映画『リトル・フォレスト 冬・春』の概要:いち子は都会から逃げ、東北の小森にある実家に戻り生活をしていた。小森での自給自足の生活に、次第に生きる活力を貰う。そして、突然失踪してしまった母に思いを馳せる。五十嵐大介の漫画を実写化した作品で、四季の風景がとても美しい。
映画『リトル・フォレスト 冬・春』の作品情報
上映時間:121分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:森淳一
キャスト:橋本愛、三浦貴大、松岡茉優、小島康志 etc
映画『リトル・フォレスト 冬・春』の登場人物(キャスト)
- いち子(大人:橋本愛 / 子供:篠川桃音)
- 都会で一人暮らしをしていたが馴染めず、小森にある実家に戻り自給自足の生活を行う。生活をしていく中で、失踪してしまった母に頼り切りだった事を感じ後悔する。
- ユウ太(三浦貴大)
- いち子の友人。小森の町や小森での生活を大切にしており、若い自分達に何が出来るか真剣に考えている。
- キッコ(大人:松岡茉優 / 子供:照井麻友)
- いち子の友人。活発でハキハキした女の子。
- 福子(桐島かれん)
- いち子の母。突然失踪してしまう。
- ウィリアム(イアン・ムーア)
- いち子が子供の頃、家に遊びに来ていた外国人。福子の恋人かもしれない。
- スーパーのアルバイト男性(栗原吾郎)
- いち子が都会で働いていた時のバイトの同僚。
映画『リトル・フォレスト 冬・春』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『リトル・フォレスト 冬・春』のあらすじ【起】
秋、いち子の元に母からの手紙が届く。
東北にある小森は、商店も無い程小さな集落だ。雪が積もると農協がある場所まで1時間30分も掛かる。隣町まで買い物に行くと、いち子の家からだと1日掛かりだ。
今日はクリスマス。いち子は子供の頃に思いを馳せる。いち子の母はキリスト教じゃないからと、クリスマスを祝ってはくれなかった。でも、お客さんが来るとケーキを焼いてくれた。ある日、外国人男性のウィリアムが訪ねて来る。いち子は根拠はないが、今思えば母の元彼氏だったのではないかと思った。母のケーキは赤米で作った生地とほうれん草を混ぜた生地のクリスマスカラーのスポンジに、周りを生クリームでコーティングしたものだった。断面がとても綺麗で、いち子とウィリアムは声を上げて驚き感動した。だが、ウィリアムは家に3回来ただけだった。
いち子は友人のユウ太に子供の頃の話をして、それっきりケーキを食べていないと話す。だが、ユウ太は中学生の頃にそのケーキを食べた事があると話す。ユウ太はいち子の母から本をよく借り、家にお邪魔していたのだ。いち子はその話を聞くと、その頃にも母に彼氏がいたのかと思った。
いち子は黒米とカボチャの2色のスポンジケーキを作る。そして、その周りを生クリームでコーティングする。ユウ太はお酒を持ってやって来る。そして、友人のキッコもクリスマスお茶会をしようと入って来る。いち子は『年忘れお茶会』だと訂正する。ユウ太達は驚く。いち子はケーキも紫と黄色と白の3色でクリスマスカラーでは無いし、2人ともクリスチャンじゃないと話す。理屈っぽい考えにリッコは非難の声を上げるが、細かい事は気にしない事にした。来年もよろしくと3人で頭を下げると、ケーキを食べる。3人とも顔を綻ばせた。
いち子は回覧板を持って行くと饅頭をごちそうになる。そして、その家の子供に、いち子にとって一番のごちそうは何か聞かれる。いち子がまず思い浮かんだのは、砂糖醤油の納豆餅だった。16年前、小学校の分校でも餅つき大会があり、お母さん達が集まってせっせと作ってくれた。餅つき大会は3日前の納豆作りから始まる。藁に包んだ納豆を、雪の下の土に埋めて保存しておくのだ。今でも雪を被せ、土の下に野菜を埋めて保存していた。
いち子は今年の糯米作りに思いを馳せる。今年は天候が悪く心配で、家から10分の所にある田んぼに足しげく通った。そして、稲扱きの時期になると、集落の皆は慌ただしく動き回った。その糯米の成果が、今ついているお餅だった。いち子は嬉しそうに砂糖醤油の納豆餅を頬張る。
映画『リトル・フォレスト 冬・春』のあらすじ【承】
いち子は都会で一人暮らしを始めた頃の話をキッコに話す。始めは毎食インスタントラーメンだったが、これではダメだとインスタントラーメンの容器を使い、ラディッシュの栽培を始める。スーパーのバイトで仲良くなった男の子は、体も細く自分より力も無かった。昼食も菓子パン1個で、あれではダメだろうと思った。だが、その頃のいち子の夕食もご飯に惣菜の天ぷらで、人の事を言えなかった。いち子は朝からお弁当作りを始める。実家で作られた米を使い、焼きおにぎりを作る。そして、ラディッシュの即席漬け、母直伝の玉子焼きを作る。それらを包んでバイトの男の子に1個あげる。男の子はおいしそうに食べてくれた。ある日、またお弁当を作って持って行ったが、男の子が他のバイトの友達に手編みのマフラーを貰って嫌だったと話しているのを聞いてしまう。いち子はそれっきりお弁当を渡さなかった。
秋、いち子はまだ青い莢の小豆を少し収穫する。まだ柔らかい小豆はさっと煮ただけでも食べられるので、いろんな料理に使って食べた。それからしばらくして、茶色くなった莢から小豆を取り出し、1ヶ月天日で干した。その中からよく太った良い豆を取り出し、春の終わりに畑に撒く。小森では毎年小豆を撒く日は決まっていた。それより早すぎても遅すぎても美味しい小豆は出来なかった。いち子は近所のおばちゃんが畑を耕しているのを見ながら、昔からの経験はすごいと感心する。おばちゃんは何でも良いタイミングがあるのだと返す。いち子は小豆で餡子を作りながら、小森を出て都会に行くのが早すぎたのだと思った。
いち子は綺麗な雪景色を見て、散歩に出かける。実は昨日、キッコと喧嘩をしてしまったのだ。職場の友人の方から仕事を手伝って欲しいと頼んできたのにと、少しむくれながらキッコは話した。いち子はそれを聞いて、助けてばかりいたら相手の為にならないと返す。何をすれば相手の為になるのか分かるほど、いち子は経験を積んできたのかと、キッコは怒った。そして、いち子は他人とちゃんと向き合っているのかと訊ねた。
いち子は雪の上を歩きながら、キッコに言われた事を考えていた。他人と向き合えないから小森に帰って来たのにと思い、自分は馬鹿だと落ち込む。しばらくして、いち子は雪かきをする為に家へと帰る。家の前ではキッコが待っていた。カレーを作って来たので一緒に食べようと言われ、いち子は頷く。2人は仲直りをして、一緒に食事の準備をする。
ユウ太はこれからの小森をどうしたら良いのか真剣に悩んでいた。村の会合の帰り、ユウ太はいち子と共に歩きながら、いち子は1人で頑張っていてすごいが大事な事から逃げている気がすると伝える。いち子は何も言う事が出来なかった。
冬の嵐が来た日、いち子は母からの手紙を読む。母からの手紙は“えん”や“らせん”という言葉がよく出てくるだけで、誰とどこで何をして暮らしているのかは分からなかった。いち子が外へ出て空を見ると、黒い雲と青い空の真っ二つに分かれていた。それを見て、私と同じだと思った。
映画『リトル・フォレスト 冬・春』のあらすじ【転】
春のある日、いち子は山へ山菜を取りに出掛けた。たくさん収穫すると家に戻り、水で洗って天ぷらにしていく。
小森は春にたまに雪が降る。雪が降ったある日、いち子は母にばっけ(ふきのとう)を摘んどいて欲しいと頼んで出掛けた。母は怒りながらも雪からばっけを掘り起し、ばっけみそを作る。いち子が家に帰ると母の姿は無く、それっきり母は失踪してしまう。いち子は働きながら、その時の記憶に思いを馳せる。だがその時、ボケっとするなと上司に怒られる。いち子は心の中で上司に悪態をつく。助けてくれる家族がおらず、あんたと違って家に帰れば1人で全ての家事をしなくてはいけないのだと怒る。だが、母に頼りっきりだった自分は、本当に母にとって家族だったのかと後悔が過った。
いち子は丁寧に下処理をした筑紫の佃煮を作る。だが、出来上がると労力に合わず、ほんの少しの佃煮しか出来ない。分校の2年後輩の男の子に庭先にある電気の配線修理をしてもらいながら、いち子は筑紫の文句を話す。後輩は昔にとっては貴重な食糧源だったのではと話し、天を向いている姿が大地の聖霊のようだと語る。いち子はその話を聞いて、少しトキメク。
キッコは上司の愚痴を話しながら、いち子のまき割りを手伝っていた。そこへ山から下りて来たキッコのお爺ちゃんが通りかかり、人の悪口を言うなんて情けないと怒って去って行く。キッコはしばらく呆然としていたが、お爺ちゃんに怒られたのは久しぶりだと話し、すっきりしたと言う。
映画『リトル・フォレスト 冬・春』の結末・ラスト(ネタバレ)
子供の頃いち子は、キャベツ畑の手入れをしている母が手でモンシロチョウを殺しているのを見てしまう。そして、モンシロチョウは害虫だと教えられる。母とバスに乗って出かけている時、窓からモンシロチョウが入って来た。母は目の前にチョウが来ると、手で叩き殺し窓から外へ捨てた。いち子は乗り合わせた人々の表情が忘れられなかった。
いち子はジャガイモを収穫し、ジャガイモパンを作った。昔食べた母のジャガイモパンは美味しかったが、レシピを聞いても20歳になったらと言って教えてくれなかった。秋に母から届いた手紙はとても長く、失踪した言い訳や果樹園を始めようとした事などが書かれていた。だが、ジャガイモパンのレシピは書かれていなかったので、自分のオリジナルのジャガイモパンになった。
いち子は母からの手紙を読んだ。いつも何か同じ事に躓いて、“えん”を描くように同じ所をぐるぐる回っているように感じた。だが、経験を積んでいるのだから、それはきっと“らせん”だと思った。上にだって下にだって伸びるのだ。私の描く“えん”だって大きくなるのだと思ったら、もう少し頑張れると思ったと書かれていた。初めて手紙を読んだ時、いち子には言っている事がよく分からなかった。だが、いち子はここを出る事を決めた。
キッコはいち子の家の玉ねぎ畑の手入れをしていた。そこに、コウ太がやって来る。2人で出て行ったいち子について話す。いち子は逃げ道としてではなく、ちゃんと前向きな気持ちで住む場所を決めたいと話していた。キッコは住みたいのなら、ここに住んでいればいいのにと怒っていた。だが、キッコはいち子がすぐに戻って来ると思い、いち子の家の畑を耕して守ろうとしていた。
5年後。
旧分校で春祭りが行われていた。野菜や雑貨が売られ、多くの人達が来場していた。いち子も村に戻っており、キッコもユウ太との子供を連れている。いち子の婿は神楽の準備をしており、いち子もキッコ達と別れて準備をしに行く。来場者が見ている中、いち子達は神楽を踊った。
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