映画『ザ・マジックアワー』の概要:“もし、映画の撮影だと信じ込んで殺し屋を演じていた役者が、本物のギャングの抗争に巻き込まれたらどうなるか”という設定のシチュエーション・コメディ。三谷幸喜監督作品ならではの豪華なキャストやセットに加え、有名なマフィア映画をパロディ化した演出も笑える。
映画『ザ・マジックアワー』の作品情報
上映時間:136分
ジャンル:コメディ
監督:三谷幸喜
キャスト:佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里、綾瀬はるか etc
映画『ザ・マジックアワー』の登場人物(キャスト)
- 村田大樹(佐藤浩市)
- 「暗黒街の用心棒」で主人公を演じた高瀬允に憧れ、役者を志す。しかし芝居が臭すぎるため、何年続けても全く売れない。反面、撮影スタッフには人気がある。何かあると「暗黒街の用心棒」を観る。備後に騙され、殺し屋のデラ冨樫を演じることになる。
- 備後登(妻夫木聡)
- 守加護という港町で、クラブの支配人をしている。この街を牛耳るボスの情婦であるマリに手を出してしまい、デラ冨樫を連れてこないと殺されるという窮地に立たされる。以前、映画の撮影現場でバイトをしたことがあり、村田をうまく騙してデラ冨樫を演じさせる。
- 高千穂マリ(深津絵里)
- 歌手であり踊り子。備後とは売れない時代からの長い付き合い。ボスの情婦となって贅沢をさせてもらうが、籠の鳥のような生活が嫌になり、備後を誘惑する。冷めた性格で、他人に興味がない。
- 天塩幸之助(西田敏行)
- 守加護を牛耳るギャングのボス。街の有力者ともパイプがあり、ずっと怖いものなしだったが、最近天塩商会から独立した江洞商会の勢力に押され気味。商売柄、表に出せない金がある。海外のゲリラ組織とも武器の取引などをしている。
- 黒川裕美(寺島進)
- ボスの側近。人を信用しない冷酷なギャングだが、村田が演じるデラ冨樫にはすっかり騙される。最後まで村田のことを凄腕の殺し屋だと信じている。
映画『ザ・マジックアワー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ザ・マジックアワー』のあらすじ【起】
守加護という港町でクラブの支配人をしている備後登は、この町を牛耳るギャングのボスの天塩幸之助の情婦である高千穂マリと寝てしまい、天塩商会のギャングに拉致監禁される。
備後はひたすら謝るが、マリが反発してボスの怒りを買い、2人は殺されそうになる。備後はとっさに、ギャングたちが血眼になって捜しているデラ冨樫という謎の人物の名前を出し、彼を知っていると嘘をつく。ボスは5日以内にデラ冨樫を連れてくるという条件で、備後を解放してくれる。備後は何も知らなかったが、デラ冨樫とは、誰も姿を見たことがない伝説の殺し屋だった。
唯一の手がかりはボケボケの写真で、デラ冨樫がこの町にいるらしいことがわかる。しかしデラ冨樫は見つからず、備後は苦肉の策を思いつく。それは誰も顔を知らないような売れない役者を映画の撮影だと偽ってこの街に連れてきて、デラ冨樫という殺し屋の役を演じさせるというものだった。
備後がデラ冨樫の替え玉に選んだのは、村田大樹という中年の役者だった。村田は「暗黒街の用心棒」で主演を務めた高瀬允を崇拝するベテラン役者だったが、今まで名前のある役をほとんどもらったことがない。それでも、熱血漢の村田は現場のスタッフに愛されており、細々と役者稼業を続けていた。
備後は撮影所を訪れ、“自主制作映画の主演をお願いしたい”と村田を口説く。しかし脚本もなく、監督は未経験の備後が務めると聞き、村田とマネージャーの長谷川は、さっさと席を立つ。
任侠映画で有名なゆべし主演の映画に呼ばれた村田は、端役ながら全力投球で芝居をする。しかしなぜかゆべしは村田の芝居を好まず、ただのスタッフを代役に押す。さすがの村田もこれには落ち込み、黙って撮影所を去る。外では備後が待っていた。
映画『ザ・マジックアワー』のあらすじ【承】
村田は備後の映画に賭けてみることにして、守加護へ向かう。守加護は、街全体が映画のセットのようになっており、村田はすっかりその気になる。
しかし長谷川は未だにこの話を信じておらず、“カメラを見せてくれ”と備後に要求する。備後のクラブでバーテンダーをしている鹿間は、ちょうど街でCM撮影をしていた一行を“ガス漏れが発生したのですぐ避難しろ”と追い払い、彼らが残していったカメラを奪うことに成功。鹿間の娘の夏子も協力し、急遽偽の撮影を始めることになる。主演女優は、マダム蘭子のホテルに宿泊中のマリに頼む。マリは渋々、村田の相手役を務める。撮影はかなり適当だったが、何とか備後の嘘はバレずに済む。
翌日、いよいよ備後はデラ冨樫を演じる村田を連れ、ボスのもとへ行く。村田は自分なりにプランをあれこれ考えており、ボスの事務所で大胆な芝居を披露する。本物のデラ冨樫は、天塩商会と敵対する江洞商会に雇われ、ボスの命を狙っていた。全ては撮影だと思っている村田は、おもちゃの銃を出し、ボスを脅したうえ、窓から脱出。下にはしっかりトランポリンが仕込んであった。備後は死ぬほどドキドキするが、ボスは村田の度胸に感心する。
ボスは村田を気に入り、“うちに来ないか”と誘う。しかし村田はそれを断る。村田は本物の銃を突きつけられるが、撮影だと思っているので全く怯まない。焦った備後は“カット!”と叫んで事務所に飛び込み、村田を叱る。村田が備後の言うことは何でも聞くのを見て、ギャングたちは感心する。備後の命令で、村田は天塩商会に雇われる。
ボスは江洞に電話して、“デラ冨樫は私のところで引き取った”と伝える。江洞と食事中だった本物のデラ冨樫は、自分の偽物がいると知って激怒する。
ボスの側近の黒川は、簡単に人を信用しない主義で、村田のことも疑っていた。黒川はゲリラ組織との取引に村田を連れ出し、彼の忠誠を試す。これも撮影だと思い込んでいる村田は、本物の銃弾の中で暴れ回り、黒川の信頼を勝ち取る。報告を受けたボスは、村田を食事に誘う。
食事会は備後のクラブで行われ、ボスの希望でマリがステージで歌う。ボスはマリの楽屋を訪ね、帰ってくるように言う。しかしマリはそれをはねのけ、ボスの怒りを買う。
映画『ザ・マジックアワー』のあらすじ【転】
その夜、会計士を務める菅原の告発により、天塩商会に国税局の査察が入るという情報を黒川がキャッチする。ボスは村田に銃を渡し、“今夜中に菅原を消してくれ”と依頼する。このままでは村田が本物の殺し屋になってしまうと、備後たちは焦る。
何も知らない村田は、街のバーで銃を見せびらかしていた。備後は本当のことを打ち明けようとするが、なかなか言い出せない。そこへ黒川と江洞までやってくる。本物のデラ冨樫を知っている江洞を前に、村田は備後の命令でバレバレの芝居をして、江洞に“君の勇気は筋金入りだ”と褒められる。
ボスを怒らせてしまったマリは、備後を道連れにして街を出ようとする。備後も一旦はマリの誘いに乗るが、村田のことが気になって引き返す。村田はカメラを持った鹿間と夏子とともに、菅原の隠れ場所の病院を訪れていた。村田が菅原に銃口を向けた瞬間、備後が飛び込んできて“カット!”の声をかける。
備後は菅原を警察に預け、ボスに“デラ冨樫がしくじった”と嘘をつく。しかし街の警察署長とボスは通じており、菅原の身柄はすでに天塩商会へ戻されていた。備後は裏切り者とされ、菅原とともに地下へ監禁される。
夏子は備後を救うため、村田にボスの殺害を依頼する。村田は話の流れが唐突すぎると反論するが、鹿間にうまくごまかされ、その気になってボスの事務所へ乗り込む。ボスはなぜ村田が怒っているのかよくわからなかったが、とりあえず村田も地下へ監禁する。
足をセメント漬けにされ、ボスの部下に殴られ、村田はようやくこれが映画の撮影ではないことに気づく。マリは夏子に説得され、3人を助けに行く。縄を解かれた村田は、備後を思い切り殴る。逃げようとした備後たちは黒川に見つかってしまうが、デラ冨樫を演じた村田に助けられたことがあった黒川は、彼らを見逃してくれる。黒川は、まだ村田をデラ冨樫だと思い込んでいた。
映画『ザ・マジックアワー』の結末・ラスト(ネタバレ)
マリはボスのもとへ帰り、村田は帰り支度をする。備後はマリを救い出すためのシナリオを考え、村田に協力を依頼する。しかし村田はそれを断り、タクシーに乗り込む。
タクシーの中で、大事な宝物(撮影所にあった古い毛布の切れ端)を街の映画館に落としてきたことに気づいた村田は、映画館へ向かう。ちょうど映画館では、CMスタッフがこの街で撮影したフイルムのラッシュを確認していた。スクリーンに映し出されたのは、デラ冨樫を演じている村田の姿だった。スタッフたちは“誰だ!?”と混乱するが、村田は感動の涙を流す。それは村田の長い役者人生の中で、最高の瞬間だった。
村田は備後たちのいるホテルへ戻り、備後の芝居に参加すると告げる。村田はこれを最後に役者をやめる決心を固めていた。村田の声かけで、本物の撮影スタッフたちが守加護に続々と集まってくる。
備後は、天塩商会の帳簿を正確に暗唱する菅原の動画をボスに送り、菅原とマリの交換を要求する。ボスは、自分の後ろ盾となっていた街の権力者も江洞に奪われ、窮地に追い込まれる。
村田は、街でのCM撮影に参加していた高瀬允と話をする。高瀬は「暗黒街の用心棒」しか代表作のない落ちぶれた老人だったが、今も再起のチャンスを狙って役者を続けていた。憧れの高瀬に“あきらめるのは早い”と言われ、村田の心は揺れる。
いよいよ、備後の書いた大芝居が始まる。備後のシナリオはこうだ。菅原とマリを交換するため、ボスを港へ呼び出す。マリと菅原を交換後、菅原は車の陰に逃げ込み、服に血糊を仕込んだ鹿間の演じる偽の菅原が飛び出す。それを黒川が撃つ。偽の菅原は撃たれたふりをして海に転落。本物の菅原は夏子の車で逃げ、国道に待機中の国税局に引き渡す。ボスの目を誤魔化すため、長谷川たちの演じるゲリラ組織が登場して、マリを渡せと要求。そこで村田が登場し、“マリのことは頼んだぞ”と言って、ゲリラ組織と戦う。備後はマリを連れて逃げるようとするが、村田が撃たれ、マリも蜂の巣にされ、その死体を抱えて車に乗り込んだ備後は、車ごと爆発炎上するという大掛かりなものだった。
しかし、物陰で様子を見ていたボスが、予想外に飛び出してきて“殺すなら私を殺せ”と言い出す。これを芝居だと知らないボスは、身を呈してマリを守ろうとしていた。それを見たマリは感動し、ボスのもとへ走る。2人は手に手を取って、幸せそうに去っていく。
芝居が台無しになってがっかりする一行の前に、本物のデラ冨樫が現れる。村田は咄嗟に“デラ冨樫は俺だ”と叫び、先ほどの芝居で出番がなかった発破や爆薬を派手に使って、超人的な殺し屋を演じる。ベテランスタッフとの呼吸もぴったりで、驚愕したデラ冨樫は大急ぎで逃げていく。大芝居は見事に大成功。村田も役者を続けることにして、ボスに見捨てられた黒川は村田に弟子入りする。
映画『ザ・マジックアワー』の感想・評価・レビュー
三谷幸喜脚本・監督のコメディ映画。マフィアを騙すため偽の映画撮影を持ちかけるクラブの支配人とその話を信じる売れない役者、騙されるマフィアのボスの姿をコミカルに描く。
三谷作品おなじみの豪華キャストはもちろんのこと、絶妙にかみ合った「勘違い」に若干ハラハラしながら笑える作品。タイトルの「マジックアワー」は人生の中で最も輝く瞬間が誰にでもあると言うメッセージが込められている。(男性 20代)
まずストーリーの設定が面白く、売れない役者の村田が騙されながら演じたデラ冨樫のなりきり感や、彼に依頼をした備後のマリへの想いなど、各シーンでの見所が詰まっていた。個性強めなキャラクターを演じた豪華キャストにも力が入っており、かなり魅了された。特に、村田が偽のデラ冨樫を演じていたはずだったが、本物のデラ冨樫が村田の迫力に圧倒されていたシーンが面白く、印象深かった。まさかの展開や、どんでん返しの結末も上手くできており、さすがだなと関心すらもした。(女性 20代)
大好きな三谷幸喜監督の作品。家族でも恋人でも、誰と見ても楽しめる最高のコメディ映画。三谷映画常連の俳優陣に加え、今回はセットもレトロでとても可愛かった。現在では日本を代表する名俳優とも言える佐藤浩市が、オーバーな演技で売れない俳優役という設定も面白い。
散々ふざけたストーリー展開の中で、演じることを諦めようとしていた村田が、映画に救われ、映画というものの素晴らしさ、演じることの楽しさを再び見出すシーンには感動する。(女性 20代)
マフィアのボスの愛人に手を出した男が、命を助けてもらう代償に伝説の殺し屋”デラ富樫”を探し出すコメディー映画。
ストーリーもオチも面白おかしく作り込まれていて最高だった。
追い込まれて窮地に立たされた備後は、売れない役者の村田をデラ富樫に仕立て上げ、村田には映画の撮影だと騙す。
よくここまで周りも騙されたなあと思うが、最終的には村田自身の中で最高の芝居を引き出す結果となり、圧倒的な存在感でデラ富樫を演じる村田は素晴らしかった。(女性 20代)
これぞ三谷幸喜作品。三谷ワールドにドップリと引き込まれた。
この映画では売れない役者がギャングの抗争に巻き込まれた演技をする。つまり佐藤浩市は、演技の中で演技をしているのだが、それが恐ろしいほどにうまい。
三谷幸喜ならではの展開の速さや伏線回収のうまさが光っていて、三谷作品の中でもお気に入りの作品である。俳優も監督の演出も安定感抜群であり、終始安心して観ていられる。必ずもう一回観たくなるほどの良作だった。(男性 20代)
安定の三谷ワールド。
三谷幸喜は本当に映画や芝居、役者さんや関わるスタッフのことが大好きなのだろう。彼の作るどの映画を観ても最後はそこに行き着く。難解だったりひねくれた思想などなく、ただただ「愛」が原点なので人によっては物足りなく感じるかもしれないが、安心して観ていられる。
今回はそんな彼の敬愛するビリー・ワイルダー監督の如く、タイトルの単語を劇中で説明、展開し、話の肝に据えている。見終わった頃には今まで知らなかった「マジックアワー」という単語がすっかり刷り込まれているのが心地良い。(男性 40代)
三谷幸喜ワールド全開のハチャメチャで、お腹が痛くなるほど大いに笑わせてくれました。特に佐藤浩市さん演じる、架空の人物で殺し屋デラ富樫のインパクトが強烈で、声を出して笑いました。今でも「富樫」という名前を見ると、佐藤浩市さんの顔が浮かんできてしまいます(笑)。キャストも豪華で、レトロな雰囲気な街並みも素敵、ストーリーも面白く、映画と現実が上手く噛み合っていく展開もスゴク良くできていました。何回も見たくなる抱腹絶倒な、ザ・コメディーな作品でした。(女性 30代)
三谷幸喜作品の中でもお洒落な雰囲気で夢にあふれた作品。特に深津絵里のキラキラした美しさには釘付けになりました。
映画の撮影と信じて疑わずに殺し屋役を演じる村田と、本当に村田が殺し屋なのか半信半疑なギャングたち。ちぐはぐな会話なのになぜか辻褄があってしまい、話がどんどん進んでいくのは面白くて感心しました。
三谷監督を始め、この映画に出演している役者、スタッフみんなが村田のように映画を心から愛しているのだろうなと感じる、映画愛の詰まった物語です。エンドロールもおすすめ。ぜひ最後の最後まで観てください。(女性 40代)
みんなの感想・レビュー
1度も見た事が無いのに、佐藤浩市がナイフを舐め回すシーンだけは知っていた今作。ストーリーを全く知らないまま鑑賞したので、こんなに笑えるストーリーだったのかと驚きました。
三谷幸喜の作品はどれを見ても面白いし、独特な世界観だなと感じていますが、今作も街並みや登場する車などが本当に素敵でした。年代や国がちぐはぐなのも三谷幸喜らしいと思ってしまうでしょう。
豪華なキャストが揃っているので、どのシーンを見ても満足できると思います。