映画『リトル・ジョー』の概要:“人をハッピーにする香り”を出す新種の花を開発したアリスは、我が子の名前にちなんでリトル・ジョーという品種名を付けた。しかし、花の香りを嗅いだ者は徐々に人が変わっていき、アリスはリトル・ジョーの花粉の影響を疑いはじめる。
映画『リトル・ジョー』の作品情報
上映時間:105分
ジャンル:SF、ホラー
監督:ジェシカ・ハウスナー
キャスト:エミリー・ビーチャム、ベン・ウィショー、ケリー・フォックス、キット・コナー etc
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映画『リトル・ジョー』の登場人物(キャスト)
- アリス・ウッダード(エミリー・ビーチャム)
- プラントハウス社のバイオ技術部門に勤める研究者。母親と新生児の絆を深める通称:母親ホルモン=オキシトシンを分泌する植物を開発した。徹底した室温管理や定期的な水やりが必要となるものの、植物を我が子のように愛せるため、うつの抑制や幸福感の上昇が見込まれている。シングルマザー。植物には息子の名前にちなんで“リトル・ジョー”と名付け、仕事で子供との時間が取れないと嘆く一方、料理などの家事は一切せずできあいの食事を与えている。精神カウンセリングへ通っている。息子を喜ばせようと、規約違反を犯して商品化前のリトル・ジョーを持ち帰った。
- ジョー(キット・コナー)
- アリスの一人息子。母との時間に加え母の幸せ=新しい父親を望んでいるが、彼女の仕事が忙しいことを理解しているため主張せず、一人孤独に母親の帰りを待っている。週末はアリスの元夫で父親であるアイヴァンの家で過ごす。アリスが持ち帰ったリトル・ジョーを甲斐甲斐しく世話し、次第に性格が変わっていく。セルマというガールフレンドがいる。
- クリス(ベン・ウィショー)
- チーム・ウッダードでアリスの助手を務める研究員。彼女に好意を抱いておりジョーにも認められているが、アリスが渋っているため交際に発展していない。リトル・ジョーの花粉を吸い込んだため、僅かに性格が変わっていく。
- ベラ(ケリー・フォックス)
- プラントハウス社のバイオ技術部門に所属している女性。カールの助手。以前はトップの研究者として脚光を浴びていたが精神的な問題を抱えてしまい、復職してからはアクセス制限まで設けられ助手として降格させられた。突如不安に襲われ突飛な発言をするため、周囲からは相手にされていない。ベロという飼い犬を我が子のように可愛がっており、ラボに連れて来ている。
- カール(デヴィッド・ウィルモット)
- プラントハウス社バイオ技術部門のトップ。自身が開発した青い花“フラッシュシリーズ”をベラと共に管理しているが、フラッシュ1の失敗に続いてリトル・ジョーの花粉の影響を受けたフラッシュ2が全滅してしまった。リトル・ジョーの花粉を解析するまで、全職員へマスクの着用を義務付けたが…。
映画『リトル・ジョー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『リトル・ジョー』のあらすじ【起】
アリス率いるチーム・ウッダードは“人をハッピーにする香り”を出す深紅の花を開発した。カールは、放っておいても育つような従来の植物ではなく、人に触れられたり話しかけられたりすることでオキシトシンを分泌する新しい植物は多忙な生活を送る現代人にふさわしいコンセプトを持っていると期待を寄せた。
ラボでアリスの仕事終わりを待っていたジョーは彼女と帰路につくなり、学校のことや、クリスはママに気があるなどと他愛ない会話を楽しんだ。
翌日、精神科を訪れたアリスはカウンセラーへ、ジョーとはいつも一緒にいられないから何かあったら心配だと打ち明けた。その日の夜、帰宅したアリスはこっそり持ち帰った深紅の蕾をジョーへ渡した。彼女は花に語りかけて愛情を注ぐよう言うと、赤い花に“リトル・ジョー”と名前を付けた。
翌朝、温室はリトル・ジョーの花粉で曇っており、隣で育てていたフラッシュ2は全滅していた。
怒り心頭のカールへ、アリスは、リトル・ジョーの遺伝子は香りを優先させるため不稔性となっており、子孫は残せない作りになっていると説明した。それを聞いたカールの部下は、規則を無視しない限りそうした改良はできないのではとアリスへ疑問をぶつけ、ベラは生殖こそ生き物の存在意義だと意見した。カールは、リトル・ジョーの花粉の影響が判明するまで全職員にマスクの着用を義務付けた。
ベロがいなくなったと聞かされたクリスは、誰もいない温室へ足を踏み入れた。リトル・ジョーが今まさに開花せんとするところへ、隠れていたベロが突然飛び出しクリスのマスクは外れてしまった。その後アリスと食事へ出たクリスは、彼女へ想いを伝えキスをした。
翌週、ベラはようやくベロと再会したが、ベロは彼女を警戒して噛み付いた。「あの犬はベロじゃない」と泣くベラに呆れたアリスは、クリスから「ベラは精神的に問題があり、自殺未遂の経験がある」と聞かされた。
映画『リトル・ジョー』のあらすじ【承】
ジョーは、リトル・ジョーが開花したため香りを嗅ごうと花に顔を近づけた。アリスが帰宅すると、いつもは彼女が帰って来るのを待っている筈のジョーが見向きもせず「夕飯は済ませた」と言い放った。
ベラは、ベロを殺処分していた。彼女は「あの犬は私の犬じゃなかった。今に分かるわ」と言い、その夜アリスの自宅を訪れた。ベラはアリスへ、科学雑誌の“大脳緑系へ至る嗅覚経路”のページを見せながら、リトル・ジョーの花粉が脳に達し人の感情やパーソナリティーが変化していると説明した。クリスも「感染してる」と言うベラの仮説に不安を抱いたアリスは慌ててジョーの部屋を覗きに行ったが、リトル・ジョーの花は萎んでいた。
アリスは、リトル・ジョーの花粉テストを受けた一般被験者達のインタビュー映像を確認した。そこへ現れた部下のリックは、彼らの雑談が長いため無駄なコメントはカットしたと告げた。
週末を終え、ジョーをアリスの元へ送り届けたアイヴァンは「ジョーは変わったね、昔とはどこか違う。何も気づかない?」とアリスへ言った。その夜、ジョーはアリスの社員証を盗むと、セルマと共にリトル・ジョーの温室に忍び込んだ。プランターの下に隠れた二人がキスをした瞬間リトル・ジョーは一斉に花を咲かせ、ジョーは一輪の花を持ち去った。
翌朝、アリスを見かけたベラは、リトル・ジョーは繁殖のために人を感染させ「自分たちを守ってくれるよう感染させて人を変えるの」と語り、ノーカットのインタビュー映像を手渡した。帰宅して映像を確認したアリスは、被験者の少女が「自分を演じているの」と話したり、被験者の夫が花粉を吸った妻に対し「知らない女性だ、私の妻ではない」と話したりするのを聞いて不安になった。
映画『リトル・ジョー』のあらすじ【転】
アリスが部屋に籠っているジョーの様子を見に行くと、彼はセルマと共にリトル・ジョーへ話しかけていた。アリスはセルマも夕食に誘い、三人で弁当を食べている最中、ジョーは突然普段一人でいる寂しさを告白し「パパと暮らしたいと思う」と言い出した。反対するアリスはジョーと揉み合いの末怪我をしてしまい、その様子を見るセルマは微笑んでいた。
一方のリックは、幼苗育成ルームの温度が低温になっていることに気付き狼狽、室温管理を任せていたベラを問い詰めていた。
翌日のランチ時、アリスは、遂にクリスへ「リトル・ジョーの花粉は人をハッピーにするだけでなく、脳に感染してるのかも」と打ち明けた。二人は秘かに認可前のRウイルスを使ってリトル・ジョーを生み出しており、それを懸念するアリスは「遺伝子導入の際にウイルスが突然変異を起こし、病原性になったとか」と仮説を立てたが、クリスは自分達のキャリアのために黙っておこうと彼女を諭した。
リックは、用事があると言ってリトル・ジョーに栄養剤を与える仕事をベラに任せた。温室へのアクセスコードを受け取った彼女は時間通り栄養剤を与えたが、その最中に突如停電し閉じ込められてしまった。リトル・ジョーは一斉に開花し、花粉を放出した。
翌日、アリスに呼び止められたベラは「あのことはもう解決したわ、怖がらせて悪かった」と謝罪、前日とは別人のように明るくなっていた。
アリスはカウンセラーへ、ベラの立てた仮説が正しかったと話した。カウンセラーは、ベラがベロという“我が子”を失う恐怖をアリスに告げたことがきっかけで、自分も息子を失う恐怖に囚われているだけだと慰めた。アリスが帰った後、カウンセラーは彼女に対して「息子に対するネグレクトで罪悪感あり。息子から解放されたいと願う潜在意識を抑制している」とメモした。
アリスが帰宅すると、リビングではクリスがジョーとセルマと話していた。アリスは慌てて彼を追い出し、クリスは「子離れしなきゃ。変わったのは君のほうだ」と告げて去った。
映画『リトル・ジョー』の結末・ラスト(ネタバレ)
アリスはジョーとセルマへ、ラボに忍び込んだ夜について咎めた。ジョーは、アイヴァンにリトル・ジョーを渡して「僕らみたいにしたかった」と打ち明けた。唖然とするアリスへ、ジョーは平然と「セルマと僕は花粉に感染した。花粉を吸った者は皆一体になれる、リトル・ジョーを助けるんだ」と言うやいなや笑い出し、「全部冗談だよ、僕は僕だ。クリスからママのリトル・ジョーに対する心配を聞かされて、確かに僕は変わったけどママのこととは関係ない。たぶん僕は成長してて、父親と過ごしたくなっただけ。認めて欲しい」と伝えた。
翌日、アリスはカールへ、リトル・ジョーの開発にRウイルスを使用したと告白。突然変異を起こしたRウイルスが人の脳に有害な影響を与えていると説明する彼女は、「感染者自身はハッピーだけどそれは私たちが目指したものとは違う。かなり深刻な影響を及ぼすと思う」と言い、全ゲノムの解析を依頼した。
数日後、カールはリトル・ジョーの花粉は安全だと職員へ報告し、マスク着用の義務を解除した。迫る博覧会へ向けて士気を高めたカールは、アリスを「君はウイルスではなくベラの妄想に感染したな」と茶化した。
その夜、アリスは温室へ忍び込みリトル・ジョーを全滅させようとした。そこへクリスが現れ、彼はアリスの思惑を阻止しようとし彼女を突き飛ばしてしまった。クリスは動かないアリスのマスクを外して温室を後にした。
リトル・ジョーを出品した博覧会は大成功を収め、国家教育委員会や国民保健機関からの注文も相次いだ。新種の完成を祝ったアリスは、自らクリスへキスをした。
帰宅したアリスはジョーと夕食を摂り、アイヴァンと暮らすことを許可した。会話する二人の隣では、リトル・ジョーが美しく咲き誇っていた。
カウンセリングを終え息子がいなくなった家に帰宅したアリスは、リトル・ジョーに「おやすみ」と優しく語りかけた。満開の花は静かに「おやすみママ」と囁いた。
映画『リトル・ジョー』の感想・評価・レビュー
言葉はおろか、物音一つ立てない「植物」に脅かされる新感覚ホラー。
各所に散りばめられたビビットな照明が不安と恐怖、そして、花粉に感染した人物達の恍惚とした表情を浮き立たせる。BGMや効果音に一貫して用いられる雅楽の旋律、和太鼓や尺八の音色は、画面に漂う不気味さと美しさを見事に融合させていたように感じる。特に、不協和音で不安を煽る効果音の使い方は、ドラマ『ハンニバル』の手法と全く同じと言っても過言でない程絶妙で心地よかった。
アリスができあいの弁当や総菜を買って来てジョーに食べさせるシーンは、『冷たい熱帯魚』の冷え切った食事シーンを思い出させた。必ずしも愛情の深さ=手料理ではないと思っているが、暗い部屋で母の帰りを待ち望む子供が、唯一母親と摂る食事がそれか…と切ない気持ちにはなった。自分にも息子がいるため、無意識に「息子の世話から解放されたい」と望むアリスを真っ向から非難するのも偽善的だし、素直に共感するのも憚られるストーリーだと感じた。
ジョーをはじめ、花粉を吸った人物は本当に「感染」しているのか?単なるアリスの妄想だったのではないか?と、最後までリトル・ジョーの本当の影響が明かされないまま終わる構成は非常に好ましかった。(MIHOシネマ編集部)
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