映画『ロスト・マーメイド』の概要:人魚が実在する現代。精神科医ベイヤーは、二人の漁師が人魚を捕える場面を目撃した。上半身と下半身を切断しそれぞれを売却しようと目論む漁師から上半身を奪ったベイヤーは、切断された部分から人間の足が生えてくるのを見る。
映画『ロスト・マーメイド』の作品情報
上映時間:94分
ジャンル:ファンタジー、ホラー
監督:ジェフリー・グレルマン
キャスト:アレクサンドラ・ボコヴァ、ミーガン・カイザー、バート・カルヴァー、エリン・レイ etc
映画『ロスト・マーメイド』の登場人物(キャスト)
- 人魚 / 新入り(アレクサンドラ・ボコヴァ)
- 人魚の尾ひれと上半身を売って大儲けしようと企む漁師に捕らわれた人魚。漁師に体を真っ二つに切断されたが生きており、ベイヤーに攫われ監禁される。下半身から尾ひれではなく人間の足が生えてからは、ベイヤー精神科病院の施設で暮らす。言葉は話せないが、かつて海賊に教わったという手話でコミュニケーションを図る。
- 幽霊(ミーガン・カイザー)
- ベイヤー精神科病院の女性専用施設に現れる傷だらけの霊。入院患者のジューンにはその姿が見え会話もできるため、自分を霊体と認識していない彼女は他の患者や医師から無視されていると思い疎外感を感じている。自分と同じように孤立している新入りへ献身的に手を差し伸べる。
- ドクター・ベイヤー(バート・カルヴァー)
- 精神科医。漁師が人魚を捕えた場面を目撃し、漁船へ忍び込み切断された上半身を奪って病院の地下に監禁する。切断された部分から人間の足が生えてきたため、身元不明の新しい患者と偽って自身の施設へ入れる。
- サンドラ(ミシェル・ギャラガー)
- ベイヤー精神科病院の研修医。個性的な入院患者に翻弄されながら、母親のように彼女達と接する。会話どころか自分の名前さえ言えない新入りを気にかけ、外部のミラー医師に相談するなど懸命に彼女を理解しようとする。
- ジューン(キャロライン・ダナウェイ)
- 唯一幽霊が見える患者。周囲からは「また見えないお友達と話してる」と馬鹿にされているが、幽霊と協力して歩けない新入りに車椅子を与えるなど手助けをする。
- レイナ(メーガン・セレサ・リペイ)
- 入院している若い患者達のリーダー格。ジューンをはじめ内気な患者をいいように使い権威を振るっている。
映画『ロスト・マーメイド』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ロスト・マーメイド』のあらすじ【起】
寂れた港町の酒場で、白髪の老漁師が髭を蓄えた大柄な仲間の漁師と人魚について語っていた。白髪の漁師は、100年前から目撃情報のある人魚を捕え、力の強い尾ひれを上半身から切り離しそれぞれ売れば大金になると言った。金に目が眩んだ大柄な漁師は彼の計画に付き合うことを決め、二人は海へ出た。
クルーザーで沖へ出ていたベイヤー医師は、古びた一隻の漁船を発見した。双眼鏡で様子を見ると、甲板で二人の老いた漁師が項垂れているのが見えた。すると、俄かに仕掛け網が動き出し、水中には人魚の影が現れた。彼らは大慌てで甲板へ人魚を引き揚げ、白髪の漁師は躊躇なく人魚の腰へ斧を振りかざした。大柄な漁師は悲鳴を上げて暴れる人魚の力に適わず海へ投げ出され、ベイヤーはその隙に漁船へ忍び込んだ。彼はすぐに斧を持った白髪の漁師に見つかってしまったが、近くにあった酒瓶や刃物を使って漁師を殺害、その間に切断された尾ひれは海中へ沈んでしまったが、ベイヤーは息のある上半身を連れ帰った。
ベイヤー精神科病院の女性専用施設は、はるか昔に廃業した別の精神病院を地下にそのまま残していた。ベイヤーは誰も立ち入らない地下に人魚を監禁すると、オフィスのモニターから経過を観察、60日が過ぎた頃から人魚の下半身が繭のようなもので覆われはじめ、80日目には細い人間の足が生えてきていた。彼は人魚を患者と偽り、施設へ入所させた。
映画『ロスト・マーメイド』のあらすじ【承】
施設にいるティーンは年が近い者同士でグループを作っていたが、その内の一人は仲間から無視され孤立していた。彼女の正体は元患者の幽霊だが、本人はそれを自覚しておらず、唯一会話ができるのは霊感があるジューンだけだった。ある夜、ジェーンと幽霊がバスルームに何かいると話していると、それを聞いたレイナや患者達は好奇心から見に向かった。サンドラは「ジューンの空想に付き合わないで」と彼女達を追い、排水溝の近くで倒れ込む新入りの女の子を発見した。
幽霊は心を閉ざしている新入りを気にかけ、ジューンに「車椅子を持って行ってあげよう」と提案した。しかし、ジューンは、幽霊なら車椅子のある部屋まですり抜けて行けるだろうと答え、「あなたは10年前にはいたけど今はいない、仲間じゃないの」と告げた。
サンドラから新入りの様子について相談を受けたミラー医師は、グループカウンセリングを開始した。彼女は手話を使って話を始め、グループの中で唯一手話を理解できるロンドンが通訳した。新入りは自らを人魚だと言い、部屋の中に幽霊がいることや、数世代前から連れ去られている人魚達の子孫と知らずに現代を生きている者がいると語った。レイナは荒唐無稽な彼女の話を真剣には聞かず「嘘つき」と罵った。
カウンセリングの様子を見ていたベイヤーは、自ら人魚だと名乗った彼女に激昂し地下へ監禁した。深夜にも関わらず看守達に連れて行かれた新入りを心配したリンダが彼女を追って地下室へ侵入すると、暗闇の中でおぞましい姿となった人間に襲われてしまい、最後には死体処理用の犬に生きたまま喰われてしまった。
幽霊と共に閉じ込められた新入りは、翌日自力で這い上がって来た。
映画『ロスト・マーメイド』のあらすじ【転】
自力で歩けるまでになった新入りは、真夜中に寝室の窓を割って森へ逃走した。それを見た若い患者達も後に続き久しぶりの自由を謳歌したが、行く当てのない彼女達はすぐに施設へ戻ることを決めた。レイナだけは下水交じりの浅い川に身を浸す新入りを心配し側に残ったが、翌朝には施設へ戻った。幽霊は、朝を迎え干上がった川の中で人魚に戻った新入りの姿を発見し、再び車椅子を用意してやった。
サンドラを乗せて車を運転していたベイヤーは、車椅子に乗った人魚が施設へ戻ろうとしている場面に遭遇し、躊躇なく彼女を跳ね飛ばした。呆然とするサンドラをよそに、ベイヤーは看守や看護師を呼び付けて人魚を医務室へ運んだ。しかし、強力な尾ひれに阻まれ鎮静剤は打てず、彼は人魚を拘束して車の後部座席へ押し込むと、人魚の姿を見たスタッフ達を次々に殺していった。
サンドラは「ベイヤーは人魚を連れ出すために自分達を皆殺しにする」と確信し、残ったスタッフと協力して怯える患者達を守ろうとした。ショットガンを持ち出したベイヤーは逃げようとする秘書や隠れきれなかった患者を撃ち殺しサンドラ達のいる部屋へ近付いたが、彼女達は窓を破ってタクシーで逃走した。
サンドラを追うことをやめたベイヤーは、人魚を自身のクルーザーへ監禁した。彼は人魚の尾ひれを固定し刃物を取り出すと、鱗の内側がどうなっているか見てみたい、知的好奇心を満たしたいと告白した。
映画『ロスト・マーメイド』の結末・ラスト(ネタバレ)
人魚に付いては来たが彼女が監禁された隠し部屋に入れなかった幽霊は、半信半疑でジューンに言われたように壁をすり抜けようと鉄の扉に手を伸ばした。すると、彼女の体は壁を抜け、人魚の元へ辿り着いた。
逃げ延びたレイナ、ジューン、レベッカ、ロンドン、シャーロットを乗せたタクシーで港に到着したサンドラは、ベイヤーがクルーザーに隠れたと睨み単身乗り込んだ。船内を捜索すると、彼がこれまで若い入所者に行ってきた残忍な人体実験の記録があり、サンドラは急いで新入りを探した。
隠し部屋と新入りを発見したサンドラは、ベイヤーに見つかったため落ちていた銃で彼へ発砲し、左手を撃ち抜いた。銃声を聞いたレイナ達はサンドラを助けるためクルーザーへ侵入し、ベイヤーの攻撃を躱しながら人魚の姿となった新入りを解放し、人魚は幽霊から受け取った釣り針をベイヤーの口へ押し込むと、船底に穴を開けて彼と共に海へ消えた。崩壊したクルーザーの壁からは、幽霊と同じアクセサリーを身につけた女性の白骨死体が姿を現した。
大時化の中海へ投げ出されたサンドラ達は、カナヅチだったレベッカを失いつつ海岸へ流れ着いた。放心状態の彼女達の元へやって来た人魚は感謝を伝えると、ジューンこそ陸に上がった人魚の子孫だと告げた。彼女は幽霊にも感謝を述べ、はれて広い海へ戻っていった。
映画『ロスト・マーメイド』の感想・評価・レビュー
人魚が実在する世界線で露わになる人間の狂気。「人魚に会ってみたい」ではなく、「人魚の中身が見たい」と願う精神科医の執着心が巻き起こすホラー・ファンタジー。
冒頭からずっと画面が暗く細部が見えづらかったため、仲間外れにされている女の子が“透けている霊体”だったと認識するまでジューンとの会話やレイナ達の台詞の意味が分からなかった。最後には幽霊の白骨死体が出てきて「自分はベイヤーによって殺されたのだ」と気付くが、正直その場面をもっとゆっくりフォーカスしてほしかった。(MIHOシネマ編集部)
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