリリングな展開を描いている。
物語の始まりは、ソウル市内の市場で無残に少女が殺害されるという衝撃的なシーンから始まる。だが、少女がなぜ殺されたのか謎は明らかにされず、多くの情報の中に埋もれ忘れ去られた。作中では武装集団のメンバーの私生活も徐々に明らかにされるが、リーダーだけが最後まで謎のまま。故に恐らくは少女の父親だったのではないかと予想しかできない。拉致して拷問し、自白させる。それが7人分続くが、少女殺害の理由も明らかにされていき、行き過ぎた暴力に対しても徐々に関係者の心情にも変化が現れる。リーダーは事件に関わる犯人達を制裁しつつ、武装集団に参加した人々の認識をも変えさせるという壮大な計画のもと、たった1人で悪役に徹したのではないだろうか。展開が面白く観終わった後に考えさせられる秀逸な作品だった。(女性 40代)
なぜ少女が殺されたのか、犯人は誰なのか、犯人と思しき者たちに復讐をする集団は何者なのか…など、不明な点が多すぎで、想像力を働かせないと理解するのが難しい物語でした。娘を殺された復讐をする父親と思しき男とその仲間。仲間たちには復讐を手伝う理由は無く、なんとなくという感じだったのが妙にリアルで気持ち悪かったです。
強い人や、怖い人には逆らえず、なんとなくでこう言った犯行が起こるのだとゾッとしました。(女性 30代)
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