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映画『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』の概要:寺の娘に惚れてしまった寅さんは、出家すると言い出して、とらやの一同を慌てさせる。しみじみとした風情の媚中高梁を舞台に、住職の真似事を始めた寅さんが大活躍する。この作品で初めてマドンナを演じた竹下景子は、「男はつらいよ」シリーズの中で、合計3回もマドンナに起用された。

映画『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』の作品情報

男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎

製作年:1983年
上映時間:105分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:山田洋次
キャスト:渥美清、倍賞千恵子、竹下景子、中井貴一 etc

映画『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』の登場人物(キャスト)

車寅次郎(渥美清)
テキ屋稼業を続けるフーテン。一年中旅暮らしをしているが、たまにふらりと生まれ故郷の葛飾柴又に帰って来て、騒動を起こす。惚れっぽい性格で、今回は寺の娘に恋をして出家を目指す。
石橋朋子(竹下景子)
岡山の備中高梁にある寺の娘。インテリと結婚していたがうまくいかず、離婚後は実家に戻り、住職の父親と大学生の弟の世話をしている。母親はすでに他界している。
石橋一道(中井貴一)
朋子の弟。寺の後継だが、写真家になりたいという夢があり、父親と衝突を繰り返している。大学にもほとんど通っておらず、最終的には夢を追って東京へ出てしまう。
ひろみ(杉田かおる)
一道の恋人。地元の酒屋のひとり娘で、病身の父親に代わって店を切り盛りしている。純真な働き者。一道を一途に想っている。

映画『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』のあらすじ【起】

全国を渡り歩いて商売をしている寅さんは、電車の中で幼い娘を連れた男と出会う。男は女房に逃げられたらしく、電車の中で泣き出してしまう。

同じ頃、葛飾柴又の帝釈天参道にあるだんご屋「とらや」では、裏の印刷工場で働く博が、たこ社長の愚痴をこぼしていた。人のいい社長は、儲けにならない仕事ばかり取ってきて、博の段取りをめちゃくちゃにしてしまう。さくらは、そんな夫を優しくなだめる。

そこへ久しぶりに寅さんから電話が入る。寅さんは岡山県の備中高梁にいるらしく、博の父親の墓参りをしたいので、寺の名前を教えて欲しいという。

博の父親は3年前に亡くなったが、旅暮らしをする寅さんは葬式に出られなかった。寅さんは墓に手を合わせてその不義理を詫び、博たちの近況を報告する。

墓参りを済ませた寅さんは、この寺の住職と娘の朋子に出会う。法事帰りの住職は酔っ払っており、“上がっていけ”と寅さんを誘う。美しい朋子に一目惚れした寅さんは、その言葉に甘えて住職の家に上がりこむ。

お茶だけのつもりが夕食までご馳走になり、寅さんのバカ話で酒盛りは大いに盛り上がる。そこへ朋子の弟の一道が帰ってくる。一道は大学生だが、学校をサボって写真ばかり撮っていた。酔いつぶれた住職は息子の愚痴を言いながら眠ってしまい、寅さんも寺へ泊めてもらう。

翌朝、朋子は“朝ご飯だけでも”と引き止めるが、寅さんはキリがないからとそれを丁重に断る。ところが、住職がひどい二日酔いで大事な法事に行けなくなり、朋子が困っているのを見て、寅さんは代役を申し出る。緊急事態ということで、朋子も寅さんの好意に甘える。

寅さんは適当にお経を唱え、商売で鍛えた口上を駆使して、法事の席を盛り上げる。寅さんはすっかり人気者となり、住職の助手として、そのまま寺に居座ってしまう。

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映画『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』のあらすじ【承】

それからしばらくして。さくらと博は息子の満男を連れ、博の父親の三回忌へ向かう。備中高梁の宿で、博の兄弟が久しぶりに顔を揃える。

小学校1年生までこの高梁で育った長男の毅は、父親の生家を何とかして残したいと考えていた。しかし長女の信子や次男の修は、父の遺産を当てにしており、毅と口論になる。末っ子の博は、金のことでいがみ合う兄弟を見て、胸を痛める。

そこへ“明日の人数を確認したい”と寺から電話が入る。電話をしたのは寅さんで、寅さんはさくらたちを驚かせてやろうと張り切っていた。

翌日。寺での法要の席に、立派な法衣を着た寅さんが座っているのを見て、さくらは気絶しそうになる。博もさくらも事情が分からないので、寅さんに声をかけることもできない。寅さんだけはご機嫌で、このいたずらを心底楽しんでいた。結局詳しいことはよくわからなかったが、寅さんが悪いことをしているわけではなさそうなので、さくらは寅さんを置いて、東京へ帰ることにする。

何となく気が晴れないまま、駅で電車を待っていると、寅さんと朋子がさくらたちを追いかけてくる。後から事情を聞いた朋子は、自分の非礼を詫び、寅さんにはすごく助けられているのだと報告する。どうやら寅さんは、みんなから頼りにされているようだった。

東京へ帰ったさくらは、おいちゃんやおばちゃんに高梁でのことを話して聞かせる。身内には迷惑ばかりかけている寅さんだったが、案外よそでは役に立つのかもしれないと、一同は語り合うのだった。

映画『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』のあらすじ【転】

高梁の寺に、一道の大学から授業料が未納になっているという手紙が届く。一道は授業料でカメラを買っており、ついに住職の怒りが爆発する。カメラを全て処分しろと言われ、一道は“大学を辞めて東京へ行く”と反発する。朋子は必死で2人の仲裁をするが、どちらも聞く耳を持たず、一道は本当に出て行ってしまう。

一道は駅から恋人のひろみに電話をかけ、これから東京へ行くことを告げる。ひろみは“行かないで”と電話口で叫ぶが、一道の決心は固かった。ひろみは線路まで走り、電車を見送って泣き崩れる。ひろみの姿を見つけた一道は、電車から必死で手を振る。

法事から帰ってその話を聞いた寅さんは、“男は親父と喧嘩して家を出て、初めて一人前になるものだ”と朋子を慰める。寅さんの話を聞いて、朋子の気持ちも明るくなる。寅さんは住職の酒にも付き合ってくれ、朋子は寅さんに心から感謝する。

寅さんはひろみの相談相手にもなってやる。ひろみから“寅さんが朋子さんと結婚して寺を継ぐんでしょう”と言われ、寅さんは急に色めき立つ。寅さんと朋子のことは、町でも噂になっていた。

ある晩、住職の風呂を沸かしていた朋子のとなりに、寅さんがやってくる。住職は寅さんがいるとは知らず、風呂の中から朋子に話しかけ、“次に結婚するなら寅さんみたいな人がいいと言っていただろう”と言ってしまう。朋子は恥ずかしがって逃げてしまい、寅さんもどうしていいかわからない。翌朝、寅さんは置き手紙を残して東京へ帰っていた。朋子は怒っており、住職は自分のミスを反省する。

映画『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』の結末・ラスト(ネタバレ)

とらやへ戻った寅さんは“余生を仏に仕えて過ごしたい”と言い出し、みんなを慌てさせる。寅さんは本気で朋子との結婚を考え、そのために出家するつもりだった。寅さんは帝釈天の御前様に相談してみることにする。

ひろみは一道に会いたくて、日帰りで東京まで出てくる。しかしカメラマンの見習いをしている一道は忙しく、待ち合わせ場所へ行けない。一道は電話で“夕方には必ず行くから寅さんのところで待っていてくれ”とひろみに伝える。

その夜遅く、一道がとらやへやってくる。一道はいろいろあってすっかり遅くなってしまい、ひろみは帰ったものと落胆していた。しかし、ひろみはさくらたちの好意でとらやに泊まっており、2人はとらやの2階で再会を果たす。一道はひろみを強く抱きしめる。

御前様に弟子入りした寅さんは、大方の予想通り三日坊主で修行を投げ出してしまい、寺への出入りを禁止される。そんな時、朋子がとらやを訪ねてくる。

朋子は、さくらたちから一道の話を聞き、弟には東京にも頼れる人がいるのだと安心する。寅さんがいなくなり、高梁の家は火が消えたように寂しくなっていた。朋子は寅さんに“帰ってきてほしい”と言いたくて、わざわざ日帰りで東京まで出てきたのだ。

寅さんにも朋子が何か言いたそうなのはわかっていたが、まじめに話すのが苦手な寅さんは、朋子とふたりきりになるのを避ける。

帰る間際、朋子は寅さんに自分の気持ちを伝えようとする。しかし寅さんに話をはぐらかされ、朋子は失望する。さくらは気を使い“東京駅まで送ってあげたら”と寅さんに言うが、朋子はそれを断り、寂しそうに笑って帰っていく。そして寅さんも、朋子の後を追うように旅へ出てしまう。

お正月。さくらの家では印刷工場の従業員たちが集まり、賑やかな新年会が開かれる。博は父親の遺産を全て投資し、会社のピンチを救っていた。

一方、瀬戸内海に浮かぶ因島にいた寅さんは、幼い娘を連れたあの男と再会する。橋の建設現場で働いている男は、飯場で働く女と恋仲になり、3人で幸せそうにやっていた。寅さんはその一家とともに、笑顔で連絡船に乗り込んでいく。

映画『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』の感想・評価・レビュー

お決まりのパターンがある種の売りであるこのシリーズの中、今作は導入のパターンが他の作品とは異なる。寅さんが柴又に帰ってくるのではなく、柴又の面々が旅先で寅さんと出くわすのだ。これがシリーズを通して観た時に良いアクセントになっている。
今回はヒロインとの関係も順調、周囲も納得の仲になっていく。後は寅さんさえ腹をくくってしまえば皆が幸せになれるかもしれないというところで寅さんは逃げてしまう。ヒロインにも寂しい想いをさせてしまうのが憎くもあるが、このせつなさこそが寅さんの味だ。(男性 40代)

みんなの感想・レビュー

  1. 匿名 より:

    墓参りの後和尚と朋子に“お茶でもどうぞ”と引きとめられ、そのまま図々しく一泊した寅さんが、翌朝朋子に朝ごはんを勧められてこの「一杯が二杯、二杯が三杯の法則」を説明して帰ろうとする。(結局はそのままずっと居座ることになるのだが)

    これはつまり「キリがない」ということを言っている。「続・男はつらいよ」でのセリフがわかりやすいので少し長いが紹介しておこう。“茶の一杯が二杯になり三杯になる。団子が出るか、また茶を飲むか、そのうち酒になるじゃないか。俺は一杯や二杯じゃすまねえぜ。気が付いた頃にはお銚子がずらっと並ぶんだ。さあ、もう腰が立たねえや。いっそのこと泊まっていくか。カラスかーと鳴いて朝になる。「おはよう!またお茶を下さい」、二杯になり三杯になる。団子が出るか、酒を飲むよ。どうする?俺は旅に行けなくなるじゃねえか”という法則である。

    酒飲みならばこの法則の意味がよくわかるはずだ。こういう長ゼリフや口上をやらせると渥美清の右に出る者はいない。寅さんがこれをやりだすとファンは“きた!”と嬉しくなるわけで、“よ!日本一!”の一声もかけたくなる。これまた「寅さんファンの法則」だ。

  2. 匿名 より:

    寅さんといえばいつもマドンナに片想いをして振られているイメージが強いだろうが、そんなことはない。本作でもマドンナの朋子は寅さんに惚れている。もちろん寅さんも朋子に惚れているから和尚の助手としてせっせと働いているのだ。つまり2人は両想い。普通の男女なら“それではお付き合いしましょうか”ということになるのだが、寅さんはそうならない。いきなり“所帯を持つ”ことを真剣に考えてしまうので、話がややこしくなる。

    本作でも「朋子が好き=朋子と所帯を持つ=出家して寺の婿養子になる」と飛躍して考えすぎ、結局前へ進めない。非常にもどかしいがそれが寅さんなのだ。寅さんは自分のことを“遊び人だ”と言うが、寅さんほど誠実で純情な男はそういるものではない。それが寅さんの大きな魅力であり、だから寅さんはモテる。

  3. 匿名 より:

    中井貴一と杉田かおるの若いカップルの初々しい恋が描かれている分だけ寅さんの出番が少な目だが、そこも含めて見ごたえのある作品だ。博の兄弟が遺産相続をめぐって言い争いをするシーンでは、長男、次男、三男、長女、それぞれの心理描写が素晴らしく、山田洋次監督の鋭い人間観察力が如実に表れている。

    寅さんのニセ坊主ぶりは実に見事で爆笑必至。渥美清の底力を堪能できる。それにしても寅さんの恋は実らない。柴又駅での別れのシーンはあまりに切ない…。