映画『切り裂き魔ゴーレム』の概要:1880年のロンドン。連続猟奇殺人事件が発生し犯人は、自らをゴーレムと呼称した。事件の担当者であるベテラン刑事は、捜査をする過程で喜劇女優の夫毒殺事件と関連があることを知るが、そこには恐るべき真実が隠されているのであった。
映画『切り裂き魔ゴーレム』の作品情報
上映時間:109分
ジャンル:サスペンス
監督:フアン・カルロス・メディナ
キャスト:ビル・ナイ、オリヴィア・クック、ダグラス・ブース、ダニエル・メイズ etc
映画『切り裂き魔ゴーレム』の登場人物(キャスト)
- ジョン・キルデア(ビル・ナイ)
- 連続猟奇殺人事件の捜査をするベテラン刑事。地道な捜査を行い、証拠集めを厭わない。非常に賢く正義感が強い。
- エリザベス・クリー(オリヴィア・クック)
- 愛称リジー。夫殺しの容疑をかけられた大衆演劇の人気女優。不遇な幼少期を過ごしつつも、女優を夢見て成功を手にする。気丈で聡明。男装して喜劇を演じる。
- ダン・リーノ(ダグラス・ブース)
- 大衆演劇の人気俳優。女装して喜劇を演じる俳優で長年人気を博しており、リジーの師でもある。リジーを妹のように可愛がり女優へと育て上げる。支配人の死後、劇場を引き継ぐ。
- ジョージ・フラッド(ダニエル・メイズ)
- 警官で、キルデア刑事の補佐を務める。リジーへと反感を持っていたが、事件の捜査をしていくうちに同情的になる。
- ジョン・クリー(サム・リード)
- リジーの夫で新聞記者。本職は劇作家。リジーに惚れこみ、しつこくプロポーズする。救済者となり自らの欲望を満たそうとする。妻がゴーレムであることを知り、毒殺される。
映画『切り裂き魔ゴーレム』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『切り裂き魔ゴーレム』のあらすじ【起】
1880年、ロンドンのライムハウス地区にて、連続猟奇殺人事件が発生。犯行の手口から伝説と呼ばれる殺人犯ゴーレムの仕業ではないかとの疑いが強く、ベテラン刑事のジョン・キルデアが捜査の担当をすることになった。
殺人犯ゴーレムは猟奇的に惨殺し、詩的なメッセージを残していく。被害者には共通点がなく、無差別に殺害を繰り返していた。
一家惨殺事件があった現場からメッセージを読み取ったキルデアは、補佐の警官であるジョージ・クリッドと共に図書館へ向かい1冊の本を開いた。すると、中には殺害の犯行を綴った日記のような落書きが、何ページにも渡って書かれているのを発見する。最後に記述された日付の日、図書館を利用した人物は大衆演劇の俳優ダン・リーノと作家、哲学者、劇作家ジョン・クリーの4人だった。
ジョン・クリーが毒殺されすでに死亡したと聞いたキルデア。犯行容疑をかけられているのは妻のエリザベス・クリー、愛称リジーで彼女も大衆演劇の人気女優だった。キルデアは毒殺事件による裁判の傍聴へ向かう。だが、リジーは悲惨な過去を明かされても犯行を否認するのだった。
4人の男を容疑者として捜査を開始する一方で、キルデアはジョン・クリーの妻リジーの面会へも向かう。彼女から夫の筆跡が分かる物がないか聞こうとしたのだ。しかし、ジョンが毒殺された朝、彼の筆跡が分かる書類は全て燃やされており、証拠として提出できるものがなかった。
毅然として聡明なリジー。彼女の夢は女優だった。母子家庭で酷く貧乏な家に育った彼女は、喜劇俳優でもあるダン・リーノに強い憧れを抱き、取り入ることに成功。気に入られたリジーは、彼を師と仰ぎ女優としての道を歩み始めたのだった。
映画『切り裂き魔ゴーレム』のあらすじ【承】
ところが、リジーの裁判中にダンがゴーレム事件の容疑者だと明かされてしまう。キルデアは調査をしただけで、まだ彼を容疑者とは断定していなかった。故に慌てて上層部へ掛け合ったが、すでに容疑者としての書類はキルデアを通さずに提出されたと言われる。
勝手な行動に憤りつつも、キルデアは諦めずにゴーレム事件の捜査を行うことにした。
再び、リジーの面会へ。彼女の人柄や言動、態度から見ても夫を毒殺するとは思えない。無実だと確信したキルデアは、彼女から更に過去の話を聞き出すことにする。
ダンが所属する劇場にて雑用係として働いていたリジーは、ダンに庇護されながら毎日を送っていた。そこで、新聞記者でもあり劇作家のジョン・クリーと出会う。彼は度々、リジーに秋波を送っており、彼女が同僚の俳優から色目を使われたことを知り守ってくれる。しかし、リジーに手を出そうとした同僚が翌日、遺体となって発見される。当時は事故として処理されたと言うが、恐らくやったのはジョンではないかとの疑いが深まる。
だが、不幸中の幸いか同僚の死によって、リジーには新たなチャンスが舞い込んだ。彼女は男装し喜劇女優としてデビュー。初演から人気を博すようになる。
ジョージと共に捜査を続けていたキルデア。そんなある日、事件の容疑者を目撃したという少女が現れる。少女が見た男は容疑者の1人と目される哲学者だった。ジョージとキルデアは彼に日記の一文を書いてもらうが、様々な理由から哲学者は犯人ではないことが分かった。
一方、リジーの裁判は彼女に不利な証言ばかりが出てしまい、形勢は芳しくない。リジーはジョンとの肉体関係を拒んでいたため、夫は愛人で性欲を満たしていた。その愛人は元からリジーに対し、態度が悪かった女優でもある。その上、互いに仕事が忙しく夫婦仲もあまり良いと言えるものではなかった。そもそも、2人の間には愛などなく、互いに利用し合う関係であったと言う。
映画『切り裂き魔ゴーレム』のあらすじ【転】
拘置所から戻ったキルデアだったが、彼の行動に業を煮やしたジョージと口論になる。だが、最初の犯行の犠牲者である娼婦のコートが発見され、口論は一時中断。コートにはダンの名前が刺繍されており、更にポケットから作家の住所が書かれたメモが見つかる。
2人は作家の家を訪ねたが、ライムハウスへ向かったと聞きそちらへ。途中で作家を発見したため、尾行することにした。彼はどうやら薬局にて執筆活動を行っているらしい。作家と会って日記の一文を書いてもらった。そこで、キルデアは日記から重要なヒントを得る。犯人は第2の犯行現場である古着屋からカフスを購入していたのだ。
古着屋の購入記録から購入者を発見。そこにはダン・リーノの名前が記載されていた。だが、購入者がダンだからと言って、必ずしも容疑者とは限らない。決定的な証拠を発見するまで断定はできないのである。キルデアとジョージはダンのショーを観劇に向かい、彼から話を聞くことにした。だが、ダンは軽快な様子で古着屋との関係を明かし、劇場支配人の死を探れと言う。
劇場支配人はすでに亡くなっていたが、俳優たちを優遇する優しい人物だった。だが、彼の趣味はヌード写真を撮影することで、リジーもまた支配人の餌食となった。彼女はジョンにそのことを相談。ジョンは対策を講じると言ったが、その3日後に支配人が急死した。
その後、リジーは婚約期間の3年を経てジョンと結婚。3か月後、夫との性生活から逃れたいリジーは、夫の愛人として敵対していた女優を劇場からメイドとして引き抜いたのだった。
映画『切り裂き魔ゴーレム』の結末・ラスト(ネタバレ)
ダンはジョンとの結婚に反対していたが、リジーは彼が脚本を執筆していると信じて疑わなかった。だが、ジョンは脚本の執筆をせず、日がな一日図書館で調べ物をする始末。家計はリジーが支えている状態だった。
ようやく脚本が完成したかと思えば、観衆には受け入れられない物語で不評を被る。しかも、それはリジーに演技力がないせいだと責めるのだ。夫婦は口論となり、盛大に喧嘩。更にジョンはダンとリジーを道化扱いし、酷く貶して去るのであった。
キルデアはリジーの面会に訪れ、真実を明かせと詰め寄る。ジョンがゴーレムなのだと知ったリジーは夫を毒殺したのだと。だが、彼女は毒殺した犯人として死ぬのではなく、喜劇女優としての名を残したいと言う。そうして裁判の結果、リジーには有罪判決が下り絞首刑に処されることになった。
だが、キルデアはジョンが犯人である証拠を必ず入手し、リジーを赦免すると豪語。その夜、ジョージとキルデアは再び、ダンの元を訪れた。彼からジョンが書いた脚本を手に入れようとしたが、彼が持つ脚本はタイプライターで作られた本だった。だが、手書きのオリジナルは図書館に保管されるとの情報を得る。
その日の午前には、リジーの刑が執行される。キルデアは図書館へ向かったが、時間まで1時間しかない。だが、保管されているはずの脚本は、ジョンの愛人が持ち出した後だった。恐らくつい今しがた、持ち出したと思われる。2人は図書館内で愛人を発見したが、彼女曰くジョンは無実らしい。脚本の筆跡が日記と一致したため、キルデアは馬車を飛ばして処刑場へと向かった。
そして、今まさに刑に処されるという寸前、リジーを救うことに成功。彼は彼女へと日記を見せ、真実を紙に書いて残すよう促した。だが、彼女の筆跡を目にしたキルデアは、特徴的な文字とこれまでの過程を思い出し、リジーがゴーレムであることに気付く。
彼女は男装し性別を誤魔化して犯行に及んでいたのだ。愕然としたキルデアは即座にその場から去り、リジーの処刑を執行することにした。
そうして、リジーは夫の罪を被った悲劇の女優として名声を得ることに成功するのだった。
映画『切り裂き魔ゴーレム』の感想・評価・レビュー
ベテラン刑事が連続猟奇殺人事件を担当し、犯人を捜索するという正当なサスペンス。終盤になって真犯人が判明するという、大どんでん返しに驚愕する。女優の真骨頂とでも言うべきか、ヒロインは拘置所に収監されつつも自らの正当性を演じ続ける。
ヴィクトリア女王治世下のロンドンを舞台に、衣装から設定などかなり緻密に作られており、それだけでも見どころはある。更に主演のビル・ナイが重厚な雰囲気を醸し、物語の進行をするため、身ごたえは充分。2度、3度と観ることで深みが増す作品である。(MIHOシネマ編集部)
19世紀のロンドンで起きた連続猟奇殺人事件を題材に、史実や脚色を織り交ぜて書かれたピーター・アクロイドのミステリー小説を映画化した作品。作品全体が暗く、重い雰囲気。ダークな世界観がめちゃくちゃ良かったです。誰が犯人なのか?複雑に絡み合う人間関係や調べるほどに深まっていく謎。そしてその謎を解き明かしていく過程がとても丁寧に描かれていてわかりやすい。
あっという間に観終わってしまいました。(女性 30代)
19世紀、ロンドン郊外ライムハウス。当時の街並み、美術、衣装全てが丁寧に作られています。独特の陰鬱とした世界観に、思わずうっとりしました。さらに、ビル・ナイの渋さ、オリヴィア・クックの可愛らしさにも、一瞬にして惹き込まれました。脚本はよく練られており、殊にラストのどんでん返しが見事です。真犯人が明かされた時、結構な衝撃を受けました。イギリス訛りの英語が大変聞きやすく、耳に心地よいです。真犯人の心情を汲みながら、もう一度鑑賞したいです。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
現代の撮影とは思えないほど19世紀のロンドン感がすごい。
衣装も建物の外観も室内の雰囲気も、まるで当時の映像みたい。
終盤はリチャード・ギアの『真実の行方』を思わせるどんでん返しでした。
キルデア刑事はお爺さんなのに渋くて格好良く見えた。
意外にグロ要素あるので注意。