映画『県庁の星』の概要:県庁エリート職員の野村は、人事交流研修として三流スーパーの満天堂に派遣される。そこで野村の指導に当ったのはパート職員のあきだった。価値観の違う二人は、ぶつかり合いながらも現状改善に向けて共に奮闘し始める。その経験は野村の仕事に対する意識を大きく変えるものだった。
映画『県庁の星』の作品情報
上映時間:131分
ジャンル:コメディ
監督:西谷弘
キャスト:織田裕二、柴咲コウ、佐々木蔵之介、和田聰宏 etc
映画『県庁の星』の登場人物(キャスト)
- 野村聡(織田裕二)
- K県庁商工労働部産業政策課係長。周りからも将来を有望視されるエリート職員。県の大型開発“ケアタウンプロジェクト”を推進中、人事交流研修でスーパー満天堂へ派遣される。
- 二宮あき(柴咲コウ)
- 16歳から満天堂で働くパート従業員。店長の清水や同僚からの信頼も厚く“裏店長”の異名を持つ。両親を亡くし、弟を定時制高校に通わせながら生活を切り盛りしている。
- 篠崎貴子(紺野まひる)
- 野村の婚約者。篠崎建設の社長令嬢。
- 篠崎威嗣(中山仁)
- 貴子の父親で篠崎建設の社長。県の開発プロジェクトを請け負い、娘の貴子を野村に嫁がせようとしている。
- 浜岡恭一(和田聰宏)
- 野村が配属されることになった満天堂総菜部のリーダー。役人気質丸出しの野村に反発する。
- 清水寛治(井川比佐志)
- スーパー満天堂浜町店の店長。人はいいがやる気がなく、万年三流店舗の店長職を惰性でこなしている。万事事なかれ主義で、野村の指導全般をパートのあきに押し付ける。
- 浅野卓夫(益岡徹)
- 満天堂浜町店の副店長。食材の不正を訴える野村に対して弁当対決を提案する。
- 小倉早百合(酒井和歌子)
- K県知事。女子アナ出身で県議会議長の古賀に操られるお飾り知事。
- 古賀等(石坂浩二)
- K県議会議長。県政を事実上牛耳っている。大型プロジェクトを推進すべく野村に期待を寄せる。
映画『県庁の星』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『県庁の星』のあらすじ【起】
K県庁産業政策課係長の野村は周囲からの信頼も厚いエリート職員だ。迅速な書類作りから企画の立案、苦情対応まで卒なくこなす辣腕の野村は、地元の大物篠崎建設の社長令嬢貴子との結婚も控え、出世街道を猛進していた。
野村は目下、総予算200億の特別養護老人複合施設の建設計画に取り組んでいた。この“ケアタウンプロジェクト”は野村にとって、さらなる出世への恰好の足掛かりだった。
しかし、一方で市民団体からは大掛かりな箱物行政に対して批判の声も上がっていた。知事の小倉は強まる行政への風当たりを懸念するが、議長の古賀は議会承認を前にあくまで強気だった。“世論は我々が作っている”と豪語する古賀は、市民団体の請願書を破り捨てる。
ある日、古賀から批判に対する打開策を求められた野村は、民間意識を留意したアイディアを盛り込むことを進言する。野村の提言を受けて民間人事交流企画が立ち上がり、野村を含む精鋭7人が県内の民間企業へ赴くこととなった。この研修を無事終えて帰庁すれば、ケアタウンプロジェクトの本格始動が待っていた。
映画『県庁の星』のあらすじ【承】
野村が赴任したのは県内に6店舗を展開するチェーンスーパー、満天堂だった。しかし赴任早々、野村はそのあまりに杜撰な経営振りに呆れ返る。バックヤードには在庫が山積みされ、店長清水にはほとんどやる気がなかった。野村は研修が終わるまでの辛抱だと自身に言い聞かせる。
清水の一任で野村の世話役となったのはパート職員のあきだった。あきに案内され、寝具売り場に配属された野村は、お役所型のマニュアルが通用しない売り場に困惑する。スーパーのお客が何を求めているかなど知る由もなく、プライドだけが高い野村は、あっという間に店のお荷物になってしまう。
見かねた清水は野村を惣菜厨房に配置転換させた。しかし、そこでも高圧的な野村の態度はリーダーの浜岡や外国人従業員の反感を買う。厨房での食材の使いまわしや衛生管理の不徹底に耐えかねて浜岡と対立した野村は、改善を求めて清水に直訴する。副店長の浅野は従来型の弁当と、野村の主導する高級食材を使った新弁当の売り上げを競わせることを提案した。野村は新しい弁当づくりに意気込んだ。
映画『県庁の星』のあらすじ【転】
野村の予想に反し、高級食材弁当は苦戦した。メインターゲットである主婦層の感覚と大きくずれているためだ。惣菜チームの中で益々孤立を強めていく野村だが、相変わらず周囲に独善的な改善策を押し付けるばかりだった。
一方、県庁では成果の出ない民間人事交流企画に見切りをつけ、ケアタウンプロジェクトが前倒しで動き出した。野村は帰る場所を失ってしまった。追い打ちをかけるように、貴子との結婚が破談になった。自暴自棄の野村は酔いつぶれてあきの自宅に押しかけ、そのまま姿を消した。
かねてから防火体制の不備を指摘されていた満天堂に消防署の視察が入り、営業停止寸前に追い込まれた。加えて本部からも不採算店舗の判定が下され、絶体絶命の危機を迎えた。
失意の野村はプロジェクトの建設予定地に倒れていた。野村は誰からも必要とされていないという初めての屈辱を味わっていた。そんな野村を探して現れたあきは、満天堂のピンチを伝え、野村の力を貸してほしいと懇願した。
映画『県庁の星』の結末・ラスト(ネタバレ)
野村とあきは店舗改革に乗り出した。野村は改善書を作成し、在庫の整理を指揮した。そんな中、あきは野村をデートに誘い、彼を街中のデパ地下へ連れて行った。あきの真の目的はマーケティングにあり、野村に女性の消費感覚を実地に学ばせることだった。厨房に戻った野村は自ら浜岡たちに頭を下げ、弁当づくりを再開した。野村の弁当は次第に売れ始める。
店内にいよいよ保健所と消防署の合同視察が入った。すでに野村の改善書を基に改革が進んでおり、店長をはじめ皆の連携でこの難局を乗り越えることができた。スタッフの信頼を勝ち得た野村は研修の任期を終える。
帰庁した野村は、自ら志願して生活福祉課へ異動する。市内を見て回り、市民団体とも接触した野村は特別委員会の席上でプロジェクトの予算削減を提案する。このまさかの横やりに会場は騒めき、古賀は憤慨する。ただ小倉だけは野村の意見を真摯に聞こうと努めた。
しかし、改革はすぐには進まない。結局野村の予算削減案は古賀たちに握り潰される。野村の県政改革は今始まったばかりであり、そのことは野村自身もよく承知していた。
満天堂を訪れてあきと再会した野村は改革の未来を見据え、諦めない決意を語る。別れ際、野村はあきを“マーケティングなし”のデートに誘った。
映画『県庁の星』の感想・評価・レビュー
育ちも境遇も違う二人が、反目を重ねながら共通の危機に立ち向うというオーソドックスな展開は誰が見ても楽しめると思う。野村のようなエリートではないにしても、プライドと能力の間で空回りを起こす姿は多くの人が身につまされるのではないか。ガチガチの役人が成長していくさまを織田裕二が好演している。欲を言うなら、お役人の描き方が紋切り型だったり、いい話にしすぎだったりするのかも知れない。それでもこういうエリートが苦悩する話は邦画にもっとあっていいと思う。(MIHOシネマ編集部)
自分よりも地位や名誉があり、金銭的にも上をいっている人たちだからでしょうか、理由はよくわかりませんが反射的に嫌いだと思ってしまう「エリート」。今作で織田裕二が演じた野村も私が嫌いなエリートでした。
エリートの野村がスーパーで研修をし、ある意味「一般人」に「常識」を教えられる展開は見ていて本当に爽快でした。
自分の地位におごることなく、周囲の意見を聞き入れられる人は素晴らしいなと思います。(女性 30代)
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