映画『髪結いの亭主』の概要:幼少時に床屋の女性との結婚を決意したアントワーヌは、美しい理髪師マチルドと運命的に出会い、二人は生涯を共にすることを誓う。巨匠パトリス・ルコントが、官能的な題材を色味の柔らかな映像で描き出す、大人のラブストーリー。
映画『髪結いの亭主』の作品情報
上映時間:80分
ジャンル:ラブストーリー
監督:パトリス・ルコント
キャスト:ジャン・ロシュフォール、アンナ・ガリエナ、ロラン・ベルタン、フィリップ・クレヴノ etc
映画『髪結いの亭主』の登場人物(キャスト)
- アントワーヌ(大人:ジョン・ロシュフォール / 少年時代:ヘンリー・ホッキング)
- 少年期の経験から、床屋の女性との結婚に多大な憧れを抱くようになった男性。理髪師のマチルドに一目惚れをし、電撃的に恋に落ちる。外出や旅行を嫌い、ただマチルドのそばにいることだけで至福を感じている。アラブ音楽が好きで、自己流でアラブ舞踊を嗜んでいる。
- マチルド(アンナ・ガリエナ)
- 理髪師。アントワーヌの若く美しい妻。天涯孤独で、上司のイシドールから譲り受けた理髪店を一人で経営している。アントワーヌの突然の求婚を受け入れ、穏やかで幸せな日々を送っている。
- アントワーヌの父(ローラン・ベルタン)
- 数学者。真面目で冗談好きな機知に富んだ男性。アントワーヌの将来に期待しているが、息子の夢が理髪師の女性と結婚することであると知って驚愕する。
- シェーファー夫人(アンヌ=マリー・ピザニ)
- 少年時代のアントワーヌが恋い焦がれる理髪師の女性。豊満な美人で、独特の体臭を持っている。
- イシドール・アゴピアン(アンブロワーズ・デュプレ)
- マチルドの上司。アルメニア出身だと名乗っているが、実は生粋のフランス人。マチルドの性格と仕事ぶりを気に入り、店を譲る。
- ジュリエン(ジャック・マトゥ)
- マチルドの店に飛び込みでやってくる男性。自分をけなす強気の美人妻に心酔している。
映画『髪結いの亭主』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『髪結いの亭主』のあらすじ【起】
妙齢のアントワーヌは、美しい理髪師の妻マチルドを日がな一日眺めて暮らしている。マチルドの一挙一動に見惚れながら、アントワーヌは過去を回想する。
少年時代、アントワーヌは理髪師のシェーファー夫人に恋し、しょっちゅう店に通っては散髪していた。肉感的なシェーファー夫人にときめくアントワーヌは、夫人と結婚することを妄想する。
父親に将来の夢を問われ、アントワーヌは思わずシェーファー夫人と結婚したいと口にする。激怒した父はアントワーヌの顔を打ち、アントワーヌは部屋に籠る。息子を心配し、両親はアントワーヌが思うままに人生の選択をすることを許可する。アントワーヌは、理髪師の女性を妻に迎えることを決意する。
中年の半ばに差し掛かったアントワーヌは、ある日、一人で理髪店を切り盛りしているマチルドに出会う。幼くして天涯孤独の身となったマチルドは、控えめで真面目な性格を上司イシドールに気に入られ、店を譲り受けた。アントワーヌは、ショーウィンドー越しに見たマチルドに一目惚れする。
映画『髪結いの亭主』のあらすじ【承】
アントワーヌは店に飛び込み、マチルドに散髪を依頼する。予約があるため、マチルドは30分後に再来店するようアントワーヌに伝える。30分間、アントワーヌはどんな客がやってくるのか確かめるために外から店内を見張るが、客は来ない。
30分が経ち、アントワーヌは再び店に入る。マチルドはアントアワーヌを洗髪し、髪を切る。アントワーヌはマチルドに夢中になり、急死したシェーファー夫人をふと思い出す。
帰り際、アントワーヌはマチルドに結婚を申し込む。マチルドから何の答えも得られないまま、アントワーヌは店を去る。三週間後、アントワーヌは再びマチルドの店を訪れる。アントワーヌが本気であることを知ったマチルドは、求婚を承諾する。
外出や人付き合いが苦手な二人は意気投合し、お互いへの深い愛が芽生える。アントワーヌとマチルドは、結婚式に兄夫婦とイシドールだけを招待する。マチルドは、結婚式であるとは知らずに店に飛び込んできた男を快く迎え、代金を受け取らずに男の髭を剃る。アントワーヌとマチルドは、アラブの音楽に合わせてダンスをする。
映画『髪結いの亭主』のあらすじ【転】
アントワーヌとマチルドは、新婚旅行にアントワーヌの故郷を訪れただけで、その後は一切旅行をせず、毎日理髪店で穏やかに過ごしている。二人は、子供も望まず、愛に満ちた閉鎖的な暮らしをこの上なく愛している。
ある日、一見客のジェリエンが慌てて店に飛び込んでくる。マチルドは散髪の準備をするが、ジェリエンの妻が夫を追って店へ押しかけ、ジェリアンを平手打ちする。どれだけ酷く扱われても妻を愛しているジェリエンは、アントワーヌとマチルドにひとしきり身の上話をした後、そそくさと帰っていく。
ジェリエンが出た後、マチルドは店仕舞いをする。マントワーヌとマチルドは閉め切った店内で睦み合う。抱き合いながら、マチルドは「愛しているフリだけは絶対にしないで」とアントワーヌに願う。マチルドは、アントワーヌと愛し合うときに、「私を離さないで」と口にするようになる。
ある時、アントワーヌとマチルドは、些細なことが原因で、10年の結婚生活でただ一度だけの喧嘩をする。仲直りした二人は、酒の代わりにアルコールとオーデコロンを混ぜたものを飲んで酔っ払う。二人はアラブの曲に合わせて一晩踊り明かす。
翌朝、二人が散らかった店内を片付けている最中、ジェリエンが三人の子供達を連れてやってくる。妻が家を出たため、ジェリエンは子供達の面倒を見なくてはならない。ジェリエンは妻を一切恨んでおらず、子供達とずっと一緒に居られることを幸せだと感じている。
映画『髪結いの亭主』の結末・ラスト(ネタバレ)
アントワーヌとマチルドは、老人ホームに入所したイシドールを訪問する。イシドールは、死者が集まる場所に生者が来るべきではないと言って、マチルド達を早々に帰らせる。
マチルドは、老いていくことを恐れ始める。ある夕刻、早めに店を閉めたマチルドは、自ら下着を脱いでアントワーヌを積極的に求める。夕立に見舞われ、激しい雨音が店内に響く中、二人は情熱的に愛し合う。
情事の後、身なりを整えたマチルドは、買い物に行くと言って、傘も差さずに雨が降りしきる外へ飛び出す。心配そうに見送るアントワーヌを、マチルドは一度だけ振り返る。マチルドは町の外れの橋へ行き、増水した川に飛び込んで自ら命を絶つ。
近い将来、老いて醜くなり、アントワーヌから愛されなくなることを恐れたマチルドは、幸せの絶頂にあるうちに自死しようと決意していた。マチルドの遺書を読み、アントワーヌは呆然とする。
マチルドの死後も、アントワーヌは以前と同じように店のソファに腰掛けて一日を過ごしている。ある日、アントワーヌがクロスワードパズルを解いているところへ、アラブ系の男性が散髪のため店にやってくる。アントワーヌは、マチルドの見様見真似で客を洗髪する。
客を椅子に座らせ、アントワーヌは突如、アラブ音楽をかけて踊り出す。客は喜び、アントワーヌにアラブ式のダンスを教える。アントワーヌはいきなり曲を止め、妻はもうすぐ戻ってくる、とだけ客に告げ、再びクロスワードパズルに取り組む。
映画『髪結いの亭主』の感想・評価・レビュー
フェティシズムという言葉が世の中に広がりだした頃、この映画を観ました。
馴染みのない言葉はこの映画を観ることですとんと理解できました。
パトリス・ルコント監督の3部作「仕立て屋の恋」「髪結いの亭主」「イヴォンヌの香り」。
官能的で美しいこの3部作はどれも好きです。
パトリス・ルコント監督はコメディもお得意です。「大喝采」「レ・ブロンゼ」シリーズなどフレンチコメディがお好みならばそちらもお勧めです。(女性 40代)
パトリス・ルコント監督によるフランスの映画。
主人公の少年・アントワーヌの成長と、一途な想い、性的な目覚めを見事な映像美で表現している。
そして、10数年後のアントワーヌ。憧れだった床屋の女店主・マチルドと出会い、恋に落ちる。
しかし、アントワーヌの憧れが深すぎるがゆえ、愛されているはずのマチルドに不安を与え、そしてマチルドは死んでしまうのだ。
大がかりなスペクタクルはないが、こうした切ないストーリーが心に深く刻まれる映画である。(男性 40代)
愛しているのに、それが相手に伝わらないことほど辛いことは無いと感じる作品でした。
少年時代に理髪店の「魅力的」な女性に憧れ、理容師と結婚することを夢見ていたアントワーヌ。大人になり、理想の女性と出会い、夢を叶えた彼でしたが、彼の愛は妻には正しく伝わっていませんでした。
今の姿だから愛してくれるのでは?年老いてよぼよぼになっても変わらずにいてくれる?そんな女性の不安を物凄く美しく、繊細にそしてエロティックに描いていました。見る人によって感じ方が異なる作品だと思います。(女性 30代)
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