映画『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』の概要:ある心臓外科医に訪れる究極の選択を描いたサスペンス映画。以前、手術をした患者の息子が、突然に現れた。医師は戸惑いながらも、誠実な対応をしていた。彼はおとなしい少年だったが、次第にその本性、目的が露わになっていく。
映画『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』の作品情報
上映時間:121分
ジャンル:サスペンス
監督:ヨルゴス・ランティモス
キャスト:コリン・ファレル、ニコール・キッドマン、バリー・キオガン、ラフィー・キャシディ etc
映画『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』の登場人物(キャスト)
- スティーブン(コリン・ファレル)
- 心臓外科医。常に冷静沈着な態度で接する男。マーティンにつき纏われても、冷静な対応を心がけるが、次第にマーティンによって恐怖の底へと突き落とされていく。
- アナ(ニコール・キッドマン)
- 眼科医でスティーブンの妻。スティーブンを愛しているが、淡々とした態度や、時に優柔不断な様子を見せるところに苛立ちを感じることもある。
- マーティン(バリー・コーガン)
- スティーブンが手術中に死亡させてしまった患者の息子。物静かな少年だが、スティーブンが家族に会わせた後、本性を現していく。
- キム(ラフィー・キャシディ)
- スティーブンの娘。聖歌隊に入っており、歌うことが好き。マーティンに出会い、一目惚れしてしまう。
- ボブ(サニー・スリッチ)
- スティーブンの息子。髪を切れとさんざん言われているが、切ろうとしないワガママなお年頃。
映画『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』のあらすじ【起】
心臓外科医のスティーブンは美しい妻で眼科医のアナと、娘のキム、息子のボブと何不自由ない暮らしをしていた。そんな彼のところに、マーティンという少年から連絡がくる。マーティンはスティーブンの元患者の息子で、少し訳ありの関係だった。スティーブンはマーティンに高価な時計を贈ったり、親身に話を聞いたりしてあげていた。
スティーブンはマーティンを自宅へ招待した。聖歌隊で歌うキムはマーティンのことを気に入った様子だ。一緒に散歩に出かけると、マーティンが歌を聞きたいというので、キムは歌ってあげた。
マーティンはお返しに、自分の家で食事をしようとスティーブンを誘った。翌日、マーティンの家で食事をしたあと、映画を観ることになった。だが、マーティンはそうそうに寝てしまい、マーティンの母親と二人きりになってしまう。母親はスティーブンに気があり、迫ってくるが、スティーブンはそれを拒否し、逃げるように家を後にした。
連絡なしに病院に来てはいけないと忠告していたにも関わらず、マーティンはスティーブンのオフィスにやってきた。心臓が痛いという。父のように心臓の異常で死ぬのではないかと言いだすマーティン。だが、検査をしても異常は見当たらなかった。
マーティンから何度も電話がくるようになった。少しでいいから家に来てほしいと、しつこく誘ってくる。スティーブンはその度に、はぐらかしていた。
ある朝、息子のボブがなかなか部屋から降りてこない。気になって部屋へ行ってみると、立ち上がることができないという。足が動かないというのだ。病院へと運び、検査をしてみたが異常はなく、すぐに歩けるようになった。学校でのテストをサボるための嘘だとスティーブンとアナは思ったが、帰ろうとした瞬間、ボブの足は再び動かなくなり、その場に倒れこんでしまった。ボブはそのまま入院することとなった。
映画『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』のあらすじ【承】
翌朝、病院にやってきたスティーブンは、ボブの病室にマーティンがいるのを発見する。マーティンはスティーブンに言った。“ついに始まった。先生はぼくの家族を一人殺したから、先生の家族も一人殺さないといけない”と。そして、家族の誰を殺すか、数日以内に決めて実行しろという。そうしないと、スティーブン以外の全員が死んでしまうというのだ。
ボブは歩けないため、寝たきりになり、何も口にしなくなった。あらゆる検査、治療が行われたが、なんの異常も発見できない。結果、これは心理的疾患だという結論が出される。
キムはマーティンとこっそり会うようになっていた。キムは彼に夢中だ。マーティンとの肉体関係を望んでいるが、誘いをかけても、マーティンは何もせずに帰ってしまった。そして、キムにも兆候が表れ始める。彼女もボブと同様に、突然に歩けなくなってしまったのだ。
スティーブンはアナに今までのことを全部話した。マーティンは自分が手術した患者の息子で、父親は手術中に亡くなったのだと。少し酒が入っていたが、自分のミスで死亡したのではないと強調するが、うしろめたい気持ちがないわけではなかった。半年前、マーティンに出会い、たまにお金を渡したりしていたという。マーティンが口にした“一人選べ”ということも、正直に話した。
入院しているキムに、マーティンから電話が入る。マーティンは駐車場にいるから、窓辺に立ってほしいと言ってきた。歩くことができないキムは無理だと言うが、ベッドから降りてみると、なんと歩くことができた。その様子を見て、アナもボブも驚きを隠せない。駐車場には誰もいなかったが、キムは窓辺まで歩くことができた。だが、ベッドに戻ると、再び歩けなくなってしまった。
映画『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』のあらすじ【転】
キムはアナに不気味なことを言った。“次はママの番”だと。マーティンの言葉を信じ始めたアナは、彼の家を訪ねた。アナは、スティーブンの職務怠慢で父親が死んだのは申し訳ないが、なぜ無関係の私と子供たちが代償を払わなくてはならないのか、と問い詰める。マーティンは、フェアではないが、正義に近づいていると言い、アナを追い払った。
キムとボブに異常が見つからないため、強制的に退院させられてしまう。ナーバスになりだしたアナは、スティーブンの煮え切らない態度に苛立ちを募らせ、激しく叱責した。
翌朝、スティーブンはアナを連れて地下室へと向かった。そこでアナが見たのは、縛りつけられたマーティンだった。昨夜のうちに彼は誘拐され、監禁されたのだ。スティーブンはライフルに弾を込めると、マーティンに狙いを定める。だが、寸前で思いとどまった。マーティンは賢明だとこぼした。“一発で4人が死ぬのだから”と。
スティーブンは、誰を殺すのかという選択を迫られる。アナは、殺すならば子供たちだと言いだす。もし、殺したとしても、また生むことができるのだからと。では、どちらの子供を殺すべきか。スティーブンは学校の成績や、二人の良い子ぶりなどで判断しようとするが、当然、簡単に決められるものではない。
映画『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』の結末・ラスト(ネタバレ)
ある日、スティーブンが地下室へ降りてみると、マーティンの姿が消えていた。アナに尋ねると、逃がしてあげたという。このまま監禁し続けても、何も解決しないからだと。そんな時、ボブの目から出血が始まった。死は、すぐそこまで迫ってきていた。
スティーブンは決断した。彼は三人をリビングに集めると、動けないようにビニールテープで縛りつけ、口も塞いだ。そして、顔には袋をかぶせた。スティーブンはライフルを手に持つと、ニット帽を深くかぶり、何も見えない状態で三人に順繰りに狙いを定めた。ロシアンルーレットの結果、弾丸は息子のボブに当たる。犠牲になったのはボブだった。
ボブの死のおかげなのか、アナとキムの命は助かった。キムの足もすっかりと治った。三人はダイナーに食事にやってくる。そこへ、マーティンがやってきた。だが、彼は三人を素通りしていく。スティーブンが席を立ち、三人は店を後にした。スティーブンは、マーティンを一度も振り返らなかった。その様子を、マーティンは静かにじっと見つめていた。
映画『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』の感想・評価・レビュー
マーティン役のバリー・コーガンという役者が強烈に印象に残った。
最初から彼の目つきに”ちょっとヤバい奴”感が滲み出ていた。
特に「正義に近づきつつある」と言ってスパゲッティーを食べるシーンには、イカれ狂った彼の本性を薄っすら垣間見たような気がして、心底寒気がした。
スティーブンが愛する我が子であるはずのボブを銃殺した時は、本当にそうするしかなかったのかと、彼の正義を疑った。
救いようのない気持ちに落胆すると同時に、この監督に非常に興味を持ち始めたことも事実だ。
結末を知ると、タイトルも意味深い。(女性 20代)
マーティンの恐ろしさももちろん感じたのだが、何よりスティーブン夫妻の言動が恐ろしかった。自分が助かるためとは言え、平気で子供を犠牲にしようとするところが怖い。スティーブンが家族を殺すことを決断し、実際にボブが亡くなったシーンは茫然とした。ここまで後味の悪い映画は、久々だった。見終わった後もしばらく気持ちが落ち込んでしまうため、注意が必要だと思う。こんな事態が起きたのに、夫婦が別れず、家族でダイナーに行く結末も怖い。(女性 30代)
父親を亡くした少年に対して優しく接するいい家族との物語のように思えるのですが、最初から何か違和感があります。物語が進むにつれて違和感の正体が徐々にわかり、気味悪さがだんだん強くなります。とにかく不気味な主人公の演技は凄かったですが、そんな彼に好意を抱く女の子の気持ちは理解できませんでした。
ラストは衝撃の展開で、オカルト的なことに素人の私からしたら、もっと出来ることはあったのではないかと思ってしまいました。共感はできませんでしたが、不気味な雰囲気は十分に表現されていました。(女性 40代)
怖いとか不気味だとか気持ち悪いと評価されることの多い今作ですが、個人的には一周まわって登場人物が皆やばすぎて笑ってしまいました。
マーティンの行動は確かに不気味だし、気持ちが悪いです。しかし、彼が行動を起こした最初にあったものは「復讐」ではなく「公平」だったのだと思います。そのために父の代わりになってもらおうとしたのに拒絶されたため、次の行動に出たのでしょう。
選ぶ責任を放棄したり、簡単に子供を犠牲にしようとする親も怖すぎましたね。結局犠牲になったのはなんの罪もない、唯一真っ直ぐだったボブ。不条理すぎる結末ですが、それを機に家族が絆を深めたような感じがするのも物凄く気持ち悪かったです。(女性 30代)
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