映画『この街の命に』の概要:舞台はある街の動物愛護センター。命を救うという目標で獣医になった牧田は、罪のない動物たちが目の前で人間の手によって命を落とすことに葛藤していた。新所長として同じく獣医の高野を迎え、殺処分される動物を減らすべく立ち上がった職員達の葛藤と再生の物語。
映画『この街の命に』の作品情報
上映時間:100分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:緒方明
キャスト:加瀬亮、戸田恵梨香、戸田恵梨香、渋川清彦 etc
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映画『この街の命に』の登場人物(キャスト)
- 牧田洋(加瀬亮)
- 獣医は動物を生かすべき職業だが、動物愛護センターで殺処分という「誰かがやならければならない仕事」に就いた現実に葛藤する。
- 幡枝亜紀(戸田恵梨香)
- 牧田の同僚の獣医。夫を亡くし精神的に滅入った母を抱え、自分自身も精神安定剤が手放せない生活をしている。
- 志賀悟(渋川清彦)
- 牧田の同僚で殺処分の作業班員として勤める。「殺処分したパグがしゃべる」と言って、連日悪夢にうなされている。
- 高野綾子(田中裕子)
- 動物愛護センターの新所長。背徳感溢れる現状を変えるべく立ち上がる。
映画『この街の命に』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『この街の命に』のあらすじ【起】
「犬が話しかけてくる」という夢にうなされて起きた志賀。夢に驚き漏らしてしまったため、こっそりと洗濯して干している姿を妻に見つかってしまう。悩みを打ち明けても信じてもらえず、苦笑いをしてその場をやり過ごした。ふとベランダから下を見ると、一匹の大型犬が颯爽と走り抜けて行った。
ぼーっと一点を見つめる母親に、地域ネコへのエサやりを止めるように注意する幡枝。
自分の仕事上の立場も考えてほしいとぼやきながら、自転車で信号待ちをする幡枝の目の前を、志賀が見かけたものと同じ大型犬が颯爽と走り抜ける。幡枝は大型犬の生き生きとした姿に「捕まるなよ」と、心の内をぼやく。
バスで通勤中の牧田。婚約者からの連絡に鬱陶しさを隠し切れない表情で窓の外を見ると、志賀・幡枝が見かけた大型犬がバスの進行方向とは逆に向かって走り抜けていった。
その大型犬は街を通り抜け、街を一望できる高台から人々を見下ろしていた。
静かな街はずれにぽつんと佇む動物愛護センターに勤める牧田。選挙カーから流れる演説音声とたくさんの犬の鳴き声が入り混じる職場で、殺処分を控える犬たちを見つめて「おはよう」と声をかけた。事務所で行われる職員のミーティング。センターでは火曜日に殺処分を行うが、牧田はもう少し先延ばしできないものか、と提案した。職員一同、あまりいい顔をしなかったうえに、係長から「飼育施設ではない」とくぎを刺されてしまう。
センターに連れ込まれた動物たちは3日間の公示期間までに引き取り手が見つからない場合、5日目に殺処分される。その運命を背負った動物たちが過ごす犬舎の掃除やエサやりといった業務をこなす職員たち。クレームのような電話から、夜逃げした家族が置いていった犬の保護まで幅広く対応する職員に対して市民の目は冷たく、都合のいい依頼ばかりが続く。殺処分は職員の手によって行われ、動物たちの最期を見守る時に響き渡る悲鳴のような鳴き声は職員たちの精神を削っていく。幡枝は精神安定剤が手放せず、志賀は「犬たちが話しかけてくる」と言い続けていた。
とある日の帰り道、志賀を飲みに誘った幡枝。志賀は自身が名付けたパグのヤマさんとの出来事を語り出した。それはヤマさんが殺処分される直前のこと。最後の晩餐だからと、多めにエサを与えその場を離れようとしたときに「何が辛いの?」という声が聞こえたという志賀。嫁にも信じてもらえないこの話を聞いた幡枝は、人間の複雑な感情を読み取る能力がある犬だからこそ、面倒見のいい志賀の様子を伺っていたのではないか、と憶測した。
そんな中、一人コインランドリーで時間をつぶしていた牧田は彼女から結婚式について話し合おうと迫られていた。
映画『この街の命に』のあらすじ【承】
捨てられた動物たちを保護しているNPO法人。この日も段ボール箱に入れられた2匹の子犬が置き去られていた。早速、チョビとチャビという名前をつける会長の倉橋。その様子を横目に、スタッフはいそいそとホームページに掲載する動物たちの写真を撮っていた。
動物愛護センターの新所長となった元獣医の高野。前任の二見の妻とは大学の同級生であったよしみで受けたという。高野の出社初日もいつも通り市民の対応は続く。高野の不在時にNPO法人の会長・倉橋がセンターへ訪れていた。対応をした牧田は、殺処分を0にするべきだという提案に困惑していた。その後、世話をしているかと思いきや、犬たちに微笑み、話しかける志賀を目撃してしまった牧田は違和感に襲われる。
仕事終わり、牧田は先輩である幡枝に殺処分を減らしているセンターについて聞いてみる。譲渡数を増やすことが必須だが、前提として上の方針次第だと現実問題を伝える幡枝。牧田の結婚式について話題を変えた幡枝だが、当の牧田はよくわからないとはぐらかしていた。その帰り道、野良猫にエサを与えている母親を見つけてしまう幡枝。「お腹をすかせて自分を待っている」と言う母を無理やり自宅へ連れ帰った。
職員全員が揃うミーティングで、高野は以前自分が働いていた頃と全く変わらないセンターの環境に対して危機感を促す。そこで、命を扱う以上「すべての動物に名前をつけるべき」と提案した高野。長年働く黒田は新たな風を吹かせようとする高野を鬱陶しく感じ始めていた。以前から動物に名前をつけて面倒を見ていた志賀は、生き生きとした表情で職員に名前を共有する。さらに、高野は新しいスタッフとしてトリマーをスカウトしていた。毛玉だらけになった犬たちをトリマー・山村は見違える姿へ仕上げていく。やはりこの時も黒田は処分を待つ犬を綺麗にする意味がわからず不満を口にしていた。
高野の方針でリニューアルしたホームページは市民の苦情を増やす結果となってしまった。市民の協力あってこそ成り立つ殺処分軽減だが、全ての命を最期まで大切にしたい高野の希望は出鼻をくじかれてしまう。
殺処分を行うはずの火曜日、志賀はわざとドアを空けっぱなしにして犬を逃がした。さらに自ら処分機に閉じこもってしまう。それは警察から頼まれてセンターで引き取った老犬のヤギさんの処分の日の出来事だった。飼い主の孤独死を防ぐかのように、離れた娘のもとへ飼い主の死を知らせに行ったという不思議な能力を持つヤギさんに感情移入した志賀は、仕事を辞めたいとこぼす。しかし高野は、退職は認めず休職を進めた。その一方で予定通りヤギさんの処分は行われた。ところが、ガス処理されても脈が動いていたヤギさんに職員全員が驚かされ、高野は蘇生することに決める。無事に一命を取り留めたヤギさんは立ち尽くす志賀のもとに駆け寄っていった。牧田は散歩慣れしたヤギさんを連れて自宅に帰る志賀に連れ添った帰り道、初めて自身の結婚がダメになったことを人に言うことができた。
映画『この街の命に』のあらすじ【転】
子犬を引き取ってほしいと一組の親子がセンターに訪れた。親の離婚をきっかけに犬を飼えない環境になるということだったが、飼い主として登録されている娘の意思確認が取れないと引き取れないと説明する高野。外でうつむきながら待っていた娘に、家族の命に関わることだからと説得するが、娘は「お母さんが困る」と落ち込んだ表情でぼそっと呟いた。その表情を見た高野は、自分がしばらく預かることにして親子に考える猶予を与えた。所長の熱意に驚く幡枝。高野は幼いころに飼っていた犬を勝手に捨てられて、命を守れなかった罪悪感を他の人にして欲しくないと思っての行動だった。
センターの職員会議にて、高野は「殺処分0」について議題をあげた。少なくとも、「毎週火曜日に殺処分」というルーティンでモノのように命を扱うのはどうなのか、と疑問をぶつける。高野への不満が募る黒田は、「誰かがやらないといけない仕事」だと言い切る。せめて処分機の使用を控えたいと提案する幡枝。爪を立てる音と鳴り響く最期の悲鳴のような鳴き声は耳を塞ぎたくなるほどで、さらに動愛法に反すると幡枝の意見に追い風をかける高野。「動物が不幸な街は、人間にとっても不幸な街だ」と所長が言ったとしても、職員全員の意思がまとまらないと実行はできない。市民への譲渡には、散歩や治療といった手間に加えてボランティアの協力が欠かせない。しかし、一匹でも命を保護するために譲渡数を増やしたいと、限られた道を強く定義する高野の熱意に折れた黒田は、「所長の命令ならば」とようやく首を縦に振った。
高野と牧田は以前センターに殺処分に関して相談に来たNPO団体の元へ向かった。
「殺処分」という問題に対して対立してきたセンターと保護団体ではあるが、高野はセンターを「殺処分」の施設から「譲渡」の施設へ変えていきたいと胸の内を明かした。代表の倉橋は手を組むメリットを問うが、高野は頑なに殺処分が減ることしか答えられない。そんな様子を見て、牧田は獣医のボランティアを提案して高野のフォローをする。ちょうど猫の避妊手術に関して頭を抱えていた倉橋は、ようやく話し合いができるようになったと手を組むことを承諾した。
映画『この街の命に』の結末・ラスト(ネタバレ)
センターの改革は犬舎の見直しから始まった。入舎別にするのではなく、性格や特徴、健康状態といった個体差に目を向けたケージ分けである。そして、猫はセンター全体の空いたスペースを有効活用し、収容能力を格段と上げることに成功。志賀のネーミングセンスと職員の特技を生かしてホームページを改装。倉橋の協力のもと集まったボランティアの協力もあって、収容動物を動画付きで紹介するページが作成できるまでになった。月に一度の譲渡会や、動物を家族として迎え入れるための講習など、市民に対して譲渡する体制が整い始めると問い合わせも増え、いい兆しが見えていた。
休みの日に倉橋の元へ向かい、子猫の避妊手術を行う幡枝。幡枝の母も地域猫を連れて手伝うなど、娘の仕事に関心を持ち始めた。母親の変化を感じた幡枝は、母親に黒猫を自宅で飼うことを提案した。後日、母親と自分の薬をもらうために病院を訪れた幡枝。母親のみならず、職場の環境が変わりつつあることで自分の精神面も安定してきたので、常用していた精神安定剤が手放せそうだと医師に笑顔で話す幡枝。
センターでは、動物の引き取りを希望する市民を招いた講習会を開いていた。単身住まいがダメであること、子犬の譲渡については寿命の考慮が必要ということ、そして家族全員の同意が必須であるという厳しい条件を提示した。月に一度のセンター主催の譲渡会、献身的な姿勢の成果は、5匹の犬と6匹の猫の譲渡が決まったことで露わになる。そんな中、以前子犬を引き取ってほしいと訪れた親子が高野の元を訪ねてきた。犬を飼える家が見つかった、と子犬を引き取りに来たのだった。命を守った娘を褒め称える高野。
収容限度ギリギリになるまで殺処分をしないというルールに変えたおかげで、殺処分はおおおいに減った。手間を惜しまず、動物たちと接するようになった職員たちは、動物たちが静かに人間を観察しているという視線に気づき始める。そんな中、失業しエサも買えない環境を抜け出し、ようやく決まった仕事で引っ越しを強いられたという理由で、白い大型犬の引き取りを依頼しに男性がセンターを訪れた。その犬は、子犬のころに捨てられていたところを拾い、共に育ってきた家族以上の存在だと感情を高ぶらせて言う男性。対応した幡枝はセンターは満杯で、引き取り手がいないと処分される現実を伝え、さらに愛犬の最期がどうなるのか処分機を見せ、無言の説得をした。
順調に殺処分を減らす中、南京錠のかかった小さな小屋に犬が20匹、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた酷い状況に立ち会う職員たち。まずは保護が優先だが、センターは満杯で保護団体と協力しても4、5匹の殺処分が必要となってしまった。入舎日順に処分するわけにもいかず、高野がどの犬を処分するのか、責任をもって選ぶと先陣をきる。同じ殺処分でも、以前と異なり処分機ではなく、麻酔で最期を看取ると指示した高野。職員たちはそれぞれの表情で、久しぶりに命の終わりを感じていた。処分対象となった犬は、最期の瞬間を迎えるまで人間たちを見つめていた。
200万種以上の動物の中で、共存しあう人間と犬、そして猫。互いに求め合ったのか、理由は誰もわからないが、変わらず犬は人間たちを見つめている。
映画『この街の命に』の感想・評価・レビュー
「誰かがやらなければならない仕事」というのは気づかないだけで世の中に溢れているのだろうと感じた一作。命を天秤にかけることは道徳的に決してしてはならないが、ひとつ目線を変えるだけで方法は別にあるのではないか、と高野の熱心な姿勢に心打たれた。制作発表の段階ではSPECコンビこと、加瀬亮と戸田恵梨香の共演に注目が集まったようだが、それのみならず淡白ながらも深い感情にズームを当てた物語だった。(MIHOシネマ編集部)
殺傷分が行われていることは広く知れ渡っているが、実行する人達の心の傷になっている事実はあまり公にされていないように思う。動物達の苦しむ声を聞いてしまったら、辞めたいと思うのも無理ないことだと感じた。物語を見ているだけの自分でさえ、悲しい気持ちになった。だからと言って、「殺傷0」にすることは容易なことではないと思う。現実と理想の狭間で揺れ動く人達の苦しみと葛藤が伝わってきた。多くの人に知って欲しい作品。(女性 30代)
猫も犬も苦手で動物を飼ったことが一度も無い私ですが、この作品を見て考えさせられることが沢山ありました。一般的にペットとして飼われている犬や猫は飼い主に愛情を注がれて、可愛がられて「家族」のような存在なのだと思います。しかし、それでも手放さなければいけない時があるのだと初めて知りました。
センターにいる子達は皆、飼い主の勝手な理由でセンターに連れてこられてしまいます。ただ、可愛いから癒されるからと言う理由で自己満足でペットを飼うことは絶対に許されないと感じました。(女性 30代)
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