映画『歓びのトスカーナ』の概要:心を病んだ女性が入院する診療施設にて、生まれつき嘘つきの女性と息子を奪われた女性が出会う。2人は徐々に仲良くなり、隙を突いて施設から脱走を果たす。そうして、逃走の過程でそれぞれの身上を知り、絆を深めていくのだった。
映画『歓びのトスカーナ』の作品情報
上映時間:116分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
監督:パオロ・ヴィルズィ
キャスト:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ミカエラ・ラマッツォッティ、ヴァレンティーナ・カルネルッティ、アンナ・ガリエナ etc
映画『歓びのトスカーナ』の登場人物(キャスト)
- ベアトリーチェ(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)
- とにかくおしゃべりで、話し出したら止まらない。自称伯爵夫人だが、3件もの訴訟で訴えられている。口が減らず、勝手な行動が多く問題人物。生まれつきの嘘つきで、裕福であることを笠に着ている。金に執着がなく、湯水のように使ってしまう。
- ドナテッラ(ミカエラ・ラマッツォッティ)
- 黒髪で酷く痩せた女性。体中にタトゥーを入れており幼い息子がいるが、現在は養子に出されている。重度のうつ病を患っているが、常識的な面はある。
映画『歓びのトスカーナ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『歓びのトスカーナ』のあらすじ【起】
2014年5月、イタリアのトスカーナ地方。自然溢れる丘の上に建つ診療施設ヴィラ・ビオンディに入院中のベアトリーチェは、自称伯爵夫人。常におしゃれを気遣い、他の患者達を仕切って脱走しようと何度も画策してきた。だが、その度にすぐ発見され、連れ戻される始末。施設の介護士や医師、患者の誰もがベアトリーチェに好意を抱いているものの、とにかくおしゃべりで話し出すと止まらない。黙った時が一番、危ないタイプであった。
そんなある日、施設へ新たな患者がやって来る。酷く痩せ細り黒髪で沈み込んだドナテッラは、うつ病を患っていた。体にはいくつものタトゥーが入っていてその上、荷物もほとんど持たずおしゃれに気遣う様子も見せない。彼女は常に1人で、携帯の音楽を延々聞いているのだった。
ベアトリーチェはそんな彼女に興味を示し、部屋も同室にして欲しいと医師へ願い出る。とにかく文句ばかりで口が減らないベアトリーチェは、トラブルメーカーでもあった。
最初はベアトリーチェのことを嫌っていたドナテッラだったが、おせっかい焼きで強引なベアトリーチェに抵抗するより従うことにする。やがて、2人はいつも一緒に行動するようになり、そんな2人の関係を職員一同は良い傾向だと見ていた。そこで、職員会議にて2人をハーブ園の仕事へ派遣することにする。ベアトリーチェは特に問題がある患者で、反対意見も多かったが、所長は良い方向へ向かうことに期待したのだった。
ヴィラ・ビオンディには心を病んだ女性が大勢、入院している。時には不穏状態に陥り、夜通し騒ぎを起こすこともあり、ベアトリーチェを含む一部の患者は騒ぎに乗じて地下にある酒樽から酒を盗んでは、楽しみの1つとしていた。
映画『歓びのトスカーナ』のあらすじ【承】
特に大きな問題も起こさず、ハーブ園での仕事に従事したベアトリーチェとドナテッラ。無事に給料をもらうことができる。だがその日、迎えのバスが来る前に、ベアトリーチェはドナテッラを引っ張って別のバスへ乗ってしまい脱走を図るのだった。
ショッピングモールへやって来た2人。職員が捜索に出ているのを発見したが、身を隠して無事に逃げ切る。しかし、それぞれに買い物を済ませたところを発見され、追いかけまわされる羽目に。それでもヴィラ・ビオンディへ帰ろうとした2人だったが、ある男性から声をかけられ送ってもらうことにした。
ところが、男性はドナテッラのことを知っている様子で、根掘り葉掘り事情を聞き出そうとしてくる。その上、言動からすると2人を相手に良い思いをしようとしているようだ。男性が目的のホテルで交渉している間、危険を察したドナテッラは車を奪ってそのまま逃走するのであった。
一方、施設では2人の逃走が問題となり、患者が騒ぎ始めて落ち着かなくなり次々に脱走を図るという大騒動に。職員は警察へ通報するかどうかで討論したが、所長は1晩だけ待とうと言うのであった。
同じ頃、ドナテッラとベアトリーチェは有名な霊能者の元を訪れ、アドバイスをもらっていた。2人は心配事を相談し解決策を得たものの、そのせいで精神的に落ち込んでしまう。ドナテッラは帰ろうと言ったが、ベアトリーチェは銀行で騒ぎを起こし早々に退散。
高級レストランで夕食をした2人は、それぞれに境遇を語り合い親交を深めたが、支払うための現金を持ち合わせているはずがなく。ベアトリーチェは口から出まかせを話し、食い逃げをしようとする。しかし、そこへ車の持ち主が現れ追い払われてしまうのだった。
ベアトリーチェとドナテッラが路上で途方に暮れていた頃、施設では医師と所長が2人を探すために出発。
映画『歓びのトスカーナ』のあらすじ【転】
その後、ドナテッラの母親が2人を迎えに来て自宅へ。ドナテッラの母親は後妻業で財産を狙っているらしく、寝たきりの裕福な老人の世話をしていた。だが、そんな母親をドナテッラは嫌っている。彼女は以前、職場の妻子ある上司と関係を持ち妊娠、出産していた。生まれた子供は男の子だったが、母親は孫を養子に出すことを事前に決めていたと言う。それは、ドナテッラが働きながら子供を育てることができないと思ったからだ。だが、その所業は当の娘に受け入れられず、母子は反目しているようだった。そうして、子供を奪われたドナテッラは心の均衡を崩したのである。
医師から電話があり、ドナテッラの母親の家にいると告げた2人は、すぐさま家から逃げ出して、行きずりの男性たちの誘いによりクラブへ。そのクラブはかつてドナテッラが働いていた職場で、子供の父親である男も働いていた。彼女は男と対面したが、警察を呼ばれる前にベアトリーチェへ声を掛けた。だが、彼女は賭け事と酒に夢中で、不穏になって暴れ始める。
結局、男が呼んだ警察によってドナテッラは逮捕され、精神科へ搬送されてしまう。騒ぎを聞きつけた医師と所長も病院へ向かったが、そこで不測の事態が発生しているのを知る。どうやら施設の福祉士が、ドナテッラを司法精神病院へ入れるよう勝手に判事を説得したと言うのだ。
ドナテッラは入院することになったが、ベアトリーチェは病院から更に逃走し自宅へ向かった。しばし、自宅にて寛いだ彼女は、ドナテッラが起こした過去の事件をネットで検索。夫の金庫から金目の物を全て盗んで家を出た。
その頃、司法精神病院へ再入院となったドナテッラは、生きることに絶望し食事も摂らず服薬の量を増やしてもらい、塞ぎ込んでいた。彼女は早朝から病院の廊下に横たわったまま動けなくなる。
塞ぎ込んでいたドナテッラの元に小包が届く。それはベアトリーチェからで、同封したブレスレットを現金化し、病院を抜け出せという手紙が入っていた。彼女は更に養子に出された息子と会わせてくれるらしい。ベアトリーチェは確かに頭がおかしいが、約束したことは破らない。ドナテッラは隙を見て病院から脱走した。
映画『歓びのトスカーナ』の結末・ラスト(ネタバレ)
そうして、ベアトリーチェの母親の家であるヴィラ・ビオンディ・ヴェルディラーナへ。ベアトリーチェが裕福な家の出であることは確かなようだったが、母親は娘のせいで酷い迷惑を被っていると言う。裕福であるが故にエゴイストで嘘つき。ベアトリーチェの口から出る言葉は大抵、嘘ばかりで生まれつきの詐欺師だったらしい。
ところが、彼女の前に更に上を行く詐欺師が現れる。その男は真の悪徳詐欺師で、巧みな言葉でベアトリーチェを落とし、片っ端から権利書にサインをさせた。そうして、彼女は偽装倒産で2つの有罪を食らい、家族の全財産は賠償金に取られてしまう。裕福だったはずが、一転して無一文に落とされた母親は、古城である自分の家を映画撮影の場所として提供し収入を得ていた。
ベアトリーチェと無事に再会できたドナテッラは、塞ぎ込んでいた彼女を叩き起こして息子へ会いに向かう。ベアトリーチェの案内で、ドナテッラの息子が養子として迎えられた家へ。だが、その家の夫婦はドナテッラのことを危惧して、会わせようとしない。ドナテッラはベアトリーチェが話している間に柵の合間から庭を覗き込み、成長した我が子の姿を目にするのであった。
数年前、福祉課から親として不適格だと判断されたドナテッラは、強制的に我が子と引き離される。それでも彼女は許可が下りるまでひたすら待って、施設へ会いに行くことができるようになった。だがある日、彼女は子供を連れ出して散歩へ。町で子供の父親と遭遇し、冷たい言葉で蔑まれる。ショックを受けたドナテッラは、施設への帰り方も分からなくなり海岸へ。追い詰められた彼女は我が子を抱いて陸橋から海へ飛び込んだのだ。そのせいでドナテッラは司法精神病院へ入院する羽目になり、現在に至る。
夜が明ける前、所長と医師がやって来たため、ベアトリーチェを置いてドナテッラは1人で逃走した。彼女は道路へ飛び出し、バイクに轢かれてしまうも、砂浜までどうにか辿り着く。その場で夜を明かしたドナテッラ。目を覚ますと息子の家族が海へ来ていた。息子とようやく話すことができた彼女は、養育先の両親の了承を得て一時の間、楽しんだ。そうして、彼女は彼らに礼をして去って行く。その後、ドナテッラは徒歩にてヴィラ・ビオンディへと向かい、数日ぶりに帰還するのであった。
映画『歓びのトスカーナ』の感想・評価・レビュー
とにかく、ベアトリーチェの口が止まらない。自分がドナテッラだったら、聞き続けることにうんざりしていたかもしれない。ドナテッラが鬱になる理由については共感するし、理解できる。ベアトリーチェは裕福な家庭に育った故に、形勢された性格であることを考えると、彼女もまた可哀想な人なのだろうと思う。
終盤ではベアトリーチェも、嘘ばかり吐いてしまう自分を自覚しているようなことを言うため、そのセリフだけで何となく彼女のことを許せてしまう。養育先の両親もドナテッラの様子を目にして、息子との時間を与えてくれるので、最終的にドナテッラと一緒に救われた気持ちになる。(MIHOシネマ編集部)
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