映画『LION/ライオン 25年目のただいま』の概要:実際にあった奇跡の物語を映画化。インドにて迷子になってしまった5歳の主人公。彼は首都カルカッタにて保護されその後、オーストラリアの養父母の元で育てられる。迷子になってから25年後、主人公はGoogle Earthにてようやく故郷を捜し当てるのだった。
映画『LION/ライオン 25年目のただいま』の作品情報
上映時間:119分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ガース・デイヴィス
キャスト:デヴ・パテル、サニー・パワール、ルーニー・マーラ、デヴィッド・ウェナム etc
映画『LION/ライオン 25年目のただいま』の登場人物(キャスト)
- サルー・ブライアリー(大人:デーヴ・パテール / 幼少期:サニー・パワール)
- 5歳の頃、迷子となりカルカッタにて、たった1人で2か月を生き抜く。孤児院へ保護され後、オーストラリアのブライアリー夫妻の元へ引き取られる。幼い頃の記憶を辿り、故郷を見つけ出す。愛情深くて賢く、心優しい人柄。
- ルーシー(ルーニー・マーラ)
- サルーの恋人。故郷を捜し続ける恋人を支え、理解を示している。ホテル経営を学び、信念を持って目的を達成する優秀な人物。黒髪の美人。
- スー・ブライアリー(ニコール・キッドマン)
- アメリカ人女性。ジョンの妻で愛情深い。サルーを引き取って育てる。若い時分、肌の浅黒い子供が自分の元に来る夢を見て運命だと確信し、サルーと弟になる子を見つける。
- ジョン・ブライアリー(デビッド・ウェナム)
- スーの夫でアメリカ人。妻の理解者であり、愛情深い人物。良き父親として子供達へ愛情を一心に与える。
- グドゥ・カーン(アビシェーク・バラト)
- サルーの実兄。推定14~15歳と思われる。家族思いの働き者で、幼い弟サルーをとても可愛がっていた。
映画『LION/ライオン 25年目のただいま』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『LION/ライオン 25年目のただいま』のあらすじ【起】
1986年、インドのカンドワにて5歳のサルーは、兄グドゥと共に列車から石炭を盗んでいた。市場で石炭を出すと牛乳と交換してもらえるのだ。他に揚げ菓子の店も出ているが、サルーの家は大変に貧乏で、兄弟はいつか店ごと買おうなどと夢の話をして笑い合う。サルーは弟思いのグドゥが大好きだった。
母親は美しい人で子供達のことをとても可愛がっている。父親はおらず、母は石を運ぶ仕事をして僅かなお金を稼ぎ家族を養っていた。サルーの下にはまだ幼い妹がおり、年長者は下の子の面倒を見るのが当たり前だった。
その日の夕方、グドゥは家族のために1週間ほど出稼ぎに出る予定だったが、サルーは兄と一緒に行きたいと駄々をこねる。結局、弟に弱い兄は幼い弟を連れて駅へ向かった。列車に乗って隣の駅へ向かい、仕事を探してくるから駅のベンチで待っていろと言われるサルー。
しかし、ひと眠りしても兄は戻って来ない。サルーは誰もいなくなった駅で兄を捜し歩き、そこに停まっていた列車へと乗り込み、待っている間にいつしか眠ってしまうのだった。
気が付くと列車が走り出している。サルーは出口を探して列車内を歩き回るも、列車は回送で駅に停まっても扉は開かない。やがて、西ベンガルのカルカッタへと到着。サルーはようやく外へ出て兄を探したが、見つかるはずもなく。駅のチケット売り場でガネトレイへ帰りたいと話すも、サルーが話す言葉はヒンディー語。カルカッタはベンガル語でなければ通じない。駅をさまよった彼は、たむろする孤児達と共に休むことにした。
しかしそれも束の間、孤児達は大人達に次々と捕まり、どこかへ連れて行かれる。サルーは駅から脱出して近くの橋の下へ避難。
それから2カ月、サルーはゴミ漁りなどをして、たった1人生き延びる。良心的な青年に出会い警察へ保護されるも、サルーの話だけでは家を捜すことができず孤児院へと預けられることになるのだった。
映画『LION/ライオン 25年目のただいま』のあらすじ【承】
他の子達と共に孤児院へ来たサルー。だが、その孤児院での子供達の扱いがまた酷い。ご飯は食べられるが、衛生状態はあまり良くなく大人の言うことを聞かないと酷いお仕置きをされる。
そんなある日、サルーはオーストラリアのジョンとスー夫妻の元へ養子として引き取られることが決定。その後、外国でのテーブルマナーや言葉を習い、飛行機に乗ってオーストラリアへ。
1987年、オーストラリアのホバートへ到着。サルーはブライアリー夫妻の元へ引き取られる。彼が養子の第1子だった。家はとても裕福で食事に困ることもなく清潔。優しい夫妻に賢いサルーはすぐに懐いた。
1年後、ジョンとスーは養子として2人目の子供を迎える。しかし、サルーの弟となる少年は扱いが難しく、大変に手がかかる子供だった。義弟を育てるにあたり、養父母がどれだけ苦悩しているかを見ていたサルー。なるべくスーの手を煩わせないよう行動し、義母を抱き締め慰めるのだった。
それから20年が経過した2008年。サルーは賢く立派な青年に成長し、ホテル経営を学ぶためにメルボルンの大学へ進学した。
映画『LION/ライオン 25年目のただいま』のあらすじ【転】
経営学のクラスに気になる女性がいた。友人が集まるホームパーティへ参加したサルー。そこには気になる女性ルーシーも参加しており、様々な国から来た友人達が集まり国際交流を兼ねて食事会を行った。サルーはそこで幼い頃、食べたくても口にできなかったインドの揚げ菓子を見つけ、自分の境遇を明かすことになる。
友人達へ幼い頃の記憶を話したサルーは、Google Earthを使えば故郷を探すことができるかもしれないと知るのだった。
幼い頃に覚えていること。サルーが住んでいた村はガネトレイという場所だったが、うろ覚えのため、実際にはそういった地名はない。列車に乗っていた時間はおよそ2、3日。地元の駅の傍には給水塔が立っていた。
彼はGoogle Earthを起動し、まずはカルカッタを表示する。そして、当時の列車の速度を調べ、時間と距離を計算。その距離内にある範囲から故郷を捜すことにした。
2010年、タスマニアのホバート。サルーは恋人のルーシーと同棲していたが、未だに故郷を見つけられずにいた。母と兄はきっと今も自分を捜しているに違いない。そう思えば思うほど、見つけられない年月や幼い頃の記憶が彼を圧し潰そうとする。ルーシーは思い詰める恋人の力になりたいと望んでいたが、彼女の存在すらも煩わしく感じ始めたサルー。彼はルーシーへと一方的に別れを告げ、故郷探しにますます没頭していくのだった。
そんなある日、ショッピングセンターでルーシーと遭遇したサルーは、彼女に対し一方的に別れを告げたことを謝罪。自分の苦悩を語って聞かせた。故郷を捜すことは、スーに対しての裏切り行為である。故に、サルーはこれまで育ててくれたスーへの思いにも心を痛めていた。ルーシーは彼の心を知り、スーはそんなことを気に病む人ではないと慰めるのであった。
映画『LION/ライオン 25年目のただいま』の結末・ラスト(ネタバレ)
再会したルーシーからスーの具合が良くないと聞いたサルーは、義母の元を訪ねる。すると、スーは大人になっても病んでいる義弟のことで心を痛めていた。サルーはスーが実の子を持っていれば、苦悩することはなかったと話すも、養母は子供を産まずに敢えて養子を貰うと初めから決めていたのだと言う。
夫のジョンはスーと同じ考えであったために結婚したのだ。彼女は子供を産んで育てるよりも、不幸を背負って孤児となった子供を引き取って育てる方が、世の中のためになると考えていた。そうして、その考えに至ったきっかけを話し始める。
スーの父親はアルコール依存症で性格の歪んだ人だった。抑制が利かなくなる度に父親は家族を虐げる。故に、スーの心もまともな状況ではなかったかもしれない。彼女が12歳になり消えたいと願った時、強い電気ショックを受け肌の黒い子供の幻覚を見た。瞬きの間に目前へと立った子供を見た時、彼女は産まれて初めて喜びを抱いた。それはまるでお告げのようだったため、この感覚に従えば間違いはないと信じたのである。
そうして、ジョンと結婚し2人の子供を養子として引き取ったのだ。
だが、子供達は大人になるにつれ仲違いするようになり、サルーもスーから距離を置いてしまう。故に彼女は心を痛め、支えを必要としていたのだった。養母の心を知ったサルーはしばし考えた後、故郷探しをやめることにした。過去のことよりも今の家族を大切にするべきだと思った。
それでも諦めきれず、Google Earthを無作為に操作している内、ふと覚えのある景色を目にしたサルー。その場所は計算した範囲よりも、遥かに遠い場所だった。近くの駅を捜し給水塔を発見。そこから延びる線路を辿り、よく遊んだ川や道、駆け抜けた森にそして村。そこは、ガネッシュ・タライという場所だった。子供の発音では確かにガネトレイである。
サルーは泣きながら地図を辿り、自宅があった場所を見つけ出す。あれから25年、とうとう彼は産まれ故郷を発見したのだ。
翌早朝、ルーシーに目的の場所を見つけたことを報告した。そして、スーにもそのことを報告。養父母はむしろサルーを称え、喜んでくれるのだった。
2012年、インドのカンドワへ宿を取り、ガネッシュ・タライへ。懐かしい景色を横目に、自宅への道を辿った。そうして、とうとうその場所へ到達。しかし、家は家畜小屋と化していた。昔の写真を見せ地元の人から話を聞くと、ある男性がサルーを別の場所へ連れて行ってくれる。そうして、彼は年老いた実母と25年振りに涙の再会を果たすのだった。
だが、そこに兄グドゥの姿はなく。サルーが列車に乗ったあの夜、グドゥはすぐ近くで別の列車にはねられ亡くなっていた。幼かったサルーは自分の名前も間違えて覚えており、本名はシェルゥという名前でライオンを意味する言葉だった。
2013年、ガネッシュ・タライにて、養母スーと実母の対面が叶う。2人の母は互いに感謝し合い、強く抱き合うのだった。
インドでは毎年、約8万人の子供の行方が分からなくなっている。これは奇跡的な一例に過ぎないのだ。
映画『LION/ライオン 25年目のただいま』の感想・評価・レビュー
親の名前も分からない小さな少年が、懸命に生き抜く姿がグッときます。これが実話だなんて、本当に奇跡としか言い様が無いなと感じました。
彼を育てた養母の心の広さ、愛情の深さが人として素晴らしく、ラストシーンで彼の実母と抱き合っている姿は、涙無しには見れませんでした。
運よく助けられて、彼のように生活できている子どもがいる一方、助からずに事件に巻き込まれる子どもたちが大勢いるのだと思うと、インドの闇を感じます。今自分に出来ることは何なのだろうかと、考えさせられました。インドの情勢が、少しでも良くなることを祈るばかりです。(女性 20代)
事実なのだけれど、サルーの人生のひとつひとつの出来事が奇跡であったのだと、それだけでも泣けてくるストーリーです。
実の母親を探すことに対してのサルーの葛藤と孤独が、非常に深く演技ににじみ出ていて、その感情を見せてくれたのが映画としての良さだな、と思いました。その苦悩が見えたからこそ、里親への告白や、大手を振って会いに行けた時の嬉しさが倍増した気がします。
そしてタイトルの理由。正直喉が唸り、ニヤリとしてしまいました。かっこいい、としか言いようがありません。(女性 30代)
主人公のサルーは幼い頃、出稼ぎに行くと兄に付いていき、出かけた先ではぐれてしまいます。その後、オーストラリアに住む夫婦の養子として引き取られます。恋人もでき、順風満帆な生活を送っていたのですが、“本当の家族に会ってみたい”という気持ちが次第に強くなっていきます。そこで彼はGoogle Earthを使って探し始めます。
まず、この話が実話に基づいて作られたということに驚きました。最後にこの映画のタイトル名になった理由がわかるのと同時に、実際のサルーと本当の家族が再開する瞬間を撮った映像も観ることができます。(女性 20代)
この作品で知った奇跡のような実話は感動的でもあり、その反面、毎年8万人もの子供が行方不明になるという事実と残酷さにとても複雑な気持ちを覚えた。だからこそ、サルーが時間をかけて故郷を見つけ出し家族に再会したという事実は、すべての人に勇気を与え、希望になったと思う。この作品を観て、サルー本人や二人の母、家族、恋人、関わるすべての人が幸せを感じる姿がとても感動的だった。特に母二人が抱き合う実際の映像には涙が溢れた。
最後のシーンの描き方はとても素晴らしく、どのタイミングでグドゥが亡くなったのかはわからないが、サルーが家族に再会したことでグドゥがようやく解き放たれた感覚に安堵した。そしてタイトルの意味を知ったとき、改めて「ただいま」の意味がわかり涙が止まらなかった。(女性 30代)
本当の家族への想いと、育ててくれた家族を傷つけたくないという想い。幼い頃記憶も手がかりも少ない中で、本当の家族を求め続けるなんて想像が出来ない。苦労も多かっただろう。時を経て、幼い頃生き離れになってしまった家族を、発達したテクノロジーGoogle earthを使って探し出すという感動溢れる物語だ。概要だけ聞いて勝手にコメディを予想したら、いろいろな感情が入り混じる実話でとても深いヒューマンドラマだった。愛情や発展途上国についていろいろと考えさせられた。タイトルの意味も判明してなるほど!という感じで良いサプライズも最後に待っていた。(女性 30代)
家から1600kmも離れて街でその日暮らし、大人たちの悪意から逃げる。幼いながらも必死に生き続けたサルーの姿に胸が苦しくなります。養子としてオーストラリアの夫婦に迎え入れられ、真っすぐ成長できたのは奇跡としか言いようがないです。成長するにつれて本当の家族に対する恋しい気持ち、徐々に近づいてくる兄の幻覚を見る辛さは計り知れなかったと思います。Google Earthによっての家族との感動の再会は、この時代だからこそ起こせる奇跡です。また、感動だけでなくインドの社会問題も忘れてはいけません。(男性 20代)
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