映画『カスパー・ハウザーの謎』の概要:1828年、ドイツの小さな町で保護された捨て子のカスパー・ハウザーの悲劇を、ヴェルナー・ヘルツォーク監督が映画化した作品。主人公を演じるのは、施設で育ち、路上で歌っていた素人のブルーノ・Sで、独特の哀愁を漂わせている。ヘルツォーク監督は『シュトロツェクの不思議な旅』(77)でも、彼を主役に起用している。
映画『カスパー・ハウザーの謎』の作品情報
上映時間:110分
ジャンル:ヒューマンドラマ、伝記
監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
キャスト:ブルーノ・S、ワルター・ラーデンガスト、キドラット・タヒミック etc
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映画『カスパー・ハウザーの謎』の登場人物(キャスト)
- カスパー・ハウザー(ブルーノ・S)
- 生まれた時から地下牢の中で育ち、16歳になるまで外の世界を知らなかった。ある時突然解放され、町で保護される。その後、言葉を覚えて人間らしい暮らしをするが、素性について解明される前に、暗殺者に殺されてしまう。
- ダウマー教授(ヴァルター・ラーデンガスト)
- カスパーの後見人となった教授。自分の屋敷にカスパーを住まわせ、手厚く彼の面倒を見る。カスパーに読み書きも教え、手記を書くよう勧める。
- スタンホープ伯爵(ミヒャエル・クレーヒャー)
- カスパーの噂を聞きつけ、珍しがってイギリスへ連れて帰るが、結局面倒を見きれずにダウマー教授へ返す。
映画『カスパー・ハウザーの謎』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『カスパー・ハウザーの謎』のあらすじ【起】
1828年、ドイツのN市で身元不明の若者が保護される。彼はろくに歩くこともできず、「ホース(白馬)」という言葉しか喋れなかった。これは、カスパー・ハウザーと名付けられたこの謎の男の物語である。
カスパーは、生まれてからずっと暗い地下牢のような場所で育った。彼は鎖につながれ、藁の上で1日中過ごす。彼に与えられていたのは木造りの馬のおもちゃのみで、パンと水は彼が寝ている間に運ばれる。そのため彼は、この世界に自分以外の人間がいることを知らず、言葉という概念も持っていなかった。
ある時、カスパーの地下牢に謎の男が現れる。男はカスパーに紙とペンを与え、何か書くよう強要する。カスパーが飽きて書くのをサボると、男は木の棒で彼を殴る。
しばらくして、男はみすぼらしい身なりのカスパーにジャケットを着せ、靴を履かせる。そして歩くことを知らないカスパーをおぶり、地下牢を出る。男はカスパーに歩き方を教え、町の広場に立たせる。カスパーの右手には祈祷書、左手には騎兵大尉宛の手紙を握らせていた。そして男はカスパーを残して姿を消す。
映画『カスパー・ハウザーの謎』のあらすじ【承】
町の人々はカスパーに声をかけるが、彼は「ホース(白馬)」という言葉しか発しない。仕方がないので、彼の持っている手紙の宛名を見て、大尉の家に連れていく。カスパーは、大尉の屋敷の馬小屋に保護される。
帰宅した大尉は、自分宛の手紙を読む。カスパーは1812年10月7日に母親から男の手に委ねられたが、家から一歩も出ていないので、彼の存在は誰にも知られていないらしい。男はカスパーが騎兵になることを望んでいた。
大尉は奇妙な話に困惑しつつ、町の巡査たちとカスパーの持ち物などを調べる。カスパーの腕には種痘の跡があったので、上流階級の生まれではないかと思われた。身元がわかるようなものは何も持っていなかったが、紙とペンを渡すと「カスパー・ハウザー」と書いた。それにより、彼の名前はカスパー・ハウザーに決定する。
カスパーの身柄は役所預かりにされ、犯罪者や浮浪者を収容する塔の上の鍵部屋に保護される。食事の世話などは、巡査の妻がしてくれた。カスパーは食卓について食事をすることもできず、肉や野菜は吐き出してしまう。しかしカスパーはとてもおとなしかったので、巡査一家は好意的に彼の世話をする。巡査の息子は、カスパーに言葉を教えてやる。
カスパーには危険ということがわからず、剣や火を近づけても怖がらない。しかし、カスパーは繊細な心を持っており、笑い者にされることに傷ついていた。巡査の妻が赤ちゃんを抱かせてやった時も、カスパーは涙を流していた。
いつまでも市の経費で養うわけにはいかず、カスパーは見世物小屋で金を稼ぐことになる。彼は「捨て子のカスパー」として見世物小屋に立たされるが、それを嫌がって逃亡する。ダウマー教授はそんなカスパーに同情し、彼の後見人となって面倒を見始める。
映画『カスパー・ハウザーの謎』のあらすじ【転】
ダウマー教授の屋敷で暮らすようになって2年が過ぎ、カスパーは随分人間らしくなっていた。会話もできるようになり、盲目の男が奏でるピアノを聴き、涙を流して「胸に強く感じます」と感想を述べる。ダウマー教授は、カスパーの言葉を丁寧に聞き、彼に世界の仕組みを教えてやる。
カスパーがどうしても理解できないことのひとつに宗教があった。「神の存在を感じたことがあるか?」と牧師様に聞かれても、カスパーはその意味がわからない。
ダウマー教授からサハラ砂漠の話を聞いたカスパーは、その話に強い関心を示す。彼はその話が忘れられず、砂漠の物語を書き始める。しかし、初めの部分しか書けないと悩んでいた。
カスパーは手紙も書けるようになり、自分の畑を荒らされた悲しみをダウマー教授に書き綴る。地下牢では一度も見ることのなかった夢も見るようになり、現実と夢の区別もつくようになっていた。「自分がこの世界に現れたのは、激しく堕落したようなものだ」と哲学的な発言もし始める。ダウマー教授は、カスパーがこの世界に馴染めず、生きる喜びを感じていないことが気がかりだった。
カスパーが論理的に物事を考えられるようになったか試すため、数学者があるテストをしてみる。数学者は真理の村と嘘つきの村の話をし、絶対推論の真理をカスパーに説いて聞かせるが、彼には小難しい理屈がよくわからない。カスパーは、その人が嘘つきかどうか見分けるには「あなたはカエルですか?」と聞けばいいと思っていた。
ダウマー教授の勧めで、カスパーは「人生の手記」を書き始める。これが大変な噂になり、イギリスのスタンホープ伯爵が、カスパーに会いたいと申し出てくる。彼はカスパーを気に入ったら、自分が後見人となってイギリスに連れて帰るつもりだった。
映画『カスパー・ハウザーの謎』の結末・ラスト(ネタバレ)
スタンホープ伯爵はカスパーを気に入り、社交界にデビューさせる。伯爵は晩餐会の場で、「私が面倒を見ている若者です」とカスパーを紹介する。しかしカスパーにとって、そんな場所は苦痛でしかない。気分が悪いと言い出して別室へ行き、服を脱いで編み物をし始めたカスパーを見て、伯爵は彼をダウマー教授に返してしまう。
ダウマー教授は、カスパーに信仰心を持たせるため、教会へ連れていく。しかしカスパーは信者の合唱や牧師の説法が大嫌いで、すぐに教会から逃げてしまう。
ある日、ダウマー教授の屋敷でトイレに入っていたカスパーは、謎の男に襲撃され、頭を棍棒で殴られる。そのまま姿を消してしまったカスパーを、教授と家政婦が必死で探す。カスパーは頭から血を流し、地下室で倒れていた。
カスパーは一命を取り留めるが、襲撃のことや犯人については何も語らない。その代わり、夢の中で死神を見た話をする。
傷が回復したカスパーは、以前のようにダウマー教授の屋敷で、静かに暮らし始める。彼は熱心にピアノの練習もしていた。
ところが、再び暗殺者がカスパーを襲う。庭にいたカスパーは、謎の暗殺者に胸を刺され、瀕死の重傷を負う。暗殺者は、カスパーにメモの入った包みを渡していた。メモには、「自分の素性を明かしたい」と書かれていた。謎の暗殺者は、カスパーを地下牢に閉じ込めていた男のようだったが、結局犯人を捕まえることはできなかった。
カスパーは助かりそうもなく、人々が彼の枕元に集まる。牧師に「心に残っていることがあれば言ってごらん」と言われ、カスパーは砂漠の隊商の話を始める。それは盲目の老人が率いる隊商の話だった。砂漠で道に迷った際、老人は砂をひとつかみ味見し「目の前に山はない、それは妄想だ」と言って、隊商を北の町に導く。本当の話はここから始まるのだが、カスパーには初めの部分しかわからないらしい。カスパーは「話を聞いて下さってありがとう、僕はもう疲れました」と言い残して死んでいく。
カスパーの遺体は解剖され、彼の肝臓と脳に異常があったことがわかる。医者や役人は、その結果に満足していたが、カスパー・ハウザーの謎は、未だに何ひとつ解けていないのである。
映画『カスパー・ハウザーの謎』の感想・評価・レビュー
この作品にとても興味を持ち、鑑賞後に色々なことを調べると実際はこの映画よりも謎の多かったカスパーの人生を知り、胸が苦しくなりました。そして、カスパーを演じたブルーノ・S。彼は演技経験の無い一般人であり、カスパーほどでは無いもののかなり稀有な人生を送ってきたのだそう。そんな彼だからこそ「カスパー」をここまで魅力的に演じられたのだと思います。
生まれてから死ぬまで「自分」について何も知らずに人生を送ってしまったカスパーが可哀想だと感じましたが、カスパー自身は教授や周りの人間に教えてもらったことを全て受け止め、過酷で普通ではない人生も、これが「自分」だと理解していたのかも知れません。(女性 30代)
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