映画『負け犬の美学』の概要:ピークを過ぎながらも活躍する理想の姿を追う40代のボクサー。欧州チャンピオンのスパークリング相手となり、家族のために闘う様を追う。主演は「アメリ」で恋人役を演じたマチュー・カソヴィッツ。
映画『負け犬の美学』の作品情報
上映時間:95分
ジャンル:アクション、ヒューマンドラマ、スポーツ
監督:サミュエル・ジュイ
キャスト:マチュー・カソヴィッツ、オリヴィエ・メリラティ、スレイマヌ・ムバイエ、ビリー・ブラン etc
映画『負け犬の美学』の登場人物(キャスト)
- スティーブ・ランドリー(マチュー・カソヴィッツ)
- 2児の父であり、プロボクサー。敗戦続きで、プロとしては実績のないまま年だけを重ねてしまっている。妻に反対されながらも、勝利を目指している。
- マリオン・ランドリー(オリヴィエ・メリラティ)
- スティーブの妻。美容師として稼ぎながら、勝利を目指すスティーブと子供たちを養っている。強気な女性だが、誰よりスティーブのことを理解し寄り添っている。
- タレク・エンバレク(スレイマヌ・ムバイエ)
- 無敗の欧州チャンピオン。偶然にも割りの良い仕事を探しているスティーブと出会う。実績もなく年老いたスティーブをバカにしていたが、徐々に心を開いていく。
- オロール・ランドリー(ビリー・ブラン)
- スティーブの娘。自分を目一杯応援してくれる父親が大好きだが、なかなかボクサーとしての姿を見せてもらえないことが悩み。ピアノが好きで本格的に学びたいと思っている。
映画『負け犬の美学』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『負け犬の美学』のあらすじ【起】
スーパー・ミドル級プロ決定戦、リングに上がったのは32敗中のスティーブ。試合後も誰に声をかけられることもなくトボトボと控室に戻るスティーブは、目立った実績も残せずセキュリティに観客と間違えられるほど存在感の薄い選手であった。
大敗しても娘・オロールの前では「惜しかった」と見栄を張る日々が続く。決してオロールに試合は見せられず、妻・マリオンからは引退を迫られるのだった。オロールのピアノのレッスン代も安くはない。ピアノの才能を伸ばしたいと願うオロールだが、美容師として働くマリオンの稼ぎに頼っている上京のスティーブには、ピアノを買い与える余裕はなかった。
同じジムの仲間にはスティーブ目の前でチャンスが訪れた。その運に何とかしがみつこうとスカウトに自ら売り込むスティーブだが、「年を取りすぎている」と断られてしまう。しかし、スパークリング相手としてどうかと提案しなおし、チャンピオンのタレクの練習相手という仕事を掴み取るのだった。そうそうに家族に報告するスティーブだったが、マリオンは反対する。スパークリング相手は試合相手よりも酷なことを知っているからだった。
映画『負け犬の美学』のあらすじ【承】
マリオンの反対を押し切って翌日指定場所に向かったスティーブ。全てはオロールにピアノを買い与え、夢に近づくチャンスを掴ませるためである。タレクとの待ち合わせ場所はラグジュアリーなホテルだった。ソワソワとしながらカジノを通り抜けた先には、綺麗なリングが用意されていた。初めての環境に高ぶるスティーブだが、他のスパークリング相手達と対面し少し自信を失ってしまう。皆若いが、すでに実績を残してきた選手ばかりだったのだ。
順番にタレクの相手をしていき、スティーブの順番が回ってきた。しかし、スティーブの実力ではチャンピオンの練習相手としては物足りず、初日でクビになってしまう。意気揚々と新たな仕事について家族に語ったスティーブは、クビになった事実を打ち明けられず夜な夜なタレクが滞在するホテルに向かった。
早朝ランニングに同行させてもらったスティーブ。KOされる恐怖を知っていると強気のアドバイスをし、オロールのためにも仕事を続けようと必死にアピールした。スティーブの真剣な眼差しに折れ、タレクはクビを撤回するのだった。
映画『負け犬の美学』のあらすじ【転】
「タレクのスパークリング・パートナー」として掲載されたSNSを見たといつも買い物に出向くスーパーで声をかけられたスティーブ。オロールはその父親の姿を誇らしく思うのだった。しかし、ある日怪我をしてオロールが帰宅した。KOされたスティーブの試合を見た上級生に悪口を言われ、喧嘩したというのだ。自ら殴り掛かったというオロールに「受け流せ」と叱るスティーブ。ようやく公開の練習試合にオロールを招待できたスティーブだったが、少しだけ父娘の間に溝ができてしまうのだった。
タレクは試合に向けて、スパークリング・パートナーも同席して戦略会議が開かれた。トレーナーが強く語る戦略に対して、思わず口出ししてしまったスティーブ。トレーナーには「酒場で語ってろ」と突き返されてしまうが、スティーブなりに見立てた戦略を伝えるとタレクは静かにうなずいてくれるのだった。
公開の練習試合当日。観客はタレクに本番の試合同様の姿を期待し、声援を送る。オロールが見守る中、2番目のスパークリング相手に指名されたスティーブは、ブーイングを受けながら必死にタレクへと立ち向かう。到底かないもしない相手に挑むスティーブの姿と、多くのブーイングを目の当たりにし、オロールは動揺を隠せないのだった。
映画『負け犬の美学』の結末・ラスト(ネタバレ)
タレクに呼び出されカジノに出向いたスティーブ。公開練習で挑発したことを謝罪するためにスティーブと話したかったというのだ。最後に勝利を手にしたのは3年前だと素直に話したスティーブに対して、タレクは諦めない姿勢を感動し欧州王座をかけた試合の前座に出て欲しいと依頼するのだった。
スティーブは初めてリングに立った時のトレーナーを訪ねた。通算50試合目となる大事な節目に、自分のボクサー人生を賭けるつもりなのだ。「打たれ強い」とスティーブの長所を語るトレーナーは、勝利を掴み取らせるために熱心なサポートを始めるのだった。
試合当日、有志を見守ろうとマリオンも駆けつけた。「理想の試合をしろ」と背中を押してくれたトレーナーの言葉を胸に、最終ラウンドまで持ち込んだスティーブ。徐々に会場の声援も熱くなっていき、盛大な拍手の中スティーブは判定を待った。大きな仕事を達成したスティーブは帰りを待つオロールのベッドへと直行し、最後の勝利を報告するのだった。
オロールは夢だった学校の試験に挑んだ。堂々と実力を発揮する娘の姿を見守るスティーブ。二人は一つの目標に向かって、新たな挑戦を始めるのだった。
映画『負け犬の美学』の感想・評価・レビュー
東京国際映画祭コンペティション部門出品時は「スパーリング・パートナー」というタイトルであった一作。実際にWBA王者となった経験のあるスレイマヌ・ムバイエが欧州チャンピオン役を務める点もあり、もっとボクシングに着目した作品かと思いきや家族の強い愛情を実感できる物語であった。諦めない主人公も素敵だが、止めつつも夢を追わせる妻も強い。娘との関係性もさることながら、何気なく過ごす息子との会話にも注目いただきたい、穏やかな90分であった。(MIHOシネマ編集部)
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