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映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』の概要:自分達が置かれた境遇から抜け出せずに足掻く、若者たちを描いたロードムービー。全てを壊した先に未来があると考え壊そうとする青年と、彼を指針にして常に共に在ろうとする青年。そして、愛を求める女性の3人が行き着く先とは。

映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』の作品情報

ケンタとジュンとカヨちゃんの国

製作年:2009年
上映時間:131分
ジャンル:ヒューマンドラマ、青春
監督:大森立嗣
キャスト:松田翔太、高良健吾、安藤サクラ、宮崎将 etc

映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』の登場人物(キャスト)

ケンタ(松田翔太)
兄と一緒に施設へ入所しジュンと出会う。寡黙で暗い。ジュンとは違い硬派。兄を心の支えとし、全てを壊した先に新たな道が開けると思っている。
ジュン(高良健吾)
ケンタよりも先に施設におり、明るく単純。心因性のレイノー症を患っており、緊張状態やストレスを感じると指先が真っ白になる。ノリが軽く誰とでも身体を重ねる。
カヨちゃん(安藤サクラ)
自分が不細工であることを自覚しており、愛してくれる誰かとの出会いをひたすら待っている。精神年齢が低く、冗談でも愛を囁いたジュンにくっついてくる。
裕也(新井浩文)
ケンタとジュンの職場の先輩。ケンタを虐めている。過去にケンタの兄も虐めており、逆上した兄に腹部を切り裂かれている。麻薬の密売をして金儲けをしているが、ケンタに麻薬を捨てられた挙句、バイクで轢かれてしまうろくでなし。

映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』のあらすじ【起】

両親を失ったケンタと兄は児童養護施設へと入所し、ジュンと出会った。ジュンの両親も亡くなっているらしいが、詳細は分からない。
成長して同じ会社へ入社したケンタとジュンは解体業に日々、精を出しているが、寡黙で暗いケンタは先輩の裕也に毎日ネチネチと虐められていた。兄のことをバカにされ、計算ができないとバカにされ鉄板に手を焼かれても尚、耐えている。ジュンはいつも隣にいたが、彼が助けてくれたことはないのだった。

ある日、2人は仕事終わりにナンパをしてカヨという女性と出会う。彼女は自分の容姿が可愛くないことを自覚しており、誰とでも寝るような女だった。カヨはただ、愛されたいだけの可哀想な女でジュンは彼女を抱いたが、ケンタは興が乗らず、彼女を抱かなかった。
その後、ジュンは彼女の部屋に入り浸っている。

そんなある夜、裕也の虐めに耐えかねたケンタが会社の事務所と裕也の車を破壊。ジュンもそれに加担した。カヨは冗談でも愛していると言ったジュンから離れないと言い張り、付いて来る。3人は会社の車を盗んで逃走。ケンタの兄がいる網走へ一路、車を向けた。

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映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』のあらすじ【承】

パーキングエリアで一休みした後、カヨがいないのをいいことに彼女の財布から金を抜き取り、ケンタとジュンは車を発車させてしまう。
置いてきぼりを食らったカヨは、茫然としてその場に蹲ってしまうのだった。

ケンタの兄も解体業で働いていた。今のケンタのように裕也に虐められ、それでも耐えて仕事を続けた挙句、とうとうばね指を患ってしまう。突然、指が固まって動かなくなる病気だ。
それから少女を誘拐したり、裕也の腹を刃物で傷つけたりと数々の問題を起こし、現在は網走の刑務所に入っている。彼自身はケンタと同じように寡黙で、突然切れて狂暴になるような人だった。

遺伝子は受け継がれ、ケンタも兄と同様に寡黙で唐突に切れやすい。ただ、兄と違うのはケンタにはジュンがいることだった。

会社から盗んだ銅線を売った2人だったが、山道でガス欠。2人は一時的に喧嘩をしてしまうも、ジュンがレイノー症により指先を白くしていたため、ケンタは怒るのをやめる。その時、車の荷台にバイクが乗っていることに気付いたジュン。一先ずは2人乗りで先へ進んだ。

映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』のあらすじ【転】

途中でもう1台、バイクを盗み仙台へ到着。友人を頼って一夜の宿を得る。友人は障がい者施設で働いており、翌日は職場へ同行。ケンタとジュンは久々に心から笑い、どこにも行くところがないという知的障がい者の彼らと共にしばし、時を過ごした。

気の良い友人と別れた後も先を進んだ2人だったが、給油中に女から電話がありジュンが呼び出しに応じてしまう。
その晩はそれぞれ離れて過ごし、自分の境遇や将来を見つめ直した。

翌日、合流した2人は八戸港からフェリーへ乗船。偶然、居合わせたカヨと再会してしまう。だが、カヨは置いてきぼりにされたことを怒りもせず、ただジュンと一緒にいられるだけでいいと言うのだった。

北海道へ到着後も延々バイクを走らせる。野宿で一夜を過ごし、そしてとうとう網走刑務所へ到着。だが、面会には親族しか許可されないことが判明。ジュンとカヨは塀の外で待つことになり、ケンタだけが面会へ向かった。

久方ぶりに対面した兄弟だったが、兄は言葉に反応を示すものの、弟となかなか目を合わせてくれない。兄は自分の境遇を壊して刑務所に入った。だから、自分も壊すと話すケンタ。しかし、兄は壊したところで、その先に待つものなど何もないと答える。更に、もうここには来るなと言い、弟を完全に拒絶するのだった。

映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』の結末・ラスト(ネタバレ)

兄の拒絶により、心の支えを失ってしまったケンタ。ジュン達と合流し、行く宛てもないまま北海道の海沿いを走り続けた。しかし、そこへ黒塗りの車が急停車し、中から黒スーツを身に着けた裕也が下りて来る。

裕也は麻薬の売人をしていた。車を破壊した際、奴が所持する薬をも奪い、投げ捨ててやったのだ。そのせいで、上役に酷く叱られケンタとジュンの始末をしに追って来たのだろう。

ケンタはバイクで奴を轢いてしまった。その夜は浜辺で一夜を明かそうとするも、他の客でもある若者と諍いを起こしてしまう。ケンタが全てをぶっ壊してその先へ行くと怒鳴るため、ジュンは裕也の車から盗んだ銃を手にし、自分だってできるとケンタを撃ってしまうのだった。

翌早朝。ジュンは死にかけのケンタを背負い、車へ乗り込む。カヨが付いてこようとしたため、追い返した。そして、2人は海へと向かう。岩場の影に身を潜めた2人。ケンタにはもうジュンしかおらず、ジュンにもケンタしかいない。2人は海へと足を踏み入れ、姿を消してしまうのだった。

映画『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』の感想・評価・レビュー

両親を失い、施設で育ったケンタとジュンが共に行動するようになり、ナンパした心が寂しいカヨを引き連れ、様々な問題を起こし逃亡していくのだが、唯一心の支えであったケンタの兄にも拒絶されたり、自分達の将来や不安を考えたりと、現代の若者の問題を直視しているような物語であった。ケンタにはジュンしかいなく、ジュンにはケンタしかいないという状況を二人が理解し合い、一緒に海へと寄り添い行ってしまうシーンがとても印象的であった。(女性 20代)


大森立嗣監督の2作目となる作品で、現状を打破するために足掻く若者たちの姿を描いている。数々の映画祭への招待作品であり、今作にて大森監督が日本映画監督協会新人賞を受賞している。
主人公ケンタにはジュンという存在の他に血を分けた兄という存在があったが、兄自身には頼りにできる存在がなく問題を起こして刑務所へ収監されてしまう。そのことを弟は境遇を壊して自由になったと思っており、自分も抜け出したいと切望している。鬱屈した現状を打破しようと足掻くケンタと常に彼の傍にいて行動を共にするジュン。彼もまたケンタと同様に現状を打破したいと考えており、まとわりつくカヨも同じだ。結局のところ、逃げたところで何かが変わるはずもないのだが、旅をする過程で彼らが足掻く姿を繊細に描き、逃れようもないと絶望する最後の瞬間までしっかりと描き切っている。見ているだけでも辛いと感じるし、抜け出したいのに抜け出せない懊悩がきちんと描かれた素晴らしい作品。(女性 40代)


ケンタとジュンが雇われた会社にもっと面倒見の良い先輩がいれば、もっと二人の結末は違っていたのかもしれない。ケンタ、ジュン、カヨちゃんはそれぞれ孤独を抱えていて、誰かに認められたいと願う気持ちが言動の端々に滲み出ていた。現状から必死に抜け出そうともがくケンタ達の姿が、痛々しくもあり苦しくもあった。網走に向かう道中、とても楽しそうに笑い合う三人の姿が描かれていたからこそ、ラストが悲しくてたまらなかった。(女性 30代)


人間はどんな出会いをして、どんな生き方をしてきたかによって人生が大きく変わるものなのだと感じる作品でした。
両親を失い、兄の存在だけを支えにして生きてきたケンタと、ケンタを慕うジュン、そしてカヨちゃん。若さゆえなのか、短絡的な行動なのか私には理解できませんでしたが、彼らがもがき苦しみながら生きていることはとてもよく分かりました。
自分が何者なのか、どうすればいいのかも分からないまま迎えてしまったラストはなんとも切ない終わり方でした。(女性 30代)

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