この記事では、映画『カランコエの花』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『カランコエの花』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『カランコエの花』の作品情報
上映時間:39分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:中川駿
キャスト:今田美桜、石本径代、永瀬千裕、笠松将 etc
映画『カランコエの花』の登場人物(キャスト)
- 一ノ瀬月乃(今田美桜)
- 高校2年生。吹奏楽部にてクラリネットを奏でている。いつも友人の沙奈、桜と他2名と一緒にいる。大人しく優しい性格。
- 葛城沙奈(永瀬千裕)
- 高校2年生の月乃のクラスメイトで友人。気弱で体も弱い。桜が同性愛者であることを偶然、保健室で聞いてしまい力になろうと悩んでいるうちに、苦しくなってしまう。
- 新木裕也(笠松将)
- クラスのお調子者で発言力が強い。クラスの中にLGBTに該当する者がいるのではないかと疑惑を持ち、面白半分に捜索してしまう。頭の回転は良い方で、空気も読める。桜がそれと分かると、自分の仕出かしたことをすぐに察して後悔する。
- 佐伯洋太(須藤誠)
- 新木の友人。LGBTに嫌悪感を抱き、新木と一緒になって執拗に捜索する。空気が読めず、自分が何をしてしまったかが分からず、新木に投げ飛ばされる。
- 小牧桜(有佐)
- 月乃の友人。長髪の可愛らしい女の子。同性愛者であることを隠し、月乃に密かな恋心を抱いている。告白しようとするも勇気がなく、苦悩を抱える。
映画『カランコエの花』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『カランコエの花』のあらすじ【起】
7月4日、月曜日。高校2年生の一ノ瀬月乃はその日、母に勧められカランコエと呼ばれる花を模したシュシュを結び、学校へ登校した。彼女は吹奏楽部にてクラリネットを吹いている。次の授業は英語だったが、教師の体調不良により自習となった。だが、その自習の時間を利用し、保健の教師からLGBTについての授業があった。
帰宅した月乃は夕食の時に授業で聞いたLGBTのことを話したが、母は直接の関わりがないので良く分からないと言うのだった。

映画『カランコエの花』のあらすじ【承】
7月5日、火曜日。それは昼休みの出来事。クラスでもお調子者の新木裕也が他のクラスでは、LGBTの授業をしていないらしいと聞いてくる。どうやら昨日の授業は自分達のクラスしか受けていないようだ。そうなると、自然に疑惑が湧いてくる。もしかして、このクラスにLGBTに該当する者がいるのではないか。
月乃は友人たちと学校の敷地内で昼食を摂る。食事を終え教室へ戻った月乃たちは、新木と佐伯洋太によってレズなのではないかと声をかけられるも、誰も相手にはしなかった。新木と佐伯は保健室で授業をさぼりつつ、保健の教師に詰め寄った。新木は同性愛者を嫌悪し、気持ち悪い奴らだと言う。教師は都合が合わなかったから1クラスにしか授業をしていないと言って、2人の生徒を追い出した。
映画『カランコエの花』のあらすじ【転】
7月6日、水曜日。担任教師が保健教師を伴ってやって来る。先日のLGBTの授業について、クラスの中にLGBTに該当する者がいるのではないかという疑惑を晴らすためだと思われる。ところが、歴史の教師には嘘をつく時、鼻をこする癖があり新木は話の途中でその癖を発見してしまう。確実に嘘をついていると見抜いた新木。間違いなく、クラスの中にLGBTに該当する者がいるのだと確信してしまう。
疑惑は徐々にクラスへと広まり、クラス内で新木の追及を咎める場面が訪れる。追及することに躍起となる新木に対し、他のクラスメイトは判明させることはプライバシーの侵害だと非難。新木は、自分は悪くないと言い張るのだった。
放課後、部活へ参加した月乃は、友人の葛城沙奈に準備室へ呼び出され偶然、聞いてしまった話を明かされる。それは、クラスメイトの小牧桜が同性愛者だという事実だった。沙奈は桜が苦しそうだから助けになりたいと思ったものの、どうして良いか分からず、月乃に相談したのだった。
部活を終えて帰ろうとした月乃の前に当の桜がやって来る。一緒に帰ることになり、あるバス停で桜と別れることになった。だが別れ際、桜は月乃にちゃんと理解して欲しいと、自らカミングアウトしようとするそぶりを見せたが、明かしてはくれなかった。月乃は少しがっかりしてバスに乗った桜を見送る。
映画『カランコエの花』の結末・ラスト(ネタバレ)
7月7日、木曜日。朝、赤いシュシュを付けようか迷っている月乃に母親が言う。カランコエの花言葉は、あなたを守るという意味があるのだと。月乃はシュシュを髪に結び、登校することにした。
教室にやって来た月乃は、黒板を目にして愕然とする。誰が書いたのか知らないが、小牧桜はレズビアンだと大きく記入されていた。立ち尽くすクラスメイトたち。だが、桜は気にしない風を装って机につく。それなのに佐伯は空気も読まず、彼女を嘲笑う。咄嗟に月乃は、桜は違うと言ったが、当の彼女は堪えられなくなり、クラスから走り去ってしまう。これにはさすがの新木も気まずくなり、佐伯を強く咎めた。
桜を追った月乃たちは、涙をこぼす彼女から驚くべき証言を聞く。どうやら、黒板に例の言葉を書いたのは桜自身らしい。彼女は気遣ってくれた友人たちに謝り、再び走り去った。
7月8日、金曜日。桜は学校に登校しなかった。月乃は桜の苦しみを思いホームルーム中に泣き出してしまう。バス停で別れた時、引き止めてでも話を聞いてやれば良かった。後悔の念で胸がいっぱいだった。
7月1日、金曜日。桜は保健の教師に自分が好きな人の話を明かした。彼女は月乃に思いを寄せており、好きな人の良いところを並べ立て幸せそうに笑う。告白したいが、同性同士であるため、どんな反応が返ってくるか不安で仕方ない。それでも、否定や拒絶をせず、喜んでくれたら嬉しい。そう言って、清々しく笑うのだった。
映画『カランコエの花』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
様々な業界に論争を巻き起こし話題になった作品。ショートフィルムでありながらも、リアルなメッセージがありありと描かれている。個人的には保健教師のやり方があからさまだったのではないかと思われ、教師なら悩める子供達の心へも配慮すべきだったと思う。
方法はあったはずで、授業をするなら全クラスへと平等に行う方が良かった。その1クラスだけに行ったら、明らかに疑惑が生じるのは目に見えている。故に、こういった問題が起こってしまう。今作は当事者の視点ではなく、周囲の視点で描かれており気遣うあまりに当事者を孤独に追い込んでいる。人によって意見は様々に出るだろう作品である。(MIHOシネマ編集部)
私が「LGBT」と言うワードをよく耳にするようになったのはここ数年のことです。それまでは知識や情報を遮断して耳に入らないようにしていたのかも知れません。「LGBTの人」という括りをしてしまうと、それだけで「特別」な存在になってしまい差別しているようで上手く表現できない自分が情けなくなりました。
今作に出てくる高校生たちもきっと同じで「LGBTの人」と気を使ってしまったせいで、その人を余計に苦しめる事になったのだと感じます。
知ってもらうこと、受け入れること、お互いが理解し合える世界がもっともっと広まって欲しいと感じる作品でした。(女性 30代)
ある高校でLGBTがテーマの授業が行われ、その当事者、嫌悪感をもつ者、救いたい者、それぞれの葛藤が描かれる作品。
LGBTに限らず、少数派の人々への知識や理解をもつことは大切なことだと思います。しかし、あえて強調して取り上げるのも違うのでは、と感じることもあります。この作品はLGBTそのものだけでなく、世間が「差別はやめよう!」と騒ぎすぎるのもまた差別につながるのではないか、というメッセージも含まれているように感じました。
背が高い人も低い人もいるよね、くらいの感覚で、お互いに受け入れて受け流し合えるようになっていきたいなと思いました。
タイトルでもある、カランコエの花の登場の仕方が少し不自然で、そこだけしっくりきませんでした…。(女性 20代)
LGBTQ+という重いテーマを扱いながらも、繊細で優しい眼差しが感じられる短編映画でした。クラスの中で行われた突然のLGBT講演と、その後の「誰が当事者なのか」という空気の変化。親友への視線、自分自身の戸惑い…。真理の感情の揺れがリアルすぎて胸が痛くなりました。最後にカランコエの花言葉を知ったときの余韻も深かったです。(20代 女性)
自分が高校生のとき、この作品に出会っていたら、もっと早く人に優しくできていたかもしれない。そう思わされる作品でした。たった40分でここまで緻密にキャラクターの内面を描けることに驚きました。真理が一人のクラスメイトに向けて抱く特別な感情が、誰にも言えないまま沈んでいく感じがとても切なかったです。(30代 男性)
思春期の“普通”という空気の重圧に、言葉を失いました。誰もが「当たり前」だと思っていることに揺さぶりをかけるこの映画は、本当に大切な視点を持っていると思います。誰かを好きになる気持ちは変じゃない。だけど、それを隠さなきゃいけない状況が、こんなにも日常に潜んでいるんだと実感しました。(40代 女性)
教師の何気ない説明と生徒たちのざわつき。あの空気がリアルで、観ていて苦しくなりました。誰かを傷つけるつもりがなくても、知らないうちに加害者になる。その怖さと難しさを突きつけられました。真理の視点に立つと、彼女の沈黙の重さがずっと響きます。カランコエの花が持つ意味が、胸にずっと残りました。(20代 男性)
この映画はLGBTの映画というより、「誰もが持っている小さな秘密」に寄り添う物語だと思いました。真理の気持ちも、周りの無邪気な言葉も、どちらも否定できない。たった一言で人を追い詰めることも、救うこともできる。そんな当たり前のことを、改めて突きつけられたように感じました。最後の静けさが印象的です。(30代 女性)
40分という短さの中に、心をえぐるようなリアリティと優しさが詰まっていました。中でも印象的だったのは、友達と少し距離ができてしまう瞬間。あの無言の間と視線だけで、いろんな感情が流れていたのがすごい。学校という閉じた世界だからこそ、些細なことで孤立する怖さを丁寧に描いていて、心に刺さりました。(20代 女性)
正直、こんな短編映画でここまで心を揺さぶられるとは思っていませんでした。映像も演技も素晴らしく、無駄な台詞が一つもない。真理の“言えない”気持ちと、それに気づいていないクラスメイトたちとのズレがとてもリアルでした。特に親友との距離感の変化には、観ていて胸が苦しくなるほど共感しました。(30代 男性)
映画『カランコエの花』を見た人におすすめの映画5選
his
この映画を一言で表すと?
“普通”の枠に収まりきらない恋と家族のかたちを描く、優しくて切ないLGBT映画。
どんな話?
かつての恋人だった男性2人が、ある日再会。うち1人には娘がいて、突然の共同生活が始まる。元恋人として、そして“父親”としての関係が揺れ動く中、社会的偏見や自分自身の葛藤と向き合うヒューマンドラマ。
ここがおすすめ!
『カランコエの花』が持つ静かな視点と“言葉にしづらい感情”を繊細に描いている点で共通しています。恋愛だけでなく家族や社会の在り方についても考えさせられる作品です。ゆっくりと心に沁みてくる一作。
セブンティーン・アゲイン
この映画を一言で表すと?
過去に戻って見えてくる、本当の自分と大切な人たちの思い。
どんな話?
中年男性が突然17歳の自分に戻り、家族や学校生活と向き合うことになる青春コメディ。若さに任せて軽く扱っていた感情や、見過ごしていた人間関係の重みを再発見し、やり直すチャンスが与えられる物語。
ここがおすすめ!
学園ドラマらしい空気の中に、過去の自分との和解や他者理解といったテーマがしっかり込められています。『カランコエの花』と同じく、見えにくい“心の成長”を描いており、世代を問わず刺さる内容です。
恋人たち(橋口亮輔監督)
この映画を一言で表すと?
日常に潜む孤独と愛情の形を、そっとすくい上げる群像劇。
どんな話?
夫を事件で失った主婦、恋人に捨てられた弁護士、職場で差別を受ける男性。この3人の“孤独”が交差しながら、それぞれの再生を描くヒューマンドラマ。平凡な人々の中にある、痛みと優しさに焦点を当てている。
ここがおすすめ!
『カランコエの花』のように、一人一人の心の揺れを丁寧に描いており、声にならない想いが静かに胸に響きます。派手さはないが、人間関係の機微に感情移入できる大人向けの良質な作品です。
リリィ・シュシュのすべて
この映画を一言で表すと?
思春期の闇と救いを、幻想と現実を交えて描く鮮烈な青春映画。
どんな話?
中学時代、いじめや暴力に巻き込まれる少年たちが、唯一の癒しとして音楽アーティスト“リリィ・シュシュ”の存在に心を寄せていく。現実の残酷さと、音楽の幻想が交差する痛烈な青春劇。
ここがおすすめ!
『カランコエの花』と同じく、若者たちの繊細で複雑な心の葛藤がリアルに描かれています。視覚と音楽を通して心象風景を描く手法も印象的で、余韻に包まれる静かな衝撃が待っています。
スワロウテイル
この映画を一言で表すと?
自由と居場所を求めて彷徨う人々の、ビジュアルと音楽が炸裂する近未来群像劇。
どんな話?
円の価値が暴騰した架空の東京“円都”を舞台に、移民やアウトローたちがそれぞれの生き方を模索する。少女アゲハと謎の女性グリコの出会いが物語を加速させ、音楽、言葉、感情が混ざり合っていく。
ここがおすすめ!
他者との関係性の中で、自分の居場所や“本当の気持ち”を見つけていくという点で『カランコエの花』と通じます。映像も音楽も独特な世界観で、人間の感情を激しくも美しく表現している意欲作です。
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