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映画『ジュピターズ・ムーン』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『ジュピターズ・ムーン』の概要:自国から亡命してきた青年が逃走中に銃撃され空中浮遊能力に覚醒する。青年を診察した医師は彼の能力を目にし、収容所から青年を連れて逃亡。それぞれの思惑が巡る中、青年と医師は親交を深め逃亡生活を送るが、その果てに見たものとは。

映画『ジュピターズ・ムーン』の作品情報

ジュピターズ・ムーン

製作年:2017年
上映時間:128分
ジャンル:SF、ヒューマンドラマ、サスペンス
監督:コルネル・ムンドルッツォ
キャスト:メラーブ・ニニッゼ、ギェルギ・ツセルハルミ、ジョンボル・イェゲル、モーニカ・バルシャイ etc

映画『ジュピターズ・ムーン』の登場人物(キャスト)

シュテルン(メラーブ・ニニッゼ)
医療ミスをしてしまい多額の借金を背負っており、難民収容所にて働きながら密かに逃亡の斡旋を行い、金稼ぎをしている。空中浮遊能力に覚醒したアリアンと出会い、彼を金儲けの手段とするため、アリアンを連れて収容所から逃亡する。
ラズロ(ギェルギ・ツセルハルミ)
移民国籍局員で無抵抗なアリアンに発砲したことで、責任を問われるも正当防衛だと主張し、難を逃れる。真実を明るみに出さないため、アリアンを執拗に追いかける。
アリアン(ジョンボル・イェゲル)
父親と亡命する際、はぐれてしまい単独で越境を目指すも、山中で移民国籍局員のラズロに銃撃されてしまう。3発の銃弾を浴びたことで、空中浮遊能力に覚醒し生き延び、シュテルンの手引きで収容所から逃亡する。右腕の内側に半分だけのバイオリンのタトゥーがある。
ヴェラ(モーニカ・バルシャイ)
シュテルンの恋人で優秀な医師。市内の病院に務めており、自分勝手な恋人に振り回され存在意義を見失っている。シュテルンを裏切り、ラズロに連絡を入れてしまう。

映画『ジュピターズ・ムーン』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『ジュピターズ・ムーン』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ジュピターズ・ムーン』のあらすじ【起】

父親と共に母国から密入国にて亡命を図ろうとしたアリアンは越境の際、国境警備隊に発見され父親とはぐれてしまう。パスポートの入った鞄も行方不明となり、はぐれた場合の集合場所が描かれた地図のみを持って逃走したアリアンだったが、とうとう発見されてしまい、3発の銃弾を浴びて意識を失ってしまうのだった。

通常であれば銃弾を受けた段階で死ぬはずであったが、彼の身に不思議な現象が発生。意識を失ったアリアンは空中を浮遊するという不思議な能力に目覚め、奇跡的に生き延びるのである。

丸腰で無抵抗なアリアンに発砲した移民国籍局員のラズロは、発砲の理由を正当防衛と主張し事件は一応の収束を得るが、生き延びたアリアンが難民収容所の医療施設へ運び込まれたことで真実が露呈するのではないかと危惧。

難民収容所で働く医師シュテルンは医療ミスにて多額の借金を背負い、逃亡の斡旋をして密かに金儲けをしていた。その日の朝、彼はラズロに撃たれながらも生き延びたアリアンを診察し、彼に空中浮遊能力があることを知る。この件について、当のラズロからはシュテルンが裏金を稼いでいることを見逃す代わりに、アリアンを銃撃したことを黙秘して欲しいと言われるが、医師はその取引を断固拒否。シュテルンはアリアンを連れて収容所から逃亡を図るのだった。

シュテルンに拒絶されたラズロはアリアンに浮遊能力があることを知り、2人の行方を追う。
一方、アリアンを連れたシュテルンは彼の能力に目を付け、見せ物にすることで金儲けしようと考える。青年に甘言を説き、亡命の途中ではぐれた父親を探すことを条件に協力を得るのだった。

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映画『ジュピターズ・ムーン』のあらすじ【承】

翌日、アリアンの空中浮遊にて大金を得た2人だったが、自宅にラズロが現れたため、どうにか逃走。シュテルンは同業者で恋人でもあるヴェラを頼り、ひとまずは匿ってもらう。
寸前で2人を逃してしまったラズロは、アリアンを捕まえるべく青年の父親を探すことにする。彼は警察機関を利用し、難民が身を潜める場所を次々と検挙するのだった。

ヴェラのところで一夜を明かしたシュテルンとアリアン。その日は更に金を稼ぐため、大金を所持するごろつきの元を訪れる。相手がアリアンを馬鹿にしたため、彼の力を利用し懲らしめることにした。アリアンの能力は傷の回復と共に力を増し、重力をも操るほどになっている。見事、懲らしめることに成功し大金を得た。だが、シュテルンは入手した金額だけではまだ足りないと言う。

その頃、着々と2人の足取りを追っていたラズロ。彼は自らが設けた猶予が迫り、上司からは責められその上、警察機関からも良い返事をもらえず、いよいよ追い詰められる。

映画『ジュピターズ・ムーン』のあらすじ【転】

自宅往診と偽り、豪邸を訪問したシュテルンとアリアン。主人の妻は病を患い寝たきりとなっていたが、アリアンは妻の頼みで能力を使い彼女の息の根を止めてしまう。このことで、シュテルンに責められた青年だったが、主人はむしろアリアンに礼を言って金を渡してくる。

好き好んで人殺しをしたわけではなく、頼まれたから仕方なくやったのだ。その上、シュテルンは金儲けばかりを考え、アリアンの要望を叶えてくれる気配がない。青年は父親との集合場所へ向かうべく、シュテルンの制止を振り切って駅の難民キャンプへ向かった。アリアンの後を追って駅へやって来たシュテルンは、密かに彼の動向を見守る。

キャンプにて父親の行方を聞いて回るアリアンだったが、父親は見つけられず。代わりに亡命を手配した男を発見する。出発の際、男がパスポートの入った鞄を預かったため、奴が持っているはずである。だが、男はテロリストでその手に持つ鞄には爆弾が仕込まれていた。
追いかけられた男は咄嗟に地下鉄へ乗り込み、後を追ったアリアン。彼の後を追ってシュテルンもやって来たが、電車には間に合わず乗り込めなかった。

しかし、発車した電車が数分も経たない内に爆発。地下鉄は一気に騒然となるも、アリアンは手傷を負っただけで外へ逃げ出して来る。彼は能力を使ってビルの屋上へ逃れた。
爆発はテロリストによるものだと断定され、ラズロも駆け付ける。爆弾を持っていた男はやはりアリアンとその父親のパスポートを所持しており、それらはラズロの手に渡ってしまう。

爆発の騒動でアリアンを見失ってしまったシュテルンは、その後も青年の行方を探し回るも見つけられず。一晩、考えた抜き医療ミスの被害者家族の元を訪れ、これまでに貯めた金を提示し訴訟を取り下げるよう頭を下げた。しかし、被害者家族の悲しみは深くシュテルンのことを許すことも訴訟を取り下げることもしないと言う。シュテルンは肩を落として家を出た。

その後、行きつけのバーにてやけ酒を飲んでいたが、知り合いの救急隊員からアリアンと同じタトゥーをした男を発見したとの知らせが入る。来いと言われた場所は遺体安置所。シュテルンは男のタトゥーを確認し、彼がアリアンの父親であることを確信するのだった。

映画『ジュピターズ・ムーン』の結末・ラスト(ネタバレ)

恐らく、空を飛ぶことができるアリアンが逃げるとすれば、ビルの屋上だろう。シュテルンは駅近くのビルの屋上を回り、ようやくアリアンを発見した。そして、父親の形見として身に着けていた首飾りを差し出す。シュテルンはアリアンと出会うことで改心し、彼を国外へ逃亡させる手助けをすると申し出た。すると、アリアンは笑みを見せシュテルンの頭部にそっと手を乗せるのだった。

身を隠しつつヴェラが勤める病院へやって来た2人だったが、それに気付いたヴェラは自分勝手な恋人シュテルンの行動に辟易。その上、ニュースではアリアンとその父親がテロリストとして認知され、逃走中であることが報道されている。故に、彼女はラズロへと連絡を入れてしまうのだ。

そのことに気付いたシュテルンはヴェラの裏切りに失望し、逃走を開始するも病院から出る際、ラズロに発見され追いかけられてしまう。街中を猛スピードで逃走していたシュテルンだったが、横から来た車と衝突。アリアンを逃がそうと車から出たが、ラズロはアリアンを轢き殺そうと車を突進させる。だが、青年はいとも簡単に危険から逃れ、空へと浮かび上がるのであった。

合流した2人はホテルへと宿を取り、豪勢な食事を摂ってゆっくりと休んだ。シュテルンはアリアンの浮遊能力を独占しようとしたことを恥じており、彼の存在は神からのメッセージなのだと悟っていた。故に、二心なく国外へ逃亡させたいと考えたのである。

深夜、逃亡への手配をするため、救急隊員の友人と会ったシュテルンは、現れたラズロの姿を見て罠にかかったと知る。彼は抵抗することなく車に乗ったが、ラズロはしきりにアリアンの行方を聞き出そうとする。シュテルンはラズロを説得しようとしたが、聞く耳を持たないため、仕方なくホテルへ。エレベーターに乗り込み抵抗したものの、敵うはずもない。ラズロはホテルの部屋へ向かい、アリアンを見つけて連れ出した。

そこで、シュテルンは武装した警官を人質に取り、ホテルのロビーへ。アリアンと交換したが、ラズロによって銃撃されてしまう。エレベーターに乗ったアリアンは医師を見捨てることができず、煙草の煙で火災警報を鳴らし助ける方法を探した。しかし、ラズロに発見されてしまい身動きが取れなくなる。そこへ、到着したエレベーターからシュテルンが現れラズロへと銃口を向ける。彼は死にかけながらも、アリアンへ逃げろと叫んだ。青年はホテルの窓から外へ飛び出し、空中を舞う。その姿を目の当たりにしたラズロは、観念したように銃口を下げた。

空中に浮遊するアリアンの姿を大勢の人々が目撃。その日、誰もが彼の姿を見るために空を仰ぎ、奇跡を目の当たりにするのだった。

映画『ジュピターズ・ムーン』の感想・評価・レビュー

ハンガリーが製作した作品で、難民問題を背景に空中浮遊能力に覚醒した青年と医療ミスで多額の負債を背負い、心を腐らせていた医師が改心していく様を描いている。
無抵抗の青年を銃撃した局員と警察機関に追われるという緊迫した状況の中、医師と青年はそれぞれに境遇を語り合い、親交を深めながら逃亡生活を送っていく。

医師は青年と出会うことで己の人生を見つめ直し、やがて彼を天使だと思うようになる。作中で同じことでも見方を変えれば、別物になるといったセリフや、青年が空を飛ぶことで人々は空を仰ぎ、神の存在を思い出すといったセリフがある。これらは難民問題を抱える世情を憂い、少しでも前向きになって欲しいという思いが込められているのかもしれない。(MIHOシネマ編集部)


医療ミスや移民についてなど現実的な問題が描かれている分、空中浮遊能力に覚醒したアリアンの姿がより幻想的に見えた。
最初シュテルンは身勝手な男だったが、アリアンと一緒に過ごすうちに改心したところを見ると、本来はとても優しい人だったのではないかと思う。瀕死な状態でアリアンを逃そうと奮闘する姿が、切なかった。
作品としては切りの良い終わり方だったのかもしれないが、一人になったアリアンがこれからどんな人生を歩むことになるのか気になった。これ以上、彼の身に困難が訪れなければ良いなと思う。(女性 30代)


空中浮遊の能力を手に入れた男のファンタジーな物語かと思いきや、医療ミスや移民難民問題などリアルな社会問題がテーマとなったストーリーでとても考えさせられる作品でした。
製作国であるハンガリーの情勢はよく知りませんが、世界にはこういった問題を映画化し、国民や他国へ伝えようとする国があることに感動しました。映画は伝え方の1つであり、ニュースや新聞よりも心に残る伝え方だと思っています。今作の内容はリアルとファンタジーを組み合わせることでとても見やすい作りになっていて、問題についても考えさせられる素晴らしい作品だと思いました。(女性 30代)

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