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映画『水の中のナイフ』あらすじとネタバレ感想

映画『水の中のナイフ』の概要:「水の中のナイフ」(原題:Nóż w wodzie)は、1962年のポーランド映画。監督は本作がデビューとなり、後のオスカー監督となるロマン・ポランスキー。主演は「ザ・グレートレース」のレオン・ニェムチック。共演はヨランタ・ウメツカ、ジグムント・マラノウッツ。本作は第36回アカデミー賞外国語映画賞にポーランド代表作品として史上初めて出品され、ノミネートに至った。

映画『水の中のナイフ』 作品情報

水の中のナイフ

  • 製作年:1962年
  • 上映時間:94分
  • ジャンル:サスペンス、ヒューマンドラマ
  • 監督:ロマン・ポランスキー
  • キャスト:レオン・ニェムチック、ヨランタ・ウメッカ、ジグムント・マラノウッツ etc

映画『水の中のナイフ』 評価

  • 点数:95点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

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映画『水の中のナイフ』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『水の中のナイフ』のあらすじを紹介します。

36歳のアンドジェイ(レオン・ニェムチック)はポーランドの首都ワルシャワのスポーツ記者で、妻のクリスチナ(ヨランタ・ウメッカ)と裕福で安定した生活を送っていた。彼らの週末は常に郊外で過ごしており、その週末もヨットの上で過すため、湖に向って車を走らせる途中でヒッチハイクの青年を乗せ、やがて目的地に着いた三人は出帆した。朝食の時にその青年は愛用の大きなナイフを取り出した。湖の船上でナイフは場違いだったが、それ以上に青年の存在は場違いであり、青年の若さとアンドジェイの中年が眼に見えない火花を散らした。アンドジェイは青年が妻に親切なのを見ると、彼に過酷な仕事を言いつけた。ヨットが帰途についた時、アンドジェイがナイフを隠した。青年は彼に喰ってかかり、揉み合ううちにナイフは湖中に落ち、青年も足を滑らせ船から落ちて浮いてこない。意外な成行きに、アンドジェイとクリスチナは罵り合い、互いに幻滅し憎悪に満ちてしまう。アンドジェイが警察へ知らせに泳ぎ去った後に青年が姿を現わした。クリスチナは最初は腹を立てたが、次第に青年の世話を焼いて彼からのキスを受ける。やがて湖畔に着くと青年は走り去った。船着場にはアンドジェイが待っており二人は複雑な面持ちで帰途についた。

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映画『水の中のナイフ』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『水の中のナイフ』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

ポランスキー監督の気合いが入ったデビュー作

ロマン・ポランスキー監督の出世作であり、モノクロの映像がヌーヴェルバーグ的な深い描写を醸し出している。裕福な夫婦が偶然に出逢った若者と接したことから、自分たちの俗物的な生活を認識するという姿を、若者が所持していた一本のナイフにより変化する心理の交錯を描いたサスペンス。僅か三人の出演者がその密室劇とも言える湖上のドラマに緊張感を与える。ナイフに象徴的な意味を持たせている所などはポランスキーの若さも目立ち、どこかから持ってきたようなサスペンスにも思える内容だが、ヨットのディテールやヨランタ・ウメッカの描き方には映像センスが如実に表れており、一冊の写真集を見ているような印象深い映像がデビュー作という意気込みを表しているかのようでもある。

誰にも起こりうる身近なスキャンダルを空想的に描く名人

ポランスキーの地元ポーランドでは評価が低く、欧米では高い評価を得た作品だが、当時の共産党一党独裁体制にあったポーランドにおいては、金満家のアバンチュールを物語の背景にするなどもっての他だったのかも知れない。しかし1960年代は「太陽がいっぱい」に代表されるように、水面と陽射しの変化というコントラストの強い素材が、心象的にもうってつけの材料だったのだろう。得体の知れぬ青年に対する夫の違和感、妻が抱く青年への気持ちの揺らぎ、得も言われぬ罪の意識などの心情の変化が、非日常的なシチュエーションである湖や、周囲の風景と同期するように伝わってくる作品である。

映画『水の中のナイフ』 まとめ

湖に飛び込んで溺れる振りをする青年。心配のあまりヒステリックになる妻。青年を探すために湖に飛び込み誠実な振りをする夫。そして夫が湖に消えた後ヨットに戻った青年と一線を越えてしまう妻。夫が戻る前に青年を去らせ、何もなかったように夫を迎える妻。夫の口から、ガラスの破片に裸足で立った水夫の話が所々で語られるのだけれど、最後に夫が妻にこの話をする事で、自らの過ちを認め、妻は夫が自分の非を認めない若者では無く、一人の大人なのだという安心感を得た感じ。いわば偽の大人だった夫に本当の大人を感じて、夫婦は再び円満へと向かうという予定調和な結末。人を欺きながら罪の意識の下で自らの保身のために皆が嘘をつき、その嘘を解っていながらも平和を維持するために詮索しない。ずる賢い大人のスリリングな秘め事を描いた、ポランスキー監督のその後の作風を示唆するかのような作品である。

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