映画『狩人の夜』の概要:家族のために銀行へ押し入り、強盗殺人を犯した男から1万ドルを隠した話を聞いた自称伝道師。釈放後に男の家族を捜し当て、幼い兄妹を脅して金の在り処を聞き出そうとする。各界へと多大なる影響を及ぼした伝説的名作。
映画『狩人の夜』の作品情報
上映時間:93分
ジャンル:サスペンス
監督:チャールズ・ロートン
キャスト:ロバート・ミッチャム、シェリー・ウィンタース、リリアン・ギッシュ、イヴリン・ヴァーデン etc
映画『狩人の夜』の登場人物(キャスト)
- ハリー・パウェル(ロバート・ミッチャム)
- 自らを伝道師と称する殺人鬼。右の拳にはLOVE、左の拳にはHATEとタトゥーが入っている。口が上手く婦人ばかりを狙ってナイフで刺殺する。男としては不能であり、その反動なのか色欲を顕わにする女性を異常に憎んでいる。
- ウィラ・ハーパー(シェリー・ウィンターズ)
- 強盗殺人を起こした男の妻。金髪で美しい女性で2人の子持ち。ハリーに騙されて結婚し、盲目的に従うようになる。
- レイチェル・クーパー(リリアン・ギッシュ)
- 身寄りのない子供達を引き取って育てている。厳しくも愛情深い壮年の女性で、敬虔なクリスチャン。ジョンと幼い妹を保護して守ってくれる。ショットガンを構えて寝ずの番をし、ハリーを撃退。州兵に引き渡す。
- ジョン(ビリー・チェイピン)
- ウィラの長男。推定10~11歳。強盗殺人を犯した父親から、1万ドルの在り処を隠せと言われる。ハリーに不信感を抱き、亡き父親の言いつけを頑なに守る賢い少年。
映画『狩人の夜』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『狩人の夜』のあらすじ【起】
時は1930年代、大恐慌が吹き荒れ誰もが貧困に喘ぐウェストバージニア州。自称伝道師のハリー・パウェルは車の窃盗罪で禁固30日を言い渡されてしまう。
同じ頃、家族のために銀行へ強盗に入り、殺人を犯して1万ドルを強奪した男ハーパーが、自宅のどこかへ金を隠し2人の子供達へ隠し場所を教えた後に逮捕。死刑判決を受けてハリーと同じ牢屋に入れられる。
ハーパーの寝言から1万ドルが自宅のどこかにあると知ったハリーは、本人から在り処を聞き出そうとするも失敗。やがて男は死刑に処され、天に召された。
刑を終え釈放されたハリーは、男の自宅を突き止めハーパーの妻ウィラと子供達を発見。周囲に取り入って親子へと近づくことに成功する。元々口の上手いハリー。だてに伝道師を自称してはいない。
男ぶりも良く、敬虔な様子を見せるハリーを周囲は警戒心もなく受け入れる。やがて、夫を亡くしたウィラにハリーとの結婚を勧めるようになるのだった。
ウィラは夫を亡くしたばかりで次の男を受け入れることに戸惑いを隠せず、子供達がハリーを受け入れるかどうかを心配している。幼い妹はすぐにハリーと打ち解けるも、兄のジョンは父親との約束を頑なに守り、なかなかハリーと打ち解けようとはしなかった。
映画『狩人の夜』のあらすじ【承】
そこで、ハリーは一計を案じる。ウィラに亡夫から金の隠し場所を聞いたと言い、子供達の前でそれを明かしたのだ。もちろん、ハリーが示した場所になどあるはずもないが、町の人々はウィラから話を聞いて一斉に捜索を始めるのだった。
更にハリーは子供達の様子を観察し、ジョンの異変を敏感に察知。ウィラとの結婚話をして揺さぶりをかける。すると、少年はつい金の在り処を知っている素振りを見せてしまう。
翌日、ハリーはウィラとの挙式のため、シスタービルへ出発。無事に結婚式を挙げた2人は子供達を預けて初夜を迎える。
しかし、ハリーは2人の子供を育てるために結婚したのだと言い、ウィラを抱こうとはしないのだった。やがて、ハリーの言葉を盲目的に信じるようになるウィラ。
そんなある夜、帰宅したジョンは庭先にてお金を切って遊んでいる妹を発見。金の価値がまだ分からない妹には、金などただの紙と同じである。こんなところをハリーに見られたら、今までの苦労が水の泡だ。ジョンは妹が持つ人形に金を詰め込み、再び隠した。
父親然としたハリーに反抗する態度を隠さないジョン。ハリーはジョンの攻略を諦め、妹から金の在り処を聞き出そうとする。しかし、幼い娘は大人が言っていることを全く理解しておらず、業を煮やしたハリーは脅しつけてしまう。丁度その時、仕事から帰宅したウィラ。ハリーの嘘を見抜いてしまい、彼に殺されてしまうのだった。
映画『狩人の夜』のあらすじ【転】
翌日、ハリーはウィラが突然、家出したと彼女の職場で吹聴。あからさまに気落ちした様子を見せる。更にウィラが酒に溺れていたと悪評を広め、自分の正当性を確保。
同じ頃、いつも川で釣りをしていた老爺が、車と共に川底で息絶えるウィラの遺体を発見する。
ハリーが母親ウィラを殺したことを察したジョンは、自分達に危険が迫っていると感じ、幼い妹を連れて逃げようとするも見つかってしまう。
しかも、豪勢な夕食を餌に金の在り処を聞き出そうとしてくる。ハリーはとうとう本性を現し、兄妹を厳しく詰問。ジョンは嘘の隠し場所を話すも見抜かれてしまい、殺されそうになる。その様子に怯えた妹が真実を明かしたため、ハリーは思いもよらない隠し場所に思わず笑ってしまうのだった。
その隙を狙ったジョン。地下室の棚を落としてハリーが怯んでいるうちに、妹を連れて逃走を開始。奴を地下室へ閉じ込めることに成功する。
その後、川岸に住む老爺の元へ助けを求めて向かうも、老爺はウィラの遺体を発見したことで深酒をしたため、助けてはくれなかった。
仕方ないので、妹を引っ張って川岸に繋がれているボートにて川へ。ぎりぎりのところで、ハリーの手から逃れる。
川を下り続ける兄妹。2日目の夜は陸で休もうと、ボートを寄せる。岸には家と納屋があり、女性の声で子守歌が聞こえた。ジョンは納屋の2階へ忍び込み、ようやく妹と共に身体を休めたのだった。
しかし真夜中、目を覚ましたジョンは丘の上を馬で進むハリーの姿を目撃。妹を連れてボートへ乗り込み、再び川を下る。
休まずに急流を下るも限界が訪れ、寝入ってしまう兄妹。川はいつしか緩やかな流れとなり、ボートを自然と岸に寄せた。
映画『狩人の夜』の結末・ラスト(ネタバレ)
疲れ切っていたジョン。深く寝入っているところを通りかかった女性に叩き起こされる。女性は兄妹を追い回して自宅へ連れて行き、事情を良く聞きもせず面倒を見てくれた。
レイチェル・クーパーは壮年の女性だが、大変に厳しい人物で言うことを聞かないと折檻してくる。だが、クーパー夫人は身寄りのない子供を引き取って面倒を見ているのだった。
自宅でできた野菜や卵を売って、必要な物品を購入する。クーパー家では働かざる者食うべからずで、誰もがきびきびと夫人の言うことを聞く。そして、夜には子供達を集めて物語を読み聞かせてくれる。厳しいけれども愛情深い女性だった。
そんなある夜、クーパー家で一番年長の少女が町へ出かけ、ハリーに声をかけられる。彼は兄妹を捜して旅を続けていたのだ。少女はハリーの優しさに騙され、新たに加わった兄妹の話をしてしまう。そして、帰宅後に夫人から問い詰められ、ハリーと出会ったことを白状するのだった。
翌日、ハリーがクーパー家へ訪問。彼は嘘八百を並べ立て夫人を騙そうとするが、夫人はジョンの態度からハリーの嘘を見抜き、ショットガンを突きつけて追い返してしまう。ハリーは罵詈雑言を並べ立て、夜にまた来ると言い残して退散。
その夜、クーパー夫人はショットガンを持ったまま寝ずの番をする。家の門前にやって来たハリーを見失った夫人は、寝ている子供達を叩き起こしてキッチンへ集合させる。そして突然、姿を現したハリーに驚き発砲。彼は叫び声を上げながら納屋へと逃げて行った。
夫人はすぐさま、州兵へ連絡。
朝になり、納屋から現れたハリーはジョンの目前で逮捕される。だが、その姿に父親が逮捕された時のことを思い出したジョンは、金を投げつけて泣き出してしまうのだった。
その後、ハリーの罪が明らかになり民衆による暴動が勃発。クーパー夫人は子供達を連れて早々に帰宅し、ハリーは裁判所の裏から連行されるのだった。
雪が降り、クリスマスがやってくる。そうして、兄妹はクーパー夫人の庇護の元、厳しくも深い愛情にて育てられることになるのだった。
映画『狩人の夜』の感想・評価・レビュー
1955年の作品ですが、全く色褪せること無く、今見ても面白いと思えるストーリー展開に驚きます。登場人物のキャラクターがはっきりしているので分かりやすく、悪人は本物の悪として描かれているのがすごく好きです。
何よりも金の隠し場所を知る兄妹の勇敢さに鳥肌が立つほど感動しました。彼らの強さと優しさが周りの人へも伝わり、きっと2人は「幸せ」に生きていけるだろうと感じる作品です。テンポよくストーリーが進むのでとても見やすかったです。(女性 30代)
1955年制作の映画とは思えないストーリー展開で、演出も素晴らしい。各業界に多大な影響を及ぼした作品だと言われているのも納得する。50年近く経過してもほとんど違和感なく観ることができる作品というのは、正に名作中の名作ではないだろうか。兄妹が逃走する際、ハリーが背後に迫り来る恐怖にドキドキさせられたし、辿り着いた先の家の夫人は厳しいけれども、愛情深い人であることがきちんと描かれている。古い映画だからと忌避せず、観て欲しい作品だ。(女性 40代)
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