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映画『岸辺の旅』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『岸辺の旅』の概要:3年前、不意に失踪した夫がある日突然、妻の元に戻って来る。自分はもう死んでいると言う夫に誘われ、妻は彼と旅に出る。優しく穏やかな生活を続け、夫が旅をする理由を次第に理解して行く妻。さよならを言う為の旅を描くヒューマンドラマ。

映画『岸辺の旅』の作品情報

岸辺の旅

製作年:2015年
上映時間:128分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:黒沢清
キャスト:深津絵里、浅野忠信、小松政夫、村岡希美 etc

映画『岸辺の旅』の登場人物(キャスト)

薮内優介(浅野忠信)
歯科医師。3年前、不意に失踪。ある日突然、戻って来て自分はもう死んでいると話し、妻を旅に誘う。穏やかな性格であるが、どこか神経質な面も垣間見える。
薮内瑞希(深津絵里)
子供向けのピアノ講師をしている。清楚で穏やかな性格であるが、一生懸命で可愛らしい面もある。夫に誘われて旅に出る。
島影(小松政夫)
とある町で新聞配達を営む男性。自分が死んでいる事を自覚しておらず、生前と同じ生活を続けている。
星谷薫(奥貫薫)
死者である夫に付き添って町でフラフラ彷徨っていたところを、優介に助けられて家へ戻る。夫を見捨てられずにいる。

映画『岸辺の旅』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『岸辺の旅』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『岸辺の旅』のあらすじ【起】

薮内瑞希は子供にピアノを教えて細々と暮らしていた。3年前、歯科医師であった夫の優介は不意に姿を消して行方知れず、どんなに探しても見つからなかった。ある日の夜、夫が好きだったゴマ団子を作った。ふと、気付いて振り向くとそこには優介の姿が。3年間、ずっと探していた彼は、何の違和感もなくそこに立っていた。優介にゴマ団子をご馳走する。彼は瑞希に、自分が富山の海に沈んで死んだ事を話した。死体は海底で、蟹に食われてもうなくなっている。ずっと旅をして、ようやく戻って来たと話す。俄かには信じられない話だった。

次の日の朝、瑞希は昨日の出来事が夢だったのだろうと思う。だが、キッチンには彼が食べた後の皿が残っていたし、振り向くと夫が床に座っていた。夢ではなかったのだ。優介は突然、旅に出ようと言う。瑞希が稲荷神社に奉納すべく書いた100枚の祈願書を持って、2人は旅に出る。帰りたくなったら、祈願書を焼けばいい。そう言って。

電車でとある町へ到着。そこで優介が世話になった島影という人物を見つける。島影は新聞配達を生業としていたが、優介と同じ死者らしい。しかも、自分が死んだ事を理解しておらず、今までと変わらない生活をずっと続けていた。夫婦は気のいい島影の手伝いをしながら、再びお世話になる事になった。

事務所には古めかしいPCがあった。近頃調子が悪いらしく、優介はPCの修理を始める。瑞希は彼らの食事の世話をしながら、島影と親しくなった。島影には花の写真を切り抜く趣味があり、瑞希もそれを手伝う。PCは修理しても、もう使えないらしい。優介の言葉に島影は深く頷き、送別会のようなものをしようという事になった。

その日の夕方、すき焼きの準備をしていると、島影がやって来て鍋を指さし、急に嘆き始める。島影は昔、この鍋を投げて妻の頭に当てた事があるらしい。思わぬ告白に瑞希はやめようかと聞くが、優介は首を横に振って走り去った島影を追いかけた。

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映画『岸辺の旅』のあらすじ【承】

公園のベンチで酒を煽る島影を見つけた優介。島影は近頃、呼ばれている気がすると言う。酔っ払った彼を背負い、帰路につく。ベッドに寝せて、壁を見上げた途端。夫婦は感嘆の声を上げた。部屋の壁一面に、切り抜いた花がぎっしりと貼りつけられていたのだ。それはとても、美しい光景だった。

次の日の朝、建物の様子が一変している事に気付く瑞希。何年もの間、放置されていたかのように、降り積もった埃と荒れ果てた室内。窓は割れ、枯れ葉が舞う廊下を進み、島影の部屋へ。そこも同じような様子で、彼の姿はもうどこにもなかった。

電車で次の場所へ向かう夫婦。食堂を営む夫婦の元で、手伝いをしながらお世話になる。家では一切やらなかった料理をする、優介の意外な一面を見た瑞希。ここの夫婦は死者ではないらしいが、金のない優介を働かせてくれた優しい人達だった。

瑞希はこの町に2人で住みたいと思ったが、叶わない願いなのだろう。食堂の2階で宴会をする事になり、食堂の奥さんに連れられて、瑞希は2階の片づけを手伝う。広い大部屋には古いピアノがあった。瑞希はそこで『天使の合唱』という楽譜を発見し、弾いてみる事にした。すると、ピアノを聞いて飛んで来た奥さんに酷く叱られる。奥さんには8つも歳が離れた妹がいた。妹は病気ですでに亡くなっているらしいが、よくピアノを弾いていたと言う。妹に酷い事をしたと泣く奥さんの前に、その妹が姿を現す。瑞希は妹にピアノを弾くよう促した。アドバイスをすると、妹は滑らかにピアノを弾いて笑顔を見せた。そうして気付くと、妹は姿を消していた。

荷物をまとめ、食堂の夫婦の元を笑顔で去る。次の場所へ向かう優介と瑞希。瑞希はこの旅の意味を少しずつ理解し始めていた。バスの中で優介が瑞希の鞄から1通の葉書を見つける。差出人は優介の浮気相手だった。2人は口論となり、瑞希は怒って夫を置き去りにし、家に帰った。

映画『岸辺の旅』のあらすじ【転】

瑞希は優介の浮気相手を訪ねる。同じ病院の事務をしている女性だった。病院での登録更新について話した後、優介の事について話をする。すると、事務員の女性は自分も既婚者なので、瑞希の気持ちが分かると言う。笑顔を見せた女性に衝撃を受けた瑞希。自宅へ戻りむしゃくしゃしたまま、家の片づけをする。急に思い立って優介が好きな団子を作って待った。

しばらくして、優介が姿を現す。瑞希は彼が自分の元へ戻って来た理由が分かった気がした。熱い抱擁を交わし、旅を再開する。次の場所は山奥の農家だった。優介はこの村で村人に授業を行っていたようだ。農家である星谷の家でお世話になる。

早速、集まった村人に対し授業を始めた優介。今回は光の質量についてだった。熱心に話を聞く村人達。そんなある日、ススキの原っぱで星谷の嫁である薫を見つける。ウズラを探していたらしい。彼女の息子の弁当を代わりに渡す事にした瑞希。息子はよく夫婦滝という滝を見に行っていると言う。意味深な笑みを見せる薫。

息子はやはり、滝を見に来ていた。滝つぼには洞窟があって、そこは死者の通り道になっているらしい。あの世と繋がっていると言うのだ。それなら、優介もここから来たのかと呟く瑞希に、優介は薫と町から来たと息子が話した。

星谷の家の手伝いをしながら、瑞希は星谷の祖父から話を聞く。薫の夫は祖父と口論になり、家を出て行ったまま風邪をこじらせて亡くなったらしい。薫は子供を置いて、1人で夫の骨を拾いに向かったが、それっきり戻って来なかった。それがある日、優介とひょっこり帰って来た。それが2年前の話。薫はそれ以来、すっかり腑抜けてしまった。

優介は薫と出会った時の事を瑞希に語る。薫よりも問題は死んだ夫の方だと話す。優介が会った時、死者である夫はすでに存在が崩れかけていたと言う。妻である薫に執着する夫から助ける為に、優介は薫を連れて帰ったのだった。

映画『岸辺の旅』の結末・ラスト(ネタバレ)

瑞希は日々、優介を見守り続けた。手に力が入らなくなったら、彼も消えてしまう。島影もそうだった。少しずつ、優介の手が動かなくなる。瑞希は最愛の夫との別れを意識し始める。長閑な農村を眺めて、穏やかな日々を送っていく。

そんなある日、息子から薫が知らない男と歩いていたと聞いた優介と瑞希。山へ向かう。そこには薫と死者の夫がいた。薫を追って来たのだろう。もう自分の故郷ですら覚えていない。目も見えなくなり、性根も腐ってしまった男の末路は酷いものだった。黒ずんでいく体。耳も聞こえなくなり、男は死にたくないと叫びながら消滅した。

身体中が痛いと話す優介はその後、村人達に最後の授業を行う。最後の授業は宇宙の始まりについてだった。生まれて来て本当に良かったと語る優介。身体に力の入らなくなった夫を献身的に支える瑞希。その夜、夫婦は熱く体を重ねる。

朝、瑞希が書いた祈願書を眺めていた優介から、瑞希はマッチを受け取る。帰る時はこれを燃やす約束だった。夫婦はバスを乗り継いで、海へ向かう。2人で転んだ拍子に笑い合った。そこから見える景色を眺め、ここよりも綺麗な場所に行くと言う優介。瑞希は泣きながら引き止めるが、優介は黙したまま。ちゃんと謝りたかったと言う夫を、瑞希は笑顔で許して再会を誓い合った。そうして、最愛の夫優介は姿を消した。

瑞希は約束通り、泣きながら100枚の祈願書を燃やし、荷物を持って元の生活へ帰って行った。

映画『岸辺の旅』の感想・評価・レビュー

浅野忠信と深津絵里の静かな夫婦の姿がしっくりくる。お似合いだなと。
死んだ夫が帰ってきて、「3年前に死んだよ」「旅に出よう」と言われ、あんなに普通に淡々と受け入れられるのも、この夫婦なら違和感がない。
全体的に静かに物語は進んでいくので落ち着いて観ていられた。

壁一面に貼られていた広告の花の写真がとても綺麗だっただけに、廃墟に変わった新聞社が不気味だった。(女性 40代)


湯本香樹実の同名小説を、黒沢清監督を迎え映画化。監督作品では初めて、フルオーケストラによる音楽が使用されている。浅野忠信と深津絵里のダブル主演で落ち着いた夫婦を演じ、第68回カンヌ国際映画祭、ある視点部門にて監督賞を受賞している。
3年前から行方不明だった夫が突然、戻って自分は死んだと明かされたら、どこに驚いて突っ込んでいいのか混乱するだろう。妻も混乱したが、取り乱しつつも喚くタイプではなく勢いに乗せられて旅へと出ることになる。この夫婦の場合、同じようなタイプなのか互いに多くの言葉を交わさず、どこか阿吽の呼吸によるものが多い。浅野忠信も深津絵里もどちらも演技派の俳優であるため、セリフがない部分の間に多くの演技をしている。賞を取るのも頷ける深い作品。(女性 40代)


とても評価の高い今作ですが、私はどうも好きになれませんでした。3年前に行方不明になった夫が突然現れて、自分はもう死んでいると言い出します。そして一緒に旅に出ようとも。突拍子も無い展開に思わず「え?」と声が出てしまいましたが、今作はそんな雰囲気で物語が始まり、終始フワフワとした空気感。それが魅力なのかも知れませんが、私にははっきりしない展開と流されるように夫について行く妻の姿があまり理解出来ず、最後まで疑問を持ちながら鑑賞しました。(女性 30代)

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